生理で眠いときの対処法は?眠気以外の症状についても解説【医師監修】
生理前や生理開始直後、普段よりも眠気を感じることはありませんか? なぜ眠くなってしまうのでしょうか? その原因や、仕事中などに今すぐ眠気をスッキリさせたいときの対処法を、産婦人科医の八田真理子先生にお聞きしました。眠気のほかにも、気持ち悪さや情緒不安定といった生理の諸症状への対策や、生理中に暮らしの中で気をつけるべきポイントを紹介します。
目次
- 生理に伴う眠気の原因は?
- 今すぐできる!生理に伴う眠気への対処法。
- 眠気以外の症状への対処法例。
- 生理中、暮らしの中で気をつけたいこと。
- 生理中に気になる症状を医師に相談。
- 【まとめ】自分の体調と向き合うことが備えにつながる。
生理に伴う眠気の原因は?
眠気は月経前症候群(PMS)の代表的な症状の1つで、生理が近づくころに出やすく、生理がはじまると収まっていきます。PMSのしくみ自体、まだはっきりとはわかっていませんが、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の影響ではないかといわれています。
取材をもとにミラシル編集部が作成
プロゲステロン由来の物質。
眠気に関しても、プロゲステロン由来の原因物質によるものといわれています。プロゲステロンは上のグラフのように、排卵後に分泌量が増えます。そのプロゲステロンが分解されると「アロプレグナノロン」という物質が発生するのですが、この物質が眠気を引き起こすと考えられているのです。
基礎体温の上昇。
眠気には、夜の睡眠の質も関係しています。これもプロゲステロンの作用によるものですが、生理前の女性の体は基礎体温が上がる「高温期」に入ります。本来、私たちの体は、夜にだんだん体温が下がって眠りにつきますが、高温期には体温が下がらず、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりしがちです。そのため、日中に眠気が出てしまうのです。
セロトニンの分泌量の減少。
もう1つの女性ホルモン「エストロゲン」は排卵後に分泌量が減るのですが、それにあわせて「セロトニン」というホルモンも分泌量が減ります。セロトニンには自律神経を整える効果があり、これが減るということは自律神経が乱れやすくなるということ。自律神経が乱れると、睡眠の質は悪くなるので、日中眠くなってしまうのです。
ただ、「眠気が出るのは決して悪いことではなく、むしろ自然な反応」と八田先生は強調します。
「妊娠するにしても、生理が起きるにしても、体にとってはエネルギーが必要です。そのエネルギーをたくわえるため、排卵後の体はいつも以上に休養を必要としています。ぜひそのことを意識しながら体を大切にして、生理の期間を過ごしていただけたらと思います」(八田先生)
今すぐできる!生理に伴う眠気への対処法。
仕事中などにどうしても眠くなってしまい、なんとかしたいというときに、手軽に実践できる対処法を教えてもらいました。
15分程度の仮眠。
少しでも寝ることができる環境であれば、眠気に逆らわず仮眠をとりましょう。「日中の15分程度の仮眠には、夜の睡眠1時間分に相当する効果がある」といわれていて、仕事の効率も上がります。できればベッドやソファに横になったほうが、よい休息になりますが、デスクに顔を伏せて目を閉じるだけでも効果はあります。
八田先生も「昼間、眠くなったときには少し横になったり、1人になる時間を作ったりしていましたよ」と、自身の経験を語ります。
比較的眠くなりやすいのはお昼ごはんのあとですが、眠くなったときにいつでもパッと寝てしまって問題ありません。ただし、30分以上昼寝したり、午後4時以降に寝たりすると、夜によく眠れなくなってしまうので、注意してください。
仮眠はとても効果的ですが、やはり根本的には、夜の睡眠時間を7時間~8時間確保して、しっかりと体を休めることが大切です。八田先生は「明日やっても間に合う仕事は明日にまわして、1時間早くベッドに入るといったことを心がけると、もっと頭がスッキリするはずです」とアドバイスします。
軽めの運動やストレッチ。
眠気を追い払うには、ウォーキングやストレッチなどで体を動かすのも有効です。肩を回したり、腰を伸ばしたりして体に刺激を与えましょう。会議中などで、あまり動けないときには、手首を回す、首を両手でさするという方法もあります。
自律神経を安定させる呼吸法。
また、乱れた自律神経を整えるための呼吸法もおすすめです。鼻で息を吸って口から吐いていきますが、2拍で吸って6拍で吐くイメージで、吐くほうに時間をかけるのがポイントです。生理のときはもちろん、日頃から気づいたときには実践するとよいでしょう。
眠気以外の症状への対処法例。
PMSは生理のある女性の8割が経験しているといわれています。生理にまつわる症状は、痛みや吐き気など、身体的なものもあれば、イライラする、気分が落ち込むといった精神的なものもあり、感じ方も人それぞれ。眠気以外の症状への対処法について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
吐き気を感じる。
「気持ちが悪い」「吐き気がする」といった症状は、月経前と月経中とで原因が異なります。
月経前の吐き気は、PMSの症状の1つ。プロゲステロンの分泌で胃腸の消化機能がダウンしたり、寝不足やストレスの影響だったり、さまざまな要因が吐き気につながっていると考えられています。
一方、月経中の吐き気は、プロスタグランジンという痛みを引き起こす分泌物が原因です。鎮痛剤はプロスタグランジンを抑制するので、生理の出血がはじまる前か、はじまってすぐに飲むと、吐き気を抑制できます。すでに吐き気が出ているときは、体を温めて対処しましょう。
情緒が不安定になる。
生理前には気持ちも上下しやすくなります。特にイライラは、この時期の体の防御反応として本能的に出ることもありますが、鉄・亜鉛などのミネラル不足や、低血糖が原因の場合も。気分が落ち込むときは、セロトニン(精神を安定させる働きがある神経伝達物質)の低下が影響していると考えられます。
対処するには、漢方薬や低用量ピル、食事の見直し、運動といった方法があります。
生理中、暮らしの中で気をつけたいこと。
生理の時期を穏やかに過ごすためには、十分な睡眠に加えて、体を温めることや運動、食事にも気を配りましょう。
体を温める。
生理中は血行が悪くなり、体が冷えやすくなります。体が冷えると生理痛が増してしまうこともあります。首・脇・腰・鼠径部・手首・足首など、太い血管がある部分を重点的に温めるのがポイントです。
また、入浴時はなるべく湯船に浸かりましょう。生理中はシャワーで済ませる方も多いかと思いますが、意識してみてください。
軽く運動する。
生理中だからといって、運動を控える必要はありません。ストレッチを含む軽い運動は血液やリンパの流れを改善させるので、体が温まります。自律神経を整える効果もあるので、普段から習慣にできるとベスト。ただし、体調がすぐれないときは無理をせずにお休みしましょう。
食事はバランスよく。お酒もほどほどならOK。
食事の中で積極的に摂りたいのは、イソフラボンを含む大豆製品、カルシウムが豊富な牛乳や小魚、ビタミンB群を含む玄米、バナナ、ほうれん草、タンパク質が多い肉、魚など。理想は定食のように、4つくらいお皿が並ぶ多品目のメニューを、よく噛んで食べることです。
冷たいもの、辛いもの、塩気や添加物が多いものは消化によくないので避けましょう。コーヒーやお酒は、飲みすぎなければ問題ありません。
生理中に気になる症状を医師に相談。
生理中には、経血がたくさん出たり、生理痛がひどかったりと「これって大丈夫なのかな?」と不安になることもあるでしょう。心配なときは1人で悩まず、医師に相談しましょう。
血がドバッと出る感覚があった。何かの病気?
急にたくさんの経血や血の塊が出てドキッとする瞬間は、多くの女性が経験しています。必ずしも異常なことではありませんが、中には過多月経や子宮内膜症、子宮筋腫などが潜んでいることも。気になるときは病院を受診しましょう。
生理痛がひどいけど、病院に行くレベルは?
人と比べることが難しい生理痛。自分の痛みは普通なのか、重いのか、気になっている人もいるでしょう。八田先生によると、「日常生活に支障が出るほどの痛み」は「かなりひどい生理痛」とのこと。病気が潜んでいる可能性もあるため、「たかが生理痛で」と遠慮せず、婦人科で相談してみてください。
【まとめ】自分の体調と向き合うことが備えにつながる。
生理がある女性の体は、毎月妊娠の準備をするために、いつも状態が変化しています。特に生理前や生理中は、不快な症状として表れることもありますが、メカニズムを知っていれば対処しやすくなります。そのためには、自分の生理の時期や体調を、アプリなどで記録して、向き合っていくことが大切です。
八田先生は「生理休暇など、女性たちへの社会的な配慮も広がっているので、つらいときにはまわりに相談して、サポートしてもらいましょう。そして、『正しく生理があることは、健康な証でもある』と、前向きにとらえてみてはどうでしょうか」とアドバイスします。
症状が重くて生活に支障が出るようなときには病院に相談し、専門家の力も借りながら、生理の時期を上手に乗り切っていきましょう。
写真/PIXTA
【監修者】八田 真理子
聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田理事長・院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医・母体保護法指定医・日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザー。複数の産婦人科勤務を経て、千葉県松戸市で実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、1998年「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開院。地域密着型クリニックとして思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングに従事。
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