生命保険と医療保険の違いは?優先順位や検討のポイントを専門家が解説。 生命保険と医療保険の違いは?優先順位や検討のポイントを専門家が解説。

生命保険と医療保険の違いは?優先順位や検討のポイントを専門家が解説。

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#保険
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※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。    
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。

「そろそろ保険のこと、真剣に考えないと」と思いつつ、若くて健康なうちは万が一のことや病気の心配もひとごとで、「どんな保険に加入したらいいのかよくわからない」という人も多いのではないでしょうか。中でも悩ましいのは、生命保険と医療保険の優先順位や選択する際のポイントです。

本記事では、看護師の経験があり医療関連のお金事情に詳しいファイナンシャルプランナーの黒田ちはるさんが、生命保険(※)と医療保険の違いについて解説。選ぶポイントや加入のタイミングについてアドバイスします。

※ 死亡保険を指して生命保険と呼ぶこともありますが、基本的に生命保険とは、医療保険や年金保険といった生命保険会社が取り扱う保険商品全般を指す総称です。その中で、特に被保険者の死亡リスクに備える保険のことを死亡保険と呼びます。本記事における生命保険とは、この死亡保険を指します。また、文章表現の都合上、生命保険や医療保険を「保険」と記載している箇所があります。

目次

生命保険と医療保険の違い。

生命保険と医療保険の違い。

生命保険と医療保険は目的が異なります。生命保険は、被保険者が亡くなったとき、あるいは所定の高度障害状態(※)になったときに保障され、主に、被保険者の家族などのための保険です。一方、医療保険は、病気やケガによる入院・手術といった被保険者が受ける医療行為などの支払いに対する保険で、治療やそれにまつわる支出、収入減に備えます。

生命保険

生命保険には、保障期間や対象、保険金の支払い方法などによってさまざまなタイプの商品があります。

終身保険・定期保険

生涯にわたって保障されるのが終身型の保険です。解約する場合は解約返還金が支払われ、加入していた期間が長くなればなるほど解約返還金の額も増えます。一方、「15年間」「60歳まで」のように、保障期間を定めて加入するのが定期型の保険です。更新する場合は更新時の年齢に応じて保険料が再計算されるため、更新後の保険料は高くなることが一般的です。ただし、終身型に比べて見直しをしやすいという利点があります。

収入保障保険

収入保障保険は、被保険者が亡くなったり所定の高度障害状態(※)になったりしたときに、一定額が給付されます。一般的に給付される保険金は、先述の定期保険の場合は保険期間中一定額なのに対して、収入保障保険の場合は保険期間中であっても徐々に減っていきます。一方で、保険料は定期保険と比べて抑えられるため、子どもの成長などライフステージにあわせて備えやすくなります。

※ 高度障害状態に対する保障の有無は、保険会社や商品によって異なります。

養老保険

養老保険は、契約期間内に死亡したときには死亡保険金が支払われ、満期時に生存していたときには満期保険金が支払われます。

医療保険

医療保険にも保障期間や対象、給付金の支払い方法などによって、さまざまなタイプがあります。

終身型・定期型

生涯にわたって保障が続く終身型と、ある一定期間を保障対象とする定期型があります。終身型は、契約期間中の保険料が変わりません。定期型は、契約を更新する場合、更新時の年齢などに応じた保険料が適用されるため、一般的には保険料が上がります。

日額型・一時金型

入院1日あたりの日額を、入院日数分受け取るのが日額型。1日でも入院すれば契約で定められた額が支払われるのが一時金型です。一時金型は、入院が長期になる場合に保障しきれない可能性はありますが、入院が短期化している昨今の傾向に合ったタイプだといえます。

掛け捨て型・貯蓄性のある型

満期や更新、解約のタイミングでお金が戻ってこない掛け捨て型は、保険料の負担が軽く、見直しもしやすいです。満期や更新、解約のタイミングで満期保険金や解約返還金などが支払われる貯蓄性のある型は、掛け捨て型に比べて保険料が高い一方で、将来に向けた蓄えができます。ただし、早期に解約すると、受取金額が払い込んだ保険料の総額を下回ることが多く、受取金額がない場合もあります。

特約

医療保険は、特約を付加して保障を手厚くすることもできます。特約の種類は、三大疾病・女性特定疾病・先進医療といった特定の病気に対するものから、災害入院特約といった不慮の事故に対するもの、さらに特定の疾病や障害状態になると保険料の支払いがなくなる払込免除特約といった支払いに関するものまでさまざま。リスクが高い病気や自身の状況に応じて備えられます。

生命保険と医療保険。どちらを検討すべきかを考えよう。

生命保険と医療保険。どちらを検討すべきかを考えよう。

生命保険と医療保険のどちらがより必要なのかは、その人それぞれの立場や環境によって異なります。まずはどちらの保険を検討すべきでしょうか?

生命保険を検討したほうがいい人。

「扶養家族がいて自分が家計を支えている」という人は、まず生命保険を検討しましょう。自分に万が一のことがあったり働けなくなったりしたときでも、家族が経済的に困窮することなく暮らしていけるよう備えることが大切です。

医療保険を検討すべき人。

生命保険文化センターの調査によると、入院時の自己負担額の平均は19万8,000円(※)。入院となると約20万円前後かかる可能性を考えると、何かしらの医療保険に加入しておいたほうが安心です。特に、公的な社会保障が会社員に比べて手薄で、入院となれば収入も断たれてしまうかもしれない自営業の方は、医療保険で備えておきましょう。

また、黒田さんによると、保障が会社員に比べて手薄になりがちな主婦・主夫も医療保険に加入しておいたほうがいいそうです。パートやアルバイトをしている場合、その収入が家計の一端を支えている家庭は少なくありません。

さらに、家事や育児を担っていた主婦・主夫が入院ともなれば、家庭にも大きな影響がでます。外食中心の食事になったり、家事代行サービスをお願いしたりすることになるかもしれません。家族の誰かが病気やケガで入院するようなことになったら、何がどう困るのかは「世帯全体」で考えましょう。

※ 治療費・食事代・差額ベッド代・交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)・衣類・日用品などを含む。高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額。

参考:公益財団法人 生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」

必要な保障はライフイベントや公的サポートを踏まえて考える。

必要な保障はライフイベントや公的サポートを踏まえて考える。

生命保険と医療保険、自分にとってどちらがより必要なのかのイメージができたら、「自分と家族がこの先、どんな人生を送っていきたいのか?」という人生プランをベースにどんな保障が必要なのかを考えます。

家族構成や収入、人生設計によって備えるべきポイントは異なるため、できるだけ具体的にイメージすることが大切です。結婚や出産、家の購入、子どもの成長などのライフイベントから考えていくといいでしょう。

確認しておきたい公的サポート。

必要な保障がみえてきたら、具体的な保障額・保障内容を決めるために、まずは公的な制度によるサポートについて確認します。その上で、足りないぶんを生命保険や医療保険で補います。

生命保険の特約で入院・手術に対する保障をつけたり、逆に、医療保険の特約で死亡保障をつけたり、カバーできる保障内容は商品によってさまざまです。過不足なくカバーできるよう、内容を確認しながら組みあわせていきましょう。公的なサポートには次のようなものがあります。

遺族年金

国民年金・厚生年金保険の被保険者が亡くなったとき、その人によって生計を維持されていた遺族が受けられる年金です。遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。

障害年金

国民年金・厚生年金保険の被保険者が、病気・ケガなどによって生活や仕事が制限されるようになったときに受け取れる年金です。障害基礎年金と障害厚生年金などがあります。

入院・治療に対するサポート。

病気・ケガなどによる入院や治療に対するサポートには、高額療養費制度や傷病手当金があります。高額療養費制度は、健康保険や国民健康保険の加入者が、医療費の自己負担額が高額になった場合、所得に応じて定められている自己負担限度額を超えたぶんがあとで払い戻される制度です。

傷病手当金は、一定の条件を満たした健康保険の加入者が、病気・ケガなどで勤め先を休み十分な報酬が受けられない場合に支給されます。勤め先を連続して3日休んだうえで、4日目以降の休んだ日数に対して支給されます。ただし、有給など、休んだ期間に対して支払われる報酬が傷病手当金より高い場合は支払い対象外となり、低い場合は傷病手当金満額と支払われた報酬との差額が支払われます。

定期的に保障内容を見直す。

保険は「加入したら、それで安心」ということはありません。ライフステージに応じて見直すことも大切です。たとえば、生命保険でカバーしていた家族への備えも、自分が亡くなったときの経済的ダメージは、子どもが幼いころと独立したあとでは大きく異なるでしょう。黒田さんによると、生命保険は人生の大きな節目で考えるとよいそうです。

医療保険は、もう少し定期的な見直しが必要になります。医療の進化によって、10年後の入院・手術の標準が大きく変わっている可能性などがあるためです。自身のライフステージと医療の傾向を見据えて見直しましょう。

医療保険を早めに検討すべき理由。

医療保険を早めに検討すべき理由。

「医療保険は早めに検討するといい」といわれても、若くて健康に不安のないうちは、その必要性を感じないでしょう。とはいえ、予期せぬ病気やケガに見舞われたとき、生活が根底から揺らぐような事態は避けねばなりません。「保険に入っておけばよかった」という後悔をしないためにも、早めに検討することをおすすめします。

比較的お手頃な月額保険料で保障が得られる。

保険料は過去の統計データから、リスクの起こりうる確率によって決められます。年齢や性別によって保険料が異なるのはそのためです。当然、年齢が低いほうが病気や死亡のリスクが低いため月額保険料は年齢の高い人に比べて安くなります。

年齢とともに健康リスクが高まる。

病気の治療中だったり、入院・手術歴があったり、健康診断で異常が指摘されていたりすると、保険に入りたくても入れないこともあります。持病がある人や入院経験がある人でも加入しやすい保険もありますが、健康な人と比べて保険料は高くなります。

一般的に、年齢とともに病気のリスクは上がり、血圧やBMIといった健康指標も悪くなりがち。つまり、健康な若いうちのほうが、制限や妥協を強いられずに自分に合った保険を検討しやすいのです。

若いうちは貯蓄が少ない。

医療保険に加入していなければ、入院・手術の費用、それにともなう諸費用は、すべて自分で支払うことになります。貯蓄でまかなえたとしても、目標や人生プランを見据えてためていたお金を失うのは避けたいものです。経済基盤がまだ弱い若い世代だからこそ、医療保険が必要になるでしょう。

「まさか自分が」と後悔しないように。

「高額療養費制度などの公的サポートもあるし、自分はまだ大丈夫」「仕事もプライベートも忙しいから保険なんて検討するのは面倒」と考える人もいるはずです。さらに、保険は人それぞれの考え方や人生プランに応じて加入するものですから、「加入しない」という結論に達する人もいるでしょう。

とはいえ、病気やケガに見舞われる人の多くが口にするのが、「まさか自分が」という一言です。公的なサポートを受けた上でも、経済的に大きな負担を抱えてしまう人もいます。「自分だけは絶対に大丈夫」ということはありません。自分の状況や貯蓄額を踏まえて、不安があれば民間の医療保険を検討してみてはいかがでしょうか。

写真/PIXTA


黒田 ちはる    
黒田ちはるFP事務所代表。看護師FP(R)として、オンラインや医療機関で年間約180件のがん患者専門の家計相談を行う。医療機関や自治体・企業での講演、FPの相談員育成も実施。著書に『がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵』(日経メディカル開発)


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。    
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。    
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(登)C23N0127(2023.9.14)
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