年金が満額より少なくなるのが不安。減る場合の理由と備え方を解説。 年金が満額より少なくなるのが不安。減る場合の理由と備え方を解説。

年金が満額より少なくなるのが不安。減る場合の理由と備え方を解説。

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※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。 
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。 
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。

老後資金の柱でもある年金は、誰もが将来満額受け取れるものと思いがちですが、年金の手続きなどによっては年金額が減ってしまうこともあります。社会保険労務士で年金制度にも詳しい、ファイナンシャルプランナーの森本幸人さんに、将来受け取れる年金額が満額より少なくなる場合の理由と、個人年金保険などを活用した老後の備えについてお聞きしました。

目次

年金の手続きが原因で満額より少なくなるケース。

年金の手続きが原因で満額より少なくなるケース。

年金は20歳から60歳になるまでに国民年金の保険料を納めた期間や、加入者であった期間などの合計年数が一定以上あると受け取れます。満額受け取るには、20歳から60歳になるまでの40年間の保険料をすべて納める必要があります。しかし、保険料の支払手続などによっては、将来受け取る年金額が満額より少なくなってしまう場合があります。

参考:日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」

国民年金保険料の免除制度を利用した。

失業や収入減少などの経済的な理由で保険料が払えない場合、国民年金保険料の免除制度を申請し承認されると、所得などに応じて全額・4分の3・半額・4分の1のいずれかで保険料が免除されます。免除期間中も、年金を受け取るために必要な加入期間である受給資格期間に算入されますが、免除の種類と期間によって将来受け取る年金額は満額より少なくなります。

なお、制度利用期間から10年以内にさかのぼって保険料を後払い(追納)すると、年金額を増やすことができます。

参考:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」

参考:日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」

国民年金保険料の納付猶予制度を利用した。

20歳から50歳未満で本人と配偶者の前年所得が一定以下の場合、申請して承認されれば保険料の納付が猶予される制度です。承認を受けた期間は受給資格期間に反映されますが、年金額に反映されないため、将来保険料を追納しなければその間の年金を受け取れずに満額より少なくなります。

参考:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」

国民年金保険料の学生納付特例制度を利用した。

大学生や短大、専門学校などに通う学生のための猶予制度で、本人の前年の所得が一定以下であれば、申請し承認されると在学中の保険料の納付が猶予されます。承認された期間は、受給資格期間に反映されますが、国民年金保険料の免除制度や国民年金保険料の納付猶予制度と同様、追納しなければ年金額は満額より少なくなります。

森本さんのもとへ相談に来られる方では、「国民年金保険料の学生納付特例制度の利用後、追納し忘れていたケースが特に多い」とのこと。払い忘れているかどうかは、日本年金機構のネットサービス「ねんきんネット」か、同じく日本年金機構から毎年誕生月に送付される「ねんきん定期便」から過去の納付状況が確認できます。

参考:日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」

未納期間がある。

年金の受給資格期間の基本は10年です。保険料の納付期限から2年を過ぎると未納となり、未納期間が長く保険料の支払いが10年に満たない場合は、年金を受け取れません。また、保険料を未納のままにしていると、もしもの事態が起こった時に支給される障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れない場合もあります。

基本的に納付期限から2年を過ぎると、未納期間中の保険料を追納できないため、年金額は満額より減ったままとなります。その場合は、60歳以上65歳未満であるなどの条件を満たしていれば、国民年金に任意加入でき、保険料を納付することで将来受け取る年金額を増やせます。

参考:

日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」

日本年金機構「任意加入制度」

日本年金機構「Q保険料を納めなかった期間がありますが、今から納めることができますか。」

繰上げ受給をしている。

年金は原則65歳から受け取れますが、繰り上げることで60歳以上65歳未満の間に受給できます。ただし、受け取れる年金は1か月早めるごとに0.4%ずつ減額されるため、60歳に繰り上げると、65歳での受給開始時と比べて24%も減額されます(※)。

※ 1962年4月1日以前生まれの場合の減額率は、0.5%(65歳での受給開始時と比べて最大30%)となります。

なお、繰上げ受給は一度申請したら変更できず、減額率は生涯変わりません。また、繰上げ受給をしたあとは、遺族厚生年金などほかの年金との併用ができず、いずれか一方を選ばなければならない場合があります。

参考:日本年金機構「年金の繰上げ受給」

働き方が原因で満額より少なくなるケース。

働き方が原因で満額より少なくなるケース。

定年後も仕事を続ける場合、厚生年金に加入しながら年金を受け取れます。これを「在職老齢年金」といいます。

しかし、厚生年金から支給される年金を指す「老齢厚生年金額」と「給与と賞与の額」によっては、受け取る年金額が満額より減ってしまうことがあります。対象は、加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額と、総報酬月額相当額(その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額を12で割った額)の合計が48万円を超えた場合で、超えた額の2分の1が年金から減額されます。

※ 65歳未満の方の2022年3月以前の年金については、計算方法が異なります。

参考:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」

物価や賃金の増減などで減るケース。

原則として、年金額は賃金や物価の変動により、毎年改定されています。本来のしくみとしては、賃金や物価が上がれば年金額も上昇し、物価高などのインフレにも対応できるようになっています。しかし昨今の少子高齢化によって、年金制度を支える将来の現役世代の負担が増していることから、賃金や物価による改定率を調整し、年金額の伸びを抑えるしくみを導入しました。これを「マクロ経済スライド」といいます。

さらに、2016年から「キャリーオーバー制度」が導入され、マクロ経済スライドによる調整率によって前年度の年金額を下回る場合は、翌年度以降に調整率分を繰り越し、再び物価や賃金が上昇した年度にあわせて調整されます。つまりこの場合、賃金や物価が上昇しても、その年のマクロ経済スライドの調整率とキャリーオーバーしたぶんとの両方が調整されるので、年金額は賃金や物価の上昇に応じては上がらず、減ってしまうことになります。

参考:日本年金機構「マクロ経済スライド」

参考:日本年金機構「Q マクロ経済スライドのキャリーオーバー制度とは何ですか。」

個人年金保険でプラスの備えを。

個人年金保険でプラスの備えを。

年金は、老後の生活を支える大きな柱です。しかし、よりゆとりある生活を考えるのであれば、年金以外に老後資金を準備するために資産形成の選択肢を持っておくと安心です。具体的にはできるだけ長く働く、投資や貯蓄性のある保険を活用するなどの方法があります。ここでは、個人年金保険の活用例を紹介します。

個人年金保険とは。

個人年金保険は、将来の収入を補うことを目的とした保険です。60歳・65歳・70歳など、契約時に決めた年齢まで保険料を払い込み、老後に年金形式で一定額を受け取れるほか、商品によっては一括でまとまったお金が受け取れます。

税制優遇(所得控除)も受けられる。

個人年金保険の保険料は、契約時に一定の条件を満たす場合、税制適格特約を付加することで、個人年金保険料控除の対象になります。これにより年間で払い込んだ保険料に応じて、所得税は最大4万円、住民税は最大2万8,000円が所得から控除されます(※)。

※ 2012年1月1日以降に締結した保険契約などの場合。

保険料の払い込み期間が長ければ長いほど、より所得控除の恩恵を長く受けられるため、加入するのであれば早めのほうがおすすめです。

参考:国税庁「No.1140 生命保険料控除」

個人年金保険は年金の繰下げ受給にも役立つ。

個人年金保険は年金の繰下げ受給にも役立つ。

年金の繰下げ受給を希望すれば、受給開始を75歳まで遅らせられます。繰下げ受給をすると、請求した時点(月単位)に応じて、年金受給権が発生する生年月日から繰り下げた月数ごとに0.7%の年金額が増額されます(※)。たとえば、受給開始を1年間遅らせると8.4%増となり、75歳まで遅らせた場合は84%増になります。

※ 1952年4月1日以前生まれの場合、または2017年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している場合は、繰り下げの上限年齢が70歳までとなり、増額率は65歳での受給開始時と比べて最大42%となります。

84%の増額率が見込めるとなると、ぜひとも利用したい制度ですが、繰り下げをする期間の資金を別途確保する必要があります。年金受給を遅らせたことによる空白期間の資金用として、個人年金保険に加入し備えておくと、生活費の補填の一助にもなります。ただし、個人年金保険は解約をすると、解約返還金額が払い込んだ保険料の総額を下回ることがあるため、注意が必要です。

参考:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

【まとめ】個人年金保険も視野に入れて計画的に老後の備えを。

ゆとりある老後を送るためには、受け取れる年金はいくらなのかなどを含めて、生活を具体的にイメージしておくことが大切です。40代~50代は、老後の生活に入るまで約20年あります。年金以外にも個人年金保険を活用するなどして、計画的に将来の生活に備えましょう。

写真/Getty Images、PIXTA


森本 幸人 
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP(R)、1級FP技能士)。証券会社勤務後、森本FP社労士事務所を開設。定年後を豊かに生きるためのリタイアメントセミナーを中心に、再就職や資産運用について全国で講演・セミナーを行う。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。 
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。 
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※ 税務の取り扱いについては、2023年5月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。

(登)C23N0235(2024.2.6)
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