“各駅停車”でゆっくりいこう!鉄道芸人・吉川正洋さんの楽しむ子育て。 “各駅停車”でゆっくりいこう!鉄道芸人・吉川正洋さんの楽しむ子育て。

“各駅停車”でゆっくりいこう!鉄道芸人・吉川正洋さんの楽しむ子育て。

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鉄道芸人としてさまざまなメディアで活躍中の、お笑いコンビ・ダーリンハニーの吉川正洋さん。2児の父親でもある吉川さんは、育児勉強本『笑いのスペシャリスト9人に学ぶ 父勉と子育て』(春陽堂書店)の中で、「子育ては鉄道にたとえると各駅停車でゆっくり進めるのがいい。特急もいいけれど、立ち止まりながらゆっくり確実に歩みたい」というように語られています。大好きな鉄道のお話をふんだんに交えながら、鉄道芸人ならではの子育て論について語っていただきました。

「妄想路線図」がきっかけで鉄道芸人に。

鉄道芸人として認められたきっかけを話す吉川正洋さん

――「鉄道芸人」としての人気に火がついたきっかけと、その前後の活動の変化についてお聞かせいただけますか。

もともと、いわゆる「都会派コント」のようなネタをつくりながら活動していたのですが、新しい分野の開拓もしていこうということで鉄道ネタをつくってみたんです。ライブでその鉄道ネタを披露していたら、憧れの番組「タモリ倶楽部」の「タモリ電車クラブ」入部審査会の話が舞い込んできたんです。

応募資格は、鉄道ネタと鉄道への熱い思いを持っている人。僕にぴったりの条件ですよね(笑)。審査会では、ネタと、僕が昔からつくっている妄想路線図をタモリさんにアピールしまして、晴れて入部できました。

中学・高校当時は「鉄道好き」にはネガティブなイメージがある時代だったので、鉄道好きを隠していたんです。そんな過去もあるので、「タモリ電車クラブ」の部員として番組出演するようになって、大見えを切って鉄道について語れるのがすごくうれしかったですね。

その後、おかげさまで、毎週ゴールデンタイムに放送されていた「笑神様は突然に…」という番組で、鉄道BIG4の1人として出演が決まったり、CS放送鉄道チャンネルで「吉川ひとり旅」という冠番組を持たせていただいたりと、芸人人生がガラッと変わりました。2011年にスタートした「吉川ひとり旅」は「新・鉄道ひとり旅」という番組名に変わっていますが、もう10年以上も続けられています。

――吉川さんにとっての鉄道の魅力を教えてください。

鉄道は、移動手段というだけでなく、車窓を眺めたり、走行音を聞いたり、写真を撮ったり、模型やグッズを集めたりなど、すごく多角的に楽しめるんです。間口が狭そうで実はものすごく広いんです。

車両の第2の人生まで追っていくこともできるし、グッとくる物語があるんですよね。たとえば、東急電鉄で走っていた車両が今は富山地方鉄道を走っています。毎日、通勤通学ラッシュでがんばっていた車両が、今は短くなって、冬になると顔にびっちり雪を浴びながら走っているわけですよ。もうその姿を見るだけで、いろいろな思いと重ね合わせて泣けてきちゃいますよね。

さらに、鉄道好きでよかったと思うのが、初対面の方とも距離が縮まりやすいこと。出身地の駅名を聞けば、だいたいその周辺の情報が思い浮かぶので、会話のきっかけをつくりやすいんです。

子どもが生まれて、時間の使い方が上手になった。

子どもが生まれてからの時間の使い方について話す吉川正洋さん

――お子さんが生まれて、ご自身の時間の使い方や生活スタイルに変化はありましたか。

自分に使う時間は極端に減りました。最初はやはりストレスも感じましたが、限られた時間の中でいかに自分の趣味を楽しむかを考えるようになって、時間の使い方が上手になったと思います。

また、以前はお笑いライブ中心の生活だったので、仕事が終わったあとに仲間と飲みに行くのがルーティーンで、完全な夜型でした。でも、子どもが生まれてからは朝型に変わって、かなり健康的な生活になりました。

実際、子ども中心の生活になるとどんどん自分のやりたいことができなくなりますが、それを残念だと思ったら子どもに申し訳ないですよね。なので、「子どもがいても、趣味を満喫しながら楽しく暮らす!」を実践しています。

ときには「ダイヤ改正」もする柔軟さが、子育てを楽しくする。

柔軟な子育てについて話す吉川正洋さん

――『笑いのスペシャリスト9人に学ぶ 父勉と子育て』では、「子育ては各駅停車で~」というように述べられています。なぜ“各駅停車”なのでしょうか。

子育てしていると、「ほかの子ができているのになんでうちの子はできないんだろう」などと焦ることも多くて。鉄道にたとえると、急行に乗って早く先に行きたいときがあります。でも、子育てってハプニングの連続で、焦っても結局空まわりするだけ。だったら落ち着いて地に足をつけて、各駅停車で行ってみようと思ったんですね。

ゆっくりしたスピードで進む各駅停車のよさは、車窓の風景が楽しめること。急行や特急に乗ると、あっという間に景色が流れていきます。子育ても同じで、これ何だろうと思ったら子どもと一緒に下車して考えてみたり、いろいろと探索してみたり。子どもとゆっくり向き合って、焦らずコツコツ進むことが大事だと思うんです。

抜かされることもあるけれど、急行でも各駅停車でも最終的に同じ目的地に着く。自分の人生を振り返っても、コツコツ進んできた結果の今があります。親になって、より各駅停車のよさがわかってきたかもしれません。焦ったりイライラしたりしたときは「各駅停車、各駅停車」とつぶやいてみるのもおすすめですよ。

読者にメッセージを送る吉川正洋さん

――各駅停車の子育てを実践されてきたなかで、工夫や楽しんできたことなどを教えてください。

子どもが生まれる前に、「大変」という言葉はNGワードにしようと妻と約束していたんです。子どもを授かったことはありがたいことなので、「大変」はおかしいかなと。でも、子育てがはじまったらめちゃくちゃ大変で、OKワードに変えちゃいました(笑)。

鉄道でいうと、ダイヤ改正ですね。停車駅を増やすとか本数を少し減らすとか、鉄道が時代に合わせて変わっていくように、わが家もどんどん子育て方法を改正してきました。そんな感じで、頭でっかちにならずに柔軟になることも子育てを楽しむコツだと思います。

また、娘のトイレトレーニングが、ちょうどイヤイヤ期と重なりまして。いろいろな育児本を読んで試したけど全部ダメでした。そこで、僕が芸人だからというのもあるのですが、体をはってやってみようと思い、トイレトレーニングを応援する「ピンクおじさん」に変装してみたんです。

娘がトイレに行った瞬間、子ども用のピンクのレインコートを着て、シャンプーハットをかぶって、舞台用の厚底メガネをかけて、「がんばれ! がんばれ!」ってトイレの前で応援するんです。子どもって、おもしろいものが好きだから、「ピンクおじさんに会えるからトイレに行く」と言いはじめて、すぐにおむつが取れました。

――今、子育てを大変だと思われている方にメッセージをいただけますか。

イヤイヤ期がある2歳~3歳ごろの子育ては本当に大変ですが、たまらなくかわいい時期でもあります。トイレトレーニングをしていた娘も、今は小学6年生です。各駅停車で来たつもりでしたが、振り返ると特急のようなスピードで、あっという間に子どもは成長していくものですね。

将来、子育てを振り返ったときに、大変だったけど、子どもといい時間が過ごせたなと思えるように、今を楽しんで子育てをしていってください。

押しつけず、子どもの「好き」が加速したら背中を押す。

子どもが抱く興味について話す吉川正洋さん

――お子さんと一緒に鉄道を楽しまれることはありますか。

子どもたちが鉄道に興味を持てば一緒に楽しむと思いますが、押しつけることはしません。僕が鉄道に興味を持ちはじめたのは、だいたい2歳のときで、親の影響ではなく気がついたら大好きになっていて、もう40年以上鉄道好きが続いています。

勉強もそうですが、好きになれと言われて好きになるものじゃないですよね。今、息子は総理大臣に興味があるらしく、歴代総理大臣の名前を数日で覚えてしまったんです。僕も、子どものときに覚えた路線の駅名は今でも言えます。子どもが自発的に好きになったものに対する集中力、吸収力は本当にすごいんですよね。

だから、親として、子どもの「好き」を止めないようにしています。「好き」が加速しているとき、電車でいうとノッチ(加速させるためのコントローラーの段階)を上げているとき、車でいうとアクセルを踏み込んでいるときは、「その調子、その調子」と声をかけて、背中を押すようにしています。

僕ら親ができるのは、安全確認だけ。運転士さんの「出発進行!」というかけ声は、出発信号機が青に変わったのを確認してから言うんです。それと同じですね。

ただ、鉄道のようにあまり安全すぎても人生はおもしろくないと思うので、たまには冒険もしてほしいです。僕は、小学1年生のときから1人で電車に乗って出掛けていたんですけど、お金を落として家に帰れなくなったりと、いろいろなハプニングを経験しました。ハプニングが起きたときにどう乗り切るかは、体験しないとわからないことですよね。もちろん限度はありますが、どんどん外に出掛けていってもらいたいと思います。

保険も鉄道旅も同じ。子どもの大切さを実感するからこその保険。

子どもが産まれてからの金銭感覚について話す吉川正洋さん

――お子さんたちの将来のために、お金に対する意識は変わりましたか。

変わりました。僕は金銭感覚がどんぶりで、以前は、財布にあるお金を全部使って後輩におごったり、趣味の鉄道にもどんどんお金を費やしたりで、いつもお金がなかったんです。でも、子どもが生まれてからは、子どもがやりたいことはなるべくやらせてあげたいし、子どもを優先に考えるようになりました。自分に対して使うお金は我慢することを覚えましたよ(笑)。

子どもの将来に備えて、保険もいくつか加入しました。その点は、妻がわが家の家計をしっかりコントロールしてくれているのでありがたいです。教育費も、学資保険には加入していませんが、代わりになるような金融商品で備えています。僕の収入が月によって違うので、月払いではなく年払いができるものを選んでくれました。

ちなみに、わが家はお小遣い制で、僕は、毎月お小遣いの中で交通費や衣装代をやり繰りしています。ただ、月収が高かった月には「がんばったね」と少し値上げしてもらえる。小さなことかもしれませんが、努力が報われるっていうのはうれしいですよね。

――最後に、吉川さんにとっての“保険”を教えてください。

たとえば、僕は鉄道旅に出掛けるときは、必ず予備のメガネを1つ持っていくんです。万が一、掛けているメガネが壊れても、予備があれば絶景を見逃さずにすむから。安心があったうえで行動したほうが、より楽しく過ごせます。保険は、この感覚に近いものがありますね。

実は、子どもが生まれる前は、保険をかけると守りに入っちゃいそうだから必要ないって考えるタイプだったんです。でも、子どもが生まれて家族の大切さを実感すると、やっぱり必要なものなんだと、あらためて思いますね。

鉄道車両は、フェールセーフといって、車両の一部が故障したら、ちゃんともう1つの機器が働いて安全に作動するように設計されています。もしものときの備えは大切で、それが保険の役割でもあるのかなと思います。やはり自分に何かがあったとき、妻や子どもに苦労をかけたくないですもんね。それでは、今日も安全第一で鉄道旅に行ってきます!


吉川 正洋
1977年生まれ。太田プロダクション所属。2000年に相方の長嶋トモヒコとともに、お笑いコンビ・ダーリンハニーとしてデビュー。趣味は、読書・散歩・鉄道(乗り鉄)・野球観戦(横浜DeNAベイスターズ)。スカパー!鉄道チャンネル「新・鉄道ひとり旅」をはじめ、テレビ・ラジオ・ライブ・イベントなどさまざまなメディアで活躍中。


※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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(登)C22N0293(2023.3.16)
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