胃がムカムカする原因は?考えられる病気や対処法、備え方を解説。
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「胃がムカムカする」。そんな経験をしたことがある人は多いでしょう。食べすぎや飲みすぎ、仕事のプレッシャーや人間関係など、いろいろな原因がありますが、そのほとんどに胃酸が関係しています。現代は“胃酸過多の時代”といっても過言ではありません。20代~30代の胃のムカムカ事情、胃の不調について、消化器内科を専門とする医師である三輪洋人先生に教えていただきました。
目次
- 「胃がムカムカする」原因の第一は、胃酸の逆流。
- 胃酸以外で「胃がムカムカする」ことも。
- 胃のムカムカを引き起こす病気。
- 胃のムカムカが重症化すると、手術や入院になることも。
- 急な入院に備えて医療保険に入っておくと安心。
- 【まとめ】若さを過信せず、快適に過ごせるように胃の健康を手に入れよう。
「胃がムカムカする」原因の第一は、胃酸の逆流。
現在、医療機関において「胃がムカムカする」と訴える20代~30代にもっとも多くみられるのは、胃酸の逆流です。ほかにも「酸っぱいものが上がってくる」「胸やけ」「胃のあたりに焼けるような感覚がある」といった場合は、胃酸の逆流が考えられます。胃酸の逆流は決して珍しいことではありません。
なぜ胃酸で「胃がムカムカする」の?
胃酸とは、胃が食べ物を消化するために出す物質です。胃の筋肉や粘膜のタンパク質には、自分が出す胃酸で溶けないように二重三重の防御が備わっていますが、胃の上にある食道は別です。胃酸の分泌が増えるなど、何らかの理由で胃酸が上がってくると、食道の粘膜が刺激されたり、傷ついたりして、ムカムカした症状が現れます。
胃酸が上がってくる原因。
普段、胃にとどまるはずの胃酸が上がってくる原因には、下記のようなものがあります。
食べ物 | ・肉などのタンパク質をおなかいっぱい食べると、胃酸が大量に分泌される。 ・脂肪をたくさんとると、胃と食道の間が緩み、胃酸が逆流しやすくなる。 |
酒やタバコ | ・副交感神経(迷走神経)を刺激し、胃酸を分泌する。お酒は痛みを感じる受容体を刺激するため、胸やけを強く感じる。 |
胃酸の量が増えると、上がってくる胃酸の量も多くなります。
胃酸以外で「胃がムカムカする」ことも。
胃酸の逆流がなくとも、胃にムカムカを感じることがあります。その原因は、胃の運動低下や知覚過敏です。胃をはじめとする内臓の働きは自律神経によるもので、自分の意思でコントロールできません。自律神経の働きが乱れることで、胃にムカムカした症状を感じます。
胃の運動低下や知覚過敏の原因。
ストレス・不規則な生活リズム・睡眠不足・季節の変わり目に起こる疲労・寝る直前の食事などといった要因が、自律神経の働きを乱し、胃の運動低下や知覚過敏を引き起こします。
胃の運動低下や知覚過敏だからといって、朝食抜きや朝昼兼用のブランチなどで、食事を避けると症状が悪化することがあります。空腹時間が長かったり、急に胃に大量の食べ物が入ったりする食生活は、避けたほうがいいでしょう。
胃のムカムカを引き起こす病気。
20代~30代に「胃のムカムカ」を引き起こす病気としては、下記が挙げられます。順番にみていきましょう。
胃食道逆流症(逆流性食道炎・非びらん性胃食道逆流症)
胃酸が食道に逆流することで起こり、胸やけや酸っぱいものがこみ上げてくる感じがする吞酸(どんさん)の症状が現れます。胃食道逆流症には2つのタイプがあります。
逆流性食道炎
胃酸が食道まで上がり、食道の粘膜に炎症を起こします。
非びらん性胃食道逆流症
逆流性食道炎とほぼ同じものですが、胃のムカムカという症状や胃酸の逆流があっても、食道には炎症ができていない状態をいいます。
機能性ディスペプシア
慢性的に胃がムカムカする症状があるものの、内視鏡では食道や胃に異常を確認できない疾患です。ディスペプシアは、腹部の不快な症状を指す医学用語。たとえ異常がなくとも胃の不調は生活の質(QOL)を下げる大きな要因です。不快な症状を抑える治療が行われます。
胃腸炎
胃や腸に炎症が起き、下痢や腹痛を起こした状態です。胃腸炎の主な原因は、食べすぎ・脂肪やアルコール、香辛料などのとりすぎ・細菌やウイルス・ストレスなどです。胃腸炎の多くは、胃腸を休めて炎症が収まると改善します。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の主な原因は、ピロリ菌感染です。上下水道の整備で感染経路が減り、以前は20代~30代で7割~8割だったピロリ菌感染率は、今では1割ほどに低下しています。ピロリ菌を除菌する薬も一般化し、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の患者数は減少傾向にあります。
胃のムカムカが重症化すると、手術や入院になることも。
胃のムカムカを引き起こす原因をみてきましたが、胃の不快感はまれに手術や入院が必要になる、深刻な病気につながることもあります。
重症型の逆流性食道炎
逆流性食道炎は軽症で済むケースが多いですが、重症型の場合は、炎症が長く続くことで出血が起こったり、食道が狭くなったりすることがあるため、入院が必要な場合もあります。
バレット食道・バレット食道がん
胃酸の逆流が続くことによって、食道の下部にある粘膜が胃と同じような組織に置き換わってしまう病気です。バレット食道は重症化した場合、食道がんを引き起こすことがあります。米国では食道がん患者の50%は、バレット食道から発生したものと考えられています。バレット食道がんに対しては手術が行われます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
ピロリ菌感染率は激減していますが、まだゼロではありません。そのため、現代であってもピロリ菌感染などが引き起こす胃潰瘍や十二指腸潰瘍が悪化し、入院となるケースもないとはいえません。
胃のムカムカのようなよくある症状でも、QOLを低下させる大きな問題となります。胃のムカムカを「すぐに治るだろう」と安易に放置せず、普段から自分の体調とその変化はしっかりチェックし、体の不調を感じたら、医療機関を受診するとよいでしょう。
胃がん
胃がんの主な原因もピロリ菌です。40年ほど前の日本ではピロリ菌に感染し、萎縮性胃炎を経て胃がんになるケースが多かったのですが、ピロリ菌感染者の減少や除菌治療の広まりにより、胃がんによる死亡者数は徐々に減りつつあります。胃がんの治療には、内視鏡治療・手術療法・抗がん剤治療などがあります。
急な入院に備えて医療保険に入っておくと安心。
ここまで三輪先生に解説していただきました。先生が述べるように、胃のムカムカには深刻な病気が隠れていることもあるようです。もし、入院や手術をすることになると、当然お金が必要になります。入院したらどのくらいお金がかかるのか、ここでおさらいしておきましょう。
意外にかかる入院費用。
公益財団法人 生命保険文化センターの調査によると、2022年度における入院1日あたりの自己負担費用の平均は2万700円となっています。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」をミラシル編集部にて一部加工
※ 公的医療保険には、医療費の自己負担額に限度額を定める高額療養費制度等があり、実際に負担する金額はケースにより異なります。
また、厚生労働省の調査によれば、15歳~34歳までの方が消化器系の疾患で入院した場合、入院日数は平均7.2日となっています。1週間程度の入院になりますので、金銭面などの備えがきちんとできているか、再度検討してみることをおすすめします。
参考:厚生労働省「令和2年(2020)患者調査(確定数)の概況」
医療保険で備えよう。
入院中は意外とお金がかかりますし、働くことができません。1人暮らしなのか、扶養家族がいるのか、サポートを頼める人がいるかどうかで、入院したときの負担や不安は大きく変わってきます。
病気やケガはいつ襲ってくるかわからないものです。弱った状態で医療費などのお金のことに適切に対応できるかと聞かれたら、自信がない方は多いのではないでしょうか。急な入院時に入っていてよかったと思うのが、医療保険です。安心して治療に専念できるように、元気なうちに医療保険を検討しておきましょう。
特に、20代~30代の方であれば、統計的にも入院日数が短くなる傾向がありますので、入院日数にかかわらず、まとまった金額が受け取れる一時金タイプの医療保険に加入しておくと、急な出費にも対応できるため安心かもしれません。
参考:厚生労働省「令和2年(2020)患者調査(確定数)の概況」
【まとめ】若さを過信せず、快適に過ごせるように胃の健康を手に入れよう。
胃のムカムカには、自然に治るものから手術や入院が必要になるものまでいろいろありますが、ムカムカと無縁でおいしい食事ができる毎日がいいのはいうまでもありません。胃のムカムカは、胃の不調を知らせるサインです。20代~30代であっても「自分はまだ若いから平気」と過信することなく、普段から胃に負担をかけない食事・ストレスの軽減・規則正しい生活を心がけましょう。
写真/Getty Images、PIXTA イラスト/オオカミタホ
三輪 洋人
兵庫医科大学名誉教授・川西市立総合医療センター総長。医学博士。専門は消化器内科一般、上部消化管疾患。講演やテレビなどのメディア出演を通じて、わかりやすい医療情報の発信にも注力している。著書に『逆流性食道炎 消化器科の名医が教える 最高の治し方大全』(文響社、共著)、『胃は歳をとらない』(集英社新書)など。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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