なぜ生理の前にイライラするの?原因と対処法を解説【医師監修】
生理になると、普段なら気にならないようなささいなことでイライラし、家族やパートナーに八つ当たりしてしまう……。どうして生理のたびに、こうもイライラするのでしょうか? それには、生理(月経)周期を通じた女性ホルモンの変化が関係しているようです。
日本産科婦人科学会産婦人科専門医や日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザーとしてさまざまな相談を受け、また、『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』『自分でできる!女性ホルモン高めかた講座』などの著書もある産婦人科医の八田真理子先生は、「毎月のことなので、1人で抱え込まずに医師に相談してほしい」と言います。先生に、生理前後のイライラの理由や対処法について伺いました。
目次
生理でなぜ、イライラするの?
繰り返される生理のイライラ。ただ、「生理前と生理中では原因が違う」と八田先生は言います。
生理前のイライラの原因。
生理前のイライラは、生理の3日〜10日前(黄体期)にはじまる「PMS(月経前症候群)」の症状である場合が多く、排卵のある女性の7割から8割は、何かしらPMSの症状を抱えているといわれています。
PMSは、排卵後に分泌量が増える「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の影響によって生じると考えられていますが、いまだにそのメカニズムはよくわかっていません。
PMSの主な症状。
PMSの主な症状には、イライラのほか、気分が落ち込みやすくなる、泣きたくなるといった精神が不安定になる「心の不調」と、食欲が止まらない、胸やお腹の張り、むくみを感じるといった「体の不調」があります。
症状の出方は個人差が大きく、また、気候や気温の変化、仕事の疲れや生活環境なども影響します。さらに、ストレスを感じると症状は重くなるといわれています。
八田先生も、以前はPMSの症状が強く出ていたと言います。
「女性には、子どもを危険から守ろうとする本能が備わっています。もしかしたらPMSは、お腹に宿したかもしれない小さな命を危険から守ろうとする本能のあらわれなのかもしれません。そう考えると、私は少しポジティブな気持ちになれましたよ」(八田先生)
生理中のイライラの原因。
生理中にイライラする原因としては、月経期に「エストロゲン(卵胞ホルモン)」とプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が急激に下がることが考えられます。また、経血が出ている気持ち悪さや、お腹の痛みといった体が感じる不快感もあります。
八田先生は、次のような点も指摘します。
「血は恐怖や不安を連想させる色です。生理に対してネガティブな感情を抱いている人は、経血を見たときの嫌悪感がイライラにつながるからかもしれません」(八田先生)
生理のイライラを解消するには。
「生理のイライラを軽減するセルフケアの基本は、生活習慣を整えること」と八田先生は言います。生活が乱れていると、イライラを強くするだけでなく、肉体的・精神的にさまざまな不調を招く原因にもなりかねません。先生のアドバイスを意識して、今一度、生活習慣を見直してみましょう。
食事で栄養をとる。
生理になると、幸福感を与える「セロトニン」や気持ちを安定させる「GABA」といった神経伝達物質が分泌不足となり、イライラを引き起こすことがあります。栄養が足りないと、その分泌量に悪影響がおよぶため、食事でしっかり栄養をとりましょう。
無理なダイエットや食事制限などにより、摂取カロリーが理想とされる量に至らず、栄養バランスもうまくとれていないと指摘される女性もいます。
まずは、体のエネルギー源となる「たんぱく質・糖質・脂質」をバランスよくとることが大事です。
「何を食べればいいのかわからない」「自分でつくるのはちょっと……」という人は、外食の際には、一汁三菜(ごはん、みそ汁、主菜、副菜2品)の和食を選ぶよう意識するなど、生活に取り入れやすい方法からチャレンジしてみるとよいでしょう。
適度に体を動かす。
生理前や生理中は、体の重だるさや痛みもあって、運動する気分になれないかもしれません。ただ、適度に体を動かすと気分もリフレッシュするため、ストレスの発散やイライラの軽減になります。激しい運動をする必要はなく、ウォーキングやストレッチなど、できる範囲で動いてみましょう。
休息とリラックスを心がける。
「ぐっすり寝る」「お気に入りのカフェでぼんやり過ごす」「ゆっくり湯船に浸かる」「アロマの香りでリラックスする」など、自分の好きな方法で、心と体をリラックス状態にしましょう。また、読書や勉強に没頭し、生理のイライラ期を、自分を高める時間にあててみてはどうでしょうか。
イライラも「婦人科に相談」を。
生理のイライラをはじめとした肉体的・精神的な症状は、医師に相談することでラクになることがあります。「生理のイライラくらいで、婦人科を受診していいの……?」と思う人もいるかもしれませんが、婦人科は女性のメンタルを含めたあらゆる不調に寄り添ってくれる場所です。
「女性は初潮を迎えたら、かかりつけの婦人科をもって、生理のイライラをはじめとするさまざまな悩みを気軽に相談してほしいですね」(八田先生)
八田先生いわく、婦人科での主な治療・対処法としては、以下が考えられるそうです。
症状に合った漢方を処方。
希望や診断に応じて、感情の高ぶりを抑える作用のある漢方が処方されます。
必要であれば抗うつ薬を処方。
生理になると、幸福感を与える「セロトニン」や気持ちを安定させる「GABA」などの神経伝達物質の分泌量が減り、イライラの原因となることがあります。そのため、これらの分泌を促す抗うつ薬が処方されることがあります。
便秘症であれば便秘薬を処方。
便秘などで腸内環境が悪いと、「セロトニン」や「GABA」などの神経伝達物質が腸内で正常に生成されず、その分泌に影響をおよぼすため、イライラが生じやすくなる人もいます。この場合、便秘が解消されると精神的な症状も改善するケースが多いため、自然なお通じを促すために便秘薬が処方されます。
すぐに妊娠したいのでなければ低用量ピルを処方。
すぐに妊娠したいと考えていない方には、症状を緩和する目的で、女性ホルモンが配合された、経口避妊薬である「低用量ピル」が処方されることもあります。
排卵を一時的に止めることで、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が一定で推移するようになり、気分の浮き沈みがなくなることが期待されます。また、漢方薬や抗うつ薬、便秘薬などと組みあわせて処方されることもあります。
写真/Getty Images イラスト/こつじゆい
八田 真理子
聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田理事長・院長。日本産科婦人科学会専門医・母体保護法指定医・日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザー。複数の産婦人科勤務を経て、千葉県松戸市で実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、1998年「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開院。地域密着型クリニックとして思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングに従事。
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