【四十住さくら選手×Shigekix選手 スペシャル対談】壁を乗り越え、挑戦を続けていくための“コツ”とは
スケートボード女子パークの四十住さくら選手と、ブレイキンのShigekix(半井重幸)選手。第一生命に所属する世界のトッププレイヤーふたりによるスペシャル対談が実現しました。おふたりとも2002年3月生まれの同い年。意外な共通点を見つけたり、心に響くホットな話が飛び出したり──目標や夢を叶えるための、思いがけないヒントをもたらしてくれるはずです。
目次
相談はあえてそれほど身近じゃない人に!?
──苦労したり挫折したりした時には、どうやって乗り越えてきましたか?
四十住:私は子どもたちにパワーもらって乗り越えてきたかなぁ。実はスケートボードを始める前、幼稚園や小学校の先生になるのが夢でした。
Shigekix:そうだったんだね。
四十住:とにかく子どもが大好き。大会などで悔しい思いをすることもあるけど、子どもたちから助けてもらうことが結構多くて。最近は次世代の子どもたちと滑る機会もよくあるので、一緒にがんばることで自分も成長できます。
Shigekix:子どもたちからアドバイスを求められたらどうしてる?
四十住:スケートボードの技って「こうやったら乗れる」という答えが1つだけあるわけじゃない。人それぞれのやり方があるし、スタイルもいろいろあるから、「自分の時はこうやって考えてるけど、君のスタイルだったらこんなふうに考えたほうがイメージつくんじゃない?」みたいなかたちでアドバイスしてます。

四十住さくら選手とShigekix選手
Shigekix:なるほど。
四十住:でも、もしかすると恐怖心だけの問題かもしれないので、「一番怖くない方法を探しながら、時間がかかっても納得できて恐怖心に勝てるやり方を自分なりに考えたら」って話してみたりすることも。いくら技を教えてもらっても、自分自身が理解しないとできないから。
Shigekix:そう、僕も自分で考えるっていうことを大事にしていて。どこかで絶対自分で考えないと乗り越えられない壁がある。ただがむしゃらに努力するだけじゃなくて、しっかり考えたうえで努力することが大事。だから相談されても「こうだよ」って答えを提示しすぎないように意識しています。
四十住:うん、私と似てるなぁ(笑)。
Shigekix:あえてそれほど身近じゃない人に相談してみるのも、意外と面白いと思うんですよ。例えば、ネイルサロンや美容院でいつも担当してくれる人とか、からだの施術をしてもらっている先生とか。そういう人たちって、自分の人となりはある程度知ってはいるものの、本当のところはそんなに知らないんです。それがちょうどよくて。
四十住:今、聞いていて、まわりにそういう人いっぱいいるし、よく話しているなって思った。
Shigekix:そういう人が相手だと、自分の中の意外と素直なところをさらけ出して話せたりするし。その人たちって想像以上に気にしてないんですよね。例えば、僕がうまくいかなくて負けてしまったこととか全く気にしてない。プレイヤーの僕を見ているというより、人間としての僕を見ているので。
四十住:うん、わかるわかる。
Shigekix:それくらいの距離感の人から「そうやって挑戦していることがいいと思いますよ」とか、ある意味浅い言葉をかけてもらうことで、「そうだよな」って気付かされるきっかけになりますね。もちろん大事な相談は身内にしますけど、ちょっと頭をリセットしたい時にはそういう人たちに相談するのも面白いかなと。

四十住:そういう人たちって逆に質問くれる人が多いから、それに答えるのが面白いし、「自分ってこんなふうに思っているんだ」と自分自身のこともよくわかる。
Shigekix:確かに。しかも結構、話してくれるタイプだから聞くほうもありがたい。
四十住:うんうん。「やりたいことをやり続けて、常にトップを目指しているって、もうそれ自体がいいじゃん」みたいなことを言ってくれる。
Shigekix:そう、なんかこうハッとするというか。そういう距離感の人はすごくいいですね。
家族の愛で育まれた最高のチーム
──好きなことを長くキープし続けるためのコツを教えてください。
四十住:好きでい続けることじゃないですかね。
Shigekix:あとは効率を求めすぎないことかな。技の習得もそうですけど、「こうやったら最短距離でできる」とか聞いてしまうと、どうしてもそっちばかりに頭がいっちゃうんです。
四十住:そうなってしまった時には「あっ!」と思う。広く広く行きたいですよね。
Shigekix:そう、絶対すぐそういうふうに考えてしまいがち。無駄な寄り道をしている時間が楽しかったりするし、その結果、うまくなることにつながったりする。あまり無駄なものを削ぎ落としすぎた思考になると、楽しくなくなってしまうから。ブレイキンだと「インスピレーションを受ける」ってよく言うんですけど、海外の大会の雰囲気やブレイキンを磨いてきた人たちのコミュニティと触れることで、ダンスが上達することがあります。
競技中のShigekix選手
──好きなことを続けていくにはサポートも大切ですよね。
四十住:そう、私は自分の家族。お母さん、お父さん、私、その3人でそれぞれの考えや意見が常に共有されている。それで、もし何か言いたいことがあると、その都度、和歌山の自宅のリビングで家族会議が開かれます。「ちょっと言いたいことあるし、お父さんも聞いといてほしいんやけど」ってお母さんが言い出すんです。
Shigekix:マジで会議や(笑)。
四十住:会議っていうか、話し合いかな。私だけが目指しているわけじゃなくて、みんなで目指しているからこその会議で、一番よい答えを出すための話し合い。意見は分かれることがあっても結局、最終的に決めるのは私なんだけど。でも、みんながどこで何をしているか、何を考えているかが、この3人だけは絶対にわかっているんです。
Shigekix:すばらしい信頼関係。すごくいいチームだね。

四十住:家族会議で、スケートボードの技ができなかったり大会で負けたりして怒られたことは1回もないんです。なにかで怒られるとすると、それは態度のこと。「ふてくされていたり、イライラしながら練習しているのを見るのは嫌や」と。
Shigekix:うん、いいね。
四十住:東京で金メダルを獲った後のビデオ通話では全員泣いていたし、パリの時は予選最終戦でほかの選手の結果待ちになり、出場できるって決まった時、家でお父さんとお母さんは抱き合ってピョンピョンしてたらしいです。
Shigekix:すばらしい。
四十住:パリで敗退した時は、「さくらが帰ってきたらどうやって声かけよう?」って感じだったらしくて、帰ったら「さあ、京都行くで」とか、もうしっかり予定が組まれていました。
Shigekix:本人よりもしっかり本人をイメージしてるなぁ、いい感じ。
四十住:愛されてるなぁと。ありがたいです。ちなみに東京で金メダルを獲った競技中、お父さんはパチンコしてたんだけど……。
Shigekix:ちがう勝負かけてた!?(笑)
四十住:お父さんが観ているとなぜかこけるの、昔から。それからお父さんはもうライブでは観なくなってしまって。
Shigekix:「オレが観てるとよくない」と……。ジンクスなの?
四十住:そう。逆にお母さんが観ていないとこける(笑)。
競技中の四十住さくら選手
自分と向き合い、自分の夢を語ること
四十住:新しい技があるとすると、それを大会に出すまでに、ブレイキンってどのくらいの期間かかる?
Shigekix:ものによるけれど、1年越しぐらいで出すことが多いかも。
四十住:やっぱりそのくらいかかるんだ。
Shigekix:自分の踊り自体が結構、クオリティをストロングポイントにしている部分もあって。
四十住:一緒だね。
Shigekix:ほかの動きや全体の流れの中で、そこだけ一気にクオリティが落ちたり、失敗するリスクが上がってしまってはいけないので、完全に習得したと思えるまでは出さないね。「いつでもいける」みたいな状態にしてから、ようやく出すことが多い。
四十住:そこも一緒(笑)。

──何かに挑戦しようとしている人たちに向けて、背中を押す応援メッセージを。
四十住:まわりと比べず、自分と向き合って。
Shigekix:僕は、大小関係なく自分自身が情熱を持って挑める目標や夢を大事にしてほしい。さらにそれをたくさんの人に話して、自分の夢をみんなの夢にしてほしいなと思います。
──ちなみに競技以外で、なにか挑戦してみたいことは?
四十住:今、料理をがんばっています。遠征に行った時には、好き嫌いも多いので、いつも作ってもらっているんですよ、お母さんに。でも、お母さんもいつまで来れるかわからないから、その時のために自分で作れるようになりたいと思って。
Shigekix:すばらしい!
四十住:でも、料理作るんだけど、まだお父さんは絶対に食べてくれない(笑)。

四十住さくら
2002年3月15日生まれ。兄の影響で小学6年生からスケートボードを始め、2018年に開催された 「全日本選手権」「アジア大会」「世界選手権」で第1位に輝き、期待の若手として注目を浴びる。世界ランキング2位で挑んだ東京オリンピックでは、 スケートボード女子パーク部門にて見事金メダルを獲得。初代女王に。
Shigekix(半井重幸)
2002年3月11日生まれ。7歳でBreakingを始める。2018年ブエノスアイレスユースオリンピックにて銅メダルを獲得。2020年Red Bull BC One World Finalにて世界最年少で優勝。2021,2022,2023年度JDSF全日本ブレイキン選手権を3連覇。2023年アジア競技会にて金メダルを獲得し、2024年パリオリンピック出場を内定。2024年パリオリンピックでは開会式、閉会式ともに旗手を務めた。これまでに50回以上の国際大会での優勝経験を誇り名実共に日本代表するブレイクダンサーである。