カウンターに手をのせて微笑む西村さん カウンターに手をのせて微笑む西村さん

4児の父で経営者。西村創一朗さんが語る仕事と育児とお金の話。

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#お金
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メンタルヘルスケアに特化したWebメディアを運営する「株式会社Mentally」の代表や、父親支援事業を行う「NPO法人ファザーリング・ジャパン」の理事を務めながら、プライベートでは4児(中学2年生・小学5年生・小学1年生・0歳(取材当時))の父である西村創一朗さん。

大手総合人材会社を退社して独立し、複業(※)研究家として書籍を執筆するなど、順風満帆にもみえる経歴ですが、一方で、独立後に3回のメンタルダウンを経験するなど、その人生は山あり谷あり。

※ 「副業」が副収入を得ることを目的に、収入が発生する業務のみを、本業のサブ的な位置づけで行うものなのに対し、「複業」は自己成長や他者貢献を目的に、収入の有無を問わず、本業と複業のどちらもメインの位置づけで行うものを意味する。

「どんなに優秀でも、仕事と育児の両立を最初からうまくできる人はいないと思います」と語る西村さんに、仕事や家族への向き合い方、教育方針や教育資金の備え方について伺いました。

最初から仕事と育児が両立できる人はいない。

仕事と育児の両立が難しいと語る西村さん

──大学2年生で父となり、現在も4児の父親として奮闘されている西村さんですが、特に仕事と育児の両立が難しいと感じたのはいつですか?

やはり、第1子の育児が大変でした。夜泣きで睡眠時間を削られるなど、思いどおりにいかないことばかりでしたね。

ただ、当時は大学生で、授業やアルバイトでそれなりに忙しかったのですが、時間はわりと自由に調整することができたので、なんとかやっていけました。もし僕が会社員で、仕事と育児の両立を目指そうとしていたら、心身ともに参っていたと思います。

──やはり最初が一番大変だったのですね。

大変でした。でも、誰でも最初はうまくいかないのが当たり前。何度も苦難を乗り越えてステップアップしていくのは、仕事も育児も同じですね。

まずは、「はじめから仕事と育児が両立できる人はいない」という意識をもって、できない自分を責めないこと。今、仕事と育児の両立ができている人もみんな同じ道を歩んできているはずなので、まずは「できたことに目を向ける」という意識をもつだけでも気持ちがかなり楽になると思います。

わが家では最近4人目となる子どもが生まれましたが、4人目の育児となると、親としての慣れや、上の子が大きくなり人手が増えたこともあって、子育ての負担感は相当減っています。僕の主観ですが、1人目の子育ての大変さを100とすると、2人目が80くらい、3人目は一気に減って10くらい、4人目はもう1くらいに感じますね(笑)。

──仕事と育児の両立に悩んでいる方へ先輩パパとしてのアドバイスはありますか?

子どもが0歳~1歳までの期間は、できることが日に日に増えていくプレミアムな期間。この1年は仕事をセーブし、子どもと関わる時間を増やすことで、「もっと家庭に目を向けておけばよかった」といった後悔が減るメリットはあると思います。

ただ、仕事のステージやタイミングもあるでしょう。僕も2人目が生まれたときは社会人1年目で育休を取ることもできず、平日は仕事で精いっぱいでした。でも当時、自分の人生にとっても、家族というチームにとっても今は仕事をがんばることが大事だと思えたので、後悔はないです。

このあたりはパートナーとよく話し合って、納得のいく家族の形をつくっていければいいのではないでしょうか。

家族と過ごす時間を最大化するために、育休ではなく起業を選択。

起業に至った経緯を語る西村さん

──西村さんはご家族と過ごす時間を最大化するために起業をされたそうですが、そのきっかけは何ですか?

僕は、3人目の子どもが生まれたときに、家庭のために会社を辞めて独立しました。このことを、「育休的起業」とよく言っています。

そもそも起業をしようと思ったきっかけは、3人目で初めて授かった女の子がとてつもなくかわいく感じたこと。2人目が生まれた社会人1年目には、仕事が忙しく、週末しか子どもの成長に立ち会えないことにずっと葛藤していたので、今娘と過ごす時間を大事にしなければ、将来絶対後悔すると思ったのです。

さらに当時、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著、池村千秋訳、東洋経済新報社)という本を読み、今後、人生100年時代を迎えるにあたって、僕自身の時間のポートフォリオを考えたときに、「仕事の時間はあとでいくらでも取り戻せる。今は家事・育児中心の生活にシフトしよう」と決意するに至りました。

●LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

2016年に出版された世界的ベストセラー。誰もが100年生きうる時代を迎えるにあたり、どのように生き方・働き方を変えていくべきか、新しい人生戦略を提示した名著。

──会社で育休を取得するという選択もできたと思いますが、あえて起業という選択をしたのはなぜですか?

半年~1年の育休を取ることも考えました。ただ、僕は3年~5年の単位でどっぷり自分の時間を家族に寄せたかったんです。時短勤務という選択肢もありましたが、働く時間を1日8時間から4時間にしたら給料は半分以下になってしまいます。自分の可処分所得を変えずに働く時間を減らすには?と考えたときに、独立して単価の高い仕事を受注できれば、働く時間を半分にしても、収入を維持できると思いました。

あとは、通勤時間をなくすために在宅勤務をしたいという希望もありました。つまり、起業したくて独立したというより、家族と過ごす時間を最大化するために、消去法的に起業した感じでしょうか。

会社員時代は、自分ではコントロールしきれない部分で残業が続いてしまうこともありましたが、独立したあとは、どんな仕事をどのくらいするか、全部自分で決められるので、やはり独立後のほうがワークライフバランスはとりやすいですね。

普段から家族に向き合えているからこそ、つらいときにサポートを得られる。

──起業をしてから、事業がうまくいかなかったり、ご自身もうつ病に苦しんだりと、大変な時期もあったと伺いました。大変なとき、ご家族とはどのように向き合われたのでしょうか?

僕は、家族は1つのチームであり、特に夫婦はスタートアップでいう共同創業者みたいなものだと考えています。そのうえで、家族・会社・部活動など、あらゆるチームにおいて、壁に直面したときに支え合えるかどうかは、そこまでに築いた信頼関係によると思っています。その点、僕は普段から人一倍家事や育児に積極的に関わっているので、妻と信頼関係を築いてきているつもりです。

そのためか、妻は僕がしんどそう、大変そうだとわかったら、すごく気にかけてくれるんです。子どもが僕のところに「パパ遊んで」と来ても、「今、パパは具合が悪いから、ママのところにおいで」と声かけするなどして、家事・育児を休ませてくれました。そうやって妻が支えてくれたからこそ、つらい時期も乗り越えられましたし、僕が元気になったあとには、妻に恩返ししたいと思いましたね。

子どもには機会を投げかける教育方針。

教育方針について語る西村さん

──ここまでのお話で西村さんがご家族のことを考えて行動されていることがわかりました。お子さんの習い事や進路について、教育方針はありますか?

基本的に、無理やり受験をさせるとか、何かを押しつけるようなことはしていません。今、中学2年生の長男は中学受験をしましたが、これも本人の意思でした。結果は伴いませんでしたが、高校は「今度こそ志望校に合格したい」と中学1年生のときから勉強をがんばっているので、中学受験はいい経験になったと思っています。

次男は小学5年生ですが、サッカークラブに所属しながら、2つのサッカースクールに通い、週7日サッカーをやっています。これも本人がやりたいというのでやらせていますね。長女は今、小学1年生。恥ずかしがりやで習い事はまだまだ……という感じでしたが、最近、ピアノと水泳を習いはじめました。

──子どもたちのやりたいこと重視ですね。

はい。ただ、子どもが自分でいろいろな機会を探し出すことは難しいので、「こんな習い事やイベントがあるけどどう?」という投げかけはたくさんしています。たとえば、長男が小学6年生のとき、オンラインでの起業家養成塾を見つけまして。長男に「こういうのあるよ」と伝えたら、「面接試験を受けたい」と言って、70倍超の倍率を突破して入塾できてしまったんです。

中学受験準備と同時期に受講していたので、受験で失敗する原因になったのかなという反省はありますが、これも1つの経験だったのかなと思うようにしています。

学生時代から、なけなしのアルバイト代で学資保険に加入。

教育資金についての考えを語る西村さん

──教育資金については、どのように考えられていますか?

わが家の家計に占める教育費の割合は、それほど高くないです。子どもが4人もいるので、1人にお金をかけたら「お兄ちゃんだけずるい」と言われてしまいますし。そう考えたらいくらお金があっても足りないですから。

──お子さんが4人だと、教育費も4倍になりますか?

小さいうちはさほどかかりませんが、やはり高校・大学進学費用は4人分、4倍になりますよね。私立の学校に進学したい、理系に進みたい、留学したいとなればさらにかかりますし。それを考えたら、とんでもない金額を備えておかなければと覚悟しています。

──教育資金はどのように備えていますか?

4人それぞれ、学資保険(※)で備えています。きっかけは長男が生まれたとき、義母に、預貯金として金融機関に預けておくよりも効率的に教育資金を準備できるとアドバイスをもらったことです。あくまでも学資保険は貯蓄性を重視していて、万が一の場合については切り分けて考え、特別な保障はつけていません。

当時は学生でしたので、月々の保険料が6,000円程度と、アルバイト代で払えるぐらいだったと記憶しています。あとは、個人事業主向けの小規模企業共済にも入っています。いざというときには解約して、教育費に充てようと思っています。

※ 学資金・満期保険金の受取総額が保険料の総額を下回る場合があります。また、解約返還金は多くの場合、保険料の累計額を下回ります。

しっかり保険をかけると自分の人生に返ってくる。

本棚を背景に微笑む西村さん

──最後に、西村さんが考える経営者・4児の父ならではの「保険」について教えてください。

そうですね。経営者としての「保険」は、インターネットの回線を2つ契約していたり、Webカメラやマイクの予備が4台くらいあったりするようなことでしょうか。僕は年間100回ほどオンライン講演会やイベントに登壇するので、ネットワークとWebカメラとマイクが商売道具なわけです。これらのバックアップには万全を期しています。

父としての「保険」は、先ほども言いましたが、日ごろから夫婦の信頼関係を築いておくことですかね。うちは夫婦で月1デートを7年ぐらい続けています。これを言うと驚かれる方もいますが、皆さんも結婚前は2人で頻繁にデートに行って、関係性を温めてきたわけですよね。でも、夫婦になった途端にデートなどの優先度が下がって、意識的に関係性を温めなくなる。だから関係が冷えてしまう。

夫婦仲がギクシャクすると、何かお願いされても「嫌だなぁ」と思いませんか? でも夫婦の関係性がよければ、「いいよ」と快諾できますし、逆にこちらから気兼ねなくお願いもできます。つまり夫婦の関係を温めておくことは結果的に、自分に返ってくる。それを考えると、妻とのデートも人生の「保険」になるのかもしれません(笑)。


西村 創一朗
大学卒業後、2011年リクルートキャリア(現リクルート)入社。会社員を続けながら2015年、株式会社HARESを設立。2017年1月に独立後は、複業研究家としてさまざまな企業で人事コンサルティングを行うほか、2018年3月末まで経済産業省の「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」で最年少委員を務めた。著書に『複業の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。2021年10月、株式会社Mentallyを設立。プライベートでは、大学1年時に学生結婚をして19歳でパパに。現在は4児の父。


※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
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(登)C22N0279(2023.2.28)
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