生理のときに出る“血の塊”って何かの病気?医師が解説。 生理のときに出る“血の塊”って何かの病気?医師が解説。

生理のときに出る“血の塊”って何かの病気?医師が解説。

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生理のときに、経血に“血の塊”が混じっていて気になったことはないでしょうか。「レバー状の塊が生理のたびに出てきて心配」「何かの病気の可能性はある?」「病院に行ったほうがいい?」など、不安に感じている人もいると思います。

ここでは、日本産科婦人科学会産婦人科専門医や日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザーとしてさまざまな相談を受けている聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田理事長・院長の八田真理子先生に、原因や対処法、治療法などについて伺いました。

目次

生理のときに“血の塊”が出る原因。

生理のときに“血の塊”が出る原因

生理のときにドロッとした血の塊が出るのを経験して、驚いたり不安を感じたりする人もいるかもしれません。その主な原因は、経血の量が多い「過多月経」だと考えられます。

「過多月経」によるもの。

産婦人科医は一般的に、「生理時の血の塊」というと、ほぼ過多月経だととらえています。月経は、妊娠が成立せずに子宮内膜がはがれ落ちることによって起こり、その際の経血は生理1回あたり平均60cc~100㏄程度です。しかし過多月経の場合は150㏄を超えるほどの量になります。

「経血」というと、血液が出ているように思いますが、ほとんどが粘液(ねばねばした液体)で構成されていて、血液自体はそれほど多くはありません。

経血の中には子宮内膜の粘膜組織や膣内の分泌物(おりもの)などが混じっているので、レバーのようだったり、ブルーベリージャムの粒のようだったりと、ドロッとした血の塊に見えることがあります。過多月経だと、経血が流れ出す量も比例して多くなるので、そのぶん、血の塊に見えやすくなるのです。

過多月経とは?

過多月経とは?

“血の塊”の原因となる過多月経とはどんなものなのでしょうか。「もともと経血量が多いから」と見過ごしている人も、確認してみてください。

経血量の目安。

経血量は年齢や体質、その時々の体調や気候にも左右されます。特に夏は汗の成分と混じるので、量が増えたと感じる人も少なくありません。ただ、過多月経は先ほど述べたように「生理1回あたり150㏄超」と、大量の経血が生じます。

経血量を正確に計測することは不可能ですが、1つの目安として昼用ナプキンで1時間、夜用ナプキンでも2時間で交換が必要になるほど多くの経血が続く場合は、過多月経を疑ったほうがいいでしょう。

貧血が起こりやすくなる。

「だるくて疲れやすい」「顔色が悪い」「爪が割れやすい」「氷を食べたくなる」といった貧血の症状があることも、過多月経の目安になります。健康診断などで何度か貧血を指摘されたり、内科などですでに貧血用に鉄剤を処方されたりしている人はもちろんですが、「貧血の自覚がないけれど、過多月経だった」という人もいます。

過多月経を引き起こすさまざまな病気。

「血の塊が何日も大量に出る」「経血量がどんどん増えている」という場合、過多月経の背後に何らかの病気が隠れていることがあります。

婦人科系の病気。

通常の生理は、主に2日目の経血量がもっとも多く、7日以内には終わります。しかし、あまりにも出血が多い場合には要注意。たとえば「夜用のナプキンやタンポンをしていてもすぐに漏れる、頻繁にトイレに行かなくてはならない」というほどなら、何らかの器質的疾患(臓器など特定の場所に異常がある疾患)があると考えられます。

たとえば子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープ・子宮頸管ポリープ・子宮頸がん・子宮体がんなど。また妊娠の自覚はなくとも流産・子宮外妊娠の可能性があります。

女性ホルモンの異常。

女性ホルモンの“エストロゲン(卵胞ホルモン)”と“プロゲステロン(黄体ホルモン)”の分泌のバランスが悪いと、月経周期の高温期が維持できない“黄体機能不全”や、排卵が周期的に来ない“無排卵性月経(無排卵性周期症)”が起こることがあります。そうすると、子宮内膜の一部が剥離し、経血の量が多くなることがあります。

思春期や更年期、ストレスを抱えている女性に起こりやすく、「びっくりするほど経血の量が多い」「生理がダラダラ続いてなかなか終わらない」「2週間おきに生理が来てしまう」といった症状があります。

遺伝的な疾患。

過多月経には、血友病の一種の「フォン・ヴィレブランド病」という、血液が固まりにくい遺伝性の疾患が潜んでいる場合もあります。生理のたびに大量の経血が出るのですが、患者さん本人は病気に気づかないことがあります。

内科や産婦人科で血液検査を行い、血小板や血液凝固因子の数や機能などを調べればわかるので、経血量の多さで悩んでいる方は、一度受診してみてください。

婦人科の受診の目安と治療法。

婦人科の受診の目安と治療法。

過多月経で婦人科を受診する際の目安や、治療法を紹介します。

過多月経のセルフチェックリスト。

毎回の月経に慣れてしまい、経血量が多かったり血の塊が出たりしても「これが普通では?」とやり過ごしている女性は少なくありません。経血の量はなかなか人と比べられないので難しいのですが、まず自分の経血の状態をよく確認してみましょう。

「経血」と「貧血」、ぞれぞれ1つ以上当てはまるようなら、過多月経の可能性が高くなります。

経血の状態と貧血の症状のチェックリスト

【経血の状態】
□昼用ナプキンを1時間程度で替える(または夜用ナプキンを2時間程度で替える)ほどの量が2日以上続く
□レバー状の血の塊が出る
□経血量が多く布団や洋服を汚してしまう

【貧血の症状】
□健康診断や献血の際に貧血だと言われたことがある
□普段からだるくて疲れやすい
□爪が割れやすい、あるいは爪が薄くなっている
□顔色が悪いと言われることがある
□氷をたくさん食べたくなる

受診の目安は?

チェックリストで気になる症状があれば、病気の可能性もあるので婦人科を受診することをおすすめします。

過多月経によって起こりやすい症状は貧血ですが、重度の貧血で体が悲鳴を上げているにもかかわらず、その状態に慣れてしまって平気だという人もなかにはいます。

しかし、貧血で全身に血液が運搬されにくい状況が長く続くと、心臓が働きすぎて肥大し、心不全のリスクが高くなるほか、大きな病気の引き金になることも。ふらつき・だるさ・疲れやすさなどの貧血症状に覚えがある人は、ぜひ婦人科を受診しましょう。

また、過多月経とともに腹部に痛みがある場合は、子宮筋腫や子宮腺筋症などの病気が背後に隠れていることがあります。まれに、子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどが不正出血や大量の経血につながり、即入院して手術しなければならない場合もあります。

痛みがない場合でも子宮内膜ポリープやホルモン異常などの可能性があるので、いずれにしても異常を感じたら速やかに受診することが大切です。

治療法は?

婦人科では、問診や血液検査などで過多月経かどうかを診断し、治療法を考えます。症状によって服薬・入院・手術などの治療を行います。

低用量ピル

過多月経の症状で貧血がある人は、鉄剤の服用のほか、数か月間低用量ピルを使う治療もあります。低用量ピルを服用して月経を止めることで排卵がなくなるので子宮内膜が厚くなりません。経血量も減るため、貧血を解消できる場合があります。

過多月経の原因が女性ホルモンの乱れによる“無排卵性月経”なら、黄体ホルモン剤や低用量ピルを数か月間服用することで治療します。

子宮内黄体ホルモン放出システム

これは、「子宮内黄体ホルモン放出システム」(IUS)という器具を子宮内に入れることで、子宮内に黄体ホルモンを持続的に放出し、子宮内膜の発育を抑制します。子宮内膜を薄くすることで過多月経や月経痛を軽減する方法です。

多量の経血に悩まされることがなくなり、自分で月経をコントロールできるので、現時点で妊娠・出産を希望していないのであれば治療法の1つとして検討するのもいいでしょう。

入院・手術

過多月経の原因が子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープなどの器質的疾患にないかどうか、内診・超音波・MRI・子宮鏡検査で確認します。検査結果によっては手術が必要になる場合があります。

【まとめ】深刻な病気が隠れていることも。気になったらすぐに受診を。

八田先生に、生理の“血の塊”と過多月経の関連についてお話しいただきました。ナプキンやタンポンなどの生理用品は年々品質が上がり、生理時でも快適に過ごしやすくなってきています。

しかし生理はほかの人との比較がなかなかできないだけに大量の経血や痛みに慣れてしまい、何らかの異常があっても「これが普通だ」と放置しがちです。深刻な病気が隠れている可能性もあるので、ぜひ早めに婦人科を受診して症状を改善しましょう。

写真/Getty Images イラスト/こつじゆい


八田 真理子 
聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田理事長・院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医・母体保護法指定医・日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザー。複数の病院勤務を経て、1998年「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開院。思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングに従事。


※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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