個人年金保険の受け取りに税金がかかる?計算方法などを税理士が解説。 個人年金保険の受け取りに税金がかかる?計算方法などを税理士が解説。

個人年金保険の受け取りに税金がかかる?計算方法などを税理士が解説。

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※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。

老後に備えて個人年金保険を契約する際には、年金を受け取るときの税金についても確認しておきたいところです。個人年金保険にかかる税金について、税理士の渋田貴正さんが解説します。

目次

個人年金保険の受け取りには税金がかかる。

個人年金保険の受け取りには税金がかかる。

個人年金保険にはさまざまな種類がありますが、契約時に決めた期間に保険料を支払い、契約で決めた年齢に達すると、10年、15年など契約で決めた期間に年金を受け取れる「確定年金」は、その代表的なものとなります。

今回は、確定年金について、受取時にどのような税金がかかるかを見ていきましょう。

年金を受け取る人や受取方法によって税金の種類・額が変わる!

確定年金の場合は、保険会社に支払う保険料の総額や受け取る年金の額は、契約時に確定しています。

ところが、年金を受け取るときにかかる税金の種類や税金の額は、年金の受取人を誰にするか、また受取方によっても変わってきます。

保険契約における「契約者」「被保険者」「受取人」とは?

保険契約における「契約者」「被保険者」「受取人」の役割は下記の表のとおりです。それぞれ違う人にすることも可能ですし、同じ人にもできます。

名称 役割
(保険)契約者 保険会社と保険契約を結び、保険料を負担する人
被保険者 契約する保険の保障の対象となる人。契約内容に応じて被保険者の生死、病気やケガなどに対して保険金・給付金・年金などが支払われる
受取人 保険会社から支払われる保険金・給付金・年金などを受け取る人

取材内容をもとにミラシル編集部にて作成

個人年金保険の受取時にかかる税金は?

個人年金保険の受取時にかかる税金は?

個人年金保険の年金を受け取る際に、受け取る人にどんな種類の税金がかかるのかは下記のとおりです。契約者と受取人が同じ人かどうかで、税金の種類が変わります。

ケース 契約者 被保険者 受取人 かかる税金 納税者
1 本人 本人または配偶者 本人 所得税(年金形式で受け取る場合は雑所得、一括で受け取る場合は一時所得) 本人
2 本人 本人または配偶者 配偶者 贈与税(年金形式で受け取る場合は1年目のみ贈与税、2年目から所得税(雑所得)) 配偶者

参考:国税庁「No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金」

ケース1:契約者と受取人が同じ場合。

ケース1は、自分のお金で保険料を支払い、自分が年金を受け取るケースです。払った保険料よりも受け取る年金額が多い場合、その差益に対して所得税がかかります。年金として毎年受け取る場合は雑所得に、受取開始時に一括して受け取る場合は一時所得となります。

参考:国税庁「No.1490 一時所得」
参考:国税庁「No.1500 雑所得」

ケース2:契約者と受取人が異なる場合。

ケース2は、自分のお金で保険料を支払ったけれど、年金を受け取るのは自分以外の人、というケースです。この場合、年金を受け取る人は、何もコストを支払わずにお金を得ることになるため、契約者から受取人への贈与とみなされます。

年金総額を一括で受け取る場合は、贈与税がかかります。年金形式で受け取る場合は、年金開始時点での年金受給権(年金を受け取る権利)の評価額に贈与税、2年目からは、年金受給額のうち、一定の計算式で計算した額に所得税(雑所得)がかかります。

参考:国税庁「No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金」

税額の計算方法は?

税額の計算方法は?

下記の契約を例に、税金額はどう計算されるかを見ていきましょう。

【契約例】
40歳男性が10年確定年金、年金受取総額1,000万円の個人年金保険に加入した場合
契約者:男性40歳
月払保険料:3万円
払込期間:25年払込
年金受取開始:65歳
年金受取額:100万円
受取期間:10年
保険料総額:900万円
年金総額:1,000万円
一括で受け取る場合の受取額:980万円

ケース1:契約者と受取人が同じ場合。

受け取った年金額から一時所得、雑所得の金額をまず算出し、ほかの所得とあわせて所得税を計算します。

所得税の対象となる所得金額は?

●一括で受け取る場合
一括で受け取る場合は「一時所得」に分類され、課税の対象になる金額は、下記の式で算出します。

一時所得金額=(一時的に得た収入の総額-必要経費-特別控除額)

特別控除額は最大50万円で、個人年金保険の一時金のほか、その年に得たほかの一時所得(たとえば懸賞や福引きの賞金品や競馬や競輪の返戻金など)も合わせた額から控除されます。ですから、さまざまな一時所得の合計額が50万円以下なら非課税となります。

その年の一時所得が個人年金保険のみであれば、必要経費はその収入を得るために支払った費用、つまり払込保険料の総額となります。

さらに一時所得はその金額の2分の1のみが課税されるということになっていますので、実際に課税される金額は以下のとおりとなります。

(980万円-900万円-50万円)×1/2=15万円

●年金形式で毎年受け取る場合
年金形式で受け取る場合は、「その他の雑所得」に分類され、課税の対象になる金額は下記の式で算出します。

その他の雑所得の金額=総収入金額-必要経費

その年の「その他の雑所得」が個人年金保険の年金のみであれば、必要経費は保険料総額のうち、その年に受け取る年金額に適応する金額(その年の年金額×払込保険料総額÷年金の総支給見込額)となり、10万円が所得税の課税対象となります。

100万円-100万円×900万円÷1,000万円=10万円

参考:国税庁「No.1490 一時所得」
参考:国税庁「No.1500 雑所得」

実際に支払う所得税はどう計算する?

実際に支払う所得税額は、公的年金などの雑所得や給与所得など、すべての所得を合計し所得控除額を引いた金額が課税所得金額となります。所得税の税率は、課税所得金額によって段階的に変わります。

参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」

ケース2:契約者と受取人が異なる場合。

契約者と受取人が異なるケースでは、先述したとおり、年金受取開始時に贈与税がかかります。年金形式で受け取る場合は、2年目以降は所得税がかかる場合もあります。

贈与税の課税価額は?

贈与税課税の対象となるのは、その年に贈与された財産の価額の合計から基礎控除110万円を引いた額です。贈与税の税率は基礎控除後の課税価額により変わります。

参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」

実際に支払う贈与税・所得税はどう計算する?

年金受取を開始した年の贈与が個人年金保険の年金受給権のみとすると、税金の計算例は以下のようになります。

●一括で受け取る場合
一括受取額は980万円ですから、基礎控除を引いた870万円が贈与税課税価額となります。

980万円-110万円=870万円

贈与税額は、配偶者への贈与の場合は「一般贈与」に該当するので、下記の表から計算すると税率40%、控除額125万円となり、223万円の贈与税がかかります。

870万円×0.4-125万円=223万円

贈与税の速算表<一般贈与財産用>(一般税率)

基礎控除後の課税価格 200万円
以下
300万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
3,000万円
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」

●年金形式で毎年受け取る場合
年金受取開始の1年目は、年金受給権の評価額を一括受取額とすると、一括受取のケースと同額の贈与税がかかります。2年目からは、所得税がかかる場合もあります。

参考:国税庁「No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係」

贈与税がかかる契約は避けたほうが賢明。

老後に備えた資産形成を目的に個人年金保険に加入するのでしたら、一般的に税率が高くなる贈与税がかかるような契約は避けたほうが賢明です。契約者と受取人は同一にしておくのがポイントだといえるでしょう。

年金受取開始後に受取人が死亡した場合は?

年金受取開始後に受取人が死亡した場合は?

確定年金の場合は、被保険者の生死にかかわらず、契約で決めた期間の年金が支払われます。

受取開始2年目以降の受取期間中に受取人が死亡した場合のケースについても見ていきましょう。この場合も、誰が受け取るかによって税金の種類が変わります。

契約者=受取人で、遺族などが受け取る場合。

(例)契約者:夫(死亡)、受取人:夫(死亡)、死亡後の受取人:妻
未払い分の年金を一括で受け取る場合→相続税
年金形式で受け取る場合→1年目に相続税+2年目以降所得税(雑所得)

遺族の方などが残りの期間について年金を受け取ることになり、死亡した人から未支給分の年金受給権を相続または遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税対象となります。

契約者≠受取人で、契約者が受け取る場合。

(例)契約者:夫、受取人:妻(死亡)、死亡後の受取人:夫
未払い分の年金を一括で受け取る場合→所得税(一時所得)
年金形式で受け取る場合→所得税(雑所得)

もともと保険料を負担していた夫が受け取るので、所得税となります。

契約者・受取人・死亡後の受取人が異なる場合。

(例)契約者:夫、受取人:妻(死亡)、死亡後の受取人:子など
未払い分の年金を一括で受け取る場合→贈与税
年金形式で受け取る場合→1年目のみ贈与税+2年目から所得税(雑所得)

ほとんど見られないケースではありますが、保険料負担者ではない人から年金受給権を取得する場合は、贈与とみなされて贈与税の課税対象となります。

参考:国税庁「No.1615 遺族の方が支払を受ける個人年金」

個人年金保険にかかわるそのほかの税金や控除。

個人年金保険にかかわるそのほかの税金や控除。

このほか、個人年金保険にかかわる税金や控除について、保険を契約する際には以下のことも知っておきましょう。

解約したときにかかる税金。

個人年金保険を解約する場合は、所定の解約返還金が契約者に支払われます。解約返還金は、多くの場合、それまでに支払った保険料の総額を下回りますが、それまでに支払った保険料総額よりも解約返還金の額が大きい場合は、差額に対して所得税(一時所得)がかかります。ただし、先述したとおり一時所得には特別控除50万円があるため、その年に得たほかの一時所得と合計して50万円を超えない場合は、所得税はかかりません。

個人年金保険料控除。

個人年金保険で支払った保険料は、生命保険料控除として一定金額の所得控除を受けられるため、所得税と住民税を軽減できます。

さらに所定の条件を満たし、「個人年金保険料税制適格特約」が付加された個人年金保険の契約の場合、死亡保障などに対する「一般生命保険料控除」とは別枠で「個人年金保険料控除」を受けられます。

【まとめ】個人年金保険は、契約者と受取人を同じ人にするのが◎。

個人年金保険は、長い年月をかけて保険料を支払っていくことで、無理なく着実に老後のための資金を積み上げていくことができます。

老後のための資産形成を主な目的とするのでしたら、契約者と受取人を同じ人にするのがよいでしょう。年金を受け取るときに、思いもよらぬ贈与税を支払う結果とならないように、契約をする前に受け取る年金にかかる税金についてもしっかり確認しておきましょう。

写真/PIXTA イラスト/こつじゆい


渋田 貴正
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、相続登記をはじめ相続関係手続きや、会社の設立など法人関係の登記に特化している司法書士事務所V-Spiritsの代表。また、V-Spiritsグループの税理士として各種税務相談にも対応している。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

※ 税務の取り扱いについては、2023年5月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。

(登)C23N0058(2023.6.26)
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