不妊治療がつらい。ストレス・悩み・不調を経験者夫婦が語る【医師監修】 不妊治療がつらい。ストレス・悩み・不調を経験者夫婦が語る【医師監修】

不妊治療がつらい。ストレス・悩み・不調を経験者夫婦が語る【医師監修】

投稿日:
#健康
お気に入り
     

※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。

不妊治療は心身に大きな負担を伴うだけでなく、終わりがみえないことから不安や焦りを感じて消耗してしまう夫婦も少なくありません。この記事では、実際に不妊治療を行い、一児を授かったOさん夫婦(仮名)に経験談を語っていただきました。後半では、長年不妊治療に携わる産婦人科医の齊藤英和先生に、現在の不妊治療の概要について伺いました。

目次

不妊治療がつらいと感じる人は多い。Oさん夫婦のケース。

不妊治療がつらいと感じる人は多い。Oさん夫婦のケース。

お話を聞いたのは、Oさん(夫38歳・妻35歳)夫婦。結婚して3年以上子どもができないことから、夫32歳・妻29歳のときに、不妊治療を開始しました。最初はタイミング療法(もっとも妊娠しやすいタイミングで性交渉を行う方法)や人工授精(排卵の時期に夫の精子を子宮内に注入する方法)を試みましたが、検査を繰り返すうちに夫の精子の動きがよくないことが判明。より妊娠確率の高い顕微授精(卵子に直接精子を注入する方法)へと切り替えました。

顕微授精では、卵子を体外に取り出す「採卵」が行われます。Oさんは12個の卵子を採取でき、そのうち8個が胚盤胞(受精後5日程度の、胎盤と胎児になる部分が確認できる状態になった胚)まで育ち、冷凍保存しました。1回目の移植で妊娠しましたが、その後に流産。ショックもあって2か月間休んだのちに、再び計2回移植しましたがうまくいかず、不妊治療を半年間休むことに。その後、4回目の移植で妊娠し、無事に出産。現在は2歳9か月になった男の子と3人で暮らしています。

以下、Oさん夫婦に当時を振り返ってお話しいただきました。

参考:厚生労働省「不妊治療について」(2022年)

むくみやイライラ、体調の変化。

──不妊治療中、つらいと感じたことはありましたか。

妻:採卵のためにホルモン剤を注射していたのですが、むくみのほか、ものすごくイライラが止まらなくなってしまうことがよくありました。自分が自分じゃないみたいな感じがあって、制御できないんです。しょっちゅうイライラしていました。

夫:いつもは怒らないようなことで妻が怒っていて、冷静になった瞬間に後悔していたりするので、「制御できていないんだな、しんどいんだな」と感じました。

僕にできることはむくみ対策のマッサージくらいだし、家にいてもささいなことでイライラを募らせてしまうので、お互いに話し合ってどちらかが家を留守にするなど、うまく距離をとるようにしていました。

「そんなに怒らなくても……」と感じることも正直ありましたが、普段の妻の状態を知っているので、夫婦関係がぎくしゃくすることはなかったです。

頻繁に行われる採血や検査のつらさ。

頻繁に行われる採血や検査のつらさ。

──治療を進めるうえで、困ったことやストレスだったことはありますか。

妻:採血検査が1回、2回だったら大きなストレスにはならないですが、頻繁にあるのがストレスでした。採卵のときは自分でもホルモン剤を注射しなければいけないし、内診もあるので毎回つらかったです。

それに、働きながらのスケジュール管理がとても大変でした。急に「明日来てください」「今日の午後もう1回来てください」ということもあるので、なかなかほかの予定を入れられなくて……。どうしても優先させたい仕事があるときは、治療をお休みすることもありました。

緊急帝王切開で出産。妊娠~出産までのつらさ。

──4回目の移植で妊娠・出産されましたが、経過はいかがでしたか。

妻:最初の移植で流産を経験していたので、「今回は本当にうまくいくんだろうか」「とにかく無事に生まれてほしい」と、ずっと怖かったです。

妊娠37週になり臨月に入ったその日、妊婦健診に行ったら「心音が聞こえません」と言われて、急きょ帝王切開の手術をすることになりました。私はそれまで健康に自信があるほうだったのですが、妊娠・出産は何もかも自然にはいかなくて……。息子が生まれて、初めて抱っこしたときに、本当にほっとしたことを覚えています。

不妊治療前に医療保険に入っておけばよかった。

不妊治療前に医療保険に入っておけばよかった。

──不妊治療は、総額いくらかかりましたか。

妻:不妊治療が保険適用になる前だったので今ならもう少し安くなると思うのですが、2年間でトータル200万円程度でした。私が治療を受けたクリニックでは、当時は採卵が約30万円、1回の移植で約10万円。これに日々の健診料・薬代・採血や卵管造影の検査料など、いろいろとかかりました。

流産や帝王切開で入院もしたので、そのぶんの費用もかかりました。

お金のことを考えると落ち込みそうなので、当時は考えるのをやめていました。

──とても大きな負担でしたね。

妻:1つだけ後悔しているのは医療保険に入っていなかったことです。私は流産や帝王切開で何回か入院しましたが、医療保険に入っていなかったので、費用の自己負担がそれなりにありました。

同じく不妊治療をしていた知人は、採卵のときに卵巣がパンパンに腫れて10日間入院したと言っていました。こうした妊娠・出産時の不測の事態に備えて、医療保険に入っておけばよかったと心から思っています。

つらさを乗り越えるために、自分にご褒美を。

──不妊治療を乗り越えるためにしたことはありますか。

妻:不妊治療はなにかとストレスがたまるものなのに、いろいろなところで「ストレスをため込まないように」と言われてもな……と思っていました。だから、なるべく根を詰めてがんばりすぎないように意識していました。

一生懸命に努力しても報われないこともあるのが不妊治療です。検査後には自分へのご褒美としておいしいケーキを食べるなど、治療のなかでも小さな楽しみをつくるようにしていました。

夫:一番大変なのは妻なので、自分にできることはできる限り自分でやるようにしました。ただ、妻が「体を動かしたいから今日は私が洗濯をするね」という日もあるので、そのときどきの妻の様子をみながら動くようにしていました。

「子どものいない人生設計」も前向きに話し合っておく。

──2年間の不妊治療を振り返って、どう思われますか。

夫:不妊治療に成功して子どもが生まれたらもちろんすごく幸せなことですが、子どもを生む以外に夫婦の選択肢がないと、治療がどんどんつらくなっていきます。子どもがいない人生設計のことも、時間をつくって2人で前向きに話し合っていました。

妻:先が長く、なかなか希望がみえなかったので、子どもがいない人生の“プランB”を夫婦で考えたのはよかったです。「プランBに移行したとしても、充実した人生だよね」と話し合えたことが、救いになったと思います。

不妊治療について、産婦人科医が解説。

不妊治療について、産婦人科医が解説。

ここからは、長年不妊治療に携わる産婦人科医の齊藤英和先生に、不妊治療の方法や副作用などについて伺いました。

人工授精・体外受精・顕微授精の違い。

──不妊治療のそれぞれの方法について教えてください。

齊藤:不妊治療には、タイミング療法・人工授精・体外受精・顕微授精・凍結融解胚移植の5つがあります。タイミング療法は、もっとも妊娠しやすい排卵日に性交渉をもつ方法です。人工授精は、もっとも妊娠しやすい排卵日に、採取した精子を洗浄し子宮内に直接注入する方法です。体外受精と顕微授精は、卵子を子宮外に取り出す「採卵」が必要です。月経の3日目くらいから、ホルモン剤の服薬や注射をして卵子を包む卵胞を育てて、20ミリ近くまで成長したら、熟すための注射を打って35時間後くらいに採卵します。

体外受精の場合は、培養液の中の卵子に洗浄精子をかけて受精させます。顕微授精は、卵子1個につき洗浄精子を1個入れて3日~5日培養を行ったあと、発育のいいものを選び、子宮内に戻して妊娠するかどうかをみていく方法です。凍結融解胚移植は、体外受精や顕微授精の胚移植後に残った胚や、採卵周期で発育したすべての胚を凍結保存し、後の月経周期に凍結胚を融解し子宮内に戻す方法です。

参考:厚生労働省「不妊治療について」(2022年)

不妊治療の副作用について。

──今回お話を伺ったOさんは、採卵時のホルモン剤の副作用がとてもつらかったといいます。

齊藤:ホルモン剤の影響で黄体ホルモンの値が高くなるので、すべての人ではありませんが、影響を受けやすい体質の人はむくみやイライラの2つが特に顕著に表れることがあります。

また、ごくまれにですが、ホルモン剤が原因で卵巣がねじれて腹痛を起こし、緊急手術をしなければいけなくなる場合もあります。何か症状を感じたら、速やかに主治医にご相談ください。

不妊治療にかかるお金の相場。

──不妊治療にかかる金額は、一般的にどれくらいでしょうか。

齊藤:2022年4月から不妊治療が保険適用になり、各種検査や薬代なども3割負担になったので、治療する夫婦の負担額が減少しました。私の担当する不妊治療に限って言うと、1回の体外受精にかかる金額は約20万円前後となっています。

保険適用後の傾向として、患者さんが、人工授精・体外受精・顕微授精へとステップアップする判断が早くなったように思います。以前は長くタイミング療法を試す人も多かったのですが、早めに人工授精や体外受精などにトライする人が増えた印象があります。

参考:厚生労働省「不妊治療に関する取組」

これから不妊治療を受ける夫婦が心がけたいこと。

──不妊治療を受ける夫婦にアドバイスをお願いします。

齊藤:保険適用になったことから、以前よりも不妊治療を受けやすくなりました。しかし、年齢が高いほど妊娠しにくくなり、より高度な治療が必要になることには変わりありませんので、なるべく早いうちの決断が求められます。

また、健康でなければ妊娠や出産に関わるリスクが高まりますし、出産後の長い子育て期間中も大変になります。ぜひ今のご自身の健康に気をつけながら、治療を受けていただきたいと思います。

【まとめ】不妊治療に焦らず向き合うには。

以上、不妊治療についてOさん夫婦と齊藤先生にお話を伺いました。Oさんが後悔していると話していたのが未加入だった医療保険ですが、不妊治療にはトラブルによる急な入院など、不測の事態も考えられます。

女性向けの医療保険の中には、子宮や卵巣などに関わる女性特有の疾病による入院や手術、妊娠・分娩中のトラブルによる入院や手術などを保障してくれるものもあります。焦らず、ゆったりした気持ちで治療に取り組むためにも、医療保険に加入して備えを万全にしておきましょう。

写真/PIXTA イラスト/こつじゆい


齊藤 英和
日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター副センター長を経て、2019年に栄賢会梅ヶ丘産婦人科ARTセンター長に就任。日本の体外受精に黎明期から携わり、多くの難治性不妊の診療を実施してきた。著書に『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(共著・講談社)、『後悔しない「産む」×「働く」』(共著・ポプラ新書)など。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

(登)C23N0015(2023.4.19)
お気に入り
     
キーワード
#健康 #女性に多い病気 #妊娠中の悩み #医療保険 #妊娠・出産
mirashiru_kaiinntouroku.jpg
ミラシルの会員特典ご紹介!
投稿日:
#人と暮らし