親と同居するメリット・デメリットとは?注意点も含めて介護経験のあるFPが解説。 親と同居するメリット・デメリットとは?注意点も含めて介護経験のあるFPが解説。

親と同居するメリット・デメリットとは?注意点も含めて介護経験のあるFPが解説。

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親と同居する理由は、経済面や家事、育児の負担を軽くするため、高齢の親の介護などさまざま。メリットとデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?      
親と同居するケースはどれほど多く、同居する際に注意すべき点はあるのか。親との同居経験や介護経験をもつファイナンシャルプランナー・佐藤彩菜さんに話をうかがいました。

目次

親と同居する人は増えている。

そもそも社会人で親と同居している人はどれくらい、いるのでしょうか。データを見る限り、若年層の場合、一定数の方が親との同居を続けているようです。

「厚生労働省が発表している“若年者雇用実態調査(平成30年)”によると、34歳未満の社会人で親と同居している人の割合は、正社員の人で41.4%、非正社員の人では57.9%でした。この割合は5年前と比べて特に大きな変化はありません。このデータは全国平均のため、地方から人が集まってくる都心部などでは割合が下がるのではないか」と佐藤さん。

なお、35歳以上の同居に関しては正確なデータはありませんが、引き続き実家に住む人や、一度実家を出てから戻ってくる人が一定数いるとみられます。

参考:厚生労働省「平成30年若年者雇用実態調査」

親と同居するメリット・デメリット。

親と同居するメリット・デメリット。

親と同居する場合、さまざまなメリットとデメリットがあります。それぞれ以下のケースに分けて解説いただきました。

1:夫婦、子どものいる世帯の場合。

2:親の介護が必要な場合(二拠点生活を含む)。

3:単身者が親と同居する場合。

前提として、親世帯は自身の生活を、給与収入や年金収入などで賄えているものとして説明しています。

1:夫婦、子どものいる世帯の場合。

夫婦や子どものいる世帯が親と同居する場合です。自分以外の家族とともに親と同居する際のメリット・デメリットを見ていきましょう。

子育て面では断然有利。働きやすさが経済的な支えに。

佐藤さんいわく、「夫婦でどちらかの親と同居する際のメリットは、単身者が同居する場合とほとんど変わりません」とのこと。家賃や生活費の負担を軽減できる利点は、このケースでも同様です。

また、子どものいる世帯がどちらかの親と同居する場合は、大きなメリットが。

「同居によって育児のサポートをお願いできるのは、非常に大きな利点です。近年の共働き世帯数は、専業主婦のいる世帯の2倍ほどで、夫婦が育児や家事を分担して行っています。もし子どもが熱を出したら、どちらかが仕事を休まないといけません。

しかし親と同居していれば、子どもの体調不良が起こっても、親に子どもを預けて働けます。病気の子どもを預ける“病児保育”を利用する必要もなく、そのぶんの出費も減少します。より安定的に働けることで、お金が貯まりやすくなると言えます」

自治体によっては希望しているのに保育園に入れない「待機児童」や「保留児童」が発生しています。しかし、親と同居していれば、保育施設が見つかるまで親に子どもを預けて仕事に復帰することも考えられるので、より働きやすいでしょう。

ただし、自治体によって、親と同居していることにより、保育園の入園審査で不利になる場合もあるため注意が必要です。

また、一緒に住んでいることで、孫に関する資金援助を頼みやすくなるケースも。こうしたメリットは同居でなくとも、近所に住む近居でも十分ありえます。

同居のストレスをいかに解消するか。

一方、夫婦や子育て世帯が親と同居する際のデメリットも少なからずあるようです。  
「親と同居していると、土日のレジャーやイベントに参加する人数が増えやすくなります。たとえば日曜日に家族でランチを食べに行って、親2人分のプラス料金がかかったとき、日ごろの感謝を伝える意味でごちそうする場合もあるでしょう。こうした少しの出費が積み重なると、相応の出費になる可能性があります」
また、生活費の使い方や子どもの習い事、教育方針などさまざまな面について、親から口を出されるかもしれません。こうした場合、いかに上手にコミュニケーションをとって精神的なストレスを減らすか。これがとても重要になってくるそうです。

2:親の介護や看病が必要な場合(二拠点生活を含む)。

親の介護や看病が必要な場合や、それに伴って半同居・二拠点生活を行う場合です。こうしたケースは40代〜50代の方に多く、たとえ現時点で親が健康な方でも今後検討を迫られる可能性があります。

介護などの外注費用を節約できる。

同居によって、「いつでも親のそばにいてあげられる」という精神的なメリットも生まれます。こうしたお金に換えられないよさがあります。

しかしながら、親の加齢や体調不良に伴って同居する場合、金銭的なメリットは必然的に少なくなります。実際に親の介護経験のある佐藤さんに語っていただきました。

「親の介護や看病による同居の金銭的なメリットは、有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅をはじめとした、医療・介護のための有料サービスなどへ外注するコストが抑えられることです。介護サービスは介護保険が適用されますが、冠婚葬祭への参列やお墓参りなど私的な外出の付添など適用外のサービスに関しては自己負担になります。

別居しているとこうした有料サービスに頼らざるを得なくなるので、同居によって節約できる金額は大きいですね」

介護離職は大きなリスク。介護休業制度の活用を。

介護や看病によって同居する場合の大きなデメリットは、仕事を調整する必要があることです。

「“介護離職”という言葉があるように、親の介護と仕事が両立できず、定年を前にした50代前後で離職して介護に専念するケースがあります。ただし、介護が終わったあと、再就職しようと思ってもなかなか希望どおりにいかないことも。

こうした介護離職を避けるためにも、厚労省が定める“介護休業制度”を利用しましょう。また、親が経済的に困窮している場合、自分が介護費用を負担しなくてはならない可能性があります」

介護保険の要介護認定が要介護3から5の方で、常に介護を必要とし、自宅では介護が困難な方は「特別養護老人ホーム」への入居も考えられますが、特別養護老人ホームは支援の必要性の高い人から順に入居させるという方針の施設です。親と同居していると入居できる可能性が下がってしまうので、注意しておくといいでしょう。

また、介護保険サービスの中の「生活援助」と呼ばれる掃除・洗濯などのサービスは、家族と同居していると受けられません。これ以外にも「親と同一世帯にしていると世帯収入が上がるが、介護保険サービスの費用負担も増加することがあります」と佐藤さん。

介護が理由で同居する際には、よく考えて決断したほうがよさそうです。

さらに自分の家を残したまま親と半同居する二拠点生活は、自分が住んでいる家のぶんと、実家のぶんがと家賃が2倍かかる可能性があります。移動が増えるほど交通費がかさんでしまうので、遠方の場合は特に注意が必要です。

参考:厚生労働省「介護休業制度」     
参考:厚生労働省「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」

3:単身者が親と同居する場合。

単身者が親と同居する場合です。社会人になっても実家に残って生活する際のメリットとデメリットを整理してみましょう。

独身時の親との同居は経済面ではメリット大!


「単身者が親と同居する最大のメリットは、お金が貯まりやすいことです。実家で暮らせば、一定の金額を負担することはありますが、1人暮らしと比べると家賃・食費・光熱費などの生活費がかかりません。一般的に年次の若いうちは給料があまり高くないことを考えれば、経済的な面で支えてもらえるのは非常に心強いでしょう」

金銭的なメリット以外に、食事や洗濯など生活面でもサポートを受けやすくなります。家に食事があれば外食する機会も減り、おのずと食費も節約可能に。その結果、自由に使えるお金が増え、自己投資や趣味に使える余裕が出やすくなります。

金銭感覚や家事能力が身につかない恐れも。


一方のデメリットは金銭感覚や家事能力が養われにくいこと、と佐藤さん。

「私自身も結婚するまで実家で暮らしていたのですが、実家にいると家賃を支払う必要はなく、生活費を細かく計算することもほとんどないので、どうしても金銭感覚が養われにくくなります。家事をする機会も少ないため、1人暮らしの場合よりも生活能力が低くなりやすいのはデメリットと言えるでしょう」

一方で実家にお金を入れるケースも多々あり、この金額が定期的な出費となります。佐藤さんも月数万円を実家の家計に入れていたとのこと。ただしその金額は3万円〜5万円が一般的で、1人暮らしをしている方の出費よりはかなり低くなります。      
 

親との同居生活を快適に過ごすコツ。

親との同居生活を快適に過ごすコツ。

親と同居するなら、お互いがさまざまなメリットを感じながら気持ちよく過ごしたいですよね。そこで親との同居を成功させるためのコツを佐藤さんにうかがいました。

計画的に貯蓄をしておく。

1つ目のコツは、計画的にコツコツ貯蓄しておくことです。

「特に単身者の場合、お金が節約できるぶん、無駄な支出が多くなってしまう可能性があります。今後いざ同居を解消したときに、先立つお金があまりなかった……となってはいけません。親にお金を借りると関係が悪化してしまう恐れも。計画的に貯蓄しておくのがおすすめです」

よくコミュニケーションをとり、お互い干渉しすぎない。

2つ目のコツは、親とのコミュニケーションをしっかりとることです。同居していると、「言葉にはしないけれどわかってほしい」という気持ちが生まれやすくなります。

「たとえば、夫婦と親が生活費を折半している家庭の場合、親から見ると“共働きなんだから、もう少し多く生活費を入れてよ”と思うかもしれません。しかし夫婦はこれからマイホームを買うために少しでも貯金を増やしたい。そんなときは、その計画を率直に親に伝えておくといいでしょう」

また、今も昔も同居にありがちなのが、嫁姑の仲が悪くなること。こうしたトラブルを防ぐためにも、良好なコミュニケーションをとるようにして、お互い干渉しすぎないのがポイントです。もし干渉されすぎるなら、思い切って距離を置くことも必要。そのためにもお金はある程度貯めておくに越したことはありません。

お互いが気持ちよく暮らせる環境を。

親と同居する場合、貯蓄しやすくなる、子どもがいても働きやすくなるといったメリットが大いにあります。一方で、親からの干渉が増えたり、介護や看病による負担が大きくなったりするデメリットがあるのも事実です。

将来を見据えて計画的に貯蓄し、親子で良好な関係性を築きながら、お互いが気持ちよく過ごせるような環境をつくっていくといいでしょう。

写真/Getty Images イラスト/かざまりさ


佐藤 彩菜      
株式会社FPフローリスト。CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。多くの人を金銭面でサポートしたいという思いから、信用金庫に就職する。身近な人からお金や資産運用の相談をされることが増え、FPの知識や実体験をもとに助言をしていくうち、もっと気軽にお金のことを相談できる窓口になりたいという思いが強まり、ファイナンシャルプランナーとして活動中。


※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。      
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