一生、推しに愛とお金を注ぎ続けたい! アイドルオタク3人が「お金の悩み」をFPに相談してみた。
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コンサートやイベントに参加したり、CDやグッズを購入したりする、いわゆる「推し活」。推し(好きな人物やキャラクターなど)の応援はつらいことも吹き飛ぶほど楽しい一方で、お金がかかるものでもあります。熱心なファンほど、推し活に夢中になってしまい、いつの間にか膨大なお金を費やしていた……なんてこともあるのでは? 推し活に夢中になればなるほど、どんどん増えていく支出。どのように向き合っていけばよいのでしょうか?
今回は、熱心なアイドルオタクの千紘さん・Suicaさん・Cさん(仮名)と、ファイナンシャルプランナーの鈴木靖子さんによる座談会を開催。3人の推し活費用をチェックしながら、お金の悩みを解決し、推し活を続けていくうえで役立つ資産運用についても解説してもらいました。
ツアー全公演に申し込んだり、CD100枚積んだり。推し活のリアルなお金事情。
鈴木:本日はお集まりいただき、ありがとうございます。私自身も漫画やアニメが好きなオタクで、好きなものに散財してしまう気持ちがすごくわかるので、皆さんのお話を楽しく聞いてアドバイスさせていただければと思っています。
千紘:よろしくお願いします。私はジャニーズとハロー!プロジェクト(通称・ハロプロ)のアイドルのファンです。
Suica:私はメインで推しているのがジャニーズのグループ3つ。ほかには女性アイドルを応援しています。
C:私はK-POPの男性アイドルグループのファンです。推しのライブを観るために韓国まで遠征することもあります。
推し活はお金がかかる!年間の出費をチェック。
鈴木:推し活は何かとお金がかかるものだと思いますが、皆さん、ファンクラブ会費・CD代・コンサートのチケット代などの年間の推し活費用はどれくらいでしょうか?
千紘:私は、ジャニーズとハロプロのファンクラブ会費と、応援しているグループの映像コンテンツを観るためのサービス会員費が、年間合計で約2万円。CDは、去年好きなグループがデビューするタイミングで多めに買ったので約20万円。コンサートやメンバーが出演する舞台のチケット代は、約25万円。グッズ代が約3万円。雑誌は推しが表紙を飾っているときに買うくらいなので、6,000円ほどでしょうか。
千紘さんの年間の推し活費用
ファンクラブなどの会費 | CD代 | コンサートなどのチケット代 | グッズ代 | 雑誌代 | 遠征費 |
約2万円 | 約20万円 | 約25万円 | 約3万円 | 約6,000円 | 約25万円 |
Suica:私はジャニーズの3つのファンクラブに入っていて、合計1万2,000円弱。ライブ関連はコンサート以外に推しが出る舞台を観に行くこともあって、そのチケット代が合計で約24万円。あとは、CD代とグッズ代それぞれ4万8,000円ほどですね。雑誌は、私も手もとにどうしても残しておきたいものだけにしているので、紙の雑誌の購入費は1万2,000円弱だと思います。
Suicaさんの年間の推し活費用
ファンクラブなどの会費 | CD代 | コンサートなどのチケット代 | グッズ代 | 雑誌代 | 遠征費 |
約1万2,000円 | 約4万8,000円 | 約24万円 | 約4万8,000円 | 約1万2,000円 | 約25万円 |
C:私は日韓両方のファンクラブに加入していて、会費が約9,200円。CDは、年に何回かあるサイン会に当選するため複数枚買うので、詳細な値段はいえないんですが、それなりにかかります。ライブのチケット代は日本や韓国で開催される公演に加えて、推しが韓国の音楽番組に出るのを観に行くときもあって、去年は10万円以上。あとはグッズ代が6万円ほど。雑誌はあまり買わなくて、1万2,000円くらいです。
Cさんの年間の推し活費用
ファンクラブなどの会費 | CD代 | コンサートなどのチケット代 | グッズ代 | 雑誌代 | 遠征費 |
約9,200円 | 秘密 | 10万円以上 | 約6万円 | 約1万2,000円 | 約17万円 |
鈴木:Cさんは推しのライブがあるときは韓国まで行かれるとのことで、1回あたりの遠征費(交通費・宿泊費)も高くなりそうですね。
C:そうですね。新型コロナの影響で去年は一度しか渡韓していませんが、ソウルに行く際は、飛行機代(往復)・宿泊費で1回10万円前後かかります。日本公演で国内遠征をするときもあり、去年の国内遠征費は約7万円でしたね。
鈴木:千紘さんとSuicaさんも地方遠征はされるんですか?
千紘:しますね。仮に7都市に行くと、チケット代とは別に遠征費が年間25万円くらいでしょうか。
Suica:私も国内で数か所の公演を回るときがあって、そういうときに遠征費として年間25万円くらいかかります。
特に「お金を使った」推し活の思い出は?
鈴木:ちなみに、皆さんがこれまで推し活を続けてきた中で、「特にお金を使ったな」と思ったのは、どんなときでしょうか?
C:私は推しのメンバーの卒業公演があったときですね。コンサートだけじゃなくサイン会やイベントに参加するために、ものすごくお金を使ったと思います。
Suica:私は推しがCDデビューしたときですね。デビューシングルを何枚も予約して、発売後も1週間くらいはほぼ毎日、Twitterに上がる「○○のCDショップにCDの在庫がある」といった情報を頼りに、仕事終わりに駆け込んで、何枚も追加購入していました。ちなみに、たくさんCDを買うことを、オタク用語で「CDを積む」といいます。
当時積んだのは、たぶん100枚くらいです。ほかの猛者の方々に比べれば全然少ないとはいえ、自分的にここまでお金を使ったのは前代未聞でしたが、「デビューの御祝儀だし、どうしても音楽チャートで1位をとらせてあげたい!」と思ったんです。友達とも飲みながら「こんなにお金使っていいのかな」「でも一生に一度のことだから」みたいな話をして、その足でパーッと使っちゃったりもしました(笑)。
千紘:私は全日程35公演ほどのツアーに参加したときですね。そのときはチケット代と遠征費をあわせて50万円くらい使ったんじゃないかなと……。
鈴木:35公演、全部行かれたんですか? それはすごい!
千紘:平日公演もあったので、会社の時差出勤や有給休暇などを駆使して奇跡的に参加できました。全部回るのに3か月くらいかかりましたが、その期間はスケジュールを立てるのも含めてすごく楽しくて、アドレナリンが出まくっていましたね(笑)。
楽しむためには節約も必要。オタクの工夫いろいろ。
鈴木:皆さん、それぞれの推し活にどんな思いでどうお金をかけているのか、よくわかりました。続いては、お金のやりくりについてもお聞きしたいと思います。
帰省しつつ遠征すれば、時間もお金も節約できる!
鈴木:推し活をしていくうえで、特にお金の節約をしている部分などはありますか?
千紘:比較的出費を抑えやすいのは交通費ですね。ツアー日程が発表されたら、ホテルなどは早割で予約するようにしています。
Suica:早割予約は私もやっています。あとは実家の近くでやるコンサートには、必ず行くようにしています。宿泊費がかからないですし、遠征と帰省を一度にまとめられる点もお得かなと。
C:私は韓国にライブを観に行くときは日時変更可能な航空券を選ぶようにしています。というのも、2020年以降、新型コロナの感染拡大を理由にコンサートが直前で中止になることが増えたんです。でも、格安航空券だと返金されない場合があって……。日時変更の融通が利くチケットは若干高めにはなりますが、予定が変わっても二重に予約しなくていいので、結果的に交通費の節約につながる場合がありますね。
節約には取捨選択が大切!
鈴木:ほかに推し活の費用を抑えるためにしていることはありますか?
C:どこにお金をかけるかの取捨選択が大事だと思っています。私の場合、あまり買わないようにしているのはグッズ。推しのものを全部集めようとすると膨大な費用がかかってしまうし、何よりライブに行くのが好きで、そこにお金を使いたいというのもあって、グッズの購入はなるべく控えていますね。
Suica:Cさんと同じく、グッズは自分が欲しいもの以外あまりお金を積まないですね。ものが増えると保管場所の確保が大変ですし。同じ理由で、紙の雑誌の購入頻度も抑えています。私、推しが載っているページだけを保存する作業が苦手なんですよ。その面倒くささを思い出して、買うのをグッと我慢したりします(笑)。
千紘:私は、何を推しているかにもよるのですが、対象によっては何より節約になるのは「東京に住むこと」だと考えています。ハロプロでは、東京でしか開催されないイベントもあるので、東京に住んでいることで交通費が節約できる推し活がたくさんあるなぁと、関西出身者として感じていまして。なので、就職活動をしていたときから、東京で働ける可能性が高い会社を目指していました。運よく東京への異動が決まって、本当によかったです。
推し活を続けるために!お金の悩みあれこれを解決。
鈴木:推し活を続けていくうえで、皆さん金銭的な不安や将来の心配などもおそらく抱えているかと思います。ここからはお金に関する悩みをお聞きしたいです。
このままお金を使い続けていいの?「なんとなく」の出費と向き合うには?
鈴木:現在、お金に関して気になっていることや不安はありますか?
C:私はこれまで、「なんとなくお金を使ってきてしまった」という思いがすごくあるんです。ずっとパートナーと暮らしてきたのですが、生活費のことはほぼ相手に任せきりで、自分の給与分はわりと自由に使っていました。ただ、去年結婚したので、子どもができるなどライフステージの変化について考えると、今後どうお金と向き合えばいいのか……。
Suica:わかります。私も、「このままのペースで推し活をして、お金をたくさん使い続けていていいのかな?」という漠然とした不安がありますね。
鈴木:なるほど。Cさん、推し活以外の月々の支出は把握していますか?
C:クレジットカードの明細を確認するくらいで、あまり厳密なチェックはしていないです。
鈴木:支払いをほぼクレジットカードにまとめているなら、明細のチェックは効果的です。あとは、家計簿アプリを使うといいかもしれませんね。最近は支出の分類が手軽にできてクレジットカードや電子マネーとも連携できるアプリがあるので、使ってみて月々の支出を項目ごとに調べてみるといいと思います。
私自身、家計簿アプリを使いはじめて「この支出、そもそも何なんだろう?」と思うことが多かったんですが、調べてみたら、使っていないクレジットカードの年会費やサブスクリプションサービスの費用など、意外と気づいていない出費があったんです。こうした現状把握をしてみることが、節約の第一歩にもつながっていくと思いますよ。
やはり老後が心配……。年金はいくらくらいもらえるの?
千紘:私はやっぱり老後のお金がすごく不安ですね。老後のためにはいくらあったら安心で毎月いくらためたらいいのか、全然イメージできなくて。
鈴木:老後のための貯金や資産運用については、皆さん不安に思うところですよね。まず、ざっくりした考え方として、老後までに準備が必要なお金は「国からもらえる年金と、老後にかかる生活費の差額」と思ってください。たとえば、受け取れる年金より月々にかかる生活費が6万円多かった場合、受け取れる年金とは別に年間72万円(6万円×12か月)前後のお金が必要、ということになります。
また、老後にもらえる年金は国民年金と厚生年金の2種類があります。国民年金は国民全員が加入する年金で、支給されるのは一定額。対して厚生年金は、厚生年金保険に加入している会社員・公務員の方が国民年金に上乗せして受け取れる年金ですが、年収や加入期間によって年金の支給額が変わってきます。人によって支給される年金額に差があるのは、厚生年金の部分が大きな要因です。
千紘:そういえば、自分がもらえる年金は、いくらくらいなんだろう……。
鈴木:それを知るには、厚生労働省のサイトにある「公的年金シミュレーター」が便利です。自分の過去の年金加入情報と今後の見込み年収などを入力すれば、もらえる年金額を簡単にシミュレーションできるようになっています。過去の年金加入情報は毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」に印刷されている二次元コードを使えば入力不要なので、一度計算してみるといいかもしれませんね。
あとは、老後の生活費は統計も出ています。夫婦2人がゆとりある暮らしができる生活費の平均は月々約37万9,000円といわれているので、これも目安として頭に入れておくといいのではないでしょうか。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」
推し活と並行して将来に備えたい。おすすめの資産運用方法は?
鈴木:ここまでいろいろとお話を聞いてきましたが、最後に推し活にも役立つ資産運用方法をご紹介します。
急にCDを積みたくなったときにも役立つ「つみたてNISA」。
鈴木:皆さんは貯金以外で、何か資産運用はされていますか?
Suica:私は最近、つみたてNISA(※)をはじめました。
鈴木:いいですね! つみたてNISAは投資で利益が出ても税金がかからず、月の積立金額も少額から設定でき、金融機関によっては100円から運用可能です。投資なので元本割れリスクはあるのですが、比較的誰でもはじめやすいといえるでしょう。
つみたてNISAは、いつでも引き出せる点もメリットの1つです。たとえば推しのデビューが決まってCDをたくさん積みたい……なんてときに引き出すことも可能。必ずしも老後資金のための制度ではないので、そのぶん、幅広く目的に応じてお金の準備ができる制度かと思います。
※ 2024年以降、NISA制度の抜本的拡充・恒久化が図られる予定となっています。
老後の推し活のために役立つのは「個人年金保険」。
千紘:私は老後も自身が推し活を続けていると予想していて、推し活をやめたくないからこそ、老後にまとまったお金をちゃんと備えておきたいと考えていまして。
鈴木:老後の資金を備えるなら、「簡単にお金に手をつけられないこと」も重要なポイント。その点も含めて、まとまった資産形成に向いている商品の1つが「個人年金保険」です。
個人年金保険は民間の保険会社が取り扱う商品で、年金のように給付金を受け取ることができる保険です。契約時に定めた年齢に達すると、定期的な給付金を一定期間受け取れるんです。
鈴木:ちなみに、個人年金保険を解約するには保険会社に連絡し手続きを行う必要があり、気軽に解約できないようになっています。解約してしまうと多くの場合、解約返還金はそれまで払い込んだ保険料の総額を下回るので、「手をつけないでおこう」という気持ちが強くなります。そのぶん、老後の資金としてきちんと残しておきやすくなりますね。
また、「個人年金保険料控除」という専用の控除枠があって、税制優遇を受けられるのもおすすめポイント。所定の条件を満たし、「個人年金保険料税制適格特約」を付加したものであれば利用できる枠です。保険料の年間支払額に応じて、所得税は最大4万円、住民税は最大2万8,000円まで(※)所得から控除され、税負担が軽減されますよ。
※ 2012年1月1日以降に締結した保険契約等の場合。
元気に推し活を続けるための第一歩!資産運用も検討してみよう。
Suica:つみたてNISAをはじめたものの、これだけでいいのかという不安があったんです。先生の話を聞いて、推し活のお金のためか、老後のためかなど、目的をちゃんと定めたうえでバランスよく資産運用することが大事だとわかりました。
鈴木:そうですね。そもそもすべての事態に対応できるような万能な金融商品はなく、どんな金融商品にもそれぞれメリットとデメリットがあります。「何のためにお金を準備するのか?」「いつまでに、どれくらいのお金が必要なのか?」という点をはっきりさせたうえでの資産運用が大切です。
たとえば近い将来の推し活に使いたいならつみたてNISA、老後の資金としてしっかり準備していきたいなら個人年金保険といったように、目的にあわせて使い分けて運用していくといいのではないでしょうか。お金と向き合うことで、これからも楽しい推し活ライフを送りましょう!
イラスト/腹肉ツヤ子
鈴木 靖子
ファイナンシャルプランナー。銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わるなか、その経験を個人の生活にも生かしたいという思いからFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして、執筆や相談業務を中心に活動中。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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