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乳がんや子宮筋腫など女性特有の病気を経験した4人が語る、治療・お金・必要な備え

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※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」、生命保険料を「保険料」と記載している部分があります。

女性の多くが不安に思う乳がんや子宮筋腫といった女性特有の病気。では、実際に病気になると、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。お金やそのほかの心配事を極力少なくするために、普段から行っておきたい「備え」とは?

女性特有の病気の経験がある3人と、自身も乳がんの経験者であるファイナンシャル・プランナーの黒田尚子さんで座談会を開催。全員の体験談をもとに、お金のプロの視点から、「備え」として役立つ医療保険のメリットや選び方をアドバイスしてもらいました。

乳がんは自覚症状があるとは限らず、突然発覚することも。

4人それぞれが自身の体験を語った
右から、ファイナンシャル・プランナーの黒田尚子さん、山田麻里さん、赤木文香さん、伊藤芽依さん。※黒田さん以外は仮名 

黒田:皆さん大変な思いをされたと思いますが、本日お目にかかってみて、お元気そうでうれしいです。まずは、病気に気づいたきっかけをそれぞれ教えていただけますか?

山田:私は43歳のときに、区の乳がん検診でマンモグラフィーを受けたら、たまたま乳がんが見つかりました。痛みなどの自覚症状はまったくなかったですし、家族や親戚にもがんにかかった人はいません。生理も軽く、婦人科系の悩みもなかったので「まさか自分が病気、しかもがんにかかるなんて……」と驚きました。精密検査の結果、ステージⅡからⅢのあいだと診断されて、入院手術。乳房再建手術はせず、術後から約8か月間、化学療法と放射線治療を続け、約1年後に治療が終了しました。その後は再発もなく、健康に過ごしています。

43歳で乳がんを体験した山田麻里さん
43歳で乳がんを体験した山田麻里さん(仮名)。

黒田:術後の経過が良好でよかったですね。私も40歳のときに、自治体のがん検診でマンモグラフィー検査を受けて乳がんが見つかったので、「まさか自分が」という気持ちはよくわかります。

赤木:私は仕事が忙しくて検診には行ってなかったのですが、ある日「あれ? 左胸にしこりがあるな」と気がついて。それでも慌ただしくしていて、すぐには病院に行けなかったんですが、みるみるうちに左胸が大きくなってきたんです。慌てて受診したら、乳房葉状腫瘍*と診断されました。
*乳房葉状腫瘍:「国立研究開発法人国立がん研究センター」希少がんセンター

39歳で乳房葉状腫瘍を体験した赤木文香さん
39歳で乳房葉状腫瘍を体験した赤木文香さん(仮名)。 

黒田:乳房葉状腫瘍は、乳房にできる腫瘍のなかでは比較的珍しい病気ですよね。良性または悪性、どちらだったのでしょうか?

赤木:境界型*でした。最初の病院では、「治療には、乳房の全切除が必要」と言われ、せめて乳輪や乳頭を残したいと訴えても「壊死しますよ」と聞いてもらえなかったんです。でも、どうしても全摘出して胸が完全になくなるのは避けたかったので納得がいかず、乳房の手術件数の多い病院を検索してあらためて受診し直しました。するとそこでは、「しこり部分の摘出だけでいい」と診断されたので、今年の2月に手術を受けました。術後の経過は良好で、3か月に1回の定期検診に通いながら問題なく日常生活を送れています。
*乳房葉状腫瘍・境界型:「国立研究開発法人国立がん研究センター」希少がんセンター

黒田:それはよかったですね! 長期の治療は、肉体的・精神的にも負担が大きく費用もかさむので、短期間の治療で済んだのは幸いでしたね。

伊藤:私は、20歳のときに卵巣嚢腫*が見つかりました。もともと生理が重いほうで、短大で授業を受けているときもいきなりお腹に激痛が走ることがあったんです。大学卒業後に入社した会社の健診で異常があるとわかり、精密検査で左の卵巣に7〜8cmの嚢腫があると診断されました。良性でしたが、営業研修中も歩くのがやっとなほどの激しい腹痛に襲われたりして辛い状態が続いたので、思いきって腹腔鏡手術で摘出しました。ただ、術後1年くらいは生理中以外も体調が優れなくて……。先生には「手術は成功しているし、術後の問題も特になく、ほかに悪いところも見当たらないから原因がわからない」と言われました。実際、どこがどうというわけではないのですが、からだは重だるく気力もわかず、不調な状態で。その原因がわからないというのも辛かったです。
*卵巣嚢腫:「日本産科婦人科学会」卵巣腫瘍

 20歳で卵巣嚢腫を体験した伊藤芽依さん
20歳で卵巣嚢腫を体験した伊藤芽依さん(仮名)。

黒田:良性腫瘍*で大事に至らなかったのはよかったですが、術後も元気になれないというのは精神的に堪えますよね。お仕事への復帰も大変だったでしょう?
*良性腫瘍:「国立がん研究センターがん情報サービス」がんという病気について

伊藤:はい。治療自体には理解のある上司でしたが「ノルマをこなしてから休みを取って。復帰もなるべく早くね」と言われました。驚きつつも、当時は新入社員だったので「そういうものなんだ」と受け入れてしまいました(苦笑)。

黒田:それは厳しい環境でしたね。今でこそ働き方改革が叫ばれていますが、伊藤さんが治療を受けた10年ほど前は、病気に対しての理解やサポートが今ほど浸透していなかったかもしれません。山田さんや赤木さんはどうでしたか?

 

病気や治療の過程で見た目が変わると、心にも財布にも負担大。

山田:私の場合は、ファッション業界ということもあってわりと自由な職場だったので、上司に事情を説明し、通院しながら仕事ができるスケジュールを組んで了承してもらいました。治療の後半に行った放射線治療は約5分で終わるものでしたが、約1.5か月間、月曜日から金曜日まで毎日通院が必要でした。幸いなことに自宅と病院が近かったので通いやすかったですし、主治医にも「仕事はできるだけ続けたほうがいい」と言われていたので、とてもありがたかったです。

夫や家族、友人のサポートもあって、当時、小学生だった子どもへの説明やからだ・心のケアもできて、なんとか乗り切れるなど、治療環境は恵まれていたほうだと思います。ただ、化学療法で髪がみるみる抜けて、自分の見た目がどんどん変わっていくのは辛かったです。あえて、ピンクなどビビッドカラーのウィッグを選び、「その髪、どうしたの?」と周囲につっこんでもらえるようにしていました。変に気を遣われなくて済みますし、自分自身、中途半端なヘアスタイルにするよりよっぽど納得ができました。

放射線治療について語る山田さん
「治療中にもっとも辛かったのは、見た目が変わる自分と向き合うこと」と山田さん。

赤木:私は、とにかくあっという間に左胸だけが大きくなって、誰が見ても「なんかおかしいよね」とわかるくらいになったので、周囲の理解も早かったです。個人プロジェクト型の仕事ですが、まわりから「引き継げるものは引き継ぐよ」とも言ってもらえました。

黒田:そんなに見た目が変わると、下着や服選びも大変だったのでは?

赤木:はい。1〜2か月で、3サイズほど上げてもブラに入りきらないくらい大きくなったので、下着は何度か買い替えましたが、途中から追いつきませんでした。乳房葉状腫瘍は急速に大きくなって皮膚を突き破って出てくることもあるので、主治医にも「とにかく早急に手術を」と言われていたのですが、なかなか仕事の区切りがつかなくて……。まだ30代でしたし、病気であることを認めたくない自分もいました。診断から約5か月後に手術を受けたのですが、そのときにはコートの上からでもわかるくらい左胸だけが豊乳でした(苦笑)。そうなると、顧客と会うときにすごく気を遣うんです。私は自営業なので、相手に体調を気遣わせて不安にさせたり、信頼を失ったりしてはいけないですから……。

黒田:病気になると、お金の心配は避けられませんよね。ちなみに私の場合は、2009年に右の乳房を全摘出し、翌年、乳房再建手術を行ったのですが、この費用だけで150万円以上かかりました。告知を受けてから今年で13年目にあたり、治療費の総計は差額ベッド代も含めて約365万円*です。医療保険には加入していましたが、がん保険には入っていなかったので、カバーしきれなかった治療費は貯蓄から捻出しました。当時は、シリコンインプラントによる乳房再建手術は保険が適用されなかったのも大きくて、「がん保険に加入していれば、一時金でかなり助かったのに〜」と悔しい思いをしました(笑)。

赤木:私は、医療保険にも加入していなかったので、約25万円*かかった治療費は貯金から支払わざるを得ませんでした。手術と5日間の入院費だけだったのでそれくらいの出費で済みましたが、治療が長引いていたらと思うと怖くなります。

山田:実は、本当に偶然なんですが、がんもカバーするような医療保険に加入した半年後くらいに乳がんが判明したんです。まさに不幸中の幸いで、放射線治療も含めて約70万円*くらいかかりましたが、ほぼカバーできました。

伊藤:私も、入社直後に医療保険に加入したので、社会人1年目で貯金はなかったものの、お金の心配はしなくて済みました。治療費は18万円*ほど。どれくらい保険金が支給されるかもわかっていたので、当座のお金は親に借りて保険金が支給されてから返しました。
*各治療費は、高額療養費制度を利用後の金額。高額療養費制度については後述。

 

貯金や収入が少ないときこそ医療保険への加入を検討すべき。

黒田:伊藤さんは、新入社員のときに医療保険に加入されたんですね。賢い選択だと思います。貯蓄や収入が少ないときは医療保険を後回しにしがちですが、実はそういうときこそ保険で備える方法をおすすめします。医療費については、会社員でも自営業でも加入している公的医療保険の高額療養費制度*を使えば、自己負担限度額を超えた分の払い戻しを受けることができます。ただ、病気のときの出費は手術や入院費に限りません。私の場合、個室の差額ベッド代や術後すぐの下着や日用品代、私が入院していたあいだの家族の外食費などがかかりましたし、山田さんのウィッグのように治療中のQOL(生活の質)を保つための出費が必要なこともあります。そうした公的保険が利かない出費を民間の医療保険でカバーできると、治療に専念できる環境がつくりやすいと思います。
*高額療養費制度/医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、超えた額を支給される制度。上限額は、年齢や所得に応じて定められる。

赤木:なんとなく掛け捨ての保険はもったいない気がして、保険料の分の金額を貯金するというのでは備えになりませんか?

保険と貯蓄のバランスを話し合う赤木さんと伊藤さん
「保険と貯蓄のバランスを見直してみます」と、赤木さんと伊藤さん。 

黒田:医療費のための貯蓄として、万が一のときに備えた貯蓄をするというのは合理的で素晴らしいと思います。ただ、正しい備えの考え方は「保険か貯蓄か」ではなく「保険も貯蓄も」なんです。ひと口に保険といってもさまざまな商品がありますから、掛け捨てのものか貯蓄性のあるものかと二者択一になる必要もありません。たとえば、赤木さんのように個人事業主の方やフリーランスの方は、病気で働けなくなると収入が完全にストップしてしまうので、所得保障がある保険への加入を考えてもよいかもしれませんね。

赤木:なるほど、それはぜひ検討してみたいです。保険も貯金も行う場合、備えにかける合計金額の目安はありますか?

黒田:そうですね。それぞれの年代やライフステージ、ライフスタイルによってさまざまですが、ファイナンシャル・プランナーとしての視点と、さまざまながん経験者の方のお金の相談にのってきた経験とを合わせて鑑みると、手取り月収に対して、子どもがいないシングルの場合は収入の4%、子どものいない夫婦の場合は5%、子どものいるファミリーの場合は8〜10%を備えにかける金額の目安にするとよいでしょう。ちなみに、貯蓄は20%がベースです。お給料から貯蓄を先取りして、残った予算で支出をやりくりする習慣をつけてみましょう。

伊藤:赤木さんとは逆で、私の場合は保険には加入していましたが、貯金のことは考えていなかったので、バランスを見直してみようと思います。

 

男性に比べて入院期間が長いというリスクもある女性は、備えが不可欠。

黒田:実は、女性には女性特有の病気リスクがあるだけではなく、そのほかの疾患についても男性より入院が長引く傾向にあるんです。日本人の死因に多い心疾患や脳血管疾患について男女の平均入院日数を比べると、心疾患の場合は男性が13.5日、女性は28.3日。脳血管疾患は、男性が67.3日なのに対して女性は90.7日と、どちらも女性の入院日数のほうが長いという調査結果が出ています(※)。
※出典: 生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」(平成29年)

病気の予防の重要性を語る黒田さん
病気の予防の重要性を語る黒田さん。 

伊藤:驚きました! こうした情報を知ると、女性なら誰でも備えが大切なんだと実感できますね。

山田:がんを経験すると、ほとんど保険に入れなくなるので、本当に偶然でしたが、病気がわかる前に加入する機会に恵まれて運がよかったと思います。

赤木:まさに、しばらく加入できないことが心配です。乳房葉状腫瘍は再発の可能性がないわけではないので、これから先、何事もないとよいのですが……。

黒田:保険会社や商品によっても違いますが、がんを経験した場合、条件緩和型の医療保険に加入するには、最終治療から5年経過していることなどの条件をクリアする必要があるのが一般的です。とはいえ、心配しすぎることはありません。保険はあくまで備えの1つですし、条件を満たさなければ給付金はもらえませんから、過剰な期待は禁物。それよりも、病気にかからないのがいちばんですから、予防も重要な備えといえます。私は、罹患前はびっしりと予定を埋めるのがうれしいタイプでしたが(笑)、乳がんを経験してからは、ちょっと体調が悪いと感じたらからだが悲鳴をあげているサインだと思ってあまり予定を入れすぎないようになりました。

山田:実際に乳がんになって、本当に、女性特有の病気はいつ誰がかかってもおかしくないものだと実感しましたし、予防や早期発見の大切さも身に染みました。私自身も、罹患後はなるべくストレスを溜めない生活を意識して、検診も欠かさず受けるようにしています。

 

自分に合った保険を賢く選ぶためのポイント。

伊藤:約10年前に医療保険に加入したので、そろそろ見直したいと思っているのですが、どんどん保険の種類が増えていますよね。選ぶポイントはありますか?

黒田:まずは、自分にとって何がリスクで、何をもっとも求めるのかを考えてみてください。治療費をカバーしたいなら医療保険、働けなくなったときの保障を求めるなら就業不能保険といった具合に、優先させたい保障ニーズによって必要な保険は変わってきます。また、家族のなかに自分以外の稼ぎ手がいるかどうか、独立していない子どもがいるかどうかなど、ライフステージによっても保険に求めることが異なってきますよね。そして、医療保険の場合は、今の医療に対応しているのかも大切です。医療技術の進歩で、入院期間は短期化している一方、たとえば、がん(悪性新生物)では、2008年以降、外来患者数が入院患者数を上回るなど外来治療が増えています(※)。

そのうえで、どういう保険がいいか判断がつかない場合は、ファイナンシャル・プランナーに相談してみるのも手。私が所属している日本FP協会では、電話や対面による無料の相談会を実施したり、サイトから希望の条件にあったFPを検索できるサービスも提供したりしています。「自分のニーズに合った備え」をすれば、女性特有の病気だけでなく、ほかの病気や入院リスクにも備えられますよ。
※出典: 厚生労働省「平成29年患者調査」統計表2 推計患者数,総数-入院-外来・年次・傷病大分類別

女性特有の病気の体験者による座談会

女性特有の病気は、外見の変化や術後の不調といった治療以外の負担がかかることも多く、想定外の出費も珍しくありません。だからこそ、普段から予防・貯蓄・保険といった「備え」を意識することが大切です。また、数多ある保険から自分に適したものを選ぶには、自分が備えたいリスクや優先させたいことを明確にすることが最大のポイントといえそうです。

取材・文/知井恵理 写真/黒坂明美


黒田 尚子
ファイナンシャルプランナー。1969年、富山県生まれ。日本総合研究所でSEとしてシステム開発に携わりながらFP資格を取得。1998年に独立し、各種セミナーや講演などで活躍。2009年に乳がん告知を受け、自らの実体験から、がんなどの病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動も行っている。著書に『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか「自然に貯まる人」がやっている50の行動』(日本経済新聞出版)など。


※ この記事は、ミラシル編集部がファイナンシャル・プランナー、面談者への取材をもとに、制作したものです。
※ 面談中の意見や提案は個人の経験に基づく情報も含まれます。
※ 病気の症状や治療の過程での副作用、感想には個人差があります。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

(登) C21N0091(2021.11.11)
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