γ-GTPとは?数値が高いままだと入院につながることもある?下げる方法は?
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この記事に目をとめた方の中には、健康診断でγ-GTPの数値が高めに出ていたり、飲酒の習慣がないのに数値が高いことが気になったりしている方もいるのではないでしょうか。
γ-GTPは肝臓機能の状態を知るための指標の1つ。肝臓は体内のさまざまな「毒」を分解する大事な臓器なので、数値が高い状態を放置していると、さまざまな健康障害を引き起こしかねません。
今回はお酒好きで肝臓を専門とした医師である浅部伸一先生に、γ-GTPとは何か、放っておくとどんな影響が出るのか、悪化させないためにはどうすればよいかなどについて伺いました。特にγ-GTPの数値が気になる方には、一読の価値ありです。
目次
- そもそもγ-GTPって何?その数値から何がわかる?
- 放置すると入院や手術もありえる!病気になった場合の治療法は?
- 急な入院に備えて医療保険に入っておくと安心。
- 継続的にγ-GTPの数値をチェックしつつ、医療保険でもしものときに備えよう。
そもそもγ-GTPって何?その数値から何がわかる?
肝臓の状態を知るための1つの指標、γ-GTP。健康診断で数値が高かった場合、どんな原因があり、どんな病気につながるのでしょうか?
γ-GTPとは何か。
──そもそもγ-GTPって何を表した数値なのですか?
γ-GTPは、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(γ-Glutamyl TransPeptidase)の略で、アミノ酸を代謝し、肝臓の解毒作用にかかわる酵素の一種です。肝臓や胆管の細胞の中に比較的多く存在し、肝臓や胆道などがダメージを受けると、血液中に漏れ出してくるので、血液中のγ-GTPの数値が高ければ、肝臓や胆道が要注意サインを出していると判断できます。
──どれくらいの数値なら正常なのですか?
γ-GTPには「正常値」はありません。「この数値だから正常・異常」というわけではなく、「この程度の数値であれば問題ないだろう」という意味で、「基準値」という言葉が使われます。厳密には検査キットごとに幅がありますが、多いのは男性で上限50IU/L、女性で30IU/L~35IU/Lとされています。基準値ですから、この数値を超えたら病気だとも、超えていないから健康だともいえません。あくまでも目安です。ただし、200IU/Lとか300IU/Lとか桁違いな数値が出た場合は、再検査などによって数値が高い原因を突き止める必要があります。
γ-GTPの数値が高くなる原因。
──数値が高くなる原因にはどんなものがありますか?
20代から30代では、主にアルコールの摂りすぎと脂肪肝が原因として考えられます。まれにですが、胆管系のトラブルや、薬やサプリメントの副作用が影響していることもあります。
γ-GTPの数値が高くなる原因
原因 | 特徴 |
アルコールの摂りすぎ | 断酒すれば2週間程度でγ-GTPの数値が下がる |
脂肪肝 | 肝細胞の30%以上に中性脂肪がたまっている状態。お酒の飲み過ぎが原因のアルコール性脂肪肝と、肥満や運動不足が原因の非アルコール性脂肪肝がある |
胆管系のトラブル | 20代・30代では胆石症がもっとも多いが、まれに胆管がん、胆のうがんの可能性もある |
薬やサプリメントの副作用 | 薬やサプリメントを異物として分解するためにγ-GTPの数値が高くなることがあるほか、薬やサプリメント自体が胆管や肝臓にダメージを与えることも |
取材内容をもとにミラシル編集部にて作成
数値を改善する方法は?
──γ-GTPの数値が高い状態を改善するにはどうしたらいいでしょう?
γ-GTPの数値が基準値を超えたら、原因ごとに対応します。
たとえばお酒を飲む習慣のある人なら、断酒して検査します。それで数値が下がれば、アルコール摂取が原因なので、お酒を控えることが改善につながります。数値が下がらない場合、あるいはもともと飲酒習慣がない人の場合は、非アルコール性の脂肪肝が考えられます。食事や運動など生活習慣の改善で数値が下がる可能性があります。
胆石症を発症している場合は治療が必要です。ただし典型的な代謝系疾患(栄養素をエネルギーなどに変える働きに障害が起きて生じる疾患)の1つですので、生活習慣を改善しないかぎり再発しがちです。
胆管がんや胆のうがんの場合はがん治療をします。薬やサプリメントの影響が疑われる場合は服用をやめることが必要です。
いずれにしても、きちんと検査を受けてγ-GTPの数値を継続的に確認することが重要です。特に、今まで低かったのに突然数値が上昇したなどというときは要注意です。医師と相談しながら原因を突き止め、それを取り除かなければなりません。
放置すると入院や手術もありえる!病気になった場合の治療法は?
──「γ-GTP」の数値が高いまま放っておくとどうなりますか?
数値を高めている原因によって異なります。
アルコールの摂りすぎ・アルコール性脂肪肝の場合。
飲酒量を減らさないと肝臓が機能しなくなる肝硬変、そして肝臓がんへと進行する危険があります。特に、もともと肝障害を抱えている人が急に大量飲酒すると、急激に疾患が悪化する場合もあります。根治させる治療法はありませんが、基本的には断酒・節酒です。重症の場合には2週間~3週間程度入院して、断酒や点滴などを行うこともあります。アルコール依存症がみられることもあるので、その場合はメンタルケアも必要となります。
非アルコール性脂肪肝の場合。
放置すると1割~2割の方がNASH(非アルコール性脂肪肝炎)となり、やはり肝硬変や肝臓がんに進展する可能性があります。現時点では確立された治療薬はなく、生活習慣の改善や薬物治療で対処します。
胆管系のトラブルの場合。
胆のうや胆管に結石ができて胆石症になると、突然の激痛に見舞われることがあります。胆石発作を起こして非常に激しく痛み、救急車が必要になる場合もあります。胆石の多くはコレステロール結石で、砂のようにどろどろしている場合もあり、食後におなかの真ん中から右側に少し痛みを感じる程度の場合もあります。
胆石症は結石ができた場所によって治療法が異なります。胆のうの中にできた場合は、結石だけを取るのが難しいので、胆のうごと摘出します。おなかに1センチ程度の小さな穴を開ける腹腔鏡手術を行うため、1週間程度の入院が必要です。
胆管にできた場合は、内視鏡治療を行います。口から胃カメラに似た機器を入れて、先端の術具で十二指腸を少し切開して結石をかき出します。こちらも1週間程度の入院になります。
胆のうがんや胆管がんの場合は基本的に切除手術や化学療法が行われます。
薬やサプリメントの副作用の場合。
薬やサプリメントの服用により「薬物性肝障害」が引き起こされると、倦怠(けんたい)感・食欲不振・発熱・黄疸(おうだん)などの症状が続きます。症状がなく、数値だけが上がることもあります。治療は原因となる薬やサプリメントの服用をやめることです。
急な入院に備えて医療保険に入っておくと安心。
ここまで、浅部先生にγ-GTPの数値が指標となる疾患やその原因についてお話を伺いました。教えていただいた疾患の中には、急に入院治療が必要になるものもあります。
治療内容と入院日数は、疾患の種類や程度によって異なりますが、たとえば、厚生労働省の調査によれば、15歳~34歳までの方が肝疾患で入院した場合、入院日数は平均10.1日。
肝臓の状態によってはさらなる治療が必要になるかもしれず、それだけ医療費がかさむ可能性があります。
参考:厚生労働省「令和2年(2020)患者調査(確定数)の概況」
また、公益財団法人 生命保険文化センターの2022年度の調査によると、入院にかかる自己負担額の平均は19万8,000円。入院中や入院前後にかかる費用に、医療保険で備えるのも1つの方法かもしれません。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」をミラシル編集部にて一部加工
※ 公的医療保険には、医療費の自己負担額に限度額を定める高額療養費制度等があり、実際に負担する金額はケースにより異なります
継続的にγ-GTPの数値をチェックしつつ、医療保険でもしものときに備えよう。
食や睡眠など生活習慣の乱れ、リモートワークなど働き方の変化による運動不足、増え続けるストレス……。何かと肝臓にも負担の多い時代です。肝臓をいたわるためにも、お酒の飲み過ぎや生活習慣の乱れなどには注意したいものです。また、γ-GTP同様に肝機能の指標となるAST(GOT)、ALT(GPT)などの数値もあわせて継続的にチェックし、これらの指標の数値が高い状態が続いたり、急に上がったりしたら、原因をきちんと突き止めて対処しましょう。医療保険でもしものときに備えておくことも大切ですね。
写真/Getty Images イラスト/オオカミタホ
浅部 伸一
東京大学医学部卒業。国立がん研究センターで肝炎ウイルス研究に従事後、自治医科大学を経て、アメリカ・サンディエゴに留学。現在は医薬品開発企業「メドペイス・ジャパン」に在籍。自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科非常勤講師も務める。『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社、2017年)を監修。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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