生理痛、医師が教える病院に行くべきレベル。
毎月、ひどい生理痛に悩まされながらも、「生理痛はあって当たり前」とがまんしている人も多いのではないでしょうか。日本産科婦人科学会専門医や日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザーとしてさまざまな相談を受け、『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』『自分でできる!女性ホルモン高めかた講座』などの著書もある、産婦人科医の八田真理子先生は、「生理痛はがまんするものではない」と言います。生理痛の原因や対処法、婦人科とのつき合い方を知って、生理痛の悩みとさよならしましょう。
目次
まずは生理痛のレベルをチェック!
生理痛の痛みは人と比べられません。そのため、「自分の生理痛って普通?」「それとも重いの?」「どういう基準で判断したらいいかわからない」という人は少なくないと八田先生は言います。そこで、まずは目安となるチェック項目を教えてもらいました。
- 生理痛は「がまんできる程度」
軽い下腹部痛や腰のだるさはあるものの、日常生活に支障はなく、鎮痛剤を服用しなくても普段どおり生活できる。
- 生理痛が「ひどい」
毎回ではないけれど、生理痛が強くて寝込んでしまうことも。ただ、鎮痛剤を服用すれば、仕事や学校に行ける。
- 生理痛が「かなりひどい」
毎回、立っていられないほどの強い生理痛があり、仕事や学校を休んでしまう。鎮痛剤が手放せず、生理のたびにどんどん生理痛がひどくなっている。
強い生理痛は月経困難症の可能性も!
次のような症状がある場合は、単なる生理痛ではなく、強い痛みを伴う「月経困難症」が疑われます。
- 鎮痛剤の服用回数や量が増えてきた
- 鎮痛剤を飲んでも痛い、効かなくなってきた
- 日常生活に支障が出るほどの痛みを感じる
「生理は痛みに耐えるものと思い込み、ひたすら耐える人がいます。しかし、月経困難症を引き起こしている原因が、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気である可能性もあるため、そうした痛みを当たり前と思っていると、病気を見過ごしてしまうかもしれません。『このくらいで相談していいのかな……』と遠慮せずに、気軽に婦人科を受診しましょう」(八田先生)
なぜ、生理痛が重くなるの?
生理に伴って生じる生理痛。原因には、次のようなことが考えられます。
過剰な子宮収縮。
生理中は、子宮が収縮して経血を体外に押し出します。収縮を促すのは、生理の少し前から生理の前半にかけて子宮内膜の中で分泌される「プロスタグランジン」という物質です。このホルモンの分泌量が多い場合、子宮が過剰に収縮して生理痛が強くなります。
子宮口が狭い。
若い女性や出産経験のない女性に多い生理痛の原因です。子宮口(子宮の出口)が狭いために、経血がスムーズに外に流れにくいことから、押し出すために子宮が過剰に収縮して痛みを感じます。ただ、生理の回数を重ねたり、出産を経験したりすると、子宮口がやわらかくなり広がりやすくなるため、生理痛が軽減されることがあります。
冷えによる血行不良。
体が冷えると血行が悪くなり、痛みに対して敏感になると考えられています。そのため、プロスタグランジンが引き起こす、「子宮の過剰な収縮が脊髄神経に信号として送られて感じる痛み」にも敏感になります。同様に、同じ姿勢を続ける長時間のデスクワーク、ガードルやジーンズによる下半身への締めつけなども血行不良につながって生理痛を強くするため、注意が必要です。
栄養が不足している。
生理のときはエネルギーを必要とします。生理前に猛烈に空腹を感じるのは、生理に備えて体が栄養をたくわえようとするため。そのため、無理なダイエットなどで十分な栄養がとれていないと、生理によるエネルギー消費に体が耐えきれず、痛みが強くなります。現代女性は、理想とされる栄養が摂取できていないといわれており、これは深刻な問題だと八田先生は懸念を示します。
精神的・身体的ストレス。
不安やストレスは、女性ホルモンや自律神経のバランスを乱し、血行不良や冷えを引き起こします。その結果、痛みのしきい値が下がり、痛みに対して敏感になるため、強い生理痛を感じます。
つらいときは鎮痛剤に頼ろう。
生理は毎月のことだから、上手につき合う方法を知って快適に過ごしたいもの。鎮痛剤の服用に抵抗を感じる人もいますが、つらいときは無理せず、鎮痛剤に頼りましょう。プロスタグランジンの分泌を抑え、生理痛を緩和する効果が期待できます。
ポイントは「痛い、つらい」と感じたときではなく、「そろそろ生理になりそう……」という早めの段階で服用することです。がまんして痛みのピークで服用しても、すでにプロスタグランジンが大量に分泌されているため、あまり効果が期待できません。注意事項として、空腹では服用しないこと。クッキー1枚でもいいので食べてから、たっぷりのお水と一緒に服用しましょう。
生理痛を和らげるセルフケア。
鎮痛剤以外の方法で「生理痛を和らげたい」という人向けの対処法を、いくつか紹介します。
生理痛に効くツボ。
生理痛に効くといわれるツボがあるので、試してみるのもいいでしょう。
三陰交(さんいんこう)
生理痛に効くとされる三陰交のツボを、心地よいと感じる力加減で押してみましょう。内くるぶしの頂点から指4本上、すねの骨の後ろ側にあるくぼみです。
合谷(ごうこく)
人差し指と親指の骨の交わるところから、人差し指の先へ指1本分ほど戻ったところのくぼみは、生理痛によいとされる合谷のツボです。心地よいと感じる力加減で押してみましょう。
体をいたわるすごし方。
簡単なセルフケアで、生理痛が和らぐことがあります。ぜひ試してみてください。
体を温める。
お風呂は、シャワーではなく湯船に浸かって全身を温めましょう。好きな香りの入浴剤を入れると、リラックス効果も高まります。また、腹巻きをして寝るのもおすすめです。オフィスでは、ひざかけや毛布などで、腰まわりを温めましょう。
体を締めつけない。
ガードルやジーンズなどで下半身を締めつけると、血流が滞りやすくなり、生理痛を悪化させます。生理中はゆったりした下着や服を選びましょう。
軽い運動をする。
ウォーキングやストレッチ、ヨガなどの軽い運動をしましょう。全身の血行がよくなって、生理痛が和らぎます。
栄養をとる。
栄養が不足すると生理のトラブルが起こりやすくなるため、エネルギー源となるたんぱく質・糖質・脂質をバランスよく、しっかり食べましょう。
「何を食べればいいのかわからない」「自分でつくるのはちょっと……」という人は、外食の際に、一汁三菜(ごはん、みそ汁・主菜・副菜2品)の和食を選ぶよう意識するなど、生活に取り入れやすい方法からチャレンジしてはいかがでしょうか。
また、生理前は食欲が増すこともあるため、一時的に少し体重は増えるかもしれませんが、生理が終われば食欲も治まり、すぐにもとに戻ります。
BMIは、18.5未満が「やせ」です。できれば、日ごろから20〜22をキープしてください。太ることが気になる人は、しっかり食べて栄養をとって、日ごろから運動することで体重をコントロールするといいでしょう。
※ BMI(体格指数)=体重kg÷(身長m)²
がまんしないで気軽に相談を。
身近な悩みだからこそ、医療機関にかかるのは不安という方も少なくないでしょう。しかし八田先生は「気軽に受診してほしい」と話します。
「初めての婦人科受診は、ちょっぴり緊張するかもしれませんね。でも、婦人科は女性の味方となり、女性のあらゆる不調に寄り添ってくれる場所。心配なら、親や友人に紹介してもらうのもよいかもしれません」(八田先生)
婦人科で生理痛の相談をしたら、どのような診察や治療が行われるのでしょうか? 先生にお聞きしました。
生理痛の原因を診察。
問診の後、生理痛の原因を探るために、超音波検査で子宮や卵巣に腫れがないかなどを確認します。また、子宮内膜症や貧血の疑いがないかを調べるために、血液検査も行われます。
鎮痛剤・漢方薬の処方。
必要と判断されたら鎮痛剤が処方されます。必要に応じて、服用のタイミングなどが指示されることも。鎮痛作用のある漢方薬が処方されることもあります。
低用量ピルの処方。
強い生理痛(月経困難症)には医師の判断のもと、保険適用薬である「低用量ピル」が処方される場合もあります。服用すると経血の量が減り、生理痛がラクになるだけでなく、疑似妊娠の状態となるため、子宮と卵巣を休めることもできます。
また、服用をやめた直後は妊娠しやすい状態になるため、いざ「妊娠したい!」という時期まで服用することは、賢い選択といえるかもしれません。ただし、人によっては、服用をはじめたばかりのころに、吐き気や頭痛・むくみ・乳房の張り・不正出血を感じたりすることもありますが、長くても2か月〜3か月以内で軽快することがほとんどです。
セルフケアのアドバイス。
医師によっては、ライフスタイルにもとづいて、食事などを含めたセルフケアのアドバイスを行ってくれる場合があります。人生100年時代を迎えるにあたり、年齢を重ねても生き生きと輝くには、若いころからの積み重ねが大切です。婦人科受診をチャンスととらえて、ライフスタイルを整えてみてはいかがでしょうか。
写真/Getty Images イラスト/こつじゆい
八田 真理子
聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田理事長・院長。日本産科婦人科学会専門医・母体保護法指定医・日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザー。複数の産婦人科勤務を経て、千葉県松戸市で実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、1998年「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開院。地域密着型クリニックとして思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングに従事。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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