在宅勤務は痔につながる?知っておきたい「痔」の話。
※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」、生命保険料を「保険料」と記載している部分があります。
在宅ワークが増え、オフィスで働いていたときよりも座りっぱなしの状態が長く続いている人も多いのではないでしょうか。実は、座りっぱなしだけでなく、トイレにこもる、不健康な食生活、深酒などの習慣には、痔になるリスクが潜んでいます。「最近たまに出血するけど、痛くないからいいや」と思っていたら、実は痔だったということも……。
なかなか相談しにくい痔の症状や治療・手術・入院について、JCHO東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター部長の岡本欣也先生に、わかりやすく教えてもらいました。
目次
- 痔って具体的にはどんな病気?
- いぼ痔(痔核)
- 切れ痔(裂肛)
- 痔ろう
- 痔の主な原因と対処法。
- 痔がひどくなったらどんな治療をするの?
- 痔は比較的短期の入院が多いので一時金タイプの保険がぴったり。
- 【まとめ】気になるときは恥ずかしがらずに早めの受診を。
痔って具体的にはどんな病気?
排便のときに痛かったり出血したりしても、「そのうち治るだろう」と放っておかれがちな痔。人に話しにくいお尻の話題だけに、どんな病気かしっかり理解している人は少ないかもしれません。痔とは、どんな病気なのでしょうか。
岡本先生によると「痔は、大きく分けると、いぼ痔(痔核)・切れ痔(裂肛)・痔ろうという3つの種類があり、腫れる・切れる・化膿するなど、お尻の症状によって病名が変わります」とのこと。
それぞれどんな特徴があるのか、症状や原因について詳しくみていきましょう。
いぼ痔(痔核)
肛門の周辺に、いぼのような腫れ(痔核)ができます。外から見える肛門付近にできるものを外痔核、内部にある直腸側にできるものを内痔核といいます。
「肛門付近の皮膚は痛みを感じますが、粘膜でできている直腸は痛みを感じません。外痔核は痛みで、内痔核は出血して初めて気づいて来院される方が多いです」(岡本先生)
原因は?
肛門のまわりには肛門括約筋と、血管が集まった静脈叢[そう]と呼ばれるクッションがありますが、このクッションが緩むと便秘や下痢が増えます。繰り返す便秘や下痢で肛門や直腸に負荷がかかると、クッション部分がうっ血して腫れ、いぼ(痔核)ができます。
切れ痔(裂肛)
外から見える肛門付近の皮膚が裂け、出血します。肛門付近は神経が過敏なので、強い痛みを感じます。たいていの場合、切れても傷口は自然に塞がりますが、血流が乏しい肛門の背中側(尾骨側)にできた裂傷は治りにくい傾向があります。
肛門が切れて出血することが何度も重なると、傷口が深くなり炎症をもつ潰瘍になっていきます。そうなるとその部分の筋肉が硬く狭くなり、さらに便を出しにくくなるという悪循環に陥ります。
原因は?
排便を我慢することにより、水分が少なく硬くなった便を出そうとして、皮膚が裂けます。朝や仕事中など、便意を感じてもトイレに行きにくい環境にある場合、リスクが高まります。
痔ろう
お尻にできた小さな穴から膿が出ます。腫れや痛み、発熱を伴います。痔ろうは直腸と肛門周囲の皮膚の間にトンネルができる病気です。肛門付近にある肛門陰窩(いんか)というくぼみに便が入り込むと、便内に存在する大腸菌などの細菌に感染することがあります。その部分が化膿(肛門周囲膿瘍)し、慢性化すると皮膚側に向けたトンネルができて膿が出てきます。
原因は?
痔ろうは肛門付近の感染症といえます。寝不足や栄養不足などで体の抵抗力が低下し、下痢を起こしたり腸内環境が悪化したりすると便内の細菌に感染しやすくなります。
痔の主な原因と対処法。
代表的な3つの痔についてみてきましたが、次はどの痔にも共通する原因と対処法を探ってみましょう。毎日のちょっとした心がけで、つらい痔を予防できます。
座りっぱなし・立ちっぱなし。
座りっぱなしの状態は肛門付近の血流を阻害し、痔のリスクを高めます。また、ずっと立っている仕事も同様です。
「パソコンに向かっているとつい時間が経つのを忘れ、座りっぱなしになりがちなので、定期的に立ち上がりストレッチをして、骨盤まわりのうっ血を解消することが大事です。立っている姿勢が多い人も同様で、腰まわりを動かすストレッチを取り入れましょう」(岡本先生)
食生活
食生活と排便は、密接な関係をもっています。深酒は腸内環境を悪化させ、下痢を引き起こし直腸や肛門を傷つけ、痔ろうの原因になります。また、食事をスナックやお菓子で簡単に済ませてしまう人は便秘になりやすく、切れ痔のリスクが高まります。腸を刺激する香辛料なども、なるべく控えましょう。
「痔にならないためには、食物繊維の多い健康的な食事がおすすめです。朝食をしっかり摂ることも大切です。誰しも朝は忙しいものですが、できればコップ1杯の水を飲むことで便意を促し、焦らずに排便できる時間を設けましょう」(岡本先生)
肛門まわりが清潔でない。
肛門付近が不潔になっていると、痔のリスクが高まります。
肛門付近は常に清潔にすることが大切です。毎日お風呂に入る、下着は清潔なものを身に着ける、排便後は肛門をキレイにすることを心がけましょう。
一方、温水洗浄便座などで過度にお尻を洗ってしまうと、別のお尻のトラブルを招いてしまうこともあるので、洗いすぎにも注意が必要です。
冷え
体を冷やすことも、痔の原因になります。体が冷えると、お尻まわりも冷えて肛門付近の血行を悪化させてしまいます。
「冷たく硬いところに長時間座らない、お尻まわりを冷やさない服装を心がけましょう。ゆったりとしたお風呂タイムもおすすめです。痔に悩む人は、湯船で温まると痛みが軽減することが多いです」(岡本先生)
長時間のトイレ。
長時間便座に座っていたり、便を出そうと強くいきんだりすると、肛門まわりをうっ血させ、痔のリスクを高めます。便秘でなかなか出ないからといって出るまでがんばるのはおすすめできません。
「トイレの時間は3分以内が目安です。一度のいきみで出なければ、次の便意で出すようにしましょう」(岡本先生)
便意を我慢する。
トイレに行きたいときに我慢することを繰り返すと、腸内に便があっても便意を感じにくくなってしまいます。そうすると便秘で便が硬くなり、切れ痔になりやすくなります。
便意にしたがって排便するようにしましょう。
腹筋への急な力。
重いものを持ち上げるなど、止まった姿勢から急に腹筋に力がかかると、痔を引き起こすことがあります。
「急に腹筋に力を入れる動作が多い人は、痔になりやすいということを知っておくことが大切です。肛門付近に異常を感じたら早めに専門医を受診するようにしましょう」(岡本先生)
肛門まわりに負担をかけない生活習慣を。
痔にならないために共通して言えるのは、肛門まわりに負担をかけないことです。痔を引き起こす便秘や下痢を起こさない食生活をはじめとした生活習慣が、一見遠まわりのようでもっとも近道だといえます。また、便秘や下痢にならない、ストレスのない毎日を送ることも大切です。
痔がひどくなったらどんな治療をするの?
痔がひどくなったら、医療機関ではどんな治療をするのでしょうか。岡本先生によると「痔の治療は生活習慣の改善と薬を使った保存療法が基本となりますが、症状の改善がみられなかったり、症状がひどくなったりすると、手術が必要となる場合もあります」とのこと。以下では、3つの痔の手術や入院についてみていきましょう。
いぼ痔の治療。
手術
症状が出血のみ、または、いぼが肛門の外に出ても自然に戻る場合は、軟膏や坐剤を使う保存療法ですが、それよりも症状がひどくなると腰椎麻酔のうえ、いぼに注射、もしくはいぼを切除する手術になります。
入院期間
10日間~14日間程度です。2泊3日などの短期入院を希望する患者さんもいますが、術後の排便時に大量出血を起こし失神することもあるため、入院が安心です。
切れ痔の治療。
手術
まずは生活習慣の改善や軟膏を使った治療となります。切れ痔が悪化して患部の筋肉が硬く狭くなっている場合は、内肛門括約筋を少し切り取って肛門を平均的な大きさに広げる手術を行います。このほかにも潰瘍やポリープの状態によって、さまざまな手術があります。
入院期間
3日間~7日間程度です。
痔ろうの治療。
手術
基本的には手術が必要になります。痔ろうができている箇所を切除します。痔ろうの状態によって、手術の方法が選択されます。
入院期間
痔ろうが浅いもので5日間~7日間程度、深いもので7日間~14日間程度です。
痔は比較的短期の入院が多いので一時金タイプの保険がぴったり。
ここまで、岡本先生に痔について詳しく解説いただいたとおり、痔の入院・手術は長くても2週間程度です。
手術することになったとしても日帰り手術や、比較的短期間の入院で済みますが、その間は仕事ができないだけでなく、医療機関までの交通費や入院に必要なものの購入など、意外に出費がかさむものです。
入院の際に給付される一時金タイプの保険なら、急な入院にも対応でき、入院が1日であってもまとまった金額が給付されるため、大きな安心材料となるかもしれません。
【まとめ】気になるときは恥ずかしがらずに早めの受診を。
痔も早期発見・早期治療が大切ですが、おおっぴらに言えないだけに放置して悪化させてしまう人が少なくないようです。岡本先生によれば、「痔で医療機関を受診する際は、大腸や肛門の専門医が安心。痔は手術後に大量出血することがあるため、いざというときにも対応できる入院施設を備えた医療機関がおすすめ」とのことです。
肛門まわりに負担をかけない生活習慣を意識すると同時に、おかしいなと感じたら早めに医療機関を受診することで、お尻をいつまでも健康に保ちたいですね。
写真/Getty Images イラスト/tent
岡本 欣也
JCHO東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター部長。日本大腸肛門病学会理事、指導医。日本臨床肛門病学会評議員。日本外科学会専門医。専門は、肛門疾患、大腸がん、炎症性腸疾患、直腸脱、腹腔鏡下手術。多数の論文発表があるほか、学会等でも数多くの講演を行っている。Best Doctors in Japan(2020-2021)に選出。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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