女性向けの保険はどう選ぶ?若い方にも多いがんに備える方法。
※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」、生命保険料を「保険料」と記載している部分があります。
※ 記事中に出てくる病名などの解説は、国立研究開発法人国立がん研究センターの情報に基づいて制作しています。
一般的に、がんは高齢者ほど発症リスクが高くなります。そのため、若いうちは「私はがんとは無関係」と思いがちです。しかし、女性特有のがんは、20代〜30代でも発症率がやや高めです。女性特有のがんに備えるには、どうしたらよいのでしょうか? 最近のがん治療の傾向を踏まえながら、入院や治療にまつわる費用への備え方をファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さんに教えていただきました。
目次
20代でも発症しやすい女性特有のがん。
女性特有のがんとは、乳がん・子宮頚がん・子宮体がん・卵巣がんなどのことを言います。なかでも20代から気をつけたいのが、乳がんと子宮頚がんです。
20歳から39歳のがんは、約68%を女性が占める。
国立研究開発法人国立がん研究センターが2018年に公表した「がん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)全国がん罹患データ(2016年~2018年)の調査データによると、20歳から39歳のがん患者のうち約68%が女性です。なかでも25歳以降は患者数が急激に増加。その原因は、女性特有の乳がんと子宮頚がんによると考えられています。
参考:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)全国がん罹患データ(2016年~2018年)をもとにミラシル編集部が作成
乳がんや子宮頚がんって具体的にどんな病気なの?
20代〜30代の女性が発症しやすい、乳がんと子宮頚がんの主な症状や検診方法とはどのようなものなのでしょうか? 国立研究開発法人国立がん研究センターは、下記の通り解説しています。
乳がん
乳がんは乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管から発生しますが、一部は乳腺小葉から発生します。乳がんの主な症状は、乳房のしこりです。ほかには、乳房にえくぼやただれができる、左右の乳房の形が非対照になる、乳頭から分泌物が出る、などがあります。
乳がんの検診方法。
科学的根拠に基づく乳がん検診
1) 乳がん検診の方法
乳がんの死亡率を減少させることが科学的に認められ、乳がん検診として推奨できる検診方法は「乳房X線検査(マンモグラフィ)単独法」です。
「視触診単独」や「超音波検査(単独法・マンモグラフィ併用法)」は死亡率減少効果を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診(住民検診)として実施することは勧められていません。(1) マンモグラフィ検査
乳房を片方ずつプラスチックの板で挟んで撮影することで、小さいしこりや石灰化を見つける検査です。乳房が圧迫されるため痛みを感じることもありますが圧迫時間は数十秒ほどです。また放射線被ばくによる健康被害はほとんどありません。2) 乳がん検診の対象年齢
乳がん検診が推奨されるのは40歳以上の症状のない女性です。3) 乳がん検診の受診間隔
2年に1度定期的に受診することが推奨されています。4) 乳がん検診の精密検査
検診で「異常あり」という結果を受け取った場合は、必ず精密検査を受けてください。乳がん検診における一般的な精密検査はマンモグラフィの追加撮影、超音波検査、細胞診、組織診などで、これらを組み合わせて行います。詳しくは、精密検査実施機関にお問い合わせください。(1) マンモグラフィ検査
疑わしい部位を多方向から撮影します。(2) 乳房超音波検査
超音波を使用して、疑わしい部位を詳しく観察します。(3) 針生検下の組織診
疑わしい部位に針を刺して細胞や組織を採取し、悪性かどうか診断します。
乳がん検診として行われる検査の1つに、マンモグラフィ検査があります。国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス「乳がん検診について」にも記載のとおり、マンモグラフィ検査を実施することで乳がんによる死亡率が下がることが実証されていることから、市区町村の検診でも取り入れられています。医師の判断により、超音波検査や針を用いた生検を行う場合もあるようです。
子宮頚がん
子宮がんは、子宮体部にできる「子宮体がん」と、子宮頸部にできる「子宮頸がん」に分類されます。子宮頸がんは、正常な状態からすぐがんになるのではなく、異形成といわれる、がんになる前の状態を何年か経てからがんになります。異形成の時期では症状がなく、おりものや出血、痛みもありません。
子宮頚がんの検診方法。
科学的根拠に基づく子宮頸がん検診
1) 子宮頸がん検診の方法
子宮頸がんの死亡率を減少させることが科学的に認められ、子宮頸がん検診として推奨できる検診方法は「細胞診」だけです。子宮頸部(子宮の入り口)を、先にブラシのついた専用の器具で擦って細胞を採り、異常な細胞を顕微鏡で調べる検査です。
※月経(生理)中は避けて検査を受けてください。HPV検査を含む方法(HPV検査単独・HPV検査と細胞診の同時併用法・HPV検査陽性者への細胞診トリアージ法)は死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診(住民検診)として実施することは勧められていません。
2) 子宮頸がん検診の対象年齢
子宮頸がん検診が推奨される年齢は20歳以上の症状のない女性です。3) 子宮頸がん検診の検診間隔
2年に1度定期的に検診を受診することが推奨されています。4) 子宮頸がん検診の精密検査
検診で「異常あり」という結果を受け取った場合は、必ず精密検査を受けてください。子宮頸がん検診における一般的な精密検査は、コルポスコープ下の組織診・細胞診・HPV検査などを組み合わせて行います。(1) コルポスコープ下の組織診
コルポスコープ(腟拡大鏡)を使って子宮頸部を詳しく見ます。異常な部位が見つかれば、組織を一部採取して悪性かどうかを診断します。(2) HPV検査
子宮頸部から細胞を採取し、HPVに感染しているかどうかを調べる検査です。子宮頸がん検診の細胞診の結果によって、コルポスコープ検査が必要かどうかを判断するために実施されることがあります。
子宮頚がんの死亡率を減少させるために、市区町村の検診では子宮頚部細胞診が実施されています。子宮頚がんの発生には、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスが関わっており、医師の判断で必要に応じて、HPVの感染を調べる検査や、コルポスコープ(腟拡大鏡)を用いた、より詳しい検査も実施されています。
女性特有のがんを含む、最近のがん治療の実態とは?
がんと診断されたら、どのような治療が標準的に行われるのでしょうか。ここからは、最近のがん治療の実態を見ていきましょう。
がんの主な治療法は3つ。
がんの治療法は、主に「手術(外科治療)」「薬物療法」「放射線治療」の3種類と言われています。がんの種類や進行度によって、単独の治療法では十分な効果が得られないときは、複数の治療法を組み合わせるケースもあります。国立研究開発法人国立がん研究センターでは、治療法について以下のように説明しています。
参考:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス「集学的治療」
手術(外科療法)
手術では、がんや、がんのある臓器を切り取ります(切除します)
手術の目的は、腫瘍や臓器の悪いところを取り除くことです。また、手術で臓器を切除したことによって正常な機能が失われてしまう場合には、臓器同士をつなぎ合わせるなどの機能を回復させるための手術(再建手術)を行うことがあります。がん細胞は周囲の組織に広がったり(浸潤)、リンパ管や細かい血管に入ってリンパ節や他の臓器に広がったり(転移)することがあります。そのため、一般的にがんの手術ではがんができた臓器を大きめに切除します。手術の際には、手術の痛みを取り除き、安全に受けられるように、麻酔をかけて行います。
薬物療法
薬物療法はがんを治したり、あるいは、がんの進行を抑えたり、症状をやわらげたりする治療です
薬物療法には、「化学療法」「内分泌療法(ホルモン療法)」「分子標的療法」などの種類があります。化学療法という言葉がよく使われますが、「細胞障害性抗がん薬」という種類の薬を使う治療のことを、化学療法ということがあります。がんの治療では、薬物療法だけでなく手術や放射線治療と組み合わせることもあります。患者の体調や各治療法のスケジュールなどを考慮して、入院期間中に治療する「入院治療」、あるいは、外来で通院しながら治療する「外来治療」を行います。治療後は治療効果をみながら継続して治療したり、他の治療法を検討したり、経過を観察したりします。
放射線治療
放射線治療では、体の外から放射線をあてる外部照射が一般的です。照射中(治療中)に痛みはありませんが、数分間は動かずにじっとしていることが必要です。ほかには、放射性物質を体内に挿入する方法や、飲み薬や注射で投与する内部照射があります。
乳房再建は乳がん治療の一部として考えられるように。
女性にとって、乳房が変形・喪失することは、QOL(Quality of Lifeの略、生活の質という意味)を大きく損ねると感じる人もいるでしょう。国立研究開発法人国立がん研究センターによると、乳がんの手術のあとに、新たな乳房をつくる「乳房再建」は、最近では乳がん治療の一部であると考えられているようです。
乳房再建について
乳がんの切除により変形あるいは失われた乳房をできる限り取り戻すための手術を乳房再建といいます。女性にとって乳房が変形・喪失することは生活の質(QOL)を大きく損ねることになるため、乳房再建は乳がん治療の一部であり、当院では乳腺外科と形成外科が緊密に連携を取り診療を行っています。乳房再建を行うことにより乳房の喪失感が軽減し、下着着用時の補正パットが不要になるなどの日常生活の不都合が減少しますが、乳房再建は手術する時期や手術法が数種類ありますので術前に形成外科医とよく相談することが重要です。
がんになると、医療費をはじめ多額の費用がかかる。
がんになると、入院・手術前の検査・手術・薬物療法・放射線治療などに、高額の医療費がかかります。基本的に医療費は健康保険の適用で、高額療養費制度※のサポートが受けられるものの、毎月多額の出費が続くのは、大きな痛手です。
治療法でも、国内未承認の薬剤などを利用すると、公的医療保険が適用にならない自由診療扱いになり、10割負担になってしまいます(患者申出療養制度により保険適用できる場合もあります)。
※公的医療保険の給付には、例えば医療費の自己負担額が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合、その超えた部分を払い戻す高額療養費制度等があり、実際に負担する金額は高額療養費制度の利用の有無等、ケースにより異なります。
さらに、入院時に必要なパジャマや日用品、差額ベッド代、家族のお見舞いにかかる交通費、その後の通院のための交通費(遠方の場合は宿泊費も)なども実費でかかり、家計に大きくのしかかります。サプリメントなどを自分で取り入れる場合も、コストがかかります。
先進医療は治療費だけでなく、交通費や宿泊費がかさむ可能性も。
先進医療とは、「厚生労働大臣が定める高度の医療技術」のことです。健康保険が適用されないため、高額療養費制度のサポートも受けることはできず、治療費は高額になります。さらに、先進医療を実施する医療機関は、医療技術ごとに定められています。そのため、もしその医療機関が遠方であった場合は、多額の交通費や、場合によっては家族の宿泊費なども必要になるかもしれません。
参考:厚生労働省「先進医療の概要について」
参考:厚生労働省「先進医療を実施している医療機関の一覧」
女性特有のがん。備えるなら「女性向け医療保険」はあり?
若くても罹患する可能性がある女性特有のがん。万が一に備えるなら、女性向け医療保険を候補として検討してもいいでしょう。
女性向け医療保険とは?
女性向け医療保険は、女性がかかりやすい病気や、女性特有の病気への保障を手厚くした医療保険です。がんやその他の病気に対する入院や手術への保障がありながら、女性がかかりやすい病気については、特に手厚い保障が受けられるのが特徴です。
女性特有のがんに関しては、がん保険で備えるという選択肢もあります。ただ、女性向け医療保険では通常、子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣のう腫といった女性特有の病気のほか、バセドウ病や関節リウマチといった女性に多い病気による入院・手術への保障や乳房再建術を手厚く保障する商品もあります。さらに、妊娠高血圧症候群や帝王切開といった、正常分娩以外の妊娠・出産に関わる保障も手厚く受けられる場合があるのが大きなメリットです。
妊娠すると、一般的には医療保険には加入できないケースが多く、万が一、帝王切開となったあとは、加入が難しくなります。社会人になったら、女性は早めに医療保険への加入を検討したいもの。女性向け医療保険はその際の選択肢になるでしょう。
すでに女性向け医療保険に加入をしている人も、保障内容を、あらためて確認してみるといいかもしれません。たとえば、下記のような女性特有の疾病を対象とした女性疾病特約をチェックしておきましょう。
女性疾病入院給付金
対象となっている女性疾病で入院したときに、受け取れる給付金です。その他の病気の場合の入院給付金に、上乗せして給付されます。最近は入院日数が少ないケースもあり、入院1日目から受け取れる保険商品もあります。
女性特定手術給付金
対象となっている女性疾病の治療のために、手術を受けたときに受け取れる給付金です。
乳がん手術後の乳房再建もサポート。
多くの女性向け医療保険では、乳がんの手術後の乳房再建も保障の対象になっています。
女性向け医療保険に入っておけば、入院・手術以外にかかったお金をカバーできるかも。
入院や手術が必要になっても、健康保険の高額療養費制度があるから、民間の医療保険には入らなくても大丈夫と考えている人もいるでしょう。しかし、上でも紹介したように、差額ベッド代や先進医療、国内未認可の薬剤等による自由診療など、健康保険が適用にならないものもあるほか、パジャマや日用品、通院費(遠方の場合は宿泊費も)などの費用もかかります。
また、女性特有の病気やがんのリスクが高まる20代〜30代は、子どもがいる場合なら、治療と子育ての両立が大変になる可能性もあるでしょう。そのため、実家などのサポートが得られない場合は、一時的な子どもの保育料や、家事代行サービスの利用料が必要になったり、家族の外食が増えたりと、医療費以外の出費がかさむことも考えなければなりません。もちろん、入院や自宅療養で休職中は、会社員なら所定の条件を満たせば傷病手当金があるものの、それでも収入は減ります。自営業であればストレートに収入減になります。
こうした思いがけない出費や、減少する収入をカバーするため、生活予備費をたくわえておくほか、女性向け医療保険に加入しておくことは、家計のリスクマネジメントとして大きな意味を持つと言えるでしょう。
写真/Getty Images イラスト/こつじゆい
豊田 眞弓
FPラウンジ代表。経営誌やマネー誌のライターを経て、1994年より独立系ファイナンシャルプランナーとして活動。個人相談や講演のほか、ウェブサイト・雑誌などに多数のマネーコラムを寄稿。「子どもマネー総合研究会」理事のほか、「親の介護・相続と自分の老後に備える.com」を主宰。亜細亜大学などで非常勤講師も務める。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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