柔道家からアイス屋に転身した松本薫、老後の夢は老人ホームに入ること。
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やりたいことや、かなえたい夢があって、新しい世界に踏み出したい。でも将来のことを考えると、その一歩が踏み出せない──。そんな揺れる気持ちを抱えている人は少なくないのではないでしょうか。どうしたら、決断できるのか? 何を備えておけばその勇気が出るのか?
今回、そのヒントをくれるのが、元柔道女子57kg級日本代表の松本薫さんです。柔道家として世界の頂点に立ちながら、引退後に選んだ道はなんとアイスクリーム屋さん。その大転身の裏にあった思いと、今将来について考えていることを伺いました。
現役中は対戦相手の弱点探しばかりしていた。
──引退後はアイスクリーム店「ダシーズ ギルトフリーアイスクリームラボ」のスタッフとして勤務されています。現役時代とは気持ちも生活も大きく変わったのでは?
めちゃくちゃ、変わりました。いちばん大きく違うのが人との対し方です。柔道をやっているときは、「こいつの弱点はどこだ!? どうやって倒そうか?」って、日々試合で相手を倒すことばかり考えていました(笑)。
でも今は、一緒に働く人に対しても、アイスクリームの素材に対しても、「どうやったら、よさ(強み)を生かせるだろうか?」と思うようになりました。
──それは正反対ですね! 戸惑いはありませんでしたか。
ありましたよ! 人との間合いというか、コミュニケーションのとり方がわからなくて、「どうして、うまくいかないんだ!」と思ったこともあります(笑)。
でも、ある人から「人にはそれぞれ役割があるんだよ」という言葉をもらって。それから、変わりましたね。自分がやりたい!と思って進んでいる道に、まわりの人の力が加わることで、何倍にも大きな形を描けるようになる。今は、仲間がいるってこんなに素敵なことなんだと感じています。
──それは、松本さんご自身のメンタルにも影響がありますか?
今のほうが、気持ちが楽です。私が人の弱点を探していたということは、相手からも同じように見られていたということ。現役時代は、常に自分もやられてしまうかもしれない、という不安との戦いでした。
昔は偏食で、骨がポキポキ折れていた。
──そもそも、アイスクリーム屋さんへ転身したきっかけはなんだったのでしょう?
私が選手引退を考えていたころ、ちょうど、所属先が東京富士大学とのプロジェクトで、アイスクリーム事業を立ち上げたところだったんです。その話を聞いて、「ちょー楽しそう! 私やる!」って(笑)。
柔道の指導者になる道もあったんですけど、断然、アイスクリーム屋さんのほうが輝いて思えました。
──もともと、お菓子やアイスがお好きだったと伺いました。アスリートだと食生活に気を使うことも多かったのではないですか?
小さいころはかなりの偏食で、ご飯も食べず、お菓子やアイスばかり食べていました。そんな食生活だと、やっぱり骨折するんです。年に1回くらい骨をポキポキと折っていて、世界で戦うためにはこのままではダメだと思い、食を見直すようになったんです。
現役時代から、体にいいアイス、食べると栄養になるアイスがあったらいいなと思っていたので、アイスクリーム屋さんはぜひ、やってみたい!と思いました。
──ご自身の経験がもとになっているんですね! 仕事が変わって、日々の暮らしの変化はいかがですか?
人との関わり方も変わりましたし、仕事中の集中力の使い方がぜんぜん違っていて……。柔道って1日3回に分けて練習があるのですが、1回の練習は長くても3時間。その間だけ徹底的に集中するんです。
その調子でアイスクリーム屋さんに出勤して、仕事をぐわぁーってやっていたら、午後は頭が痛くなってしまって(笑)。これまでと一緒ではダメなんだなって。
──アスリートの集中力は並大抵のものではなさそうです。時間の使い方が大きく変わったんですね。
人はずっと集中し続けることはできないって学びました。あと、今のほうが、健康的な生活をしているなとも思います。
柔道をやっているときは練習が終わるのが20時半過ぎで、家に帰って寝るのは23時過ぎ。でも、今は夕方に子どもたちを保育園にお迎えに行って、18時くらいにはご飯を食べて、寝かしつけながら一緒に寝て……。
選手時代とは朝起きた時がぜんぜん違うんです。現役のときは、朝を迎えるのが憂鬱で、毎朝、「隕石が落ちて地球が滅亡してしまえばいいのに!」と思うくらいに絶望的な気持ちで目覚めていました。今は朝5時くらいにパッと起きて、「さあ、走るか!」って。「世の中、平和で幸せだ!」って思いながら走っています(笑)。
現役時代から収入は減少、運用や保険で将来に備える。
──キャリアチェンジをされて、経済的な面ではどんな変化がありましたか?
アスリートの収入って、競技や所属・立場によってそれぞれで。現役時代もプロではなかった私の収入源は、ざっくり言うと「所属先からの基本給+大会の賞金報酬」でした。
引退してからは大会の賞金報酬分がなくなったので、正直、現役時代よりも収入は減りました。
でも、もともと私、物欲がぜんぜんないんです。買うとしても、ランニングシューズくらい。だから、引退しても金銭感覚はそんなに変わらなくて。将来に向けた準備もいろいろしています。
──ちなみに、老後への備えとして、個人年金保険はご存じですか。
なんとなく聞いたことあります。
私はあまりお金を使わないからこそ、ただ貯金をしているのももったいないなと思っていて。いざというときのための資金はたくわえつつ、子どもの学費や私たち夫婦の老後に向けた備えをしています。資産運用もしていますし、もちろん、各種保険にも入っていますよ。
──将来のことを考えて、老後の資金のことや、お子さんの教育費の準備もしっかりされているとは、さすがです! それぞれの目的に応じて、保険商品や資産運用など備える方法を選ぶのが大事ですよね。新たな挑戦やキャリアチェンジに、経済的な備えは必要だと感じますか?
お金は大事。あったほうがいいですし、ためておくことも大切だと思います。でも、いちばん重要なのはそこではないと思います。夢や目標があって、「やろう!」って決意が固まれば、貯蓄のあるなしに関係なく、動きだすものだと思うんです。
もしも、新しい挑戦や転職に対して、やるのか、やらないのか迷っているのであれば、そのときはいっぱい悩んでいいと思います。それは「悩むための時期」だから。
夫より長生きして、老人ホームに入りたい!
──アスリートはいずれ引退が訪れ、転身を余儀なくされます。引退するときに迷いはありましたか?
「やりきった」と思えたので、迷いはありませんでした。
アスリートに限らず、何かをやめるときって2つのケースがあると思うんです。「やりたいけど、できなくなった」ケースと、「やりきった」ケース。
ただ、どちらの場合でも最後に「肯定できる自分でいられること」が大事だと思うんです。「自分は何を残せたのか」という納得感というか。
──「何を残せたか」とは具体的にはどういうことでしょうか? 松本さんが残せたものを教えていただきたいです!
その残すものって、お金や人間関係、達成感だったりすると思うんですが、私の場合、達成感でした。もちろん、お金も欲しいので勝ちにいきますけど、お金という対価以上に「自分で掲げた目標を成し遂げたい」という思いが強かった。それを手にできたので、引退に迷いはありませんでした。
両親を世界の舞台に連れて行き、金メダルを首にかけてあげるという約束も果たせた。やるだけやったので、引退するときは、正直「やっと自由だ!」って思ったほどです(笑)。
──柔道をやりきったからこそ、今の穏やかで充実した暮らしがあるんですね。ちょっと先の将来や老後で、やりたいことやビジョンがあれば教えてください。
私、老後は老人ホームに入りたいんです! 最近走っている朝のランニングコースにとてもきれいな老人ホームがあって、おじいちゃん、おばあちゃんが朝から優雅に本を読んでいたり、おしゃべりしていたりしていて、なんかいいなって。
夫より長生きする予定なので、そこに1人で入りたいです(笑)。
だから、老後に備えて保険には入っていますし、今から老後資金の準備もしています。
──では、最後に伺います。松本さんの日々の暮らしの中で、自分にとっての“保険”のようなものってありますか?
「備えあれば憂いなし」って言いますが、言い換えれば、憂いがなければ備えはいらないってことだと思っています。現役中もそうでしたが、「憂い」と感じなくなるくらい準備して、何があっても大丈夫な自分をつくっておく。それが私にとっての自分自身の“保険”です。
松本 薫
1987年生まれ。石川県金沢市出身。帝京大学卒業。6歳から柔道とレスリングをはじめ、中学3年生のときには全国中学校柔道大会で初の国内制覇。以後、高校インターハイ優勝、ドイツジュニア国際柔道大会で金メダル獲得のほか、数々の輝かしい成績を残す。2010年には柔道女子57kg級の世界ランキング1位に。2012年ロンドン五輪を含め、国際大会20回、国内大会17回の優勝を果たす。2019年現役引退。アイスクリーム店勤務。2児の母。
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