老後のお金を貯めるだけ?個人年金保険を教育資金などに使うコツ。
※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※文章表現の都合上、生命保険を「保険」、生命保険料を「保険料」と記載している部分があります。
「個人年金保険」と聞いて、「年金なの?保険なの?」と疑問に思う人や、「年金ってことは老後のための保険だよね。私は公的年金だけで十分」と思う人もいるでしょう。ファイナンシャル・プランナーの豊田眞弓さんは、「個人年金保険は、老後の資金準備以外にも使うことができる」と言います。20代~30代が個人年金保険を活用する方法を聞きました。
目次
個人年金保険とは?
個人年金保険とは、保険料を払い続けることで将来必要な資金を準備することができる貯蓄タイプの保険です。契約時に定めた年齢から年金形式で一定額を受け取れるほか、商品によっては、一括でまとまった金額を受け取ることもできます。年金の受取開始前に被保険者が死亡すると、それまでに払い込んだ保険料相当額が死亡給付金として支払われます。
個人年金保険の多くは、加入できる年齢の幅が広く、年金の受取開始年齢も商品や契約内容によって異なります。受取開始年齢は、60歳・65歳・70歳などが多いですが、50代で受け取れる商品もあります。さらに、年金を受け取れる期間や受取開始前の死亡保障などに応じて、いくつかのタイプがあります。
確定年金
確定年金は、5年・10年など契約で定められた一定期間、年金が受け取れるタイプの個人年金保険です。年金の受取期間中に被保険者が死亡した場合は、相続人が残りの受取期間にかかる年金相当額を一時金または年金として受け取ることができます。
有期年金
有期年金も、確定年金と同様に年金の受取期間が契約で定められています。確定年金との違いは、被保険者が年金の受取期間中に死亡すると、その時点で年金の支払いが終了すること。ただし、商品によっては保証期間が定められ、被保険者の死亡が保証期間中であれば、相続人に残りの年金が支払われるものもあります。
保証期間付終身年金
保証期間付終身年金は、保証期間が定められた終身年金です。終身年金とは、被保険者が生存している間は年金を受け取れるタイプの個人年金保険で、被保険者が死亡すると年金の支払いは終了し、その権利が相続人に引き継がれることはありません。
ただし、保証期間付終身年金になると、被保険者の死亡が保証期間中であれば、残りの保証期間に応じて相続人に年金が支払われます。保険料は終身年金より高くなる場合がほとんどです。
トンチン年金
トンチン年金とは、年金受取開始前の保障など低く抑えることで受け取れる年金額を大きくした商品です。長生きに備えた内容のため、年金受取開始前の死亡は保障対象とはならない、年金受取開始前の解約返還金は低いといった側面もあります。メリット・デメリットを踏まえて検討しましょう。
ちなみに、「トンチン」の名称は、終身年金制度の一種を考案したイタリアの銀行家、ロレンツォ・トンティに由来します。
個人年金保険を老後の資金準備以外に使う。
個人年金保険には、保険料の払込期間や年金の受取開始年齢、受取期間などを柔軟に設定できる商品もあります。そのため、老後のためだけに限らず、ライフプランに応じた資金を準備する1つの方法にもなります。
豊田さんも、「住宅購入や子どもの進学など、まとまったお金が必要になる時期に向けて、時間をかけて無理なく資金を準備していくことができる」と言います。以下に、個人年金保険の活用例を紹介してもらいました。
開業やリカレント教育などの資金に。
10年後、20年後の将来を見すえて、個人年金保険を活用することもできるでしょう。契約者・被保険者・年金受取人を自分にして、たとえば、開業や独立、社会に出てからの学びなおし(リカレント教育)などの資金に充てるケースもあります。
なお、社会人が学びなおしを行う場合は、資格取得やスキルアップにつながる指定講座などを修了すると、学費の一部が補助される「教育訓練給付制度」も活用するとよいでしょう。
子どもの教育資金に。
親が契約者・年金受取人となり、子どもを被保険者にして個人年金保険に加入するケースです。教育費などがかさむ時期を年金の受取期間に設定することで、年金を、学費や成人のお祝いなどの費用に充てることができます。
祖父母から孫への生前贈与として。
「今持っているお金を孫の将来に役立てたい」という祖父母であれば、現金を孫に贈与し、孫が契約者・被保険者・受取人となって、個人年金保険に加入するという方法もあります。現金を贈与する際の贈与税には年110万円の基礎控除があります(暦年課税の場合)が、贈与契約書を作成するなどの条件もあるため注意してください。
また、契約者と年金受取人が異なる場合は、年金が契約者から受取人への贈与となり贈与税がかかります。契約者と年金受取人が同じ場合は、年金を受け取る際に所得税がかかります。契約者が未成年の場合、親権者による契約の手続きが必要です。
親の介護費用に備える。
親が高齢になって要介護状態になった場合、何かと費用がかかります。「親の介護は親のお金でまかなうことが前提です」と豊田さんは言います。
そこで、親に、老後を見すえて個人年金保険に加入してもらうことも一案です。介護費用の備えになるだけでなく、親の老後生活にもゆとりができるでしょう。
なお、契約者が親、年金受取人が子どもの場合は贈与税が、契約者と年金受取人が同一の場合は年金を受け取る際に所得税がかかります。
個人年金保険を活用する際の注意点。
昨今の低金利を受け、今は貯蓄型保険の予定利率(契約時に確定する運用利率。保険料算出上は割引率)が非常に低くなっています。利率が固定されるタイプの個人年金保険は、長期固定金利商品とみることができ、金利上昇期には不利になる可能性があります。また、豊田さんは、「物価が上昇するとお金の価値は相対的に下がるため、契約時に受取総額が決まっている確定年金はインフレリスクをはらんでいる」とも言います。
なお、中途解約した場合の解約返還金は、それまでに支払った保険料総額を下回る可能性があります。保険会社によりますが、加入から10年未満で解約する場合は解約控除(解約で生じる手数料)が発生することがあり、解約返還金は支払った保険料の累計額を下回るケースもあります。
保険料控除を上手に活用しよう。
個人年金保険の保険料は、以下の条件を満たせば、生命保険料控除制度における個人年金保険料控除の対象となり、所得税や住民税を軽減することができます。ただし、この条件により、60歳未満での受取開始や子どもを被保険者にして教育資金を想定した利用は、控除の対象外となるため注意してください。
1) 年金受取人が契約者またはその配偶者のいずれかであること。
2) 年金受取人が被保険者と同一であること。
3) 保険料払込期間が10年以上であること。
4) 年金の種類が確定年金か有期年金の場合、年金の受取開始が60歳以降、かつ年金受取期間が10年以上であること。
5)以上4つの条件を満たし、かつ「個人年金保険料税制適格特約」をつける。
個人年金保険「新制度」(2012年以降に加入した場合)の保険料と控除額は下表のとおりです。
個人年金保険の特徴を生かして、明るい将来を。
前述のとおり、個人年金保険は老後資金以外にも、10年後、20年後の将来に向けて少しずつ資金を積み上げていく手段として利用することができます。保険料控除の対象や条件などを確認し、上手に使いながら、明るい将来に向けて資産形成を行っていきましょう。
写真/Getty Images イラスト/こつじゆい
豊田 眞弓
FPラウンジ代表。経営誌やマネー誌のライターを経て、1994年より独立系ファイナンシャルプランナーとして活動。個人相談や講演のほか、ウェブサイト・雑誌などに多数のマネーコラムを寄稿。「子どもマネー総合研究会」理事のほか、「親の介護・相続と自分の老後に備える.com」を主宰。亜細亜大学などで非常勤講師も務める。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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