アラフォーイケメン俳優オタクが「人生後半を謳歌する」ためにしていること。
子育てやキャリア形成などの多彩な経験を経て、「これからの暮らし」について真剣に考えることが多くなってくる40代~50代。そんな読者と同世代のイケメン俳優オタクで、フリーライターとして活躍する横川良明さんに、推し活を通して得た生きがいや、人生を楽しむコツについてエッセイを書いていただきました。日々を輝かせるヒントがいっぱいです!
慌ただしく過ぎていく日々に、推しが喜びを与えてくれた。
先日、マンションを買った。
物件は、築50年超の中古マンション。長い歳月の積み重ねですっかりくたびれたその部屋を、自分仕様にフルリノベーションする。そこで僕が最初につくりたいと思ったのが「オタク棚」だった。
推しのアクリルスタンド(アクスタ)やブロマイド。それらを陳列するコーナーがあれば、どんなに仕事でヘトヘトになって帰ってきた夜も疲れは吹き飛ぶ。控えめに言って、オタク棚の設置は推しとの同棲。そして、それは僕自身の生涯オタク宣言でもあるのだ。
僕は、イケメン俳優オタクだ。
見目麗しき俳優に熱を上げ、足しげく劇場に通い、ドラマのロケ現場を聖地巡礼し、写真集をバイブルとする。そんな生活を送りはじめて、かれこれもう7年ほどになる。
きっかけは、ある1つの舞台だった。
そのころから演劇界では「2.5次元」と呼ばれるマンガやゲームなどを原作とした舞台が大流行し、多くの若手俳優を輩出していた。僕の初めての推しも、その1人。
名前は、松田凌。凛々しい眉に、ヤンチャな口元。意志の強そうな眼差しは爽やかな色気を放ち、美しすぎて僕が松尾芭蕉なら確実に「松田凌 ああ松田凌 松田凌」って一句詠んでた。自分でも信じられないほど、世界のすべてが松田凌一色になった。
推しと出会うまでの僕の毎日は、なんだか平板だった。毎日は忙しいけれど、その慌ただしさに追われるあまり、昨日と今日と明日の違いがよくわからない。大きく蹴つまずくこともないけれど、そのぶん、100mを全力ダッシュしたときの爽快感もないような暮らし。
こういう日々が繰り返されて、僕はいつの間にかおじいちゃんになっているんだろうか。それを幸せと呼ぶべきか、退屈と呼ぶべきか、自分でもよくわからなかった。
そんな色褪せた日常も、推しができてからというもの毎日が総天然色。『おっさんずラブ』というドラマを機に火はさらに燃えさかり、実写BL(ボーイズラブ)にもドボンとハマった。
『美しい彼』、『みなと商事コインランドリー(通称みなしょー)』、『永遠の昨日』、『君となら恋をしてみても(通称なら恋)』。次々と飛び出すBLドラマの名作にひれ伏し、繰り広げられるピュアな恋模様に理性のヒューズが飛んだ。
画面の中の男の子たちの手がふれ合うだけで口から野太い歓声を上げ、破局の危機を迎えるたびに親の死に目より悲愴な顔をしていた。とても分別のついた大人のやることじゃない。
自分にもまだこんなに泣いたり笑ったりドキドキするエネルギーが残っているんだと驚いた。もはや退屈だなんて言っていられない。100mどころか42.195kmを全力で走り続けるような青春の日々だ。
当然、体力がものを言うので、健康管理にも気を配る。