貯蓄率の目安は?家計からどれくらい貯金するべき?将来に備える方法は? 貯蓄率の目安は?家計からどれくらい貯金するべき?将来に備える方法は?

貯蓄率の目安は?家計からどれくらい貯金するべき?将来に備える方法は?

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20代~30代、スキルアップもしていきたいし、趣味や余暇を楽しみたい。とはいえ、老後の備えも必要そうで……。いったい収入のどのくらいを貯蓄に回せばいいのか、みんなどのくらい貯蓄しているのか、気になる人も多いでしょう。

そこで、第一生命経済研究所主席研究員の谷内陽一さんに、「貯蓄率」についての解説と、貯蓄率を踏まえ20代~30代は「将来の備え」についてどう考えるべきかアドバイスいただきました。

目次

貯蓄率とは?

貯蓄率とは?

収入に対して、どの程度を貯蓄に回すのがいいのか、その目安とされるのが「貯蓄率」です。貯蓄率はどのように計算されているのでしょうか?

「貯蓄率」の考え方は1つだけではない!?

公的な統計で「貯蓄率」というと、内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算(GDP統計)」で算出される「家計貯蓄率」を指します。これは、家計が得た可処分所得のうち、消費支出に回らずに手もとに残った貯蓄の割合を計算したものです。

しかし、これは一国の経済における家計全体の状況を反映したもので、私たちが連想する家計の実態とはやや乖離しています。そのため多くの場合、「貯蓄率」というとき、上述した「家計貯蓄率」ではなく、総務省「家計調査」の「黒字率」を貯蓄率として参考にすることが多いようです。よって、今回は「黒字率(貯蓄率)」として、以下解説していきます。

参考:内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算(GDP統計)」

計算方法は?

総務省の「家計調査」は「国民生活における家計収支の実態を把握」するため、毎月実施されています。「黒字率」は、収入から税金・社会保険料を払ったあとに残る「可処分所得」のうち、消費に使わなかった残り金額(黒字)の割合を算出したものです。

具体的には、次の式で計算されます。

黒字率=黒字÷可処分所得×100

一点、注意が必要なのは、黒字率はあくまで「消費しなかった額」の割合だということ。食費・被服費などは消費支出として可処分所得から引かれますが、ローンの返済額などは消費支出に含まれず、黒字として扱われます。そのため、実態よりは高く出る傾向があります。

たとえば2人以上の世帯の黒字率をみると、2022年は平均36.0%です。一方、「国民経済計算(GDP統計)」の家計貯蓄率は2021年で7.2%。統計の時点で、2つの貯蓄率の間にはズレが生じており、家計の実態とのズレを感じる人はいるでしょう。

参考:総務省統計局「家計調査 用語の説明」

参考:総務省統計局「家計調査 家計収支編 第3-2表 世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出」(2022年)

参考:内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算(GDP統計)」(2021年)

年齢別の黒字率(貯蓄率)は?

平均黒字率36.0%という数字は全世代の平均です。20代~30代の黒字率(貯蓄率)はどのくらいなのでしょうか? 2人以上の世帯の年齢別のデータ(2022年)をみてみると、20代および30代とも45.0%でした。

年齢別の黒字率の状況(2022年:2人以上の世帯・1か月間)

 世帯主の年齢可処分所得黒字黒字率
平均50万914円18万286円36.0%
勤労者世帯~29歳43万9,483円19万7,859円45.0%
30歳~39歳49万8,393円22万4,342円45.0%
40歳~49歳53万4,558円20万8,152円38.9%
50歳~59歳55万95円18万7,447円34.1%
60歳~69歳40万7,449円9万8,770円24.2%
70歳~37万1,730円11万1,742円30.1%
無職世帯65歳~21万6,253円-2万2,666円▲10.5%
75歳~20万5,544円-1万5,266円▲7.4%

参考:総務省統計局「家計調査 家計収支編 第3-2表 世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出」(2022年)より監修者が作成

可処分所得は40代から50代にかけて増えるものの、生活費や教育費などの支出がかさむため、年代が上がるにしたがって黒字率(貯蓄率)は下がる傾向にあります。また、引退して無職になると貯蓄を取り崩す生活になるため、黒字率(貯蓄率)はマイナスになります。

平均貯蓄率が4割近くって、本当?

貯蓄率の全体平均が36.0%。20代から30代が45.0%と聞いて、「ずいぶん多いな……」「みんな、そんなに貯金しているの!?」と驚くかもしれません。

でも、これも統計データではよくあること。収入が高い家計のほうが貯蓄に回す余裕があるため黒字率(貯蓄率)は高くなり、平均値を上げてしまうのです。また、前述したように、ローンなどの返済額が黒字に含まれている点にも注意が必要です。

国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、25歳~29歳の平均給与は362万円、30歳~34歳で400万円、35歳~39歳で437万円。それと照らし合わせると、20代~30代はだいたい収入の25%程度を貯蓄に回すのが平均的だといえそうです。

収入別の黒字率の状況(2022年:2人以上の勤労者世帯・1か月間)

世帯年収可処分所得黒字黒字率
平均50万914円18万286円36.0%
200万円未満15万8,476円▲2万4,133円▲15.2%
200万円~250万円21万1,551円▲1万1,561円▲5.5%
250万円~300万円24万4,537円3万6,984円15.1%
300万円~350万円27万5,379円4万5,757円16.6%
350万円~400万円30万3,997円8万1,633円26.9%
400万円~450万円31万4,103円8万1,799円26.0%
450万円~500万円35万5,639円10万4,420円29.4%
500万円~550万円36万2,901円10万9,970円30.3%
550万円~600万円39万3,443円13万2,157円33.6%
600万円~650万円42万4,013円14万7,264円34.7%
650万円~700万円44万6,583円15万3,609円34.4%
700万円~750万円47万123円16万9,515円36.1%
750万円~800万円51万1,792円20万3,129円39.7%
800万円~900万円55万3,323円19万8,900円35.9%
900万円~1,000万円60万8,042円22万2,263円36.6%
1,000万円~1,250万円69万8,065円26万6,994円38.2%
1,250万円~1,500万円84万4,048円38万9,408円46.1%
1,500万円~103万5,312円47万7,118円46.1%

参考:総務省統計局「家計調査 家計収支編 第2-3表 年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出」(2022年)より監修者が作成

参考:国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」

理想的な貯蓄率は?

20代~30代の年収平均から考えると貯蓄率は25%程度。ただし、この数字も参考程度に考えればいいと思います。「収入の何%を貯蓄に回すべき」と言い切ることはなかなかできません。

価値観は多様ですし、お金の使い方は生き方にかかわることです。貯蓄より優先順位が高いことだってあるでしょう。大切なのは、ライフプランに合った貯蓄をしていくこと。機械的に導き出された統計の値ではなく、あなた自身の人生を考え、備えていきましょう。

20代~30代、どう備える?

20代~30代、どう備える?

趣味やスキルアップにお金はかかるし、結婚や出産といったライフイベントにもお金が必要。さらに、老後の備えも……と考えている人もいるでしょう。20代~30代は、どんな方法で将来に備えていけばいいのでしょうか?

預貯金

結婚や出産を考えている人は、結婚資金や教育資金の備えについて検討しているかと思います。そういった使う時期が近いものについては、流動性のある預貯金などで準備をしていきましょう。積立定期預金や会社の財形貯蓄など、一定の金額を強制的に引くしくみの商品を活用するのがおすすめです。

投資

投資で資産運用するのは元本割れリスクが怖い、という人がいるかもしれません。しかし、若いうちからはじめて長期間続けることで、一般的に元本割れリスクは低減・抑制されますし、商品によっては複利効果を期待できる場合もあります。

たとえば、2024年から拡充されることもあって注目を集めているNISA(少額投資非課税制度)は、配当金・譲渡益などが非課税です。まずは税制優遇の手厚いものから投資をはじめるとハードルが低いのではないでしょうか。

参考:金融庁「NISA特設ウェブサイト」

確定拠出年金

貯蓄や投資をしつつ、「公的年金以外にも備えたい」「より豊かな老後を目指したい」のであれば、確定拠出年金をはじめておくのも悪くないでしょう。会社が企業型確定拠出年金(企業型DC)を実施していればそれを活用できる場合もありますし、個人型確定拠出年金(iDeCo)に自ら加入する方法もあります。

原則60歳までお金を引き出せないのはデメリットと捉える見方もありますが、「老後資金」と決めてしまえば、むしろ、流動性のなさは「よほどでないと手をつけられないお金」としてプラスに働きます。

自己投資

いわゆる「貯蓄」ではありませんが、そのぶんのお金を「自分への投資」に回すというのも考え方の1つです。資格取得など自己投資にお金を回すことで、将来的な収入アップが期待できるからです。

仕事に打ち込んだり、スキルアップをしたりして収入が上がれば、貯蓄や投資に回せる額も増えるでしょう。また、会社員が加入する厚生年金保険や企業年金は、基本的に給料が高ければ年金支給額も高くなりますので、将来の年金額のアップにつながる可能性もあります。

将来に備えるために個人年金保険が有効なポイントは?

将来に備えるために個人年金保険が有効なポイントは?

将来に備える方法は前述したとおりいくつかありますが、老後資金を着実に備える方法として「個人年金保険」も有力な選択肢の1つとなります。そのメリットとデメリットを整理しておきましょう。

着実に老後資金を備えられる。

個人年金保険の保険料は、口座振替かクレジットカード払いでの支払いとなります。自動的に保険料が支払われていくので、あまり手間をかけずに、老後資金の準備をすることができます。また、「定額」タイプであれば、契約時に受け取る年金額が決まるので、老後のプランを立てやすくなります。

所得控除を受けられる。

一定の条件を満たす個人年金保険であれば、個人年金保険料控除を受けることができます。所得税であれば最高4万円、住民税であれば最高2万8,000円が所得から控除されます(※)。

※ 2012年1月1日以降に締結した保険契約等の場合。

参考:国税庁「No.1140 生命保険料控除」

保険料の支払い方法が柔軟。

個人年金保険は契約した保険商品の上限までであれば、保険料を自由に設定できます。支払い方も、月払い・半年払い・年払いから選べるケースが多いようです。

20代~30代で、月々の決まった額の支払いは厳しいという場合でも、たとえば、ボーナス時に年2回まとまった額を個人年金保険料の支払いに充てる、という使い方もできます。

デメリットも解説。

もちろん、個人年金保険にもデメリットがあります。解約をすると、多くの場合、解約返還金はそれまでに払い込んだ保険料の総額を下回ってしまいます。

また、契約時に将来受け取る年金額が確定している「定額」タイプはインフレに弱い、という特徴があります。こうしたデメリットも、加入の際には考えておく必要があるでしょう。

【まとめ】今を大切にしながら、ライフプランに応じて備えよう。

20代~30代の貯蓄率は25%程度を目安に、この数字はあくまで参考程度に考えればいいでしょう。自分のライフプランに合った貯蓄をすることが大切です。

あくまで一例ですが、たとえば使途が決まっていることへの準備や流動性のある備えとして毎月、一定の金額の預貯金をし、月1万円程度をiDeCoに充て、半年払いで個人年金保険を活用するというのは、20代~30代の貯蓄の方法として有意義だと思います。

ライフプランが固まりきらない20代、結婚や出産など人生が大きく動きがちな30代、なかなか、老後のことまで考えられないかもしれませんが、今を大切にしながら、未来に備えていきましょう。

写真/PIXTA イラスト/こつじゆい


谷内 陽一
1973年、北海道生まれ。第一生命経済研究所主席研究員。社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員、日本年金学会副代表幹事、埼玉学園大学非常勤講師などを兼任。社会保険労務士、公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、DCアドバイザー、1級DCプランナー。著書に『WPP シン・年金受給戦略』(中央経済社)など。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※ 税務の取り扱いについては、2023年2月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。

(登)C23N0026(2023.5.11)
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