生理でだるい、何もしたくない。すぐできる対処法や、倦怠感の原因は?
生理前や生理中は、「だるくて何もしたくない」「しんどい」「人に会うのもおっくう」と感じることがあるのではないでしょうか。自分の意思ではどうにもならないこの不調。適切な対処で軽減したいけれど、どうしたらよいの? そんな疑問を、日本産科婦人科学会専門医や日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザーとしてさまざまな相談を受け、また、『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』『自分でできる!女性ホルモン高めかた講座』などの著書もある、産婦人科医の八田真理子先生にお聞きしました。
目次
生理前後にだるさを感じる理由。
はっきりとしたメカニズムは明らかになっていませんが、生理前や生理中は、女性ホルモンの分泌量が上下に大きく変動します。
そのため、「だるい」「何もしたくない」というような倦怠感や、「頭痛がする」「いつもより眠い」などの体調不良をもたらすのではないかと考えられています。人によっては、痛みによる不調や経血が出ることで生じる脱水症状も、一因になっているかもしれません。
八田先生は、「生理時は多くのエネルギーを消費します。日ごろから『食事で十分な栄養がとれていない』『毎日忙しくて疲れている』『ストレスを感じている』といったことが多いと、体にたくわえられているエネルギーが不足しがちので、だるさも生じやすいでしょう。さらに、生理に対してネガティブな感情を抱いているケースもみられます。嫌悪感から気分が落ち込み、だるさを感じやすくなる傾向にあるようです」とも話します。
生理時に健やかでいるために。
どうしたら生理前や生理中に、倦怠感を感じずに健やかでいられるのでしょうか。「規則正しい生活習慣を続けることが大切」と言う八田先生に、日常生活で意識したいことを伺いました。
意識して必要な栄養素をとる。
食事でしっかり栄養がとれていないと、生理のときに必要とされるエネルギーが不足してしまい、「だるい」「何もしたくない」という倦怠感が出やすくなります。そうならないために、日ごろから栄養バランスのとれた食事をして、体にしっかりエネルギーをたくわえておきましょう。
具体的には、エネルギー源となるたんぱく質、脂質、糖質をバランスよくとること。「何を食べればいいのかわからない」「自分でつくるのはちょっと……」という人は、外食の際に、一汁三菜(ごはん、みそ汁、主菜、副菜2品)の和食を選ぶよう意識するなど、生活に取り入れやすい方法からチャレンジしてみましょう。
また、ダイエットで糖質制限をする人もいますが、脳細胞のエネルギーとなる糖質が不足すると、頭が働かなくなり、ぼんやりしてしまいます。倦怠感に拍車をかけてしまうこともあるので、お米やパンなどで糖質をしっかりとることをおすすめします。
これにプラスして、女性が不足しがちな鉄分や亜鉛を意識的にとるようにしながら、特定の食材に偏らないよう意識しましょう。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)スライド集」
鉄分には動物性のヘム鉄と植物性の非ヘム鉄があります。吸収率が高いのは、動物性のヘム鉄で、レバー・かき・赤身の肉・まぐろ・あさり・しじみなどに多く含まれます。レバニラ炒めや赤身肉を使ったビーフシチュー、しじみのみそ汁、かきフライ、ヒレカツなど食生活に取り入れやすいものから試してみましょう。
亜鉛はかき・赤身の肉・鶏肉・豆類などに多く含まれます。かきのクリームシチューやチキンステーキ、間食にミックスナッツなどを食生活に取り入れてみましょう。
適度に運動をする。
「日ごろから適度に運動をして、体力をつけましょう。倦怠感を感じにくくなり、また、倦怠感から回復しやすくなるでしょう。『スポーツジムに通う』『自宅からオンラインヨガを受講する』など自分の好きな運動を習慣化するといったことをおすすめします」(八田先生)
運動が苦手な人は、「最寄り駅の一駅手前で下車し、一駅分歩く」「なるべく階段を使う」といった通勤の工夫、ストレッチやラジオ体操といったものからはじめてみてはいかがでしょうか。
生理(月経)周期の過ごし方は、ダイエットとも関係しています。
良質な睡眠をとる。
睡眠は女性ホルモンの分泌とも関わっていて、よく眠れていないと、生理にまつわるトラブルが発生しやすくなるといわれています。
寝る前の入浴は、シャワーで済ませず湯船に浸かるとよいでしょう。体が温まって血行がよくなり、副交感神経が優位になってリラックスできるため、眠りにもつきやすくなります。
スマートフォンやパソコンのブルーライトはメラトニンの分泌を妨げるため、寝る前の使用は控えましょう。
朝起きたら、窓際で太陽の光を浴び、体内時計をリセットしましょう。体内時計は朝起きて朝日を浴びることでリセットされ、そこからおよそ14時間後に眠気を促すメラトニンというホルモンが分泌されるしくみになっています。このタイミングを逃さずに就寝するとよいでしょう。
朝起きてもカーテンを開けて日の光を入れなければ、体内時計はリセットされず、朝と夜のメリハリが失われた生活になってしまいます。
生理時のだるさを解消する方法。
生理でだるいし、何もしたくない。そんなときは、「自分を甘やかしたり癒やしたり、やさしくいたわる時間にしてみてください」と八田先生は言います。先生がおすすめするリフレッシュ法をご紹介します。
ゆっくりお風呂に浸かる。
何もしたくないけれど、ベッドでダラダラしたい気分でもない……。そんなときは、ゆっくりお風呂に浸かってみましょう。好きな香りの入浴剤を入れたり、キャンドルを灯したりすると、リラックス効果もより期待できます。
アロマ・お香の香りに包まれる。
好きな香りのアロマオイルやお香を焚いてみるのもおすすめです。香りは嗅覚から脳へと働きかけ、気分を変える効果が期待できます。
ストレッチやマッサージ、瞑想をする。
ストレッチやマッサージは、ベッドの上でもできるのでおすすめです。体がほぐれて血流がよくなり、リラックス効果が期待できます。
瞑想にもリラックス効果があり、ゆっくり呼吸をしながら瞑想すると、心が落ち着きます。1人でじっと瞑想するのが苦手な人は、動画サイトに投稿されている瞑想コンテンツや瞑想用アプリを利用してみると、やりやすくなるでしょう。
好きな音楽を聴く・好きな映画を観る・読書をする。
倦怠感を感じるときを、自分の内面を高めるチャンスと捉えます。好きな音楽を聴いたり、映画配信サービスで好きな映画を観たり、なかなか読めずにいた本をゆっくり読むなど、家の中でできることを考えてみましょう。
「今日は何もしない日」と決めてダラダラすることも大切。
状況が許すなら、「今日は何もしない日」と決めて、家でのんびりして、ベッドの上でダラダラ過ごすのもよいのではないでしょうか。罪悪感を抱かず、思いきり自分を甘やかしましょう。
仕事や家事はどうする?
仕事や家事は、生理で倦怠感を強く感じていてもなかなか休むことができませんよね。八田先生は、「まわりの理解を得ることと、助けてくれる人を探すことが大切」と言います。
症状が辛い場合は、仕事を休む。
労働基準法第68条には、生理により就業が著しく困難な場合に請求できる「生理休暇」が定められています。症状が辛く、どうしても仕事ができない場合は、休むなどして安静に努めましょう。
パートナーや友人に協力してもらう。
パートナーに理解してもらい、生理のときはいつも以上に家事をしてもらいましょう。その際に気をつけたいのは、伝え方です。生理の経験がない男性の場合、口頭で「生理のときはだるいから……」と伝えられても、ピンとこないことがあるのです。
そこでおすすめなのが、生理のときの心身症状について書いてある医師監修の記事などを読んでもらうこと。論理的に理解できると、協力度は一気にアップするはずです。
身近な人にヘルプを頼むのも手です。特に目が離せない小さな子どもがいると、一瞬たりとも横になることができません。そんなときに頼りになるのが、似たような状況にある友人など身近な人です。少しの時間でも子どもをみていてもらったり、買い物を代わってもらったりするだけで、ずいぶん助けられるでしょう。
「もちろん“お互いさま”の精神で、友人が大変そうなときは、ヘルプのお返しをしてくださいね」(八田先生)
がまんせず婦人科に相談を。
「だるくて何もしたくない……と感じることが続くなら、気軽に婦人科を受診してみてください。症状や希望に応じた薬が処方され、短期間で症状が改善することもあります。また、薬の処方ではなく、食事を含めた生活習慣のアドバイスを受けて実行することで、症状がよくなることもあります」(八田先生)
婦人科を受診した場合、どのような診察や薬の処方が行われるのか、八田先生にお聞きしました。
まずは問診と診察。
どんなときに、「だるい」「何もしたくない」という倦怠感を感じるのかを聞かれ、その後の対処を医師が判断します。生理痛を伴っている場合は、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気の可能性も考えられるため、超音波検査や血液検査も行われます。
診察では生活習慣のアドバイスが行われることもあります。栄養バランスのとれた食事をして、適度な運動をし、なるべく湯船に浸かる入浴をして、しっかり眠る。こうした規則正しい生活を送れていないことが原因で、生理のときの倦怠感が強く出てしまう人もいるからです。
症状に合わせた薬の処方。
希望や医師の判断に伴って、生理のだるさや何もしたくないという気分の軽減のため、漢方薬が処方されます。
まだ妊娠を考えていない人には、経口避妊薬と同じ成分である低用量ピルが処方されることもあります。低用量ピルによって女性ホルモンの値が一定に保たれるようになると、倦怠感が軽減することがあります。
人によっては自覚がないままにうつ病を発症していて、生理のときに強く倦怠感を感じることがあり、そのような診断の際は、抗うつ薬が処方されます。場合によっては、心療内科などの受診をすすめられることがあります。
写真/Getty Images イラスト/こつじゆい
八田 真理子
聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田理事長・院長。日本産科婦人科学会専門医・母体保護法指定医・日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザー。複数の産婦人科勤務を経て、千葉県松戸市で実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、1998年「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開院。地域密着型クリニックとして思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングに従事。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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