生理中でもお酒を飲みたい!体への影響や飲み方を管理栄養士が解説。
生理中もお酒をおいしく飲みたい、けれど体に負担はかけたくない……。そこで、お酒が生理中に与える影響や、飲むときの注意点、おすすめのお酒・おつまみについて、女性の体調と食の関係について研究している、東京労災病院 治療就労両立支援センターの管理栄養士・平澤芳恵先生に伺いました。
目次
生理中にお酒を飲んでもいい?
生理中でいまいち気分が上がらないときだからこそ、気分転換やリラックスのためにお酒を飲みたくなることも。生理中のお酒について、平澤先生は「本来なら控えたほうがいいのですが、飲みたいときは普段よりも気をつけながら飲みましょう」とアドバイスします。先生が行った調査でも、生理時の飲酒でさまざまな症状が出ることがわかりました。
「平均年齢30.6歳、PMS(月経前症候群)のある女性32名について、『飲酒あり群』『飲酒なし群』でどんな不調が起こるのか比較しました。すると、多くの症状で飲酒あり群のほうが飲酒なし群を上回る結果になりました。グラフに挙げた症状以外にも、イライラ・集中力がなくなる・便秘・冷え・肩こりなどを感じる人もいます」(平澤先生)
飲酒あり群では腹痛、頭痛、胸のはり、だるさなどの不調を感じる人が多くなっています。さらに飲酒あり群と飲酒なし群の差を見ると、(1)頭痛、(2)食欲増加、(3)胸のはり、(4)むくみの順になりました。
「飲酒することでこれらの症状が出やすくなるようです。生理中は経血の影響で脱水や貧血などの体調不良になりやすく、お酒はその症状を助長する傾向があります」(平澤先生)
平澤先生提供のデータをもとにミラシル編集部にて作成
お酒が生理中の体に与える影響。
生理の期間や経血量、症状などは個人差が大きいものですが、一般的に、お酒が生理中の体に与えやすい影響について説明します。
脱水症状を起こしやすくなる。
生理中は経血が体の外に出ていくことで脱水症状を起こしやすくなっているうえに、お酒を飲むことで利尿作用が促進され、さらに脱水が進みがちになります。
貧血症状が誘発されやすくなる。
生理中、経血量が多い人には貧血症状が現れることも。特に貧血で出やすい症状は頭痛とだるさです。この2つは飲酒によって症状が誘発されやすくなります。
酔いがまわりやすくなる。
生理中は体内の血液量が減少するので、生理期間以外と同じ量のお酒を飲んでも血中アルコール濃度が高くなり、酔いがまわりやすくなります。
生理中にお酒を飲むときの注意点。
生理中にお酒を飲むときには、いくつか気をつけたいポイントがあります。お酒による悪影響をやわらげるためにも心がけておきましょう。
「アルコール摂取量1日20g未満」を守る。
2024年2月、厚生労働省が「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表しました。ガイドラインによると、生活習慣病のリスクを高める1日あたりの飲酒量(準アルコール量)は、女性で20g以上とされています。お酒の種類別では下記の量になります。生理中は特に、この基準内を守るようにしましょう。
「最近では、缶などにアルコールのグラム数が明記されている商品も多いので、参考にしてください」(平澤先生)
参考:厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドラインについて」
こまめに水を飲む。
「お酒を飲んだときは、その2倍以上の水分量を補うことが栄養指導では推奨されています」と平澤先生。生理中はいつにもまして、お酒と一緒にこまめに水を飲んで体内から失われる水分を補うことが大切です。
どれくらいの水分を目安にすればいいのでしょうか?
「生理中にかぎりませんが、たとえばビール500mlなら2倍の1L以上の水分を摂りたいところです。日本酒やワインなど度数の高いお酒の場合は、3倍くらいの量を見込んでおいてもいいでしょう。飲むのは水以外でも構いませんが、利尿作用のあるカフェインや鉄分の吸収を阻害するタンニンが入っていないか少ない飲み物、たとえば麦茶やほうじ茶などがおすすめです」(平澤先生)
うすめる・温めるなど飲み方を工夫する。
生理中のお酒の飲み方は「温かくしてうすめて飲むのがおすすめです」と平澤先生はアドバイスします。
「冷えは生理の症状の1つ。お湯で割ってホットワインやホット梅酒、焼酎のお湯割りなどにして飲めば体への負担がやわらぎます。うすめることでアルコール量も抑えられます」(平澤先生)
薬を飲んだらお酒を飲まない。
お酒を飲む前や飲んだ直後に薬を飲むのはやめましょう。お酒と薬を一緒に摂取すると、体内でアルコールの分解が優先されるので薬の分解が滞ってしまいます。体内に長く薬がとどまることで、通常よりも効能が強く作用したり、副作用を起こしやすくなったりすることもあります。
生理中にお酒を飲むときの疑問。
生理中のお酒の選び方、薬の飲み方について知りたいという方もいるかもしれません。身近な疑問について、平澤先生に教えていただきました。
お酒を飲んで頭が痛いとき、薬を飲むまでどのくらい時間をあけたらいい?
「年齢・体重・体質にもよりますが、女性の体が1時間で分解できるアルコール量は平均4gといわれています」と平澤先生。1日の適量である約20gのアルコールを摂取した場合、分解が終わるまで約5時間。19時に飲み終わったとしたら、5時間後の深夜0時ごろが薬を飲むのに適した時間です。
参考:国土交通省「自動車運送事業者における飲酒運転防止マニュアル」(令和6年)
お酒の種類によって、生理中の体への影響は違うの?
アルコール度数が高いものほどアルコールの含有量も多く、分解に時間がかかり、体への負担が懸念されます。最近ではノンアルコール飲料や微アルコール飲料も充実しているので、生理中はそうしたお酒を試してみてはいかがでしょう。
「女性に人気の果実酒は糖分もアルコール度数も高くなっています。生理中は、うすめたうえでカットしたフルーツを添えて、さっぱりとした味わいを楽しむのもいいですね」(平澤先生)
生理中はどんなおつまみを食べたらいい?
鉄分やたんぱく質を豊富に含むおつまみを食べましょう。ナッツ類やドライフルーツ、枝豆・豆腐などの豆類のほか、鉄分・たんぱく質ともに豊富なマグロやカツオなどの刺し身もおすすめです。
なお、生理前や生理中はホルモンバランスの変化の影響で血糖値が乱高下しやすく、「甘いものが食べたい!」という欲求のスパイラルに陥りやすい時期だとか。
「今、女子大生の食事内容と生理周期を研究しています。生理前・後に比べて生理中に特に多く摂取される栄養素が炭水化物でした。炭水化物による急激な血糖上昇は体に負担がかかります。生理中は、いつもよりも野菜やたんぱく質を多く摂るようにして、炭水化物よりも野菜から先に食べる“ベジファースト”を心がけるとよいでしょう」(平澤先生)
【まとめ】生理中は体をいたわりながらお酒を楽しんで。
生理中でもお酒が飲みたい、飲み会の予定が入っているという人もいるでしょう。「絶対に飲酒はダメ」というわけではありませんが、普段よりも水分が失われやすく、頭痛やむくみなどの不調が出やすくなります。飲む量やアルコール度数に十分に気をつけながら、適量を心がけて楽しみましょう。
写真/Getty Images、PIXTA イラスト/オオカミタホ
【監修者】平澤 芳恵
東京労災病院 治療就労両立支援センター管理栄養士・両立支援コーディネーター。メタボリック症候群予防、働く女性の食生活などをテーマに、企業などで栄養相談や講演を実施。深夜勤務者のための食事選びの研究にも携わっている。新聞や雑誌、病院ホームページなどでさまざまな執筆活動も行う。著書に『カラダにやさしいコンビニごはん100』(小学館)。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。