FP佐藤さんに聞く!退職金がない人の老後準備のはじめ方。
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現代において、転職はもはや珍しいことではなく、1つの企業や業種に定着せずに短期間で転職を繰り返す「ジョブホッパー」という生き方を選択する人もいます。ジョブホッパーは一見自由な生き方ですが、定年をむかえたときに退職金制度の有無や勤続年数などの条件により退職金が出ない、または少ないケースが多いのが実情。老後の生活への不安を考えると、より手堅い資産形成が重要になるのです。
そこで今回は、間もなく4社目への転職を控える篠山さんが、FPの資格を持つセンパイ・佐藤さんに将来の漠然とした悩みを相談。老後の資産形成の手法やそのメリット・デメリットもあわせて教えてもらいました。
「退職金」がない人の老後ってやばい?退職金にまつわるお悩みに、佐藤センパイがアンサー!
そんなこんなで、急きょ始まった、佐藤センパイによる「退職金がない人の老後準備のはじめ方講座」。
ここからは、マンガから飛び出して、実写版佐藤センパイことFP佐藤さんが、篠山さんと山本くんの老後資金と退職金の疑問・不安にお答え!
【篠山さんの質問①】一度転職したら、退職金はもらえない?
篠山さん:私は今回で3度目の転職で4社目なんですが、そういえば退職金のことってあまり気にしたことがなくて……。会社の規模にかかわらず、退職金制度はどの会社にもあるものなんですか?
佐藤さん:退職金制度を導入するかどうかは各企業の裁量なので、そもそも退職金をもらえない会社もあるんだよね。その一方で、中小企業でも手厚い制度が整っているケースもあったり。転職するときにはお給料とは別に、勤続年数などの退職金の受給条件や金額感を確認するのがすごく大事。
篠山さん:それは盲点だったかも。ちなみに、私みたいに何度も転職をしている場合、退職金はどうなるんですか?
佐藤さん:それぞれの企業の規定によるけれど、退職金がもらえる勤続年数の目安は3年といわれていて、3年以内に離職してしまうと退職金がもらえないケースが多いの。退職金は老後の大切な収入の1つだし、ない人はよりいっそう自身でどう備えるか考える必要があるよ。
【篠山さんの質問②】実際、老後の収入と支出ってどれくらい?公的年金だけでは生きていけないの?
篠山さん:ジョブホッパーの私には厳しい現実……。ちなみに、自分の老後の収入と支出がどのくらいになるのかも、ある程度考えておいた方がいいですよね? 正直全然イメージができていないのですが、どうやって見積もればいいのでしょうか?
佐藤さん:まず収入に関しては、「ねんきんネット」や「公的年金シミュレーター」などを使って、年金見込み額を確認してみるのがおすすめ。たとえば、篠山さんと同じ1995年生まれの想定で、公的年金シミュレーターで試算してみようか。
試算すると、日本の平均給与443万円で、23~60歳まで会社員として働いた場合、65歳からもらえる年金見込み額は年163万円。だいたい月13万円程度の収入を生涯得られることになるね。実際には、物価や賃金などの経済状況によって年金額は改定されるし、昇進や転職などで年収は変動して、一律ではないことがほとんどだから、この通りではないけれど。
「ねんきんネット」では自分の年金記録に基づいて試算できるから、年に一度は年金見込み額を確認してみて。
山本くん:年金見込み額って意外と簡単に試算できるんですね。まだ老後の生活は想像できていないのですが、支出はどう考えておくといいのでしょう?
佐藤さん:老後の支出に関しては、住んでいる地域やそのときの物価、持ち家かどうかによっても差が出るので、イメージしづらい場合は、ひとまず今の生活費の8割でざっくり見積もってみるのが一番わかりやすいと思う。
篠山さん:となると、たとえば今の生活費が20万円だとしたら、老後の支出が約16万円。さっきの試算でいくと、公的年金の収入が月約13万だから足りない! センパイ、すでに赤字です……!
佐藤さん:さらに言えば、旅行費や家電の買い替え費用、保険料などの年間予備費用や、冠婚葬祭、家のリフォーム費用などの特別支出にも備えておく必要があるから、公的年金額だけでは生活できないのが現状なんだよね。
【篠山さんの質問③】ジョブホッパーにおすすめの資産形成方法は?
篠山さん:老後にかかるお金、生活費だけではないですもんね。自身で老後のために資産形成をする必要性をさらに感じてきました……。センパイ、退職金がない私のような人にもおすすめの資産形成方法を教えてください……!
佐藤さん:OK! では、ジョブホッパーの篠山さんにもはじめやすい資産形成の方法と、メリットやデメリットを教えるね。
収入がある程度あって、税の控除を受けながら年金を増やすなら「iDeCo」。
佐藤さん:まず、個人型確定拠出年金制度の1つである「iDeCo」。自身で掛け金や金融商品を決めて運用し、60歳以降に受け取れる私的年金制度のこと。最低5,000円からはじめられるし、未来の自分に少しだけ貸す、くらいの気持ちでできるのが魅力ね。
iDeCoの主なメリットとデメリット
メリット | ・払い込んだ掛け金の全額が所得控除の対象になる ・運用して得た利益が全額非課税になる ・退職金や年金として受け取るときにも税制メリットがある |
デメリット | ・転職先の企業型確定拠出年金の有無によって口座移換の手続きが必要になるケースがあるため、頻繁に転職する場合は少し手間がかかる ・運用中の資産は原則60歳まで引き出せない ・各種手数料がかかる(加入時・移換時手数料、口座管理手数料 など) |
篠山さん:なるほど。資産形成を後回しにしてしまいがちな私でも、毎月設定した額を支払うなら、ほどよく強制力もあっていいかも。
佐藤さん:ただ、収入が高くて所得税が多くかかっている人は、税の控除をしっかり受けられるのでおすすめだけど、一方で収入があまり高くない場合には、メリットを感じにくいかも。それに、原則60歳までは引き出せないから、将来への貯金のつもりでiDeCoにお金を入れてしまって、結婚や家を購入するときに困った! ……なんてことがないように注意が必要だね。
転職時の手続き&口座管理手数料いらずで、手軽にはじめたい人は「NISA」。
佐藤さん:続いて紹介するのは「NISA」。一定の枠内での投資で得られた利益や配当金が、非課税になる制度のこと。2024年からの新しいNISAでは得られた利益の非課税保有期間が無期限になるから、より長期的に運用できるの。
転職のときも特に手続きは必要ないし、管理の面でもラクだから、面倒くさがり屋さんにはおすすめ。将来的に足りない額を、新しいNISA単体で今からコツコツ備えていくというのもアリだと思うよ。
NISAの主なメリットとデメリット
メリット | ・NISAは5年間、つみたてNISAは20年間、運用益が非課税で運用できる※ ・口座管理手数料がかからない ・いつでも引き出せる ・転職時に手続きの必要がない ※2024年から別枠で非課税期間が無期限の新しいNISA制度が開始予定 |
デメリット | ・自分で運用することが必須 |
山本くん:へえ~! 篠山さんはジョブホッパーの中でも転職頻度が高めだし、いつも大事な手続きを忘れて慌てているイメージがあるから、NISAもいいんじゃないですか?
篠山さん:うっ……。たしかにアリかもしれない。口座管理手数料がかからないのもいいですね。
佐藤さん:ただ、よい商品がそろっていて初心者でもはじめやすいとはいえ、NISAも自分で運用する必要があるから、最低限の運用知識を持っておくことは大切だよ。
+αで資産形成したい、もしくは専門家に伴走してほしい人は「個人年金保険」。
佐藤さん:基本的にはここまでお話しした、iDeCo、NISAなど国の制度をベースに老後資金を設計した上で、安心のためにさらに資金を準備しておきたいという人には、個人年金保険という選択もあるよ。保険会社に定期的に保険料を払い込んで、契約時に決めた年齢に達したら保険料に応じた年金を受け取れるというしくみなの。
篠山さん:これはイメージしやすいかも。私の両親も加入していた気がします。
個人年金保険の主なメリットとデメリット
メリット | ・保険の専門家が手厚くサポートしてくれる ・個人年金保険料控除※、もしくは一般生命保険料控除を受けられる ・強制力があり、貯蓄が苦手でも継続しやすい ・転職時に手続きの必要がない ※一定の条件を満たした場合 |
デメリット | ・受給開始時期が決まっているので、それまでは受け取れない ・途中で解約すると、解約返還金額が払い込んだ保険料の総額を下回る可能性がある ・早く亡くなると、最終的に受け取った金額と払い込んだ保険料の総額が見合わないことも |
佐藤さん:個人年金保険の一番の魅力はやっぱり、保険会社の方が一人ひとりの老後の資産形成について丁寧にしっかりとサポートしてくれるところかな。一定の金額までは生命保険料控除の対象にもなるし、強制力があるから、自力で貯蓄するのが苦手な人にもいいと思うよ。
山本くん:「資産形成」について、どうしても知識不足な気がしていて……。自力ではじめるのに不安があるので、アドバイスしてもらえるのはありがたいですね!
佐藤さん:そうだよね。まずは、ちょっとずつ資産形成について勉強しながら、少額ではじめればいいと思うよ。今は月5,000円からはじめられる商品もあるし、少額でも長期的に見れば、いつか「やっていてよかった」と思えるから、早くからはじめる価値はあるよ!
資産形成といっても、いろいろな種類と特徴があるから、自分にあった方法を見つけてね。
佐藤さんのレクチャーを経て……。
イラスト/さわぐちけいすけ
佐藤 麻衣子
企業向けに確定拠出年金やライフプラン研修、人事労務コンサルティングなどを行う人事コンサルタント。CFP(R)、1級FP資格、社会保険労務士などの資格を持ち、株式会社ウェルスプランの代表取締役を務める。著書に『30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本』(日本実業出版社)がある。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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