個人年金保険とは?40代から考える賢い老後資金の備え方
※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」、生命保険料を「保険料」と記載している部分があります。
子どもに手がかからなくなり、ライフプランにも見通しがついてくる年代――それが40代ではないでしょうか。それだけに、本格的に老後について考えはじめるにはよいタイミングです。老後資金の備え方の1つとして、「個人年金保険」があります。公的機関で金融や女性活躍促進についての講演を行うほか、お金の分野で多くの著書・監修書をもつファイナンシャルプランナーの大竹のり子さんに、個人年金保険を活用した40代からの老後資金の備え方についてお話を伺いました。
目次
個人年金保険とは?
平均寿命が年々延びているために、老後はますます長くなる可能性があり、「長生きリスク」という言葉も見かけるようになってきました。すこやかな老後のためにも、それぞれが自分の希望するライフスタイルにあわせた老後資金を備えたいものです。
老後という長い年月をカバーする資金は簡単にたくわえられるものではないため、早いうちから計画的に用意していく努力が必要です。とはいえ、現在の楽しみを我慢してまで老後資金を貯める必要はありません。今を楽しみながら並行して老後のことを考えていくのがよいと思います。
日本には公的年金や企業年金の制度がありますが、受給できる金額は人それぞれ異なります。そして老後の生活費も人それぞれ違います。ご自身のケースで考えて、こうした公的年金だけでは不安、ということであれば、足りない部分を自分で確保しなければいけません。
計画的に老後資金をつくる方法の1つとして、民間の個人年金保険があります。保険料を払い込むことで、一定の年齢になったときに年金形式で保険金が受け取れます。
参考:厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-図表1-2-1 平均寿命の推移」
国民年金との違い。
公的年金のうち、「国民年金」は、国内に住む20歳以上60歳未満の人が加入を義務付けられている年金です。これに対し、「個人年金保険」は保険会社が扱う保険商品の1つであり、加入は任意、受け取る年金の金額や期間なども、加入時の契約によってさまざまです。
参考:日本年金機構「国民年金はどのような人が加入するのですか。」
個人年金保険の種類。
個人年金保険は、商品によっていろいろなタイプがありますが、受取期間については大きく3種類に分けられます。商品ごとに月々の年金の受取金額や受け取れる期間が選べ、保険料も変わってきます。
確定年金
年金をあらかじめ決められた期間受け取れる。受取期間は10年、15年などと決まっていることがほとんど。年金受取期間中に被保険者が死亡した場合でも、相続人が残りの受取期間の年金相当額を一時金または年金として受け取ることが可能。
有期年金
確定年金同様、10年、15年など決められた一定期間に年金を受け取れる。被保険者が年金受取期間中に死亡したら、その時点で年金の支払いは終了し、相続人は残額を受け取ることができない(一部の有期年金には、設定された保証期間中に被保険者が死亡した場合、相続人に年金が支払われるものもあり)。
終身年金
被保険者が生存しているあいだは年金が受け取れる。年金受取期間中に被保険者が死亡すると、年金の受け取りは終了し、相続人が引き続き受け取ることはできない(設定された保証期間中に被保険者が死亡した場合、相続人に年金が支払われるものもあり)。
保険料の払い込み方法。
保険料の払い込み方法には、保険会社によって異なりますが、毎月決まった保険料を払う「月払い」のほかに、契約時に保険料をまとめて払う「一時払い」、年1回所定の期間内に保険料を払う「年一括払い」などがあります。
個人年金保険のメリット・デメリット。
個人年金保険料の控除。
個人年金保険に加入するメリットはいくつかあります。まず、預貯金などに比べて、明確な目的をもって貯めやすいということ。保険料を月々払い込んでいく場合、口座振替にしておけば、手間をかけることなく払えるので便利です。また「個人年金保険」という名称に象徴されるように、一度にまとまった保険金を受け取るのではなく、年金形式で毎年受け取れるというのも魅力です。
税制の優遇もあります。所得税・住民税の生命保険料控除には3つの枠があるのですが、その1つとして個人年金保険料の控除枠があります。個人年金保険に入っていないと、この控除枠を使わないままになりますが、加入することで個人年金保険料の控除枠も活用することができます。
参考:国税庁「No.1140 生命保険料控除 > 生命保険料控除の概要」
ただし、個人年金保険料控除が適用になる商品には条件があります。また、控除金額には上限があるほか、保険料を一時払いにした場合、個人年金保険料の控除枠ではなく、一般生命保険料の枠を使うことになります。一方で、一般生命保険料の控除枠に該当する生命保険に入っていない場合、個人年金保険を一時払いすることでその枠を活用し、さらに別の個人年金保険に月払いで加入することで個人年金保険料の控除枠を活用するということもできます。
参考:
・国税庁「No.1140 生命保険料控除 > 生命保険料控除額の金額」
・国税庁「No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等 > 3 対象となる個人年金保険契約等」
途中解約をした場合、リスクがある。
メリットの多い個人年金保険ですが、もちろんデメリットもあります。まず、途中解約した場合、解約返戻金額が払い込んだ保険料の総額を下回る可能性があります。また、有期年金の場合、年金の受取期間中に亡くなった場合、年金の受取金額の総額が払い込んだ保険料の総額を下回る場合も出てきます。
個人年金保険は40代からの資産形成に向いている?
老後資金としての個人年金保険は、早くはじめることがおすすめではありますが、教育費の準備や住宅ローンの返済が落ち着いてライフプランが確立した40代からはじめても遅くはありません。
40代はまだまだ仕事も家庭も忙しい世代ですが、保険料が銀行口座から自動で引き落とされる設定にしておけば、毎月決まった額を定期的に払い込んで積み立てられるため、管理がラクと言えます。手間をかけずに老後資金の準備ができます。
個人年金保険を選ぶ際のチェックポイント。
個人年金保険への加入を検討する場合に着目したい、いくつかのチェックポイントをご紹介します。
払込期間と返還率。
個人年金保険には、年金の受け取りを開始する前に、亡くなった場合の死亡保障がついているものといないものがあります。まず、年金を受け取る前にどちらのタイプなのかを確認しましょう。そのうえで、年金を受け取れる期間や受け取れる年金額、そして毎月の保険料などのバランスをみて、ご自身に合うものを検討します。
保険料の払い込み方法や、払い込みをはじめる時期によっては、年金の受け取りを開始する時期が想定していたより遅くなってしまうこともあるので注意が必要です。保険料の払込期間については、定年までというのが1つの目安になるでしょう。
運用方法
確定年金保険の場合には、あらかじめ受取金額が決まっているため、払い込む保険料の総額に対していくらの年金が受け取れるのか、「返還率」をしっかりチェックしましょう。
個人年金保険を含めて保険というものはすべて、それぞれの商品によってしくみが違うもの。「保険に入っておけば安心」と思わず、きちんとしくみを知ったうえで加入することが大切です。
まとめ
保険の加入を検討する際は、インターネットなどで基礎知識を得たうえで、それぞれの商品の詳細について資料をしっかり読み込むことをおすすめします。窓口などで相談する場合も、自分にとってどんな保障が必要で、不必要な保障は何かという方針をあらかじめ明確にしておくことで、保険料を抑えながらも必要な保障や貯蓄を得ることができる、最適なプランを見つけることができるでしょう。
写真/Getty Images イラスト/こつじゆい
大竹 のり子
株式会社エフピーウーマン代表取締役。ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)、マネーマネジメントコーチ。金融専門書籍・雑誌の編集者を経て、2001年にファイナンシャルプランナーとして独立。2005年4月に「女性のためのお金の総合クリニック」 であ る、株式会社エフピーウーマン を 設立。著作・監修した書籍は70冊以上におよび、最新刊に 『数字が苦手でもわかりやすい!文系女子が幸せになる投資BOOK』(日本文芸社) がある。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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