

生理前の運動どうする?周期で変わる効果的なダイエット法を医師が解説。
「体重を減らしたいけど、生理前や生理中のダイエットに効果はある?」「生理前にジョギングや筋トレしても大丈夫?」など、悩みのつきない生理周期とダイエットの関係。生理前から生理中は食欲が増し、体重も増えやすいため、「せっかくダイエットしても続かない」とこの時期の乗り切り方に悩む女性は少なくありません。
しかし実は、生理周期に合わせて賢く運動や食事管理を行うことで、効果的にダイエットを続けることができるんです。元プロボクサーとして減量経験もある産婦人科医の高橋怜奈先生に、体の周期に合わせたダイエットのコツを聞きました。
目次
- 生理前がダイエットに不向きといわれる理由。
- 生理前は、むくみ解消・血行促進を意識。
- ふくらはぎの筋力アップでむくみを解消。
- 生理前の食欲に打ち勝つ方法。
- 生理中は、無理のない範囲で運動OK。
- 生理後は、ダイエットに向いた時期。
- 生理とダイエットの重要な関係。
生理前がダイエットに不向きといわれる理由。
生理前や生理中は体調が万全ではないので、やせるためにきつい運動や食事制限をすべきではないでしょう。しかし、ダイエットをあきらめましょう、ということではありません。ダイエットに不向きと言われる理由を知っておくと、体重のコントロールに役立ちます。

生理前の体重増加のメカニズム。
生理前は食べていなくても太った気がする──そんな経験はありませんか? これには女性ホルモンが関係しています。
排卵後から生理前にかけて、女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が活発になります。このホルモンの働きにより、女性の体は妊娠・出産に向けた準備をはじめ、体内に水分をため込もうとします。その結果、むくみが出やすくなり、1キロ~3キロほど体重が増えることも。また、プロゲステロンには腸の動きを鈍くする働きもあるため、便秘になりやすいのもこの時期の特徴です。

生理前は、むくみ解消・血行促進を意識。

生理前(黄体期)は、むくみや便秘、だるさなど不調を感じることが多く、ダイエットに不向きとよくいわれます。体が妊娠のための環境づくりを行っているので、プロゲステロンの作用で血糖コントロールがしにくく、血糖値が上がりやすい時期でもあります。
ここで頭に入れておきたいのは、生理前の体重増加は主に「むくみ」によるもので、「脂肪太り」ではないということ。血行を促進してむくみを解消する運動や、便秘を和らげる食事のしかたを知っておけば、この時期の体重増加もコントロールすることができるようになります。
高橋先生いわく「特に体調が悪くない限り、自分が無理なくできる範囲で運動や食事の工夫を続けることが大切」とのこと。そうしないと、せっかく続けてきたダイエットの流れが途切れてしまうからです。
ここからは食事と運動の2項目に分けて、生理周期ごとのポイントを見ていきましょう。
食事:塩分と血糖値のコントロールを意識しよう。
生理前、むくみや体重増加を感じたら、まず実践したいのは塩分を控えること。カリウム豊富な野菜や果物を食事に取り入れましょう。カリウムは摂りすぎた塩分(塩化ナトリウム)の排出を助ける働きがあります。
また、塩辛い漬物はピクルスに変えるなど、お酢やスパイス、だしなどを上手に使って、塩味以外のおいしさで食事を楽しむ工夫を心がけましょう。
この時期は食べること自体を我慢するのではなく、血糖値を急上昇させないものに置き換えて楽しんでください。たとえばGI値(食後の血糖値の上昇スピードを示す指標)の低い食材は血糖値が上がりにくいため、脂肪がつくのを防ぐことができます。同じ炭水化物でも白米より玄米、じゃがいもよりさつまいもを選ぶ、などの置き換えが有効です。
食事をすると血糖値は上がりますが、そのあとに運動すれば下がります。発想を転換して「食べたら動く」を心がけていきましょう。
参考:厚生労働省「『eヘルスネット』ナトリウム」
参考:厚生労働省「『eヘルスネット』カリウム」
運動:全身の血行をよくすることを意識して。
むくみが気になる生理前に適した運動は、ウォーキング、ジョギング、スイミングなどの有酸素運動です。血行をよくすることで体があたたまり、水分が排出されやすくなるため、むくみの改善につながります。
体調がよいときには、15分~30分ほどウォーキングに出かけましょう。ウォーキングは有酸素運動ですが、体を動かして筋肉を使っているので、実は筋トレ効果もあります。運動量を上げるためのポイントは、なるべく大股で歩き、腕をしっかり振ること。歩幅が狭く、腕を振らない歩き方では、エネルギーをあまり消費できません。
生理前に便秘になりやすい人は、腸の動きをよくする「腰回し」がおすすめ。PMS(月経前症候群)がつらく体を動かしたくないときは、就寝前にできる範囲で開脚したり、寝ながら全身を伸ばしたり、手首・足首を回したりしてみましょう。これだけでも血行促進が期待できます。
腰回し 腰骨のあたりをもみほぐすような気持ちで手を当てて、ゆっくり5回ほど腰を回す。反対方向にも5回ほど回す。日中、椅子から立ち上がったときなどに行うとグッド。 |
ふくらはぎの筋力アップでむくみを解消。
生理前にむくみやすいという人は、脚の筋肉量が少ない可能性も考えられます。「ふくらはぎは第二の心臓」と呼ばれ、ヒラメ筋は下半身に流れた血液やリンパ液を上半身に戻すポンプ機能を担っています。ところが、運動不足でヒラメ筋が衰えていると、ポンプ機能が果たせず、脚がむくんだままになってしまうのです。
生理前になると、ふらついたり貧血のような症状が起きるので血液検査をしたところ問題はなかった、という人がいますが、この症状も下半身の筋肉不足で血圧がうまく保てていないことが原因だったりします。
ヒラメ筋を鍛えるのは実は簡単。毎日の習慣にちょっとした筋トレをプラスするだけ。生理前、生理中にかかわらず、毎日の小さな積み重ねがむくみ防止につながります。
- 電車でつり革につかまって、かかとを上げ下げする(キッチンでもOK!)。
- 洗面所に青竹踏みを置いておく。歯みがきやお風呂上がりのドライヤー時に足踏みをする。
- 洗濯物を干すついでにスクワット!「床に置かれたカゴから洗濯物を取って、ハンガーに吊るす」上下の動きをしてみましょう。
生理前の食欲に打ち勝つ方法。
生理前は食欲のコントロールが特に難しい時期です。その原因は、女性ホルモンのプロゲステロンにあります。
プロゲステロンには、血糖値をコントロールするインスリンの働きを弱める性質があります。そのため生理前は、食事をすると血糖値が急激に上がりやすく、その後急激に下がることで空腹を感じたり、無性に甘いものが食べたくなったりします。この「やたらと食べたい」という症状は、まさにプロゲステロンの影響なのです。
しかし「生理前だから仕方ない」と食べすぎてしまうのは禁物。実はインスリンには、血中の糖分を脂肪に変えて体に蓄える働きがあるため、血糖値が急激に上がると、それだけ脂肪がつきやすくなってしまいます。
GI値を意識した食べ方をしよう。
では、どうすればよいのでしょうか? ポイントは、血糖値の急激な上下を防ぐこと。そのために効果的なのが、低GI食品を選んで食べることです。GI値の低い食品は糖質として吸収されにくいため、食後の高血糖を防ぎ、結果として太りにくくなります。
具体的には、以下のような工夫を心がけましょう。
・主食の白米を玄米やもち麦、パスタ、オートミールに換える。
・野菜炒めには、こんにゃくや海藻を加えてかさ増しする。
・おやつはスイーツより、GI値が低く食物繊維が多いさつまいもに。さつまいもを薄くスライスして電子レンジでチンするだけの「さつまいもチップス」もおすすめ。
食べ方にもちょっとしたコツがあります。高橋先生が推奨するのは「ちょこちょこ食べ」。食事を抜いたり、食べる量を減らしたりして空腹になると血糖値が下がり、そのあと何を食べても血糖値が急上昇してしまいます。
これを防ぐために、1日分の栄養を5回~6回に分けて摂取するのです。食事の総量は1日の適量に抑えつつ、あまりおなかがすかないうちに少量ずつ摂ることで、血糖値の乱高下を防いで太りにくい体を保つことができます。
食欲に負けてしまったときの調整法。
高橋先生によると、たとえ食べすぎてしまっても自己否定は禁物とのこと。
「食事はエネルギーになるもの。食べすぎたことをネガティブに捉えると、余計に自分を責めてしまい、結果的にダイエットが続かなくなってしまいます。
人間は1日食べすぎたからといって、すぐに太るわけではありません。むしろ『これを動くエネルギーに変えよう』という発想で、ポジティブに切り替えていくことが大切です」(高橋先生)
1つ注意したいのは、塩分の摂りすぎです。生理前に塩辛いものを食べすぎると余計にむくみやすくなり、体重も増えてしまいます。そろそろ生理かなと思ったら塩分を控えたり、塩分の排出を促す作用があるカリウムが豊富な緑黄色野菜、アボカド、バナナなどを食べたりするとよいでしょう。
参考:厚生労働省「『eヘルスネット』ナトリウム」
参考:厚生労働省「『eヘルスネット』カリウム」
生理中は、無理のない範囲で運動OK。

この時期は生理前に引き続きインスリンの働きが鈍いため、いつもより血糖値が不安定。エネルギーが足りないとめまいなども起きやすいので、体重増加に気をとられすぎず、きちんと食べることも必要です。
受精卵の着床がないと子宮内膜がはがれ落ち、血液とともに排出されて生理(月経期)がはじまります。女性ホルモンのプロゲステロン、エストロゲンともに血中濃度が下がり、むくみや便秘は落ち着き、体温は低温期に入ります。
子宮を収縮させ、はがれ落ちた子宮内膜を「経血」として体外に押し出すときに「プロスタグランジン」という痛み物質が分泌されるため、おなかの痛み・腰痛・頭痛・吐き気などの症状が起こります。生理前に下痢気味になる方がいますが、これもプロスタグランジンによるものです。
生理前にむくみや便秘で増えた体重が元に戻ってきますが、生理中の体調は人それぞれなので、無理ない範囲で体を動かしましょう。
食事:体重の増加に気をとられすぎるのは禁物。
生理中、体調が悪く、十分な食事がとれていなかったために、めまいやふらつきが起きて「起立性低血圧」と診断されることがあります。「太ったから」と生理中に過度な食事制限をする人にも起こりやすいので、生理中は体重の変化にとらわれすぎるのは禁物です。
とはいえ、生理前と同じようにインスリンの働きが鈍り、血糖値のコントロールが難しい時期です。血糖値が上がりにくい、GI値の低い食材に置き換えるとともに、食事の最初に野菜を食べる「ベジタブルファースト」もぜひ実践してください。野菜に含まれる食物繊維は、糖の消化や吸収のスピードを遅らせ、血糖値の急激な上昇を抑える働きがあるため、体重増加を抑える効果もあります。
PMS(月経前症候群)の原因の1つは、カルシウムやマグネシウムの不足ではないかといわれています。野菜類・肉類・魚類などに加え、ミネラルが豊富なキノコ類などもバランスよく食べてください。
運動:筋トレよりも、有酸素運動やストレッチを中心に。
痛み物質のプロスタグランジンは、血行が悪くなると代謝が滞って骨盤内に残りやすくなります。そこで取り入れたいのが、軽いウォーキングやジョギングなど、しっかり酸素を取り入れて血行をよくする有酸素運動です。ゆったりとした動きのヨガやピラティスも効果的ですが、体を大きくひねるような激しいポーズは避けたほうがよいでしょう。
筋トレを習慣にしている人は、生理中の1日~3日目ぐらいまではきつく感じるかもしれません。筋トレは力を入れるときに無酸素運動になり、痛み物質が残りやすくなるためです。生理痛が軽い人は問題ありませんが、痛みが強い場合は筋トレをお休みして、軽く体を動かす程度にしておきましょう。
ストレッチでは子宮まわりのケアをメインに考えがちですが、上半身を動かす首回しや肩回しも全身の血行をよくしてくれます。下半身のむくみが気になるときは、椅子に座ったままでできる下記のようなエクササイズもおすすめです。
1:かかとの上げ下げ
椅子に浅く腰掛け、ゆっくりと20回ほどかかとを上げ下げする。
2:お尻と股関節ほぐしのストレッチ

右の太ももの上に左足をのせる。ゆっくりと上体を前に傾け、10秒ほどキープ。反対側も同様に行う。
生理後は、ダイエットに向いた時期。

生理後(卵胞期~排卵期)は、エストロゲンの分泌が高まります。生理前にあれてしまった肌の調子も良くなることが多く、精神的にも安定してきて食欲もコントロールしやすいはず。食事にも運動にも集中して取り組める時期といえます。
食事:ダイエット適期でも、ストイックな食事制限はNG。
体調のよい生理後は、糖質制限などストイックな食事制限に取り組む人もいるかもしれません。しかし、女性にとっては正常な月経を促すためにも皮下脂肪もある程度は必要。「糖質はエネルギーになるものなので、まったく摂らないのではなく、食べる順番や食べる量に気をつけながら上手につき合ってほしい」と高橋先生は話します。
たとえば、大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンと似た働きをするといわれています。豆乳は低カロリーで、手軽にタンパク質を摂るのに適した食材ですが、飲めば飲むほど女性ホルモンが増えるわけではありません。毎月きちんと生理があるのは、女性ホルモンもしっかりと分泌されている証拠ですので、必要以上に豆乳を飲む必要はありません。
運動:心身ともに好調な時期。どんな運動でもOK!
生理後は心身ともに好調で、ダイエットのパフォーマンスが上がりやすい時期です。目指すボディタイプに合わせて、以下のようなエクササイズを取り入れてみましょう。
1:スレンダーボディをつくる有酸素運動
・ランニング
息が上がる程度の強度がおすすめ。腕を大きく振ることで全身運動になります。この時期は普段よりも少し負荷を上げても大丈夫です。
・基本のスクワット

10回を1セットとして、3セットほど行いましょう。正しいフォームで行うことが重要です。膝が足先より前に出ないよう注意して。
2:メリハリボディを目指す筋力トレーニング
・ブルガリアンスクワット

片脚を椅子などにのせ、もう片方の脚で行うスクワット。お尻の筋肉に効果的です。各脚5回ずつからはじめましょう。
・ストレッチに使うポールで腹筋

ストレッチに使うポールに背中をのせ、バランスをとりながら腹筋運動を。体幹の強化に効果的です。かなりきついので、慣れないうちは1回~3回からはじめてください。
3:日常生活で意識したい動作
・階段の上り方
後ろに体重をかけ、やや背中を反らせ気味に。太もも裏とお尻の筋肉を使うことで、ヒップアップ効果が期待できます。
・エレベーターの利用は控えめに
近い階への移動なら階段を使うといい運動になります。かかとの上げ下げを意識的に行いましょう。
生理とダイエットの重要な関係。
むくみやすく食欲も増進しがちな生理前は、ダイエットを続けることが難しく感じられるかもしれません。でも、この時期の体重増加の多くは一時的なもの。「体重計の数字に一喜一憂せず、無理なく続けていくことが大切」と高橋先生は話します。
生理周期に合わせたダイエットのコツは、その時期の体の変化を理解すること。生理前は血行促進でむくみを解消し、食事の工夫で食欲をコントロール。生理中は体調に合わせて軽い運動を心がけ、生理後は心身ともに調子のよい時期なので、目標に合わせて少しずつ運動強度を上げていくのもいいですね。
無理をして急激にやせても、体調をくずしたりリバウンドしてしまったりしては意味がありません。生理後の時期に1キロ~2キロやせて、生理前や生理中のやせにくい時期は、体重が増えないようにキープすることを目指してみてください。
体がつらいときは頑張らずに、いつものダイエットよりもゆるめてOK! 自分の体と向き合いながら、健康的で持続可能なダイエットを実現していきましょう。

写真/Getty Images、PIXTA イラスト/オオカミタホ
【監修者】高橋 怜奈
山王ウィメンズ&キッズクリニック大森 院長。医学博士。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。
2016年6月にボクシングのプロテストに合格し2020年10月まで世界初の女性医師プロボクサーとして活動。ダイエットや無理のない減量、食事療法、運動療法のアドバイスにも定評がある。産婦人科医YouTuberとして医療情報の発信をYouTubeやTikTokで行うほか、テレビや雑誌などで女性のデリケートな悩みに答える。
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