生理で気持ち悪い、今すぐなんとかしたい……。対処法を医師が解説。
生理前や生理中に「気持ち悪い」「吐き気がする」と感じたことがある方もいるのではないでしょうか。吐き気があると仕事や家事に支障が出たり、食事の楽しみも減ってしまったりして、余計に気分が落ちてしまうことも。吐き気を抑えるには、どうしたらいいのでしょう?
多くの女性たちの生理の悩みと向き合ってきた、産婦人科医の八田真理子先生に答えていただきました。
目次
生理で気持ち悪いときの対処法3選。
生理のときの吐き気は、生理痛を引き起こす「プロスタグランジン」という物質が一因と考えられています。「プロスタグランジンは、厚くなった子宮内膜をはがして、経血と一緒に排出するために子宮を収縮させますが、このときの痛みが吐き気につながることがあります」と八田先生は話します。
吐き気に対処するには、プロスタグランジンの生成を抑えることと、体を労わることがカギになります。
その1:体を温める。
体が冷えて血行が悪くなるとプロスタグランジンの影響を受けやすくなるので、体を温めましょう。冷たい食べ物や飲み物を避けたり、腰回りや首、手首、足首を腹巻や衣服で覆ったり、お風呂に浸かったりしてみてください。
また、ウォーキングやスクワットなど適度な運動をすると、体温が上がり血行がよくなります。同じ姿勢でじっとしていると血行不良につながるので、できる範囲で体を動かすようにしましょう。
その2:胃腸に優しい食べ物を摂る。
吐き気が強くて食欲がないときは無理に食べず、胃腸を休めましょう。水分だけは、常温か、温かい飲み物から十分に摂るようにしてください。
食欲が出てきたら、消化しやすい食べ物を摂って体に栄養を補給しましょう。八田先生のおすすめは、野菜をたっぷり煮込んだスープやおかゆなど、よく火を通した温かいもの。
反対に、唐辛子などスパイスが効いた辛い料理や、塩気の多い料理、酸味が強いフルーツ、消化が悪いきのこ類などは、胃腸の負担になるので避けたほうがよいそうです。添加物の多いソーセージやハムなども控えましょう。
その3:市販薬を飲む。
市販されている鎮痛剤には、プロスタグランジンの生成を抑制する働きがあります。主な有効成分として、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどがあり、商品によって配合は異なりますが、どれも高い効果が見込める薬なので、自分が飲みやすいものを選ぶとよいでしょう。
鎮痛剤を服用する上でもっとも大切なのはタイミングです。「生理痛や吐き気が出てきてからでは遅いので、出血がはじまる直前か、はじまってすぐに飲む必要があります。そのためには、生理を毎回記録して、できれば毎日基礎体温を測って、自分の生理周期をつかむようにしてください」と八田先生。
「鎮痛剤が効かない」と感じるときは、適切なタイミングで服用できていない可能性があります。また「鎮痛剤を繰り返し服用すると、体に耐性ができて効きが悪くなる」と考える人がいますが、それは誤解で、用法・用量を守っていれば問題ありません。薬の選び方について疑問や不安があるときは、薬局やドラッグストアなどで薬剤師に相談してください。
また、薬を飲む際には、「用法・用量を守る」のほかにも、「空腹時を避け、ヨーグルト一口でもよいので食べ物を胃に入れてから飲む」「水分をしっかり摂る」といったことを心がけましょう。
ここまで紹介した3つの対処法に加えて、体を休めて睡眠をとると楽になることもあるそうです。
「吐き気は『休息が必要だ』という体からの警告ともいえます。女性の体は、生理前は妊娠に向けてエネルギーをたくわえ、生理になると、次の排卵に向けて体を整えるためにエネルギーを消費します。自分の体の状態を理解して、休む時間を多めにとることも大切です」(八田先生)
生理のときは極力無理をせず、少しでも早めに就寝するなど体を休めましょう。
生理で気持ち悪くなるのは予防できる?
対処法と重なりますが、前もって鎮痛剤を飲むことで吐き気は予防できます。アプリなどを活用して、自分の生理周期を把握しておくとよいでしょう。
また、生理の諸症状すべてに共通することですが、睡眠不足などでホルモンバランスが乱れると、プロスタグランジンが過剰に分泌され、吐き気や痛みなどを誘発します。日頃から十分に睡眠をとり、栄養バランスのよい食事をして、体を冷やさず、運動習慣をつけることが症状の改善につながります。
「私のクリニックに来ている患者さんの中でも、生活スタイルを見直して、吐き気やそのほかの症状がよくなった例はたくさんあります。それと、後述しますが、低用量ピルを病院で処方してもらって飲むことで、だいぶ楽になったと話す方もいますよ」(八田先生)
生理で気持ち悪い状態が続くなら病院へ。
吐き気を感じたのがその月だけであれば、そのときたまたま調子が悪かっただけかもしれません。でも、先月に続き、今月も同じような症状が続く場合には、月経困難症や子宮内膜症などの病気が潜んでいる可能性もあるので、婦人科を受診しましょう。
受診した結果、特に病気ではなかったけれど、吐き気をなんとかしたいと希望する人に対しては、低用量ピルや黄体ホルモン製剤による治療が行われます。これらの薬を飲むと、子宮内膜が薄くなり、プロスタグランジンの分泌も抑制されるので、吐き気の軽減が期待できます。
しかし、吐き気の原因は複雑で、婦人科以外の病気が絡む可能性もゼロではありません。「たとえば視力低下や眼精疲労などの眼科領域や、メニエール病のような耳鼻科領域の症状・疾患が関わっていることも考えられます。気になることがあれば、産婦人科医 に自分の状態を詳しく伝えて、相談してみてください」と八田先生はアドバイスします。
【まとめ】生理のときの吐き気は我慢しなくても大丈夫。
わずらわしい生理のときの吐き気は、市販薬や、体を温めることなどによって、緩和したり予防することが可能です。また、生理の期間はあまりがんばりすぎず、ゆったり過ごすことも大切です。
しかし、セルフケアだけで乗り切る必要はなく、病院で低用量ピルなどを処方してもらって吐き気を軽減できる時代になっています。「生理だから仕方ない」と我慢せず、医療のサポートも上手に利用して、毎日を心地よく過ごしましょう。
写真/PIXTA イラスト/オオカミタホ
【監修者】八田 真理子
聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田理事長・院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医・母体保護法指定医・日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザー。複数の産婦人科勤務を経て、千葉県松戸市で実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、1998年「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開院。地域密着型クリニックとして思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングに従事。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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