ボーナスの支給日はいつ?振り込み時期や知っておくべき注意点を解説。
大きな買い物の費用にしたり、まとまった額を貯蓄にまわせたりなど、ボーナスを楽しみにしている人も多いでしょう。ボーナス支給は一般的に夏と冬といわれますが、実際の支給日はいつなのでしょうか。また、どのような基準で金額が決まり、平均支給額はどのくらいなのか、保険料や税金など差し引かれるものにはなにがあるのか……。
ボーナスの気になることについて、社会保険労務士と税理士の資格を持つ渋田貴正さんにうかがいました。
目次
- ボーナス支給日はいつ?種類や支給対象者について。
- ボーナスの平均額は?公務員と民間企業でどう違う?
- ボーナスの注意点はある?差し引かれる保険料や税金は?
- 【まとめ】自分のもらえるボーナスについて把握しておこう。
ボーナス支給日はいつ?種類や支給対象者について。
ボーナスは夏と冬に支給されるイメージが強いと思いますが、民間企業の会社員は法律などで支給のタイミングが決まっているわけではありません。ボーナスの種類や支給時期について、解説しましょう。
ボーナスとは、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金。
社会保険など各種制度上は、ボーナスは「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」と定義されます。つまり、四半期に1回ずつ支払われるものはボーナスに当たらず、年1回~3回支給されるものがボーナスとなります。
年に2回、ボーナスを支給する企業が多い傾向にあり、その時期は3月と9月、4月と10月、6月と12月など、会社によって異なります。年3回としている会社では、夏と冬に加え、決算期にもボーナスを支払うケースが多いといえます。
ボーナスの種類は企業によって異なる。
ボーナスは大きく4種類に分類され、支給額の計算方法や支給のタイミングは企業によってさまざまです。
基本給連動型
「基本給連動型」は、基本給の2か月分など、基本給をベースに支給額を計算する方法です。「基本給の○か月分」という基準は、就業規則などに提示されています。会社によっては、従業員個々の査定を加味し、査定が良ければプラス、悪ければマイナスと、支給額を上下させるところもあります。
業績連動型
「業績連動型」は、「上期の利益の半分を従業員に分配する」など、利益をもとにボーナスの支給額を計算する方法です。利益によって、支給額が変動します。会社によって、従業員個々の査定を加味して支給額を上下させる場合があります。
決算賞与
「決算賞与」は、決算で利益が出た際にボーナスを支給する方法です。決算の数字によって支給額が変動します。決算賞与を設けている会社の多くは、夏と冬に基本給連動型のボーナスを出し、期末に決算賞与を出すという形式にする傾向があります。
寸志
「寸志」は、基本給や業績に連動しない、完全固定型のボーナスの総称です。超小規模企業に多いボーナスで、一般的に5万円や10万円など、少額であるといえます。
企業規模によって種類が異なる可能性がある。
上場企業のように月次決算を出し、毎月の業績が明確になっている企業の場合、業績連動型を採用しているところが多い傾向にあるといえます。
一方、中小企業の場合は月次決算まで手がまわらないケースが多く、できるだけ経理を単純化したいという考えも働くため、基本給連動型を採用しているところが多いと考えられます。
基本的に、ボーナス額の計算方法や支給のタイミングなどは、就業規則で定められています。勤務先の就業規則を確認することで、金額や支給時期をある程度は把握できるでしょう。
支給タイミングは企業によってバラつきがある。
企業からすると、ボーナスの支給は大きな支出のタイミングといえ、資金繰りにダイレクトに影響します。そのため、繁忙期と閑散期がある企業では、繁忙期が終わって売上が立ったころにボーナスを支給するところもあります。冬のレジャーで売上を立てている企業であれば、繁忙期が終わる3月ごろにボーナスが出るようなケースです。
民間企業のボーナスの支給時期や回数は、法律で定められていません。他社とタイミングが違ったり、回数が少なかったりしても、勤務先が危機的状況にあるということにはなりません。
ボーナスは必ず支給されるわけではない。
毎月の給与は、労働基準法で「毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と、企業に義務付けられています。しかし、民間企業のボーナスの支給は、義務付けられていません。
そのため、「ボーナスを支給しない」という方針の企業もあります。このような企業では、ボーナスを支給しない代わりに、毎月の給料に上乗せしているケースもあります。
たとえば、年俸制の企業では、年俸を12で割って毎月の給料としているところもあれば、16で割って12か月分の給料+ボーナス(基本給2か月分)を2回としているところもあるなど、企業によってさまざまです。
ボーナス支給のカギは「基準日」。
ボーナスを支給している企業では、「基準日に在籍している人に支給する」と定めているケースが多いといえます。「11月末日に在籍していた従業員に、12月のボーナスを支給する」といったかたちです。
企業にもよりますが、基本的に新卒や中途で入社した人も基準日に在籍していれば、ボーナスを受け取れることが多いようです。たとえば、1月から6月が査定期間の企業に4月1日に入社した場合、査定期間が半分になるので、夏のボーナスは半額だけ支給されるケースが多い印象です。
反対に、基準日に在籍していない場合、ボーナスは支給されないと考えたほうがいいでしょう。就業規則で基準日が明確に定められている場合は、基準日の前日の退職でも支給されません。一部ですが、在籍していた日数分のボーナスを退職時や退職した翌月などに支払う企業もあります。
「契約社員」「アルバイト」もボーナス支給の対象に。
2020年4月にパートタイム・有期雇用労働法が施行され、同一労働同一賃金が適用されました。正社員と同じ仕事内容を担う契約社員やアルバイトに対しても、同等のボーナスを支給するよう規定しています。
正社員のボーナスが基本給の2か月分だとすると、アルバイトのボーナスは直近6か月の平均給与額の2か月分のように設定されることが多いでしょう。
ボーナスの平均額は?公務員と民間企業でどう違う?
ボーナスの平均額がどのくらいなのか、気になる人は多いでしょう。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」から、民間企業の2023年の夏のボーナスの産業別平均額を見てみましょう。
2023年夏のボーナス産業別平均額
参考:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年9月分結果速報等」をもとに編集部で作成
一方、公務員の夏のボーナス(2023年6月期の期末・勤勉手当)の支給平均額は次のようになっています。
公務員のボーナス平均額
種類 | 支給平均額 |
国家公務員 | 約63万7,300円(※1) |
東京都職員 | 94万4,973円(※2) |
埼玉県職員 | 76万8,229円(※3) |
大阪府職員 | 78万5,585円(※4) |
参考:内閣人事局「令和5年6月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給」(2023)
※1 管理職を除く行政職職員の平均額。
※2 暫定再任用職員を除く。
参考:埼玉県「令和5年6月の期末・勤勉手当の支給状況」(2023)
※3 再任用職員を除く。
参考:大阪府「令和5年6月期の期末・勤勉手当の支給について」(2023)
※4 管理職および再任用職員を除く。
公務員の場合、民間企業のボーナスの支給状況にあわせて、その年に支給されるボーナスの基準(○か月分)が決められ、業績に応じて上回ることも下回ることもありません。民間企業はその業績によって支給額が上下する場合があり、決算賞与などがプラスされる可能性があります。
ボーナスの注意点はある?差し引かれる保険料や税金は?
社会保険では「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」がボーナスに当たります。つまり、年1回~3回の支給となるものがボーナスとなり、四半期に1回ずつ支払われるものはボーナスではありません。
ボーナスは収入の一種なので、毎月の給与と同じように社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料)や所得税が引き去りされます。
ちなみに、ボーナスの年間累計額が573万円を超える場合、超えた部分に健康保険料はかかりません。また、1回のボーナスが150万円を超えると、超えた部分には厚生年金保険料はかからないという上限が設けられています。
参考:全国健康保険協会
ボーナスから「住民税」が引き去りされない理由。
住民税は、1月から12月の収入をもとに算出され、翌年6月からの1年間支払っていくことになります。会社員の住民税は、企業が毎月の給料から引き去りすることと地方税法で定められているのです。そのため、ボーナスから引き去りされることはありません。
ただし、ボーナスは収入と見なされるため、翌年の住民税の計算に反映されます。ボーナスが多いと、そのぶんだけ翌年の住民税が高くなる可能性があります。
【まとめ】自分のもらえるボーナスについて把握しておこう。
多くの会社員や公務員に対して支給されるボーナスですが、支給額の計算方法や支給のタイミングなどはさまざまです。企業の規定や業績によっては支給されない場合もありますので、自分がどのケースに当たるのかを把握しておくことは、よりよい家計管理やより多くの貯蓄につながるでしょう。
写真/PIXTA イラスト/オオカミタホ
渋田 貴正
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、相続登記をはじめ相続関係手続きや、会社の設立など法人関係の登記に特化している司法書士事務所V-Spiritsの代表。また、V-Spiritsグループの税理士として各種税務相談にも対応している。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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