学資保険に関する税金を解説!知っておきたい課税のケースや控除の話。 学資保険に関する税金を解説!知っておきたい課税のケースや控除の話。

学資保険に関する税金を解説!知っておきたい課税のケースや控除の話。

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※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。

子どもの教育資金を準備する方法として学資保険を検討している方も多いと思います。将来、まとまったお金を学資金(祝い金)や満期保険金として受け取れるのは安心ですが、「お金を受け取るときに税金がかかるのだろうか……」と心配される方もいるのでは。そこで、学資保険に関する税金や控除について、日々多くの税務相談に応じている税理士の渋田貴正さんに教えていただきました。

目次

学資保険を受け取るときにも税金がかかる?

学資保険を受け取るときにも税金がかかる?

学資保険は生命保険の一種なので、保険金を受け取るときにはほかの生命保険と同様、税金がかかる場合があります。どのような場合に課税されるのかみていきましょう。

学資保険の学資金や満期保険金にかかる税金は、「受取人」と「どのような受け取り方をするか」によって異なります。

契約者と学資金・満期保険金を受け取る人が「同じ」場合は「所得税」。

契約者(保険料を払い込む人)と学資金・満期保険金を受け取る人が同じ場合には、「所得税」が課されます。

さらに、学資金・満期保険金を一括で受け取るか、複数回に分割して受け取るかによって所得税の種類が違ってきます。

入学祝い金などの満期保険金は「一時所得」、年金のように毎年受け取るタイプの学資金は「雑所得」として課税されます。

一時所得 「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」のこと。
懸賞金や競馬の払戻金などが該当し、一括受取の満期保険金なども一時所得扱いになる。
雑所得 「利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得」のこと。
公的年金や副業による収入などが該当し、年金のように毎年受け取る学資金も雑所得扱いになる。

取材内容をもとにミラシル編集部にて作成

参考:国税庁「No.1490 一時所得」
参考:国税庁「No.1500 雑所得」

契約者と学資金・満期保険金を受け取る人が「異なる」場合は「贈与税」。

たとえば、親が契約者として保険料を払い込み、子どもが受取人となった場合は、保険料を負担する人と受け取る人が違うので、学資金や満期保険金を贈与したものとして「贈与税」が課されます。

参考:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」

多くの人の場合、受取人を契約者に設定しておくほうが無難。

学資保険の学資金や満期保険金は所得税や贈与税の対象になります。

なお、贈与税には110万円の基礎控除(暦年課税の場合)があるものの、学資保険のように教育資金をまとめて受け取るような保険商品だと、贈与税が課される金額を受け取ることが多いと思われます。

個人の状況にもよりますが、一般的に贈与税は所得税より高額の税金を納めなければいけないため、所得税の対象として受け取るほうが負担する税金が少なく済む可能性が高いと言えるでしょう。

参考:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」

学資保険に税金がかかるケースとは?

学資保険に税金がかかるケースとは?

それでは、学資保険で学資金や満期保険金を受け取る際に税金がかかるのはどのような場合なのか、シミュレーションしながらみていきましょう。

ケース1:50万円(特別控除額)を超える利益が出た場合(一時所得)。

学資保険において、一時所得として計上される金額は次のように計算します。

一時所得として計上される金額の計算方法

※ 50万円の特別控除額はほかに一時所得があれば合算されて適用されます。

たとえば、計算がしやすいように返還率(返戻率)が110%の商品でシミュレーションしてみます。これまでに払い込んだ保険料の総額が300万円の場合、受け取った満期保険金は330万円になるため、一時所得は以下のようになります。

330万円-300万円-30万円=0円

この場合、一時所得は0円になるので税金はかかりません。つまり、保険料を払い込んだ金額より受取額が多くなっても、受取額と払い込んだ金額との差額が特別控除額の50万円を超えなければ税金はかからないのです。返還率が110%の商品であるならば、500万円を超える高額の契約でなければ税金はかかりません。

また、一時所得の課税対象はその2分の1の金額とされています。つまり10万円の一時所得が出た場合は5万円(10万円×1/2=5万円)が課税の対象になります(※)。

※ 2013年1月1日から2037年12月31日までの間に生じる所得については、所得税とともに復興特別所得税が源泉徴収されます。

このように、学資金・満期保険金を一時所得として受け取る場合は、特別高額な商品を契約しない限りは税金がかからないことが多く、また、かかったとしてもそれほど高額ではないと言えるのではないでしょうか。

参考:国税庁「No.1490 一時所得」

ケース2:保険料を払い込んだ人が満期保険金を分割するような形で受け取った場合(雑所得)。

それでは、年金のように毎年学資金を受け取る「雑所得」の場合はどうでしょうか。雑所得には一時所得のような特別控除額がなく、課税対象とする金額を2分の1にして計算することもありません。そのため雑所得全額を給与所得などほかの所得と合算して所得税を計算します。

雑所得の計算方法。

雑所得として換算される金額は総収入金額から必要経費を引いた金額です。学資保険での総収入金額とは、「毎年受け取る学資金の金額」で、必要経費は「毎年受け取る学資金の金額×払込保険料総額÷総支給見込額」で求められます。

学資保険において、雑所得として計上される金額は次のように計算します。

雑所得として計上される金額の計算方法

こちらも計算がしやすいよう、払込保険料総額300万円、総支給見込額400万円(大学入学時から毎年100万円を4年間受け取る)の場合で計算してみると、雑所得額は25万円になります。

100万円-(100万円×300万円÷400万円)=25万円

雑所得には特別控除額がなく、課税対象とする金額を2分の1にして計算するといったこともないので、25万円がそのまま課税対象額となります(※)。

※ 2013年1月1日から2037年12月31日までの間に生じる所得については、所得税とともに復興特別所得税が源泉徴収されます。

分割でお金をもらえるのは助かりますが、年金のように毎年学資金を受け取ると、雑所得として計算されるため、場合によっては、満期保険金としてまとめて受け取るよりも税金が多くかかるので注意しましょう。

契約者が会社員などの給与所得者で、会社で年末調整をする人は、雑所得や一時所得などの合計が年間20万円までの場合は確定申告が不要になるため、雑所得や一時所得などに税金がかからない場合もあります。

参考:国税庁「No.1500 雑所得」
参考:国税庁「確定申告が必要な方」

学資保険は生命保険料控除の対象。

学資保険は生命保険料控除の対象

子どもの将来の教育資金を備えるための学資保険。税制上は生命保険として分類されるので生命保険料控除の対象になり、払い込んだ保険料に対して所得税と住民税が軽減されます。

ここからは、生命保険料控除とはどんなものか、控除額はいくらなのか、みていきましょう。

生命保険料控除とは?

納税者が「生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」を払い込んだ場合には、一定の金額の所得控除を受けられます。これを生命保険料控除といいます。

学資保険は教育資金の準備を目的とした貯蓄性のある保険で、「一般生命保険料控除」の対象となります。

参考:国税庁「No.1140 生命保険料控除」

学資保険はどれくらいの税制優遇を受けられる?

それでは、学資保険はいったいどれくらいの税制優遇が受けられるのかみていきましょう。

生命保険料控除の額は、払い込んだ生命保険料に応じて一定の方法で計算します。学資保険が対象となる一般生命保険料控除では、所得税が年間で最大4万円(生命保険料控除全体で最大12万円)、住民税が年間で最大2万8,000円(生命保険料控除全体で最大7万円)が所得控除され、税負担が軽減されます(※)。

※ 2012年1月1日以降に契約を締結した新契約の場合。2011年12月31日以前に契約を締結したものは旧契約として扱われ、保険料控除の取り扱いが異なる。

控除額は年間の払込保険料などによって、以下のように変わります。

新契約(2012年1月1日以降に締結した保険契約など)にもとづく場合の計算式

         所得税          住民税
年間の払込保険料など 控除額 年間の払込保険料など 控除額
2万円以下 払込保険料などの全額 1万2,000円以下 払込保険料などの全額
2万円超
4万円以下
払込保険料など×1/2+1万円 1万2,000円超
3万2,000円以下
払込保険料など×1/2+6,000円
4万円超
8万円以下
払込保険料など×1/4+2万円 3万2,000円超
5万6,000円以下
払込保険料など×1/4+1万4,000円
8万円超 一律4万円 5万6,000円超 一律2万8,000円

参考:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
参考:財務省 財務総合政策研究所「財政金融統計月報第817号」

注意しておきたいのは、上記の控除額が実際に軽減される税負担額とは言えないこと。実際に軽減される税負担額は「控除額×税率」で計算できます。なお、所得税の税率は契約者の年収や配偶者の状況などの条件によって異なり、住民税の税率は一律で10%です。

たとえば、年間の払込保険料が一般生命保険料控除を満額受けられる8万円超で、所得税が10%の人であれば、以下のような計算で、実際に軽減される税負担額は6,800円となります。

所得税:控除額4万円×税率10%=4,000円

住民税:控除額2万8,000円×税率10%=2,800円

合計:6,800円

なお、上記の金額は新契約の控除額で計算をしています。旧契約の場合は金額が変わります。詳しくは国税庁のホームページなどをご確認ください。

参考:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
参考:総務省「個人住民税」

生命保険料控除の注意点は?

生命保険料控除は契約者本人のほか、契約者以外の人が保険料を支払っている場合は、その支払者が申請をする点に注意しましょう。

会社員の場合は年末調整で申請することができます。「生命保険料控除証明書」を「給与所得者の保険料控除申告書」に添付して勤務先に提出してください。個人事業主の場合は確定申告をして申請します。「生命保険料控除証明書」を添付して確定申告を行いましょう。

また、生命保険料控除は生命保険料を支払った金額を対象にしているので、解約までに支払った保険料が控除の対象になり、未払いの保険料は控除の対象にならないので注意しましょう。

学資保険で多額の税金を納めるケースは少ない。税制優遇を受けられるメリットも。

学資保険(※)は受け取る人や受け取り方によって税金がかかる場合もありますが、契約者と受取人を同じにした学資保険の契約であれば税金を納めるケースは少なく、かかった場合でも少ない金額なのでそれほど心配する必要はないでしょう。

また、生命保険料控除の税制優遇を受けられることもポイント。教育資金を着実に準備できるのも学資保険の大きな魅力ですね。

※ 学資金・満期保険金の受取総額が保険料の総額を下回る場合があります。また、解約返還金は多くの場合、保険料の累計額を下回ります。

写真/PIXTA


渋田 貴正
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、相続登記をはじめ相続関係手続きや、会社の設立など法人関係の登記に特化している司法書士事務所V-Spiritsの代表。また、V-Spiritsグループの税理士として各種税務相談にも対応している。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※ 税務の取り扱いについては、2023年2月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。

(登)C23N0005(2023.4.12)
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