逆流性食道炎は自然治癒する?受診目安やリスクを医師が解説。 逆流性食道炎は自然治癒する?受診目安やリスクを医師が解説。

逆流性食道炎は自然治癒する?受診目安やリスクを医師が解説。

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胸焼けやゲップなどの症状が続いて、「逆流性食道炎かも?」という自覚があっても、「病院に行くほどでもない」「自然治癒するのではないか」と思う人は少なくないかもしれません。しかし、逆流性食道炎が進行すると食道が狭くなってしまい、ものが食べられなくなる、一部では食道がんにつながることもあるといいます。どんな症状があれば受診すべきなのでしょうか。逆流性食道炎の原因や放置した場合の食道がん発症リスク、なりやすい食道がんの種類や治療方法などについて、消化器内科を専門とする医師の鈴木秀和先生に教えていただきました。

目次

逆流性食道炎とは?

逆流性食道炎とは?

「逆流性食道炎」とは、食道に胃の内容物(主に胃酸)が逆流することによって炎症が起こる疾患です。食道に胃酸などが逆流することでなんらかの症状が出る病態を総称して「胃食道逆流症」と呼びますが、逆流性食道炎はその1つの病態で、食道に炎症や粘膜の傷(びらん)を伴うものです。

逆流性食道炎は40代~70代の中高年に多く、比較的男性に多くみられやすい疾患です。さらに、肥満などで腹圧が上がると胃を圧迫するため、症状が出やすくなります。腰の曲がった高齢者も前かがみの姿勢になることで食道に胃酸などの胃の内容物が逆流しやすいため、症状が出やすいとされています。

逆流性食道炎の症状は?

逆流性食道炎の典型的な症状は、胸焼けです。胃酸の逆流によって、口の中に苦みや酸っぱみを感じる呑酸(どんさん)の症状も多くみられます。ただし、これといった明らかな症状がないケースもあります。内視鏡検査などで食道粘膜の炎症・傷を指摘され、初めて逆流性食道炎に気づく人も多いわけです。

逆流性食道炎の一般的な原因は?

逆流性食道炎で炎症を起こす主な原因は、胃酸を含めた胃の内容物です。そもそも、食道は胃とは異なり、胃酸に対する防御機能をもっていないため、胃酸にさらされると炎症を起こしやすい部位です。食べ過ぎ、飲み過ぎのほか、夜遅い食事や不規則な食事、食べた直後に横になるなどの生活が続くと、胃の内容物が逆流しやすくなり、その結果として食道の炎症も起こしやすくなります。

特に、高タンパク・高脂肪な食事、香辛料やアルコールの過剰摂取は、年齢・性別にかかわらず逆流性食道炎のリスク因子とされています。睡眠不足など夜間の睡眠の質が悪い人も逆流性食道炎のリスクが高まるとされています。

女性特有の原因も。

逆流性食道炎には、女性特有の原因もあります。たとえば、妊娠です。おなかが大きくなってくる妊娠中期以降、胃部が圧迫されることが原因となって、逆流性食道炎の症状がみられることがあります。食べたものが胃から上がってくる感じ、胃に内容物がたまっている感じ、おなかが張っている感じなどが主な症状です。

妊娠3か月ぐらいまでの初期にも逆流性食道炎に似た症状が出ることがありますが、その多くはつわり症状です。妊娠による逆流性食道炎の場合は、おなかの圧迫がなくなる出産後に自然に治ってしまうケースが多いともいわれます。

そのほか、逆流性食道炎と似た胸焼けや胸痛、胃部不快感などの症状を訴えながら、内視鏡検査で観察しても食道に炎症や粘膜の傷がみられない「非びらん性胃食道逆流症」というケースがあります。これは痩せた若い女性に多い疾患です。また、ストレスや不安、睡眠不足などが影響して、実際には逆流していないにもかかわらず、食道の知覚過敏によって症状が生じる「機能性胸焼け」という病気もあります。

逆流性食道炎は自然治癒する?

逆流性食道炎は自然治癒する?

逆流性食道炎であった場合、どのように治療するのでしょうか。

軽症なら自然治癒することも。

食道粘膜の炎症や粘膜障害の程度が軽度で、その症状も軽いものであれば、日ごろの生活習慣を改善することで自然治癒するケースもあります。まずは、暴飲暴食や高タンパク・高脂肪な食事を避け、香辛料やアルコールの摂取も控えて、質の高い睡眠をしっかりとりましょう。また、夜遅い食事を避け、食後3時間以上たってから就寝するようにすることも大切です。

そうした生活改善を意識するだけでも症状が治まり、食道の炎症や粘膜障害なども自然に治っていくことが多いでしょう。

受診の目安。

逆流性食道炎は自然治癒することも多いですが、炎症と治癒をたびたび繰り返すケースもよくあります。「胸焼けや呑酸などの症状がなかなか治らない」「不快な症状やゲップが長く続く」といった場合には、一度、内科や消化器内科を受診しましょう。

食道に炎症のない非びらん性胃食道逆流症のケースも、不快な症状に加えて、「食欲がない」「食べたいものが食べられない」「体重減少が続く」などの症状がある場合には、早めに受診をしましょう。

治療法や対処法。

胃食道逆流症では、生活改善とあわせて、PPI(プロトンポンプ阻害薬)などの胃酸分泌抑制薬の内服によって治療が行われます。

ただし、妊娠中には胎児への影響からこれらの薬が使えないこともあります。症状があれば、かかりつけの産婦人科医に相談しましょう。妊婦の場合は、食後すぐに横にならない、甘いものを食べ過ぎない、軽い運動を取り入れるなど、生活習慣を改めることで症状が改善する場合もあります。

非びらん性胃食道逆流症の場合は、胃酸分泌抑制薬の内服では症状が改善しないケースもあり、機能性胸焼けになると胃酸分泌抑制薬の内服では症状が改善しません。また、場合によっては、心療内科なども含めた総合的な治療が必要になってきます。

逆流性食道炎と食道がんの関係。

逆流性食道炎と食道がんの関係。

逆流性食道炎も粘膜の炎症が長く続いていると食道が狭窄(きょうさく)を起こし、食事や水などを飲み込みにくくなることがあります。また、慢性的に炎症を繰り返すことで、食道粘膜が胃粘膜に似た組織に置き換わってしまう「バレット食道」になることもあります。

このバレット食道になると食道がん(バレット腺がん)になるリスクが高まるとされています。バレット食道がんは、日本人にもっとも多い食道がんである「食道扁平上皮がん」とは異なり、「食道腺がん」という特殊なタイプのがんです。

食道腺がんは元来、欧米人に多く、日本人の発症は多くありませんでした。しかし近年は、食生活の欧米化などにより、逆流性食道炎の増加と同時に食道腺がんも徐々に増加傾向にあり、注意が必要です。

食道がんの場合も、胸焼けや胸の痛みなど、逆流性食道炎によく似た症状がみられることがあります。ただし、初期には自覚症状がないことがほとんどであり、内視鏡検査によって初めてがんが判明するケースもあります。

もし食道がんになったら、治療法や入院期間は?

もし食道がんになったら、治療法や入院期間は?

食道がんに罹患してしまった場合の治療は、その進行度によって異なります。がんが粘膜内にとどまる早期がんであれば、開腹することなく、内視鏡によってがんを切除し、食道も温存できるケースが多くあります。その場合、7日~10日間程度の入院が必要になります。

がんの組織が粘膜から粘膜下層などに入り込み、進行した状態で食道がんがみつかった場合は、手術が必要になります。進行の程度やからだの状態によって、抗がん剤や放射線治療なども組み合わせながら治療します。

手術では、がんを含めた食道と胃の一部を切除し、同時にリンパ節を含む周囲の組織も切除します。食道の切除後は、胃や腸を使って食物の新しい通路をつくるバイパス手術なども行います。そのため、数か月におよぶ入院治療が必要になってくるケースも多くあります。

食道がんの治療費は?7日~10日程度の入院に備えるには?

ここまで、鈴木先生に逆流性食道炎や食道がんについて解説いただきました。

早期にはほとんど症状が出ないという食道がん。症状がないにもかかわらず、内視鏡検査で食道がんがみつかるということもあるかもしれません。特に、貯蓄に不安がある若い世代は、万一の入院に備えて、民間の医療保険への加入を検討しておくのもおすすめです。

民間の医療保険で備えよう。

近年は入院日数が短くなっています。

平均入院日数

以下を参考にミラシル編集部にて作成: 
厚生労働省「平成14年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」(2002年) 
厚生労働省「平成23年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」(2011年) 
厚生労働省「令和2年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」(2020年)

しかし、入院1日あたりの自己負担額は値上がりしている傾向がみられます。

入院1日あたりの医療費・諸費用の自己負担額

以下を参考にミラシル編集部にて作成: 
公益財団法人 生命保険文化センター「平成16年度 生活保障に関する調査(概要)」 
公益財団法人 生命保険文化センター「平成22年度 生活保障に関する調査(概要)」 
公益財団法人 生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」

公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、入院1日あたりの医療費・諸費用の自己負担額の平均は2万700円です。

こうしたお金の心配をしないように、もしものときに備えて、医療保険への加入を検討しておくのもよいでしょう。

女性は「女性向け医療保険」もおすすめ。

女性の場合は、食道がんなどの一般的ながんをカバーしながら、乳がんなど女性に多い病気を手厚く保障してくれる「女性向け医療保険」もおすすめです。

20代~30代の女性は、同年代男性に比べ入院率が約1.6倍も高いというデータがあります。加えて、女性に多い、または女性特有の病気はこの年代でも要注意! たとえば、先述した乳がんは、20代後半から罹患リスクが高まりはじめます。妊娠や出産などを考えている方は、異常妊娠などのリスクもゼロとは言い切れません。

近頃は、入院や手術で一時金を受け取れるタイプの女性向け医療保険が増えてきています。また、妊娠すると民間の医療保険に加入できないことがあるのですが、妊娠中でも加入できるものもあります。ぜひ、調べてみてはいかがでしょうか。

参考:厚生労働省「令和2年患者調査の概況」 
参考:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)

【まとめ】逆流性食道炎は自然治癒に期待しすぎず、もしもの備えも検討しよう。

鈴木先生は、「逆流性食道炎は軽症であれば自然治癒も期待できるのですが、はっきりとした症状が出ないケースもあり、また一部の食道がんに発展する可能性もあるため、けっして侮れない病気です。気になる症状が長く続くような場合は消化器内科を受診して、まずは内視鏡検査を受けることをおすすめします。進行した食道がんは完治が難しい病気ですから、早期発見・早期治療が大切です」と語ります。20代~30代でも気になる症状や心配などがあれば、一度受診をしてみるといいでしょう。

あわせて、医療保険をはじめとした金銭的な準備をしておくことが、いざというときの安心となるでしょう。

写真/PIXTA


鈴木 秀和 
東海大学医学部内科学系消化器内科学教授、東海大学医学部付属病院臨床研修部長。慶應義塾大学医学部内科学客員教授。日本消化管学会理事、日本潰瘍学会理事、日本神経消化器病学会理事、日本ヘリコバクター学会理事、日本高齢消化器病学会理事、日本消化器病学会財団評議員、日本消化器内視鏡学会社団評議員。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。 
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(登)C23N0056(2023.6.22)
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