新生児の体温はどのくらい?平熱より高いときはどうすればいい?
赤ちゃんを抱っこしていると、「いつもより体温が高いかな?」「汗をかいて暑そう」と感じることはありませんか?
赤ちゃんは体温調節機能が未熟で、ちょっとしたことで発熱することも。新生児期や乳児期の赤ちゃんが初めて高熱を出してしまうと、どう対応していいかわからない、というお母さん・お父さんも多いのではないでしょうか。
そこで、いざというときに慌てず、適切な対応ができるよう、新生児期や乳児期の赤ちゃんが発熱したときの対処法や、小児科受診の目安について、小児科を専門とする医師である浦島崇さんにお話を伺いました。
目次
新生児期・乳児期の赤ちゃんの体温。
赤ちゃんが熱を出しているかどうかを判断するための第一歩は平熱を知っておくこと。また、発熱の原因についても理解しておきましょう。
赤ちゃんの平熱。
新生児期や乳児期の赤ちゃんの平熱は36.5度~37.5度くらいです。大人よりも高めで、室温や湿度、着ている服など環境の変化ですぐに体温が変動するのが特徴です。
赤ちゃんの熱が上がる原因。
赤ちゃんの熱が上がる原因は大きく2つ。1つは赤ちゃんの状況や環境による体温上昇。もう1つはウイルスの感染や病気などです。
特に前者は頻繁に起こる一方で、何か問題があるわけではないので、熱があるとしても焦らず落ち着いて対応しましょう。注意が必要なのは、ウイルスや感染症による発熱です。
新生児期~生後3か月程度までの発熱は注意。
赤ちゃんはお母さんからの抗体をもって生まれてくるので、ある程度は細菌やウイルスから身を守ることができますが、新生児期であっても、ウイルスによる感染症などにかかって高熱が出るケースもあります。
乳児期に入ってからも、予防接種がはじまる生後2か月ごろまでに、ワクチンで感染を防ぐはずだった髄膜炎などにかかってしまうこともあるため、特に免疫機能が未熟な生後3か月ごろまでに発熱した場合(特に38度以上あるとき)は注意が必要です。
新生児の体温が平熱より高いときの対処法。
新生児期や乳児期の赤ちゃんは、病気やウイルスに感染していなくても体温が上がります。平熱より高くても、焦らず対応しましょう。
赤ちゃんの状況や環境を確認する。
「いつもより熱が高いかも?」と思ったり、熱を測って平熱以上だったりしたら、まずは下記のチェックリストを確認します。
赤ちゃんの体温が高いときのチェックリスト
□泣いたばかりでないか
□お風呂に入ったばかりでないか
□ミルクを飲んだあとでないか
□暖房をきかせすぎていないか
□厚着をさせていないか
□布団などをかけすぎていないか
チェックリストに当てはまるものがあった場合は、室温を下げたり服を脱がしたりして体を冷まし、30分ほどたってからもう一度熱を測りましょう。
リスト内に当てはまるものがなくても、機嫌が良かったり普段と変わらなかったりしたら、同じく30分ほど様子を見てから再度熱を測ってみます。
30分後に熱が下がっていれば、様子を見ながらいつも通り過ごして問題ありません。
熱が上がりきったら「体を冷やす」。
時間をおいても熱が下がらない場合は、体を冷やします。ただし、手足の先が冷たかったり、震えていたりするようなら熱が上がりかけのサインです。このタイミングではタオルケットなどをかけて体を温めてあげましょう。
その後、「体中が熱い」「汗をかいている」「暑がっている」などの様子があれば、熱が上がりきったサインです。ここまで来たら、体を冷やしてあげましょう。
こまめに水分を補給する。
熱が上がった状態が続くと、汗による不感蒸泄(ふかんじょうせつ:日常生活において自然に失われる水分)の増加と哺乳量の低下で脱水状態になってしまう可能性もあります。発熱時はこまめに様子を見て、脱水状態にならないようミルクなどをあげるようにしましょう。
医師の診察を受ける目安。
特に初めての発熱の場合、不安から「今すぐに病院へ連れていかなければ」と思いがち。ですが、早く受診したからといって早く熱が下がって早く治るとは限りません。
赤ちゃんが発熱する病気にはたくさんの種類があり、熱の出はじめに受診をしても原因がわからないことも多々あります。
熱があっても、元気な様子だったり、ミルクが飲めたり、食欲があったりするときは、翌日に症状が改善することも。赤ちゃんに以下で紹介する症状がなければ、「今すぐ病院に!」と慌てずに家庭で様子を見て、翌日に受診すれば大丈夫です。
こんなときは病院へ。
発熱以外に以下のような症状があるとき、もしくは赤ちゃんの様子がいつもと違ってぐったりしているときは、小児科で医師の診察を受けましょう。
医師の診察を受けるべき状況
□せきで夜眠れていない
□ひきつけを起こしている
□意識がない
□ミルクを飲めない
□泣き方が弱い
□顔色が悪い
□元気な場合でも38度以上の熱が4日以上続く
□38度以上の熱が出た赤ちゃんが生後3か月未満で、機嫌が悪いまたは1回の哺乳量がいつもの半分以下
せきや鼻水などの症状があっても、しっかりと夜眠れているようであれば様子を見ていいでしょう。夜中にせきが続き、何度も目を覚ましてよく眠れず、日中の機嫌が悪いなら病院で診てもらいましょう。鼻水がつまって息苦しそうなら、吸引してあげるといいでしょう。
迷ったら#8000。
「発熱していても赤ちゃんが水分を取れていて、元気なら家で様子を見る」とわかっていても、赤ちゃんが発熱すれば誰でも不安になってしまうもの。特に、かかりつけ医の診療時間外の平日夜や週末に熱を出したときは「今から診てくれる病院を探したほうがいいのかな?」と慌てることもあるでしょう。
そんなときは、「子ども医療電話相談#8000」に相談するのがおすすめです。
これは休日、夜間の子どもの症状にどのように対処したらいいか、病院で診てもらうほうがいいかなど、判断に迷ったときに、小児科の医師や看護師に電話で相談でき、赤ちゃんの症状に応じた適切な対処の仕方や、受診する病院などのアドバイスが受けられるサービスです。
全国統一の短縮番号#8000をプッシュすれば、お住まいの都道府県の相談窓口に自動転送されます。
赤ちゃんの発熱のほか、けいれんを起こしたとき、嘔吐(おうと)したとき、頭をぶつけたときなどにも相談可能です。
参考:厚生労働省「子ども医療電話相談事業(#8000)について」
解熱剤を用意しておくと◎。
いざ熱が出たときに備え、市販の子ども用解熱剤シロップなどを準備しておいてもいいでしょう。
市販の子ども用解熱剤シロップには、病院で処方されている解熱剤と同じアセトアミノフェンが含まれています。
平日の夜や週末など、小児科の診療時間外に発熱したときに備えて、解熱剤を用意しておけばいざというときに慌てずにすみます。
新生児の体温を正しく測るポイント。
体温調整が未熟で、体温が変化しやすい新生児期や乳児期の赤ちゃん。体調を把握するためにも、できるだけ正確に熱を測りましょう。熱を測る部位はいくつかありますが、比較的正確に測りやすいのは「ワキ」と「首」です。
部位によって数値が若干変わるので、毎回同じ部位で測りましょう。また、熱がありそうな場合は誤作動を防ぐためにも2回以上測りましょう。
「ワキ」での測り方。
必ずワキの汗をふいてから測ります。体温調整がまだ上手にできない新生児期や乳児期の赤ちゃんは汗っかき。正しい体温を測定するためには、注意が必要です。体温計をワキの中央に当てて手で押さえ、ワキを閉じてあげましょう。
「首」での測り方。
赤ちゃんを抱っこするかひざにのせ、あごを少し持ち上げて首に沿わせるように体温計を差し込みます。手を離せば自然と体温計が肌に密着します。
発熱に慌てる必要なし。適切に対処しよう。
赤ちゃんが熱を出すと不安は大きくなるものですが、誰もが必ず経験することです。熱は赤ちゃんの体が病原体と戦っている証し。いざというときに慌てないよう、正しい発熱時の対処法を理解しておくことや、赤ちゃんがかかりやすい感染症の知識を得ること、保育園などで流行している病気などの情報を集めておくことなどが大切です。
写真/PIXTA イラスト/オオカミタホ
浦島 崇
総合母子保健センター愛育病院副院長兼小児科部長、東京慈恵会医科大学小児科学講座准教授(非常勤)。日本小児科学会小児科専門医・指導医・代議員、日本循環器学会循環器専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会認定産業医。小児科医としての臨床業務のほか、心疾患と体力、子どもの健康に関する研究に従事している。
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