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おっぱいがない人生を一緒に考える。乳がん患者専門写真家・岸あさこの決意。

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2017年、47歳のときに乳がんを経験し、現在は乳がんの手術を控えた女性の胸を撮影するフォトスタジオ「ブレストキャンサーポートレート」を運営する岸あさこさん。

「自分が乳がん経験者だからこそ、伝えられることがあるはず」と語る岸さんに、乳がん発覚から治療、現在に至るまでの経緯や、かかった費用についてお聞きしました。

「私がやるしかない!」と奮起し、乳がん患者専門のフォトスタジオ設立。

岸あさこさんの撮影スタジオにて
乳がん患者専門カメラマンの岸あさこさんのフォトスタジオにて。明るく開放的な雰囲気。

――岸さんが乳がん患者専門のフォトスタジオを設立されたのは、2019年10月。きっかけは、Facebookでつくった乳がん経験者専用の非公開グループだったそうですね。

私が闘病中に感じていたのは、孤独でした。周囲にがん経験者もおらず、死ぬかもしれない恐怖と1人で闘っていました。その経験から、乳がん経験者が気軽に交流できる場が必要だと思ってSNSでグループをつくったんです。そこでは、クローズドということもあってか、予後を気にされて、術後の自身の胸の画像を投稿される方が数名いらっしゃいました。

その投稿を見て、ふと「手術前の胸を自分で撮影している方もいるのだろうな、それならスタジオで撮影するのはどうだろう」と思ったのです。さっそくこの提案をグループに投稿すると反響が大きくて、なかには「撮影してもらいたかった。探したけど叶わなかった。手術後になって撮っておけばよかったと後悔している」という方々がいらっしゃいました。ヌード写真には抵抗がありますが、乳がん患者のお気持ちを理解する専門スタジオでのお胸の撮影なら安心して肌を露出できるのではと考えたのです。

乳がん患者専門フォトスタジオの撮影イメージ
手術前の胸の記念撮影。顔やバストトップを写さないなど、要望に応じてさまざまなスタイルで撮影している。

――乳がん患者専門という特殊な撮影に際して、何か気を付けていることはありますか?

スタジオを訪れる多くの方が、治療方針や手術前の不安など、誰にも話せない想いを抱えています。ですから、乳がん経験者として話を聞いたり自分の経験をお伝えしたり、寄り添ってケアすることを大切にしています。3時間くらいかけてヘアメイクと撮影、お話しをする時間を設けていますが、撮影よりもお話しする時間のほうが長いくらい(笑)。

――会話も大事なサポートなのですね。

そう信じています。「病は気から」といいますが、病気と闘うには前向きであることも大切だと実感しています。ですから「大変ですね」より「大丈夫!」と伝えるようにしています。10年先のことはわからないけど、今は乗り越えられるから、大丈夫。あとは、元気に笑っている今の私の姿を見てメッセージを感じ取ってもらえたらと思っています。

乳がん患者に寄り添いながら撮影する岸あさこさん
笑顔が絶えない岸さんに、被写体である乳がん患者さんも励まされている。

――乳がんを経験した岸さんだから言える「大丈夫!」なのだと思います。とりわけ印象的だった撮影について教えてください。

妊娠中に乳がんの手術を控えた方を撮影したことです。マタニティフォトでもあり、「手術を無事に終えて、お子さんを産んで育てる」という決意を感じる1枚でもありました。生まれてくる赤ちゃんに見せたい写真なのだと感じました。

「トリプルネガティブ乳がん」の発覚で人生の終わりを突きつけられた。

――ところで、岸さんは珍しい種類の乳がんだったそうですね。

乳がんの中でも悪性度の高い「トリプルネガティブ乳がん(※1)」でした。私は入浴中に右胸にしこりを見つけて受診したのですが、乳がんだと診断されたのは、手術を終えて2週間後でした。

――手術しないと乳がんかどうかわからない状況のなか、手術に臨んだのですね。

そうなんです。主治医からは「初めて見るケース。良性と悪性、それぞれの可能性は50%」と言われ、乳腺を専門とする病理医のセカンドオピニオンを受けたのですが、病理医からもわからないと言われてしまって。

※1 トリプルネガティブ乳がん:「国立研究開発法人日本医療研究開発機構」希少がんセンター予後不良で知られるトリプルネガティブ乳がんの新規治療標的を同定―新たながん個別化治療の開発に期待―

当時を振り返る岸あさこさん

――その後、どのような手術をしたのでしょうか?

良性かもしれない可能性が50%残っているなかで、胸を大きく切るという選択はどうしてもできなくて。できる限り切除しない方向で手術を進めていただきました。

――そして手術後に悪性だと発覚、「トリプルネガティブ乳がん」と診断されたのですね。

はい。告知されたときは文字どおり頭の中が真っ白になり、しばらく放心状態が続きました。そんななかで今後の治療方針について主治医から、抗がん剤治療のあとに放射線治療を進める流れを提案されました。だけど、髪の毛が抜けたり吐き気が続いたり、抗がん剤を投与したあとの影響を考えたら、とにかくこわくて……。

――抗がん剤治療への恐怖は、どのように払拭できたのでしょうか。

セカンドオピニオンでも最初の病院の主治医と同じ治療方針を提案されたことで吹っ切れたこともありますが、乳がん経験者の友人に出会ったことが大きなきっかけになりました。その友人は抗がん剤治療を終えたばかりなのにとても元気で笑顔がまぶしくて。彼女の存在に勇気づけられました。

当時を振り返る岸あさこさん2

――それで抗がん剤治療に踏み切れたのですね。抗がん剤治療はどのくらい行われたのでしょうか?

私の場合は、「3週間ごとに1回、1週間続けて投与」する方法を1クールとして、それを4クール行いました。期間にすると3か月間。回数を重ねるごとに副作用が強くなっていきました。

ーー具体的にどのような症状だったのでしょうか?

ずっと下痢が続いたのに加えて、親知らずが膿を持った炎症を起こしたり、4クール目には髪の毛がすべて抜けたり……。

ーー髪の毛がなくなるのは、メンタル的にもショックを受けそうです。

ただ、落ち込んでいても悔しいので、普段はしないような派手なカラーのウィッグを試して気分転換していました。赤毛のウィッグにも挑戦して、気分はまるでロックスター!って(笑)。

2つのがん保険が、治療に専念できる環境をつくってくれた。

――長期間の治療が続くと金銭的な負担も大きそうです。

特に放射線治療はとても高くて。高額療養費制度(※2)の範囲内ではありますが、治療費の3割負担で1回あたりの金額が約3万3,000円、それを30回行いました。ただ、私は2種類のがん保険に加入していて救われたんです。

――がん保険に2つも!どういったサポートを受けられたのですか?

1つは自分で入ったもので、もう1つは母が私のことを心配して加入してくれていたもの。私が加入していたものは掛け捨てタイプのがん保険で、がん診断一時金や入院保障がついていましたが、放射線治療は保障に含まれていませんでした。一方、母が支払ってくれていた保険は、がん診断一時金としてまとまった金額が支払われただけでなく、放射線治療や入院・手術の保障もすべて含まれていたのです。

※2 高額療養費制度:医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(1日から末日まで)で上限額を超えた場合、超えた額を支給される制度。上限額は、年齢や所得に応じて定められる。

当時を振り返る岸あさこさん3

――それは手厚いですね。保険会社から受け取った給付金で、治療費をどのくらい賄うことができたのでしょうか。

私は自由診療を受けていなかったので、この2つの保険からの給付金で、手術や入院、治療にかかるすべての費用をカバーできました。つらい治療を続ける上で、金銭面の心配をしなくてすんだのは、本当にありがたかったです。

――保険会社の勤務経験もある岸さんからみて、女性が医療保険に加入することを、どのように考えていますか?

女性の場合、乳がんに限らず子宮頚がんや卵巣がんなど特有の病気のリスクを抱えています。私の周囲には「副作用がつらくて休職した」という人も一定数います。会社の方針や勤務形態によっては、退職せざるを得ないケースもありますよね。加入自体は個人の判断ですが、少なくとも私はがん保険に入っていて「救われた」と思いました。

カメラを構える岸あさこさん

――乳がんを経験されたことで、岸さんに何か変化はありましたか?

つらい局面を乗り越えたことで精神的に強くなったし、日々の些細なことを「幸せだな」と感じられるようにもなって、とても明るくなりました。昨日お寿司屋さんで、かんぴょう巻きを食べたときも「すごくおいしい!幸せ!」と想いが溢れてしまって。お店の方に「このかんぴょう巻き、とってもおいしかったです!」伝えたら、キョトンとされてしまいました(笑)。

今でこそ明るいですけど、乳がんを経験する前はすぐに不安になってしまうタイプだったんですよ。母がかなりの心配性なので、私も影響を受けていたのでしょう。でも、母の不安が私名義のがん保険加入につながり、結果的に私を助けてくれた。そう思うと、不安を抱くのも悪いことばかりではないですね。

取材・文/畑菜穂子 写真/水野昭子 編集/藤田佳奈美


岸あさこ

「ブレストキャンサーポートレート」代表。正看護師。病院勤務や保険会社勤務経験を経て、オーストラリアの大学院に留学。帰国後の2017年に乳がんが発覚。2018年、会社設立。2019年10月に乳がん患者専門の写真スタジオ「ブレストキャンサーポートレート」設立。自身の経験を生かし、2020年よりウィッグ販売事業を開始。


※ 面談中の意見や提案は個人の経験に基づく情報も含まれます。
※ 病気の症状や治療の過程での副作用、感想には個人差があります。
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C23N0018(2023.4.24)
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