医療保険もいろいろ。女性はどうやって選べばよい?
※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」、生命保険料を「保険料」と記載している部分があります。
健康で快活な20~30代の女性たちにとって、病気やケガをしたときのことは想像しにくいかもしれません。しかし、年齢に関わらず、思いもよらない病気やケガによる入院や手術で、心理的にも金銭的にも大変な経験をするのは避けたいもの。そうした場合に備える方法の1つが医療保険です。なかには女性がかかりやすい病気に対して、手厚い保障が受けられるものもあります。
日本における女性ファイナンシャルプランナーの第1号として、特に女性に向けたお金のコンサルティングに力を入れている中村芳子先生に、女性向けの医療保険について伺いました。
目次
女性向けの医療保険って?普通の医療保険との違いは?
まず、一般的な医療保険と女性向けの医療保険とはそれぞれどういうものかについて、中村先生にお聞きしました。
「保険に加入すると、入院や手術をしたときに給付金が支払われる医療保険ですが、近年、女性に向けたものが多く出ています。女性は、妊娠や出産など女性ならではのライフイベントで、入院することや手術を受けることがあります。若い世代での子宮の病気もめずらしくありません。
一般的な医療保険では、病気やケガによる入院や手術が保障の対象で、給付金が支払われます。女性向けの医療保険は、女性特有の疾病に対して給付金が支払われます。女性がかかりやすい病気に対する保障が手厚くなっているのです。
このように、女性特有の疾病に対する保障を手厚くした女性向けの医療保険のほか、一般的な医療保険に女性特有の疾病を対象とした女性疾病特約を付ける方法もあります」(中村先生)
妊娠・出産リスクにも備えられる。
20~30代の女性の場合、妊娠や出産を予定している方も多いことでしょう。女性向けの医療保険に加入している場合、妊娠や出産に関連して、どのような保障が受けられるのかについても伺います。
「妊娠初期に発症する妊娠中毒症、妊娠後期に起こる切迫早産なども女性特有の疾病にあたります。入院には入院給付金が払われます。同様に帝王切開も手術として保障の対象となり、入院給付金と手術給付金が支払われます。病気やケガだけではなく、妊娠や出産に対しても手厚い保障が受けられるのが、女性向けの医療保険なのです(正常分娩は支払の対象にはなりません)。
なお、妊娠期間中や出産後半年ほどは、上記のような入院や手術などのリスクがあるため、保険会社によっては、新たに保険に加入できない場合もあります。ですから、妊娠・出産を考えているなら、妊娠前・結婚前の加入をおすすめします。一般的な医療保険でも給付金は支払われますが、より手厚い保障が得られる女性向け医療保険は、より大きな安心感が得られるでしょう」(中村先生)
押さえておきたい、女性特有の病気の年代別リスク。
妊娠や出産もそうですが、女性の場合、主に卵巣から分泌される女性ホルモンにより排卵や月経がコントロールされ、心身に大きな影響をおよぼします。女性ホルモンの分泌量は年代によって大きく異なり、その影響で年代によってかかりやすい病気の種類も異なります。
一般社団法人女性の健康とメノポーズ協会が発行する 『年代別女性の健康と働き方 ワーク・ライフ・バランスとヘルスケア』に掲載の情報をもとに、年代と女性ホルモンの分泌量、かかりやすい病気の種類(表1)と、年代ごとに起こりやすい症状やかかりやすい病気(表2)を、ミラシル編集部がまとめたものです。2つの表をもとに、年代別にかかりやすい病気などについて解説します。
参考:一般社団法人女性の健康とメノポーズ協会 編著 『年代別女性の健康と働き方 ワーク・ライフ・バランスとヘルスケア』(2018年初版発行)をもとにミラシル編集部が作成
年代 | 症状や病気 |
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20代~30代 | 月経前症候群(PMS)・月経困難症・月経不順・無月経・性感染症・婦人科疾患(子宮筋腫・子宮内膜症など)・女性特有のがん(乳がん・子宮頚がん・子宮体がん・卵巣がん)・甲状腺疾患・不妊症・摂食障害 |
40代 | 月経前症候群(PMS)・月経困難症・月経不順・無月経・性感染症・婦人科疾患(子宮筋腫・子宮内膜症など)・女性特有のがん(乳がん・子宮頚がん・子宮体がん・卵巣がん)・甲状腺疾患・更年期障害・摂食障害 |
50代 | 性感染症・女性特有のがん(乳がん・子宮頚がん・子宮体がん・卵巣がん)・甲状腺疾患・更年期障害・歯周病・認知症・泌尿生殖器の萎縮(膣炎・尿失禁)・骨粗鬆症・生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症・動脈硬化)・不眠・うつ・物忘れ |
60代~ | 女性特有のがん(乳がん・子宮頚がん・子宮体がん・卵巣がん)・甲状腺疾患・歯周病・認知症・泌尿生殖器の萎縮(膣炎・尿失禁)・骨粗鬆症・生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症・動脈硬化)・不眠・うつ・物忘れ |
20代~30代:妊娠・分娩に関するリスク+子宮内膜症など。
20代に入ると女性ホルモンの分泌量が急激に増え、月経困難症や月経不順・無月経、月経前症候群(PMS)など月経に関連した症状や病気になりやすくなります。さらに、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮頚がんなどに罹患する可能性も高まります。性成熟期であるため、妊娠や出産の機会が増えると同時に、切迫流産・切迫早産など妊娠や分娩にまつわる病気のリスクも高くなります。30代に入ると、乳がんのリスクも高まります。
40代:乳がん・子宮頚がんなどのがんリスク。
40代になると、女性ホルモンの分泌量が徐々に少なくなってきます。月経不順・無月経や月経前症候群(PMS)、子宮内膜症や子宮筋腫などが引き続き心配される一方、更年期を迎えて不妊や更年期障害なども増えてきます。子宮頚がんや乳がんに加えて、子宮体がん・卵巣がんといったさまざまながんのリスクがぐっと高まります。
50代~:がんリスク+その他三大疾病など。
50代は女性ホルモンの分泌量がますます減っていく世代です。月経不順等などの月経に関係した症状から解放される反面、40代に引き続いて更年期障害が表れやすくなります。そして、乳がんや子宮体がん、卵巣がんといったがんリスクもあります。
60代になると、女性ホルモンの分泌量がかなり抑えられます。本格的な老年期を迎える世代であり、その前の世代から引き続いて乳がん、子宮体がん、卵巣がんなどのリスクがあります。また、骨粗しょう症、そしてアルツハイマー・認知症などの心配も高まってきます。
女性の場合は男性と違い、女性ホルモンの分泌に関係した症状や病気にかかる心配があるので、こうした疾病に対する備えとして女性向けの医療保険が用意されています。
女性向けの医療保険を選ぶ際のチェックポイント。
女性向けの医療保険もほかの保険商品と同様に、商品によって保障内容などが異なります。どういった部分に着目するべきなのか、選ぶ際のチェックポイントを中村先生にお聞きしました。
「入院や手術に備えるには、医療保険に加入するほか、死亡保険(亡くなったときに保険金が支払われる保険)に入院や手術の保障を「特約」という形でつけることができます。しかし、死亡保険には満期があるタイプもありますし、さまざまな事情で解約することも考えられるでしょう。すると、満期や中途解約で、特約の保障、つまり入院や手術に対する保障もなくなることになります。特約ではなく、入院の保障を主目的とする医療保険がおすすめです。
商品によって、保障される1回の入院あたりの給付日数が60日まで、120日までなどと違います。手術の給付金も、一律10万円の保険もあれば、手術の種類によって5万円・25万円などと、額が違う保険もあります。なかには、女性特有・女性に多い特定の疾病などで入院したとき、手術を受けたときに、入院日数にかかわらず1回10万円などの一時金が払われるタイプの商品もあります。がんと女性疾病のみを保障の対象とする医療保険には、それ以外の入院や手術では給付金が払われません。給付金が支払われる条件をよく調べて、いくつかの保険を比べて、納得できるものを選びましょう」(中村先生)
保険料の支払いが負担にならないか。
基本的に、保障が手厚くなるほど、払い込む保険料も高くなります。家計の負担にならないかどうかも大切なポイントです。
「女性は、出産を機に休職する、退職するなど、ライフステージで収入が大きく変化することがあります。保険料が高すぎて払えずに解約しては、いざというときの保障がなくなってしまいます。収入に変化があっても、保険料を払い続けられるように、ご自身にあった保険を選び、納得できる保険料のものに加入することをおすすめします。
なお、私がファイナンシャルプランナーとして相談を受けるときの生命保険料の目安をご紹介します。家族単位で考えた場合、収入に対する保険料の割合は5%まで、とお話しています。もし目安を超えたとしても、貯蓄性のある生命保険などで、商品が目的に合っていれば大丈夫です」(中村先生)
「また、20代から心配される子宮頚がん、30代から増える乳がん、40代から増える子宮体がんや卵巣がんなどには、がん保険でも備えることができます。がん保険にすでに加入している、加入を考えている場合は、医療保険と保障の重なり、金額などをよく見ましょう。がんへの不安が強い方は、がんへの保障が手厚いがん保険への加入を検討しても良いでしょう」(中村先生)
中村先生のアドバイスも参考にしながら、将来への備えとして、女性向けの医療保険などへの加入について考えてみてはいかがでしょうか。
写真/Getty Images イラスト/こつじゆい
中村 芳子
有限会社アルファアンドアソシエイツ代表取締役。早稲田大学商学部で国際経済を学ぶ。メーカー勤務を経て、1985年に独立系FP会社(株)MMIに入社。ファイナンシャルプランニング業務全般に携わり、日本の女性FPの第1号となる。ファイナンシャルプランナーWAFP関東会員。女性FPの会(現WAFP)初代理事長。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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