ホルモンバランスを整えるには?メカニズムと改善法を解説【医師監修】
生理周期が不安定になっている、生理が3か月以上こない、経血の量が少なすぎて心配……。こういった月経異常の悩みは、ホルモンバランスの乱れが原因かもしれません。ずっと放置しておくと、不妊症や骨粗しょう症、子宮体がんなど、体に深刻なダメージを与える可能性もあります。
女性ホルモンに関連する健康課題の周知に力を入れるフィデスレディースクリニック田町院長の内田美穂先生に、ホルモンバランスの乱れの原因や改善策を伺いました。
目次
ホルモンバランスを整える重要性。
卵巣から分泌される女性ホルモンは、女性の心身にさまざまな影響を及ぼしています。ここでは女性ホルモンと、ホルモンバランスの重要性について解説します。
そもそもホルモンバランスとは。
「ホルモンバランス」とは、一般的に、卵巣から分泌される2つの女性ホルモン「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」のバランスを指します。
どちらか1つでも正常に分泌されず、ホルモンバランスが乱れた状態になると、生理不順などの不調が生じてしまいます。
女性ホルモンの役割。
エストロゲンは女性らしい体をつくるホルモンで、子宮内膜を厚くして、妊娠しやすい状態をつくり出します。また、骨を強くする作用や血管の老化を防ぐ作用、皮膚の張りを保つ作用のほか、不安をやわらげる作用もある重要なホルモンです。
プロゲステロンは排卵後に分泌される、赤ちゃんを準備するためのホルモンです。赤ちゃんのベッドとなる子宮内膜をふかふかの状態に維持します。妊娠が成立しないと分泌がおさまり、そのあとに生理がはじまります。
ホルモンバランスが乱れるとどうなる?
ホルモンバランスが正常に保たれることで、女性は「妊娠できる体」を維持できます。ホルモンバランスが乱れることによる大きなデメリットは不妊症ですが、それ以外にもさまざまな心身の不調を引き起こします。
ホルモンバランスが乱れる原因。
ホルモンバランスは、生活習慣や体質が原因で乱れやすくなります。特に「過度なダイエット」や「ストレス」は大きな原因となります。
短期間で体重が10%以上急激に減少したり、身近な人との離別や就職・転職・失恋・過激な運動などによって強いストレスがかかったりすると、エストロゲンが著しく低下することがあります。
それらが、無月経や生理周期の乱れなどの生理不順につながり、体の異変に気づくケースは少なくありません。
ホルモンバランスを保つ目安の1つとなるのがBMI(Body Mass Index=体格指数)。[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出した数値が、22から離れるほど月経異常になる確率が高くなると言われています。
たとえば、日本人女性の30代の平均身長は158.2㎝ですが、この身長でBMI22となる体重は約55㎏が目安です。痩せすぎても太りすぎても、月経異常の原因となるので注意しましょう。
また、「PCOS(多囊胞(たのうほう)性卵巣症候群)」は、両側の卵巣に多数の小卵胞が存在し、ホルモンバランスが乱れて不妊症の原因となる病気で、女性の10人~20人に1人がかかると言われています。なお、PCOSの患者さんのうち、BMI25以上の肥満の人は、減量することで排卵が起こりやすくなり、改善が期待できることがわかっています。
ホルモンバランスの乱れによって起こる症状。
ホルモンバランスの乱れによって起こる代表的な症状は、生理不順です。私の患者さんにも、生理不順をきっかけに来院される方が多くいらっしゃいます。
「生理がたった2週間できてしまう」「生理の間隔が40日以上あいてしまう」「経血の量が極端に少ない」などの症状があり、放置しておくと卵巣機能が低下してしまうことがあります。
子宮体がんになるリスクも高まります。排卵後にプロゲステロンが分泌されないと、子宮内膜を厚くするエストロゲンだけが分泌される状態になります。そのため、ずっと子宮の中にとどまっている厚い子宮内膜が、悪性になって子宮体がんに移行する可能性があるのです。
また、エストロゲンの分泌が低下すると、生理がこなくなったり(無月経)、経血の量が変化したり、しわが増えたり抑うつ的になったりします。
さらに、血管の老化を防ぐ機能が低下して動脈硬化が進み、将来的には心筋梗塞や脳卒中のリスクも高くなります。骨を強くする機能も低下するので、骨粗しょう症にもつながりやすくなるでしょう。
ホルモンバランスのチェックリスト。
下記のリストに1つでも当てはまるものがある場合は、ホルモンバランスが乱れている可能性があります。婦人科の受診を検討してみてください。
□生理周期が乱れがち(25日~38日間の正常な生理周期からずれている)
□経血の量が少なくなった
□経血の量が多くなった
□経血にレバーのようなかたまりが出る
□生理期間が短くなった
□生理期間が長くなった
□生理が3か月以上きていない(続発性無月経)
ホルモンバランスが正常だからこそ起こる症状もある。
排卵後に分泌される女性ホルモンであるプロゲステロンは、生理前の胸の張りやむくみ、食欲増加による体重増加、そして気分の落ち込みなどの影響をもたらすことがあります。
こうした生理前の不調は「月経前症候群(PMS)」とも言われますが、裏を返せば「ちゃんと排卵があり、エストロゲンとプロゲステロンが正常に分泌されている証拠」でもあります。正しい周期で生理がくるのであれば、こうした不調はホルモンバランスの乱れとは関係ありません。
ただし、日常生活に支障をきたすほど過度につらい人は、婦人科を受診しましょう。症状を抑えるために低用量ピルや漢方など処方してもらえます。
ホルモンバランスを整える方法。
ホルモンバランスの乱れは、体重の変化やストレス、睡眠不足などが主な原因になります。こうした原因を取り除くことが改善の第一歩です。
早めの受診で原因をつきとめる。
生理不順をはじめとする体の不調を感じた場合は、婦人科に相談しましょう。甲状腺疾患や内臓疾患など別の病気が隠れている場合もあるので、自己判断せずに原因を特定することが大切です。
婦人科では血液検査でエストロゲンの量を調べたり、子宮や卵巣の超音波検査を行ったりします。必要があれば、生活指導やホルモン剤などの治療をします。
生理不順で受診した患者さんのお話を聞くと、「特にストレスは感じていません」という方もいらっしゃいます。しかし、より詳しく話を聞いてみると「引っ越しをした」「転職した」など生活環境が大きく変わったことによる多大なストレスを自覚していなかったケースがよくあります。
精神的なストレスが著しい場合は、精神科や心療内科でのカウンセリングを検討してもよいでしょう。
基本的な生活習慣の改善。
ホルモンバランスを整えるには、生活習慣を改善することが何よりも大切です。規則正しい生活リズムを心がけましょう。
毎日同じ時間に起床・就寝し、適度な運動を取り入れること。散歩やウォーキングなど体を動かすことで、しっかりと睡眠がとれるようになり、ストレス発散にもなります。ただし、過度な運動はホルモンバランスに悪影響を及ぼします。
また、ホルモンバランスを整えるには、食事も重要です。毎日の食事の中で、野菜と炭水化物、たんぱく質をバランスよく摂るようにしましょう。無理なダイエットは厳禁です。
生理不順など、ホルモンバランスが乱れているときは、睡眠の妨げになるカフェインや、眠りが浅くなるアルコール、タバコはなるべく控えましょう。
【まとめ】ホルモンバランスを整えて健やかな毎日を。
ホルモンバランスを整えるには、規則正しい生活習慣と適度な運動が大切です。生理不順や無月経など、ホルモンバランスの乱れを感じたら、早めに婦人科を受診し、改善を図りましょう。
写真/PIXTA
内田 美穂
フィデスレディースクリニック田町 院長
東邦大学医学部卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院産科婦人科などの病院勤務を経て令和元年にフィデスレディースクリニック田町を開院。親切で丁寧な対応、安心・安全な医療、わかりやすい説明に定評がある。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、母体保護法指定医師。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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