卵巣はなぜ腫れる?病気のリスクとあわせて解説。
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女性ホルモンの分泌や排卵の機能を持つ卵巣。腫瘍ができやすい臓器の1つですが、「沈黙の臓器」といわれ、病気になっても気づきにくいという特徴があります。卵巣のトラブルは年齢を問わないものが多いため、20代~30代の若い世代でも十分な注意が必要です。卵巣が腫れる原因や症状・治療法について、産婦人科医で女性特有の病気に詳しい内田美穂先生に解説していただきました。
目次
卵巣が腫れる原因は?
卵巣の腫れは、「良性の腫瘍」と「悪性の腫瘍」、その中間の「境界悪性腫瘍」の3タイプに分けられます。ここでは卵巣の腫れの原因のうち「卵巣のう腫」「卵巣がん」「機能性のう胞」について取り上げ、それぞれどのタイプに分類されるのかも解説します。
卵巣のう腫
卵巣のう腫とは、卵巣の中に分泌物が溜まって腫れる良性の腫瘍で、溜まっている成分によって、のう腫の種類が異なります。髪の毛・脂肪・骨・歯などが溜まっている場合は「成熟奇形腫」、サラサラの液体が溜まっている場合は「漿(しょう)液性腺腫」、ドロドロした粘液が溜まっている場合は「粘液性腺腫」と呼ばれています。また、子宮内膜症という病気に罹患し、本来発生しないはずの卵巣内に子宮内膜組織が発生すると、チョコレートのようになった古い血液が溜まる「チョコレートのう胞」ができることもあります。
「卵巣のう腫ができる原因は、はっきりわかっておらず、自覚症状が出るのは悪化してからというケースも多いです。子宮内膜症の場合は、重い生理痛が症状として表れることが多いため、生理痛で受診して卵巣の腫れが見つかることもあります。20代~30代の若い世代でも発症するケースは少なくありません」(内田先生)
卵巣のう腫が見つかると、基本的には定期的なエコー検査により経過観察を行います。そして、6cm程度まで腫瘍が成長すると、手術で切除します。
卵巣がん
卵巣がんは、卵巣に発生する悪性の腫瘍です。初期段階ではほとんど自覚症状がなく、多くの人が発見時の段階でステージ3以上まで進行しています。「おなかが張っている」「ウエストがきつくなった」などの自覚症状をきっかけに、エコー検査を受けて発見されることもあります。しかし、その段階ではほかの臓器に転移が進んでいることも多いため、死亡率の高いがんといわれています。
「排卵誘発剤を使っている人や、初経(初潮)が早い人、閉経が遅い人は、卵巣がんになりやすいといわれています。『多のう胞性卵巣症候群』や『遺伝性乳がん卵巣がん症候群』などの女性特有の病気を持つ人も、リスクが高いので注意が必要。また、子宮内膜症が原因でできた良性の腫瘍は、がん化する可能性があります。一方で、若いうちから低用量ピルを服用することが、卵巣がんの発生予防の一助となることがわかっています。
卵巣がんに限ったことではありませんが、がんは遺伝性の場合もあれば、脂っこいものをよく食べる、肥満であるなどの環境的な要因でリスクを高めてしまっていることもあります。生活習慣を見直すことで、リスクを下げられる可能性があるので、若いうちから意識してみてください」(内田先生)
機能性のう胞
機能性のう胞とは、ホルモンの状態によって一時的に卵巣が腫れるもので、真の腫瘍ではありません。
「機能性のう胞は無症状であることがほとんどで、基本的には数か月程度で自然にしぼんでなくなります」(内田先生)
卵巣の腫れ、放置するとどうなる?
初期段階では症状が出ることが少なく、気づきにくい卵巣の腫れ。しかし、腫れたまま放置していると、突然ひどい痛みに襲われたり、将来の妊娠に影響が出たりする可能性があります。
体の痛みやお通じへの影響。
卵巣が肥大してくるとおなかの圧迫感(腹部膨満感)が生じ、苦しさを感じたり、ウエストがきつくなったりします。
卵巣が腫れることで周囲の臓器を圧迫し、影響を及ぼすことも。たとえば、膀胱が圧迫されると頻尿、腸が圧迫されると便秘、背骨のあたりが圧迫されると腰痛が表れます。
「腹部に違和感があったり、頻尿・便秘・腰痛の症状があったりする場合は、医師に相談してみるとよいでしょう」(内田先生)
茎捻転で激痛になることも。
卵巣が5cm~6cmまで腫れると、茎捻転(けいねんてん)という状態になることがあります。卵巣は子宮につながっている卵管という細い管の先にあるのですが、腫れて重くなることで、周囲の血管や組織を巻き込んでねじれてしまうのです。
「茎捻転になると、ねじれたところから血流が止まってしまい、卵巣が壊死してしまいます。そうなると、動けないほどの激しい痛みが生じ、救急車で大きな病院に搬送されて、緊急手術で卵巣ごと切除することになってしまいます。そうならないために、良性の腫瘍であっても経過観察で5cm~6cmの大きさになった段階で切除します」(内田先生)
妊娠に影響が出る可能性も。
卵巣の腫れを放置して茎捻転を起こし、片方の卵巣を切除した場合、結果的に妊娠の可能性のある卵子の数が半減することになるため、将来の妊娠に影響を及ぼす可能性があります。
「機能性のう胞では、排卵がうまくいかないことで卵巣が腫れることがあります。ほとんどは一時的なものですが、妊娠を考えている人で月経周期に異常がある場合は受診をおすすめします」(内田先生)
定期検診は大切。どのくらいのペースで受けるべき?
卵巣の腫れに関連する気になる症状がある場合、受診の目安はどのくらいなのでしょうか。
「若いうちから年に1回の定期的なエコー検査を受けておくとよいでしょう。会社の健康診断では、内診のみ行っている場合が多いのですが、卵巣の腫れが小さいと内診では見つけることができません。
エコー検査でも卵巣がんの早期発見は難しいです。ただ、検査を定期的に受けていれば、ある程度早めに発見される可能性は高くなります。子宮内膜症など、がん化する可能性のある病気を抱えている人は、年に1回と言わず、3か月~半年に1回のペースでエコー検査を受けることをおすすめします」(内田先生)
おなかの張りや腰痛などの症状があるときに受診するのはもちろんのこと、定期的なエコー検査を受けることで、卵巣のトラブルの早期発見につながります。エコー検査で卵巣の腫れが発見されると、MRI検査によって腫瘍の内部を詳しく調べ、腫瘍は良性か悪性か、中には何が溜まっているのかなどを判断し、腫瘍の種類を特定していくことになります。
もし卵巣がんになったら治療費は?
卵巣の腫れの原因が卵巣がんだった場合、発見されたときにはがんが進行しており、手術だけでなく、抗がん剤などの薬物治療が必要になっていることも少なくありません。そうなった場合、手術だけ行うよりも入院期間は長くなり、治療費も高額になる可能性があります。
入院期間と費用は?
「卵巣がんになった場合、手術のためにおよそ1か月程度の入院が必要になります。その後、化学療法や抗がん剤治療を行う場合、人によって通院で治療できるか、入院の必要があるかは異なります。費用は数十万円単位でかかってくることになるでしょう。差額ベッド代などを支払った場合は、さらに高額になることが予想されます」(内田先生)
公益財団法人 生命保険文化センターの調査によれば、入院1日あたりの医療費・諸費用の自己負担額の平均は2万700円で、値上がりしている傾向がみられます。
以下を参考にミラシル編集部にて作成:
公益財団法人 生命保険文化センター「平成16年度 生活保障に関する調査」
公益財団法人 生命保険文化センター「平成22年度 生活保障に関する調査」
公益財団法人 生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」
民間の医療保険で備えよう。
卵巣がんだけでなく、良性の卵巣腫瘍や、良性と悪性の中間である境界悪性腫瘍でも手術が必要になる場合があります。「自分は大丈夫」と思っている人も多いかもしれませんが、特に良性の卵巣腫瘍は若い世代でも発症する可能性があります。
入院で必要な費用が用意できるか不安な人は、民間の医療保険で備えておくのも1つの手。病気やケガで入院したり、所定の手術を受けたりしたときに給付金を受け取ることができるため、加入しておけばもしものときも焦らなくて済むでしょう。
女性は「女性向け医療保険」もおすすめ。
卵巣がんなどの女性特有の病気に備えるには、女性向け医療保険を検討してもよいでしょう。女性が罹患しやすい病気や、女性特有の病気への保障が手厚くなっているほか、性別問わず罹患する病気に対する入院や手術への保障を受けられる場合が多いです。
保障内容には、女性疾病特約がついている商品もあります。たとえば、対象の女性特有の病気で入院したときに受け取れる「女性疾病入院給付金」や、対象となっている女性疾病で手術を受けたときに受け取れる「女性特定手術給付金」などが挙げられます。
「子宮頚がんや乳がんに比べて、卵巣がんは若い世代が罹患する可能性は少ないです。しかし、あり得ないというわけではありません。卵巣がんに限らず、がんに罹患して入院治療が必要になった人から、『自己負担額が抑えられたので民間の医療保険に入っていてよかった』と聞くことが多いので、早いうちから加入して備えておくのがよいと思います」(内田先生)
【まとめ】定期的な検査と医療保険でもしものときに備えよう。
卵巣はトラブルが起きていても症状が出ないことが多いので、腫れていても気づきにくい臓器です。しかし、卵巣の腫れを放置していると茎捻転で手術が必要になったり、最悪の場合は卵巣がんが進行してしまっている可能性もあります。
卵巣の腫れを早期発見し、何かあったときにすぐに治療が開始できるよう、まずは定期的にエコー検査を受けるようにしましょう。忙しいと検査を億劫に感じるかもしれませんが、若いうちから習慣にしておくことが大切です。同時に、入院治療で高額な費用が必要になったときに備えて、医療保険を検討してみてはいかがでしょうか。
写真/PIXTA
内田 美穂
フィデスレディースクリニック田町院長・医療法人社団レースノワエ理事。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医・母体保護法指定医師。順天堂大学医学部附属順天堂医院・東京慈恵会医科大学附属病院・昭和大学横浜市北部病院など、複数の病院勤務を経て、2019年にフィデスレディースクリニック田町を開院。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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