保険料控除をシミュレーション!ざっくりわかる個人年金保険の税制優遇。 保険料控除をシミュレーション!ざっくりわかる個人年金保険の税制優遇。

保険料控除をシミュレーション!ざっくりわかる個人年金保険の税制優遇。

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※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」、生命保険料を「保険料」と記載している部分があります。
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。

40代~50代は所得が増える世代ではありますが、所得の増加に応じて税率が上がる所得税・住民税の負担も増えてしまいます。リタイア後に毎月一定の給付金を受け取ることができる個人年金保険には「個人年金保険料控除」という所得控除があり、税制優遇を受けつつ老後に備えることが可能となります。個人年金保険料控除でどのくらい税制優遇が受けられるのか、税理士としてさまざまな税務相談を受けていらっしゃる渋田貴正さんに伺いました。

目次

個人年金保険料控除額とは。

個人年金保険料控除額とは。

個人年金保険料控除は、支払った生命保険料に応じて受けられる生命保険料控除の枠の1つで、年間最大6万8,000円(※1)までが所得から控除されるしくみです。一定の要件を満たし「個人年金保険料税制適格特約」が付いた保険商品を契約することによって、個人年金保険料控除を受けることができます。

※1 2012年1月1日以降に締結した保険契約等の場合。所得税最大4万円と住民税最大2万8,000円の合計。

生命保険料控除の限度額。

生命保険料控除には「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つの控除枠があり、それぞれ最大で年間4万円、合計で最大年間12万円が所得控除されます。住民税に関してはそれぞれ2万8,000円まで所得控除が可能ですが、3枠の合計が7万円を超えることはできません。

●控除枠別 生命保険料控除の限度額
控除枠 所得税 住民税
一般生命保険料控除 4万円 2万8,000円
介護医療保険料控除 4万円 2万8,000円
個人年金保険料控除 4万円 2万8,000円
合計(最大) 12万円 7万円

取材内容をもとにミラシル編集部にて作成

保険料控除に必須の「個人年金保険料税制適格特約」。

一般生命保険料控除とは別に個人年金保険料控除を受けるには、個人年金保険の契約に「個人年金保険料税制適格特約」を付加する必要があります。この特約がないと一般生命保険料控除枠の対象となり、個人年金保険料の控除枠を活用できません。

また、特約を付加するためには以下4つの条件を満たす必要があります。

  • 年金受取人が、契約者またはその配偶者のいずれかであること。
  • 年金受取人は、被保険者と同一人であること。
  • 保険料払込期間が、10年以上であること(一時払いは対象外)。
  • 年金の種類が確定年金や有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降で、かつ年金受取期間が10年以上であること。

個人年金保険料控除額と税負担の軽減額の計算方法。

個人年金保険料控除額と税負担の軽減額の計算方法。

それでは、個人年金保険料控除額を計算しながら、実際にどのくらい税金が軽減されるのかを見ていきましょう。所得税・住民税は個人の所得をもとに計算を行うため、所得によって税金の額が異なります。今回は、以下の条件で計算していきます。

【計算の条件】

  • 職業:会社員
  • 年収:470万円(40歳~44歳男女の平均年収)
  • 基礎控除額:48万円
  • 社会保険料控除額:68万円
  • 個人年金保険支払額(年間):12万円(月1万円)

 

参考:国税庁「民間給与実態統計調査(令和2年分)」(2021年)
参考:国税庁「No.1199 基礎控除」
参考:全国健康保険協会「令和4年度保険料額表 東京」

STEP1:個人年金保険料控除額を計算する。

個人年金保険料の控除額は年間で支払う保険料によって異なり、1月1日から12月31日までに払い込んだ保険料(年間払込保険料)をもとに計算を行います。

所得税・住民税それぞれの年間払込保険料と所得からの控除額は以下のとおりです。

●所得税
年間払込保険料 控除額
2万円まで 払込保険料全額
2万円超から4万円まで 払込保険料×1/2+1万円
4万円超から8万円まで 払込保険料×1/4+2万円
8万円超 一律4万円
●住民税
年間払込保険料 控除額
1万2,000円まで 払込保険料全額
1万2,000円超から3万2,000円まで 払込保険料×1/2+6,000円
3万2,000円超から5万6,000円まで 払込保険料×1/4+1万4,000円
5万6,000円超 一律2万8,000円

取材内容をもとにミラシル編集部にて作成

今回、契約者の年間の個人年金保険料を12万円に設定しています。したがって、所得税では8万円超に該当し控除額は4万円、住民税は5万6,000円超に該当し控除額は2万8,000円になります。

【計算結果1】個人年金保険料控除額

所得税:4万円
住民税:2万8,000円

STEP2:課税対象となる「課税所得」を算出する。

次に、課税される所得金額(課税所得)を計算します。課税所得とは、所得税をはじめ、さまざまな税金の計算に用いられる金額です。

課税所得は、まず年収から給与所得控除額を差し引くことで給与所得を算出し、その給与所得からさらに基礎控除額・社会保険料控除額・個人年金保険料控除額などを差し引くことで算出します。

1 給与所得を計算する。

給与所得者(会社員・公務員など、企業・組織に属して働く人)には「給与所得控除」が設けられており、2020年分以降は以下の速算表のとおりです。

●給与所得控除額速算表
収入金額 給与所得控除額
162万5,000円まで 55万円
162万5,000円超から180万円まで 収入金額×40%−10万円
180万円超から360万円まで 収入金額×30%+8万円
360万円超から660万円まで 収入金額×20%+44万円
660万円超から850万円まで 収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

参考:国税庁「No.1410 給与所得控除(令和2年分以降)」をもとにミラシル編集部にて作成

年収470万円の方は「360万円超から660万円まで」の部分に該当するので、

年収(470万円)×20%+44万円=給与所得控除額(138万円)
年収(470万円)−給与所得控除額(138万円)=給与所得(332万円)

給与所得控除額は138万円となり、年収から差し引いた給与所得は332万円です。

2 課税所得を計算する。

続いて、給与所得から基礎控除額、社会保険料控除額(健康保険・厚生年金・介護保険料等)、および個人年金保険料控除額を差し引きます。ここでは、470万円の年収に応じて基礎控除額を48万円、社会保険料控除額を68万円とします。個人年金保険料控除額については、前述した4万円を適用します。

控除額の合計は、48万円+68万円+4万円=120万円で、これを給与所得から差し引くと、次のようになります。

給与所得(332万円)−控除額合計(120万円)=課税所得額(212万円)

【計算結果2】課税所得額

212万円

なお、個人年金保険料控除を受けない場合は、控除額の4万円が引かれないため、課税所得は216万円となります。

STEP3:「所得税」の負担軽減額を計算する。

所得税は所得により税率が上がる累進課税なので、課税所得が上がると税率も上がっていきます。課税所得に税率をかけ、控除額を引いて計算を行います。

●所得税の速算表
課税所得額 税率 控除額
1,000円から194万9,000円まで 5% 0円  
195万円から329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円から694万9,000円まで 20% 42万7,500円
695万円から899万9,000円まで 23% 63万6,000円
900万円から1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円
1,800万円から3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円  

※ 課税所得額は1,000円未満の端数金額を切り捨てた金額。
※ このほかに令和19年までは復興特別所得税が課税されるが、負担軽減額の計算に影響がないため割愛。
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」をもとにミラシル編集部にて作成

課税所得額が212万円の場合、所得税の税率は10%となり、控除額は9万7,500円です。

課税所得(212万円)×税率(10%)−9万7,500円=所得税額(11万4,500円)
※ 復興特別所得税は含まない

個人年金保険料控除を受けない場合には、控除額分の4万円を課税所得にプラスした状態で計算します。

課税所得(216万円)×税率(10%)−9万7,500円=所得税額(11万8,500円)
※ 復興特別所得税は含まない

したがって、個人年金保険料控除を受ける場合、所得税額が4,000円優遇されるという計算になります。

【計算結果3】所得税負担の軽減額

4,000円

STEP4:「住民税」の負担軽減額を計算する。

STEP1で見たように、今回の例では住民税に対する個人年金保険料控除額は2万8,000円です。また、住民税の税率は所得にかかわらず一律で10%です。

個人年金保険料控除額(2万8,000円)×税率(10%)=住民税負担の軽減額(2,800円)

【計算結果4】住民税負担の軽減額

2,800円

STEP5:年間の税負担軽減額を計算する。

所得税では4,000円、住民税では2,800円が軽減され、合計すると年間で6,800円の税制優遇が受けられる結果となりました。

「年間で6,800円」と聞くと「少ないのでは?」と思う方がいるかもしれませんが、個人年金保険料控除の要件の1つに「保険料払込期間が10年以上であること」があります。最低でも10年間は保険料を支払いますので、「6,800円×10年」で7万円近くの税金が軽減されるという試算となります。

ただし、税金の軽減額は所得によって異なるため、シミュレーションと実際の結果に差が出る可能性があります。

個人年金保険料控除による税制優遇のシミュレーション。

個人年金保険料控除による税制優遇のシミュレーション。

しくみがわかったところで、年収や払込保険料によって税制優遇にどのくらいの違いが出るのか、実際のシミュレーションで比較してみましょう。年収は2パターンで、それぞれ年間払込保険料12万円・6万円・0円(個人年金保険に加入していない)で試算しました。試算にあたっては、健康保険・厚生年金保険は全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入していることを前提としています。

会社員Aさん、年収518万円の場合。

50代後半の平均年収518万円(※2)でのシミュレーション(概算)です。年間払込保険料12万円(月々1万円)では年間6,800円、年間払込保険料6万円(月々5,000円)では年間6,300円の税制優遇となりました。

※2 55歳〜59歳の平均年収

年間払込保険料 個人年金保険料控除額 軽減額(税制優遇)
所得税 住民税 所得税軽減額 住民税軽減額 軽減額合計
12万円 4万円 2万8,000円 4,000円 2,800円 6,800円
6万円 3万5,000円 2万8,000円 3,500円 2,800円 6,300円
0円 0円 0円 0円 0円 0円

※ 基礎控除額48万円、社会保険料控除額79万円で概算。

会社員Bさん、年収1,000万円の場合。

続いて、年収1,000万円ではどうでしょうか。所得税は累進課税となるため、この場合の所得税は20%です。個人年金保険料控除による税金軽減額も比例して大きくなります。年間払込保険料12万円(月々1万円)では年間1万800円、年間払込保険料6万円(月々5,000円)では年間9,800円の税制優遇となりました。

年間払込保険料 個人年金保険料控除額 軽減額(税制優遇)
所得税 住民税 所得税軽減額 住民税軽減額 軽減額合計
12万円 4万円 2万8,000円 8,000円 2,800円 1万800円
6万円 3万5,000円 2万8,000円 7,000円 2,800円 9,800円
0円 0円 0円 0円 0円 0円

※ 基礎控除額48万円、社会保険料控除額128万円で概算。

【まとめ】個人年金保険料控除は個人年金保険の魅力の1つ。

個人年金保険料控除は生命保険料控除の1枠として設けられており、利用しやすいしくみです。一見すると大きな税制優遇には見えないかもしれませんが、10年間に換算すると数万円以上の税制優遇を受けられるものです。ただ、あくまで概算ですので自身の収入に応じた軽減額を知りたい方は専門家に相談してみることをおすすめします。この記事を参考に、老後に備えながら税負担を軽減できる個人年金保険について検討してみてはいかがでしょうか。

写真/Getty Images、PIXTA イラスト/オオカミタホ


渋田 貴正
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、相続登記をはじめ相続関係手続きや、会社の設立など法人関係の登記に特化している司法書士事務所V-Spiritsの代表。また、V-Spiritsグループの税理士として各種税務相談にも対応している。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※ 税務の取り扱いについては、2022年8月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。

(登)C22N0170(2022.9.14)
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