街と緑を背景に笑顔の阿部真央さん。 街と緑を背景に笑顔の阿部真央さん。

阿部真央「歌い続けるために見つけた、不安や焦りとの向き合い方」。

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「思い描いていた社会人像と違う」「周囲が結婚や転職などで新しいステージに進み、焦ってしまう」。恋愛・結婚、出産、キャリア、人間関係、お金──周囲と比較して焦ってしまったり、自分の人生や今後の生き方に悩んだりしてしまうことはありませんか?

人生の4分の1(クオーター)が過ぎたアラサー世代が陥りやすい漠然とした不安や焦りのことを「クオーターライフクライシス」といいます。言葉自体は初耳でも、心当たりがある人も多いのではないでしょうか。

シンガーソングライターとして、10代から活躍してきた阿部真央さん。その時々の思いを込めた歌詞は、20代から30代の女性たちを中心に絶大な支持を集めています。そんな阿部さんにも、漠然とした不安やもやもやに悩んだ時期がありました。どのように対処して、どう乗り越えたのか。同じように クオーターライフクライシスを経験したファイナンシャルプランナーの大竹のり子さんとの対談を通して、ヒントを探ります。

歌を歌うだけでは成立しない。想像していた世界とのギャップに悩んだ20代前半。

街と緑を背景にカメラに目線を向ける阿部真央さん。

──2024年は19歳でデビューしてから15年の節目の年。今振り返ってみて、どんな15年でしたか?

阿部:音楽だけで生計を立てられる人はごくわずか。それを15年も続けられたのは、奇跡だなと思います。「大変」という言葉は「大きく変わる」と書きますが、自分もまわりも大きく変わり続けるなかで、変わらず音楽を続けることの大変さを、あらためて実感しています。

──「大きく変わり続けるなかで、変わらないことの大変さ」。シンガーソングライターの阿部さんらしい表現ですね。具体的にどんなことが「大変」だったのでしょうか?

阿部:シンガーソングライターって、自分の人生を切り取って見せていく職業。歌だけ歌っていても成立しない、想像以上に泥臭い世界なんです。楽曲の表現方法やアートワーク、3年先まで見据えた活動計画やその準備など、つねに自己プロデュースをして周囲に提案していかないと、すぐに潰れてしまうんです。そういう意味では、デビュー前に思っていた世界とはずいぶんギャップがありましたよね。

──10代から30代へ。女性としてライフステージが大きく変化する時期でもあると思います。そうした変化は、シンガーソングライター「阿部真央」にどう影響しましたか?

阿部:私は「強くあらねば」という気持ちが人より強い少女でした。そのまま大人になって音楽の世界に飛び込んだこともあり、20代前半は自分の鎧を強固にすることに必死で。20代で結婚と離婚を経験しているのですが、そういうときに出会った縁だったので、今思うとパートナーや家族、友人に対して、ひとりよがりな面があったかもしれません。

仕事とプライベートがめちゃくちゃリンクしていて、そのゆがみがあったからこそシンガーソングライターとしてやってこられた反面、プライベートの対人関係では失敗してしまったと思う経験もありました。

30代になってわかってきた、阿部真央さんのもやもや解消法。

室内で取材に応じる阿部真央さん。

──まさにクオーターライフクライシスの時期に、さまざまな経験をされてきたんですね。シンガーソングライターとして感じたギャップや、プライベートでのもやもやは、どうやって解消してきたのですか?

阿部:社会に出た人が最初に壁にぶつかったときと同じように、若いころは体調を崩したり、肌が荒れたりしていました。25歳での出産を経て、だんだん慣れてきて、30代前半の今になってやっと、新たなストレスの根源にぶつかっても、いなし方がわかってきたかなと思います。

私のもやもや解消法は、ひたすら自分に向き合って、漠然とした不安や焦りを理解してあげること。ストレスの原因がメンタルにあることはこれまでの経験でわかっているので、何かで発散するのではなく、じっくり自分の状況や気持ちを把握して、自分の中に原因を探して整理しています。

不安の原因を俯瞰で考えると、逆に気持ちが落ち着くんです。たとえば、私はお金の管理が苦手で不安になることが多々あるんですが、通帳を見て、向き合ってみると不安が消えるんですよね。

──考えることがストレス解消になるとは、まさにシンガーソングライターの阿部さんらしい方法ですね。2023年はプライベートレーベルを立ち上げて独立もされたので、考える時間も多かったのではないでしょうか?

阿部:たしかに昨年は今までの人生で一番大変な時期でしたね。ただ、それがきっかけで変わったこともあるんです。もともと自己完結型だったのですが、さすがにいろいろなことが重なって自分1人では抱えきれなくなり、周囲の人に思いを話すようになったんです。そのおかげで、伝えることの大切さをあらためて実感できました。

──特に不安や焦りで気持ちが落ち込んでしまったときに、メンタル面や健康面で何か心がけていることはありますか?

阿部:15年かけて生き方、考え方を整理して、自分への理解が進むごとにどんどん不調がなくなってきました。体力があるので、大きな病気もせずに持ちこたえてしまっている面もあると思います。ただ、運動不足になるとストレスがたまるタイプなので、筋トレしたりキックボクシングしたり、運動する機会は逃さないようにしています。自分の心に向き合うことと体を動かして発散すること、どちらもとても大切だと感じています。

お金を使って経験を積むことも、人生における大事な備えに。

街と緑を背景に並んで笑う阿部真央さんと大竹のり子さん。

──ファイナンシャルプランナーの大竹さんもクオーターライフクライシス世代の29歳のときに起業されています。きっかけは何だったのでしょうか?

大竹:特にクオーターライフクライシスを自覚していたわけではありませんが、今振り返ってみると、起業という選択をしたのは、その当時いろいろ悩んだ結果だったのかなと思います。私の場合、24歳で結婚、27歳と29歳のときに出産して、同じ時期に起業もしたので、阿部さんと同じように若いうちにいろいろ経験したんですよね。

阿部:わ~、親近感わきます!

大竹:私もです(笑)。出産した当時はフリーランスでしたが、周りは年齢的にバリバリ仕事をしているのに、自分は全力で仕事ができないもどかしさがあって。世の中とつながる方法として個人サイトを立ち上げ、ファイナンシャルプランナーの資格を持っているのに活用する機会がない全国の女性に向けて情報発信をはじめたんです。

そうしたらあれよあれよという間に仲間が集まり、会社組織にすることになって。今振り返ると、一個人ではなくチームとしてもう少し大きなかたちで社会に役立ちたいという気持ちが強くなっていた時期だったので、必然的な流れだったのかなと思います。

──無意識のうちに自ら変わるきっかけをつくり、新しいチャレンジをはじめていたんですね。そうしたご経験を踏まえて、20代~30代のときにしておいたほうがいいことはありますか?

大竹:今の若い世代はお金を使わない人が多くて、老後のために節約してお金を貯めようという意識が強いですよね。それ自体は悪いことではないのですが、人生には予想外の出来事が降りかかることが多々あって、そういうときに頼りになるのが、経験だと思うんです。「経験値の多さ」=「生き抜くためのタフネス」につながる。お金を貯めるだけでなく、お金を使って経験値を積む、ということも、人生において大事な備えになってくれるんじゃないかと思います。

──経験が人生の備えになる。すごく納得できる言葉ですね!

大竹:ただし、特に女性の場合は婦人科系など若い頃から不可抗力の病気になることもあるので、そのときのために必要最低限のリスクヘッジをしておくことも大切です。特に自分で生計を立てている方は、働いてこそお金を得られるので、何かあって働けなくなったときにもお金の不安がない状況はつくっておけるといいですね。

室内で取材に応じる大竹のり子さん。

不安やもやもやは心と体に問題がある証拠。早く向き合った人から抜け出せる。

緑を背景に会話する阿部真央さんと大竹のり子さん。

──人生の先輩である大竹さんの話を聞いて新しい気づきや発見がありましたか?

阿部:めっちゃ前向きになりました! 「お金がある」=「本当の意味での豊かさ」じゃない、とは思っていたんですが、一方で世の中にはお金がたくさんあることが豊かさという思考もあって。自分でも、何が本当の豊かさなのかもやもやしていたんです。今回大竹さんの話を聞いて、経験にお金を使うことが自分の人生を豊かにすることだと明確につながって、すごく勇気をもらいました。

しかも自分と同じ働くお母さんで、こんないきいき輝いている先輩が人生の少し先にいてくれるなんて! 自分もそうなれるんだって思うと、将来がすごく楽しみになりました。

大竹:これまでにたくさんの家計相談にのってきましたが、「正しいお金の使い方がわからない」という人はとても多いんです。貯蓄や保険加入など、ある程度のリスクヘッジをしておくと将来の不安は少なくなるんですが、あくまでお金は道具にすぎません。上手く使って豊かな経験をしてこそ、その価値が生きると思うんですよね。

お金を貯めることの意味も、単に「たくさんあると安心だから」というだけではないんです。お金が足りないと、生活のためにとにかく働いてお金をつくるということに時間もエネルギーも使わないといけませんが、お金があれば「お金では買えないこと」に集中できるんです。たとえば家族や友人と心置きなくのんびり過ごしたり、趣味を楽しんだり、夢を実現するために勉強したりといったことに、より多くの時間やエネルギーを使えるようになる。そういう状況をつくれることこそが理想的なお金の使い方・貯め方だと考えています。

阿部:今まで漠然と思っていたことがすごく腑に落ちました!

──最後に、今まさにクオーターライフクライシスに悩んでいる人に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

阿部:いつの世代も別の悩みがあるので、私も偉そうなことは言えないのですが……。

もやもやしている人が1人でも少なくなることに、私の歌が役に立てばいいなと思って歌ってきました。もやもやしているのは、そこに何かしら問題がある証拠。きちんと向き合った人ほど早く抜け出せるし、心も体もタフになると思うんです。自分から出ている心や体のサインを、ちゃんと拾ってあげてくださいね!


阿部 真央 
1990年1月24日生まれ。2009年にアルバム『ふりぃ』でメジャーデビュー。同世代の女性を中心に幅広い層からの支持を得るシンガーソングライター。圧倒的な存在感を放つライブパフォーマンスにも定評がある。2014年に初の日本武道館公演を開催。2019年に10周年ベストアルバム『阿部真央ベスト』、2020年1月に9thアルバム『まだいけます』をリリース。 

大竹 のり子 
株式会社エフピーウーマン代表取締役。ファイナンシャルプランナー(CFPR認定者・1級FP技能士)。金融専門書籍・雑誌の編集者を経て、2001年にファイナンシャルプランナーとして独立。2005年4月、女性のためのお金の総合クリニックとして、株式会社エフピーウーマンを設立。著書・監修書は70冊を超える。最新刊は『老後不安を解消して、未来へ投資する!ライフプランから考える お金の増やし方』(ナツメ社)。講演やテレビなど各メディアへの出演も多く、女性が正しいお金の知識を学ぶことの大切さを伝えている。


※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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