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(前編)古市憲寿さん「仕事とプライベートに境界はない」それからお金のハナシも。

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気鋭の社会学者であり、小説家でもあり、テレビ番組では社会問題に対して独自の視点で切り込んでいく古市憲寿さん。多彩なフィールドで活躍されていますが、ご自身のライフプランについてはどんな考え方をもっているのでしょうか? 人生のプライオリティやお金のこと、海外移住の可能性まで、“テレビでは観られない古市さん”を取材してきました。

 

「ストレスなくできること」を仕事に選んできた。

仕事とプライベートについて語る古市憲寿さん

——非常にお忙しい日々を過ごされていると思いますが、まずは仕事やプライベートの考え方や人付き合いについて教えてください。

そもそも仕事とプライベートの違いがあまりないというか、自分がやっていてストレスにならないことや苦痛ではないことを仕事にしているので、「この日は仕事、この日はプライベート」っていう境界線がないんです。好きなことってストレスなく取り組めるし、長続きしますよね。僕の場合は、本を読んだり、文章を書いたり、人と話したりすることが好きなので、そういったことを仕事に選んできました。

大好きな詩人の作品を鑑賞する古市憲寿さん
長野県にある「KAITA EPITAPH 残照館(旧信濃デッサン館)」を訪れた古市憲寿さん

——古市さんといえば、“誰に対しても忖度しない発言”でたびたび話題になります。人間関係でストレスになることはありますか?

嫌いな人や苦手な人は研究の対象と思うようにして、感情をはさまず客観的に見るようにしているんです。人間は誰とでも仲よくなれるわけでもないし、なりたいわけでもないですよね。距離を置けばその人のことを好きにも嫌いにもならず、ストレスにもなりません。

何年か前のことになりますけど、朝の報道番組の打ち合わせのとき、出演者が集まる控え室にサンドイッチが置いてあったことがありました。僕は一口も手をつけていないのに、なぜかどんどん減っていくんです。おかしいなと思ったら、隣にいた出演者が、自分のサンドウィッチを食べ尽くし、それだけでは飽き足らずに、僕のお皿に手を伸ばしていたんです(笑)。こういう人とは友達にはなれないけど、「どういう種類の人なんだろう?」と、観察の対象にしてしまうんです。要は、ストレスになる人とはなるべく関わらない。どうしても関わらなくちゃいけない時は、サンプルだと思うようにしています。

 

人生のプライオリティは友人や仲間が上位にくる。

——興味をもった人には自分から声をかけるほうですか?

好きな人は自分から誘って会うようにしています。たとえば誰かに呼ばれて行った場所に知り合いが少ないと“アウェイ”になりますけど、自分の知り合いが多いとそこが“ホーム”になりますよね。自分から積極的にホームをつくっていったほうが、結果的にストレスがない場所が増えるんです。

——古市さんは幅広い交友関係をもたれていることでも知られていますよね。

友人や仲間はすごく大切というか、逆にそれ以外に何を信じられるかなって思います。社会の価値観やお金の価値はどんどん変わっていくし、絶対的なものって少ないじゃないですか。だけど友達や仲間の関係って、古今東西、お互いが信じ合うことができれば、それだけで成立する。もちろんその分、それを維持するのはすごく難しいんですけど、何をベースに生きていくのがいいのかを考えたときに、友人や仲間が一番大切で、何より守りたいものだと思ったんです。

自分の感情に嘘をつくのって難しいですよね。他人には嘘をついたり、いい顔をしたりと、騙すようなことはできますが、自分が不快だと感じることや、気持ちいいっていう感情をごまかすのは大変です。だから直感的に「この人といると楽しいな」といった、自分に嘘がつけない感情から逆算して考えると、人生におけるプライオリティも決めやすくなると思います。

好きな人は自分から誘って会うという古市憲寿さん

 

世界中どこでも暮らせるくらいのお金はあった方がいい。

——ここからはお金のことをお伺いします。ルールや決めごとはありますか?

お金の決めごとは特にないですね。ただ、基本的に現金を使わずに家計簿アプリに履歴を残すようにしています。クレジットカードと連携させているので、それを見れば何にどれくらいお金を使っているかがすぐにわかるんです。

——普段はどういったことにお金を使うことが多いですか?

アプリによると、いちばん多いのは食費や日用品ではなくて、「特別な支出」らしいですね。たとえば、若い作家さんの絵を買うことが多いです。少しいい服くらいの値段を出せば、結構、色々なアートって手に入るんですよ。あとは本かな。食費については、おじいちゃん、おばあちゃんとお付き合いすることが多くて、あまり自分で払うことはないかな(笑)。

——では、収入や支出のバランスはマメにチェックする方でしょうか?

収入と支出のバランスはあまり気にしていません。ただ、何かあったときのために、ニューヨークでも、ロンドンでも、上海でも、世界中どの街でも暮らしていけるくらいのお金があったほうが精神衛生上はよいかなと思っています。

なぜなら、人ってこの街にしかいられないって思うと、何かトラブルがあったときに心が疲弊したり、病んだりすると思うんです。でも、いつでも違う場所に行ける、海外に住んでもいい、と考えることができれば、気持ちが安定するのかなって。そういうときに大切なのは、お金と友人。だからいざというときのために、意識的に世界各地のめぼしい街には、なんとなく友人がいるようにしているんですよ(笑)

ノルウェーの友人と島原を訪れた古市憲寿さん
ノルウェーの友人と一緒に訪れた島原にて

 

移住の可能性を見据えて、海外でも積極的に友人をつくりにいく。

——海外でも自分から友人をつくりにいくんですか?

そうですね。コロナ前は、海外に行くたびにリアル脱出ゲームをしていたんですけど、大抵は一人ではなくて、4、5人くらいいたほうがいい。だけど一人旅が多かったんで、いつも現地に行ってから知り合いを探すんです。大学時代に同じ授業を受けていたような、ゆるいつながりの知り合いをFacebookで探して、その人に地元の友達を呼んでもらい、即席のチームでゲームをしたら、そのあとご飯を食べて仲よくなる、というのがいつものパターンでした。『アスク・ミー・ホワイ』というオランダを舞台にした小説があるんですが、それは現地で知り合った友人がいなかったら、書けなかったですね。

世界中に自分の居場所をつくりたいという古市憲寿さん

——では、将来的にはどこかに移住する可能性もあるんですね。

そのときに自分が何をしているかによりますね。東京ってニューヨークやロンドンなどに比べると生活費が安いですし、日本は物価が上がっていかないのでどちらかというと生活していくのはラクなんですよ。たとえば、僕はノルウェーのチョコレートが好きで個人的に取り寄せているんですが、10年ほど前で200gのチョコレートは日本円で400円くらいでした。でも今は800円くらいになっています。日本のチョコって、安いものでだいたい100円くらいで15年前と今で値段はあまり変わっていないでしょう。

ニューヨークやロンドンで同じ賃貸物件に住み続けようと思ったら、物価は上がっていくので、同じくらい給料が上がり続けないと、住むことが難しくなりますよね。日本は、若者や外国人などよそ者に優しい国だと思いませんが、一度、よそ者でなくなると、一気に住みやすくなる。ただ、将来的にどこの国でも暮らしていけるくらいの経済的な余裕はもっていたいとは思っています。

——世界中に自分の“居場所"を多く用意しておきたいということでしょうか?

拠点を増やしたいというよりも、いつでもどこででも暮らせるように、世界中の街や日本のいろんな場所に選択肢をたくさんもっておきたいんです。どんなに理不尽なことがあっても定年まで会社に勤めないといけないとか、決められた場所でしか生きていけないという状況がすごく窮屈で苦手なんです。

それは仕事も同じで、社会学者や小説家、コメンテーターという肩書きにこだわりはなく、いろんな選択肢をもっておきたいと思いながら、さまざまな活動をしています。国でも仕事でも複数の場所に身を置けるようにしておくと、いつでも自由に好きなことができますからね。

後編では、古市さんの多彩な仕事や保険のこと、人生設計について聞いてみました。本業をつくらない理由や「人生100年時代」の働き方など、生き方のヒントがつまったインタビューをぜひご覧ください!

古市憲寿さん「意外と保険はたくさん入ってます」あと人生設計のハナシも(後編)へ 「本業をつくらず収入源は1つにしない」(ミラシル会員限定記事)

取材・文/藤井たかの 写真/有坂政晴 取材協力/カフェテラオ


古市 憲寿
ふるいち・のりとし●1985年、東京都生まれ。社会学者・作家。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。日本学術振興会「育志賞」受賞。2011年、若者の生態を的確に描出した『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)で注目され、メディアでも活躍。初めての小説単行本『平成くん、さようなら』(文藝春秋)と『百の夜は跳ねて』新潮社)は連続して芥川賞候補作となり注目される。近著に『アスク・ミー・ホワイ』(マガジンハウス)、『絶対に挫折しない日本史』『楽観論』(ともに新潮新書)など。


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