生理前の過ごし方が大切!生理周期に合わせたダイエットのコツを産婦人科医が解説。 生理前の過ごし方が大切!生理周期に合わせたダイエットのコツを産婦人科医が解説。

太りやすい生理前を乗り切るには?生理でもダイエットを続けるコツ

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「体重を減らしたいけど、生理前や生理中にダイエットしても効果はある?」「ジョギングや筋トレしても大丈夫?」悩みのつきない生理周期とダイエットの関係。生理前や生理中でも健康的にやせるためにできることを、元プロボクサーとして減量経験もある、産婦人科医の高橋怜奈先生に聞いてみました。

目次

生理前がダイエットに不向きな理由。

生理前や生理中は体調が万全ではないので、やせるためにきつい運動や食事制限をすべきではないでしょう。しかし、ダイエットをあきらめましょう、ということではありません。ダイエットに不向きと言われる理由を知っておくと、体重のコントロールに役立ちます。

生理前がダイエットに不向きな理由。

生理前は食べてなくても太りやすい。

排卵後から生理前にかけて、女性ホルモンの周期的な変動の中でプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が盛んになります。このホルモンの働きにより女性の体は妊娠・出産に向けた準備をはじめるのですが、この過程で体内に水分をため込もうとします。その結果、むくみが出やすく、1~3キロほど体重が増えるケースもあります。

また、プロゲステロンには腸の動きを鈍くする働きもあり、便秘になりやすく、これも体重増加に関係しています。

このように、生理前の体重増加は「脂肪太り」なのではなく、主に「むくみ」ということを知っておいてください。つまり、むくみや便秘を和らげる食事のとり方を知っておけば、この時期の体重増加もコントロールすることができるようになります。

女性ホルモンのバイオリズム

生理前は女性ホルモンの影響で、食欲が増しやすい。

生理前は食欲のコントロールが難しいことがあります。プロゲステロンが血糖をコントロールするインスリンの働きを抑えてしまうため、血糖値が急激に下降・上昇しやすくなるのです。

「食欲が抑えられない」という現象は低血糖によっても起こる症状ですが、生理がはじまってプロゲステロンの分泌が収まると落ち着きます。

なお、インスリンには血中の糖分を脂肪に換えて体にため込む働きがあります。血糖値は緩やかに上がるぶんには問題ありませんが、急激に上昇するとインスリンが過剰に分泌され、体に脂肪をため込みやすくなってしまいます。ですから、血糖値はできるだけ安定させておくことが重要です。

「この時期の食欲は仕方ない」とあきらめず、「食べても太りにくい食材や食べ方をマスターする」ことにチャレンジしてみてはいかがでしょう。

たとえば、GI値(食後の血糖値の上昇スピードを示す指標)の低いものを食べることで、糖質として吸収されにくく、太りすぎを防いでくれます。自分に合った食事のとり方やダイエット方法を知っておけば、これから先のダイエットにも応用できます。

生理前・生理中は体調を崩しやすく、激しい運動には不向き。

生理中は、子宮を収縮させ、はがれ落ちた子宮内膜を血液とともに経血として体の外に押し出す働きをする「プロスタグランジン」という痛み物質が分泌されます。この物質の分泌が多いと子宮の収縮が激しくなり、下腹部痛や腰痛、頭痛なども強まる傾向があります。

生理前からなんとなくおなかが痛いという人は、生理前からプロスタグランジンが分泌されているのかもしれません。

そのため、生理前や生理中は、体調は万全とはいえません。つらいときに激しいスクワットなどの筋トレを続けるよりも、体のコリをほぐすストレッチやウォーキングなどの軽い有酸素運動が最適です。

また、食事量を減らして必要な栄養が不足すると血行も悪くなり、余計に冷えやだるさを感じてしまいます。食事はたんぱく質や緑黄色野菜を中心に、量より質を整えることを意識しましょう。

生理前は、むくみ解消・血行促進を意識。

生理前は、むくみ解消・血行促進を意識。

生理前(黄体期)は、むくみや便秘、だるさなど不調を感じることが多く、ダイエットに不向きな時期といえます。むくみ解消や血行を促すことを目的に適度に行いましょう。

生理前は、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が高まり、エストロゲン(卵胞ホルモン)も血中濃度がやや高い状態です。基礎体温が高く、子宮内膜は分厚くなり、体は妊娠のための環境づくりを行っている時期で、体内に水分をため込み、むくみやすい、便秘をしやすいなど「体重が減りにくい」状態といえます。

プロゲステロンの作用で血糖コントロールがしにくく、糖質を取り込みやすい時期なので注意が必要です。冷え・むくみ・イライラ・気分の落ち込み、ニキビなどの肌トラブルも起こりやすいので、無理なダイエットはせずに、心地よく過ごす工夫をしましょう。

食事:塩分と血糖値のコントロールを意識しよう。

生理前、むくみや体重増加を感じたら、まず実践したいのは塩分を控えること。カリウム豊富な野菜や果物を食事に取り入れましょう。カリウムは摂りすぎた塩分(塩化ナトリウム)の排出を助ける働きがあります。

また、塩辛い漬物はピクルスに変えるなど、お酢やスパイス、だしなどを上手に使って、塩味以外のおいしさで食事を楽しむ工夫を心がけましょう。

この時期は食べること自体を我慢するのではなく、血糖値を急上昇させないものに置き換えて楽しんでください。たとえばGI値の低い食材は血糖値が上がりにくく、脂肪がつくのを防ぎます。

  • 主食の白米を玄米やもち麦、パスタに替える
  • おやつはスイーツより、さつまいもに
  • 野菜炒めには、こんにゃくや海藻を加えてかさましする

おすすめは、GI値の低いさつまいもを薄くスライスして電子レンジでチンするだけの「さつまいもチップス」。

「また食べすぎちゃった……」と落ち込むよりも、「食べたぶん、歩こう」と切り替えて実行してみてください。食事をすると血糖値は上がりますが、そのあとに運動すれば下がります。発想を転換して「食べたら動く」を心がけていきましょう。

参考:厚生労働省「eヘルスネット」ナトリウム   
参考:厚生労働省「eヘルスネット」カリウム

運動:全身の血行をよくすることを意識して。

血行をよくすることで体があたたまり、水分が排出されやすく、むくみの改善へとつながります。

体を動かしたくないときは、ベッドで横になったまま、手足を伸ばしたり、首をまわしたりするだけでも血行がよくなります。

生理のたびに頭痛がする人は、月経関連片頭痛という病気の可能性もありますが、首や肩まわりのコリが原因の場合も。生理前だけではなく、日ごろから肩こりをほぐすストレッチを習慣にしましょう。特に肩甲骨を動かすことを意識してください。肩甲骨まわりに温めた保温材を乗せるのもおすすめです。

体調がよいときには、15~30分ほどウォーキングに出かけましょう。外を歩くことは、家の中で体を動かすのとは違った気分転換になると思います。ウォーキングは有酸素運動ですが、体を動かして筋肉を使っているので、実は筋トレ効果もあります。運動量を上げるためのポイントは、なるべく大股で歩き、腕をしっかり振ること。歩幅が狭く、腕を振らない歩き方では、エネルギーをあまり消費できません。

ふくらはぎの筋力アップでむくみを解消。

生理前にむくみやすいという人は、脚の筋肉量が少ない可能性も考えられます。「ふくらはぎは第二の心臓」と呼ばれ、ヒラメ筋は下半身に流れた血液やリンパ液を上半身に戻すポンプ機能を担っています。ところが、運動不足でヒラメ筋が衰えていると、ポンプ機能が果たせず、脚がむくんだままになってしまうのです。

生理前になると、ふらついたり貧血のような症状が起きるので血液検査をしたところ問題はなかった、という人がいますが、この症状も下半身の筋肉不足で血圧がうまく保てていないことが原因だったりします。

ヒラメ筋を鍛えるのは実は簡単。毎日の習慣にちょっとした筋トレをプラスするだけ。生理前、生理中にかかわらず、毎日の小さな積み重ねがむくみ防止につながります。

  • 電車でつり革につかまって、かかとを上げ下げする(キッチンでもOK!)。
  • 洗面所に青竹踏みを置いておく。歯みがきやお風呂上がりのドライヤー時に足踏みをする。
  • 洗濯物を干すついでにスクワット!「床に置かれたカゴから洗濯物を取って、ハンガーに吊るす」上下の動きをしてみましょう。

生理中は、無理のない範囲で運動OK。

生理中は、無理のない範囲で運動OK。

生理前に引き続き、インスリンの働きが鈍くなり、いつもより血糖値が不安定な時期。エネルギーが足りないとめまいなども起きやすいので、体重増加に気を取られすぎず、きちんと食べることも必要です。

生理中(月経期)は、受精卵の着床がないと子宮内膜がはがれ落ち、血液とともに排出されて生理がはじまります。プロゲステロン、エストロゲンともに血中濃度が下がり、むくみや便秘は落ち着き、体温は低温期に入ります。

子宮を収縮させ、はがれ落ちた子宮内膜を「経血」として体外に押し出すときに「プロスタグランジン」という痛み物質が分泌されるため、おなかの痛み・腰痛・頭痛・吐き気などの症状が起こります。生理前に下痢気味になる方がいますが、これもプロスタグランジンによるものです。

生理前にむくみや便秘で増えた体重が元に戻ってきますが、生理中の体調は人それぞれなので、無理ない範囲で体を動かしましょう。

食事:体重の増加に気を取られすぎるのは禁物。

生理中、体調が悪く、十分な食事がとれていなかったために、めまいやふらつきが起きて「起立性低血圧」と診断されることがあります。「太ったから」と生理中に過度な食事制限をする人にも起こりやすいので、生理中は体重の変化にとらわれすぎるのは禁物です。

とはいえ、生理前と同じようにインスリンの働きが鈍り、血糖値のコントロールが難しい時期です。

血糖値が上がりにくい、GI値の低い食材に置き換えるとともに、食事の最初に野菜を食べる「ベジタブルファースト」もぜひ実践してください。野菜に含まれる食物繊維は、糖の消化や吸収のスピードを遅らせ、血糖値の急激な上昇を抑える働きがあるため、体重増加を抑える効果もあります。

また、カルシウムやマグネシウムの不足が、月経前症候群(PMS)の原因の1つではないかといわれています。野菜類・肉・魚類などに加え、ミネラルが豊富なキノコ類などもバランスよく食べましょう。

運動:筋トレよりも、有酸素運動を中心に。

生理前と同じくウォーキングやジョギング、スイミングなどの有酸素運動が適しています。体内に酸素を取り入れることで全身の血流がよくなるからです。ヨガやピラティスもよいでしょう。

生理中は子宮まわりのケアをメインに考えがちですが、首や肩など上半身を動かす運動も取り入れ、全身の血のめぐりをよくしましょう。

筋トレを習慣にしている人は、生理中の1~3日ぐらいまではきつく感じるかもしれません。筋トレは、力を入れるときに無酸素運動になるためです。生理中は筋トレをお休みして、有酸素運動やストレッチを行いましょう。

生理後は、ダイエットに向いた時期。

生理後は、ダイエットに向いた時期。

生理後(卵胞期~排卵期)は、エストロゲンの分泌が高まります。生理前にあれてしまった肌の調子も良くなることが多く、精神的にも安定してきて食欲もコントロールしやすい時期です。食事にも運動にも集中して取り組める時期といえます。

食事:ダイエット適期でも、ストイックな食事制限はNG。

体調のよい生理後は、糖質制限などストイックな食事制限に取り組む人もいるかもしれません。しかし、女性にとっては皮下脂肪もある程度は必要です。糖質はエネルギーなので、まったく摂らないのではなく、食べる順番や食べる量に気をつけながら上手につき合ってほしいと思います。

たとえば大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンと似た働きをするといわれており、美容や健康のために豆乳を飲んでいる人もいると思います。豆乳は低カロリーで、手軽にたんぱく質を摂るのに適した食材です。

ですが、飲めば飲むほど女性ホルモンが増えるわけではありません。毎月きちんと生理がある女性は、女性ホルモンもしっかりと分泌されている証拠ですので、豆乳を必要以上に飲む必要はありません。

運動:心身ともに好調な時期。どんな運動でもOK!

この時期は心も体も快調でアクティブに動けるので、ダイエットのための運動を積極的に行うと良いでしょう。スレンダーになりたいなら有酸素運動、引き締まったメリハリのあるボディを目指すなら筋トレにチャレンジしましょう。それぞれの目的に合わせて、楽しく続けられそうなメニューを選んで取り入れてみてください。

また、この時期は日常生活の中でも、意識的に筋肉を使う動作を取り入れてみましょう。たとえば、エレベーターを使わずに階段を使うだけでも効果が期待できます。後ろに体重をかけてやや背中をそらし気味にしながら階段を上ると、太ももの後ろの筋肉とお尻を使うため、ヒップアップに効果的です。

生理とダイエットの重要な関係。

どんなダイエットでもそうですが、運動量に見合った食事を摂ることが大切です。たとえば、スポーツをする女性などがなる無月経の原因は、運動量に見合った食事が摂取できていない「利用可能エネルギー不足」です。エネルギー不足の状態が続くと、脳からのホルモン分泌が低下し無月経となります。

無月経によりエストロゲンの分泌が低下した状態が続くと、肌があれるだけなく、長期的に続けば骨がもろくなってしまいます。逆に急激に太った場合も、ホルモン分泌が異常となり生理が止まったり不順になったりすることがあります。

適切な体重を維持することは、生理周期を規則的に保つためにも重要です。減量の目安としては、1か月で1~2キロ程度がよいでしょう。

無理をして急激にやせても、体調をくずしたりリバウンドしてしまったりしては意味がありません。生理後の時期に1~2キロやせて、生理前や生理中のやせにくい時期は、体重が増えないようにキープすることが安全でしょう。

なお、生理不順や不正出血の背景には、婦人科の病気が隠れていることもあります。「ストレスがあるから」「忙しかったから」と自分で判断せず、生理の状態がいつもと違うと感じたら、すぐに受診してきちんと検査をしてもらいましょう。

写真/Getty Images、PIXTA イラスト/オオカミタホ


高橋 怜奈   
医学博士。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。  
2016年6月にボクシングのプロテストに合格し2020年10月まで世界初の女性医師プロボクサーとして活動。ダイエットや無理のない減量、食事療法、運動療法のアドバイスにも定評がある。産婦人科医YouTuberとして医療情報の発信をYouTubeやTikTokで行うほか、テレビや雑誌などで女性のデリケートな悩みに答える。


※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。   
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