瞑想の効果は?ポイント・取り入れやすいやり方を解説【医師監修】
ストレスの多い現代社会を反映してか、「瞑想」が注目を浴びています。集中力アップや不安の解消などメンタルを整えるだけでなく、慢性的な痛みの軽減など体にもよい影響があるといわれる瞑想。気になっている人も多いのではないでしょうか。瞑想を治療に取り入れている精神科医の保坂隆先生に、瞑想の効果から日常への取り入れ方まで、解説していただきました。
目次
瞑想とはどんなもの?
瞑想を端的に説明すると、「頭を空っぽにして、脳を休ませてあげること」です。脳はとても働き者です。日中はもちろん、寝ている間も脳は情報の整理や記憶の定着を行っています。そんなオーバーワーク気味の脳を休ませる、もっとも手軽な方法が瞑想。脳がリフレッシュされることで、心や体によい効果がもたらされるのです。
瞑想の効果・メリット
瞑想を企業が社員研修に取り入れたり、医療施設が治療法として導入したりする事例も少なくありません。心と体にさまざまなよい影響があるとされているからです。瞑想の効果には、次のようなものがあります。
- 疲労感の改善
- 自律神経のバランスが整う
- 免疫システムの働きの向上
- イライラ解消など感情のコントロール効果
- 生産性、創造力、記憶力の向上
- 認知機能の改善
- 慢性的な痛み、ぜんそく、不眠などの病状改善
- 不安などの精神的状況の改善
瞑想の効果は、古くからさまざまな研究がなされてきました。たとえば、瞑想のやり方の一種「マインドフルネス瞑想」の提唱者、ジョン・カバットジンが行った研究では、「瞑想を8週間続けることで、被験者の不安レベルが明らかに下がった」ことが実証されました。
また、脳科学の進歩とともに、瞑想が脳の形態や機能に与える影響も明らかになっています。たとえば、脳のCT検査をしたところ、仏教瞑想を数十年している達人は、注意と感覚の処理に関連する「島皮質」という脳の部位が厚いことが報告されました。
さらに、脳の活動を調べるMRI装置を用いた研究では、瞑想をしない人よりもする人のほうが、上記の「島皮質」と前頭前野の血流量が多く、より脳機能が活性化していることもわかっています。
瞑想のやり方と大切なこと。
瞑想にはさまざまなやり方がありますが、どのやり方にも共通して大切なポイントが2つあります。それは「呼吸に意識を向けること」と「雑念を手放すこと」。呼吸に意識を集中させていても、自然と雑念は湧いてきます。「集中できない自分はダメだ」と思わないでください。大切なのはそれにとらわれないことです。
たとえば、「今日の夕飯は何にしよう」という考えが頭に浮かんだとき。「昨日はお肉だったから……」「冷蔵庫の中身は……」などと考えを深めてはいけません。「今、雑念が浮かんでいる」と客観的に眺めるだけで、呼吸に意識を戻すのです。そうすれば、空に浮かんだ雲が動いていってやがて視界から消えていくように、雑念も消えます。
瞑想のやり方その1:ローソク瞑想。
初心者でも簡単に実践できる瞑想としてご紹介したいのが「ローソク瞑想」です。真言密教の「阿字観瞑想(あじかんめいそう)」という瞑想を、一般の方向けにアレンジしたものです。
阿字観瞑想は梵字で書かれた「阿」をじっと見つめる瞑想法です。しかし、「阿」の梵字は現代人にはなじみがなく、見つめてもなかなか集中できません。その代わりに、ローソクのゆらめく炎を見つめながら瞑想を行うのです。かすかに揺れる炎を静かに見ていると、自然と無心になれるでしょう。
<ローソク瞑想のやり方>
ステップ1:テーブルと椅子を用意し、ローソクに火をつける。
ステップ2:椅子に座り背もたれに身を預けて、ゆったりとした姿勢で炎を見つめる。
ステップ3:頭の中に雑念が浮かんでも気に留めず、炎へと意識を戻す。
使用するローソクですが、アロマキャンドルは香りがイメージをかきたてるので瞑想には向きません。おすすめは、10分程度で燃え尽きる仏壇用のローソク。短時間で燃え尽きるので、まとまった時間を確保できないときでも取り入れやすく、燃え尽きる前にふっと一瞬輝きを増す炎が瞑想を解く合図にもなります。
室内で火を使うことに抵抗がある方は、LEDキャンドルでもいいでしょう。炎のゆらめきが再現されたものもあり、安心してローソク瞑想ができます。
瞑想のやり方その2:インターバル瞑想ウォーキング。
息をのむような美しい夕焼けを目にしたとき、雄大な山が目の前に飛び込んできたとき……自然に感動したときの脳は、瞑想したときと同じ空っぽの状態になります。そのような感動を少し取り入れる「プチ瞑想」と、運動療法とを組み合わせたのが、私が提唱する「インターバル瞑想ウォーキング」です。
<インターバル瞑想ウォーキングのやり方>
ステップ1:アラームを5分後に設定する。
ステップ2:5分間、うっすら汗をかくくらいの速さで歩く。
ステップ3:アラームが鳴ったら次の5分間、ゆっくり歩いて呼吸を整え、自然物を見て「きれいだなぁ」と感じる。
これをワンセットとし、6セットで1時間のウォーキングをします。ポイントはゆっくり歩いているとき、空や花などの自然物を眺めることです。
たとえば、タワーマンションなどを見てしまうと、「どんな人が住んでいるのだろう」「地震になったら大変そうだな」と考えてしまうかもしれません。人工物ではなく、心奪われる自然物や自然現象を探してください。
「1時間も歩くの!?」と思うかもしれませんが、5分ごとにとるインターバル(ゆっくり歩く時間)も含めて1時間なので、実質的な運動時間は30分程です。有酸素運動で体のコンディションを整えながら、瞑想もできる「インターバル瞑想ウォーキング」は一石二鳥です。
日常に瞑想を取り入れるポイント。
「瞑想ってよさそう!」と思いつつ、日々の生活にどう取り入れたらいいかわからない、という人もいるでしょう。しかし、「呼吸に意識を向けること」と「雑念を手放すこと」という2つのポイントさえ押さえておけば、いつ、どんな場所でも瞑想はできます。
たとえば、通勤電車の中でつり革をつかむ手の感覚に集中したり、お風呂に肩までつかって、ゆっくり静かに腹式呼吸をしたり、といったやり方も。
自分に合ったやり方で取り入れるためのポイントをみていきましょう。
自分が取り入れやすいタイミングを見つける。
瞑想に限らず、習慣化の方法として有効なのが、生活のルーティンに組み込むことです。たとえばある男性は、1日2回、朝起きてコーヒーを飲んだあとに15分、寝る前にベッドの上にあぐらをかいて15分と決めて瞑想をしていました。ほかには、通勤電車の中と昼休みが瞑想タイムという人や、大事な打ち合わせの前に1分間瞑想するという人もいます。
最初は「瞑想しよう」と意識する必要がありますが、続けていくと、歯磨きなどと同じくらい当たり前のルーティンにできるでしょう。
頑張りすぎない。
瞑想は質を高めようと頑張ってやるものではありません。力を抜いて、リラックスして脳を休ませるのが瞑想です。肩に力が入っていたら、なかなか瞑想状態に入れません。
そもそも、現代人は大量の情報に触れていますから、脳は考えるクセがついてしまっています。それが原因で、最初のうちはうまく瞑想に入れなかったり、難しく感じたり、効果を実感できなかったりします。そこで諦めてしまうのではなく、あせらずマイペースで続けていきましょう。
疲れたときは、瞑想でリフレッシュを。
医師として患者さんに瞑想をすすめていますが、向かない人がいるのも確かです。「効果がでるか、でないか」には、瞑想への本人の考え方や取り組み方が大きく関係しているからです。
ただ、瞑想のさまざまな効果は医学的に証明されています。仕事が忙しくストレスフルな毎日に心がしぼんでしまっている人、何時間寝ても疲れが取れないなど体調に悩んでいる人は、ぜひ一度、瞑想をしてみてください。
写真/PIXTA イラスト/こつじゆい
保坂 隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。慶應義塾大学精神神経科入局後、米カリフォルニア大学ロスアンゼルス校(UCLA)精神科へ留学。その後、聖路加国際病院精神腫瘍科部長、同病院リエゾンセンター長などを経て現職。『お医者さんがすすめる すごい瞑想』(PHP研究所)『老いも孤独もなんのその「ひとり老後」の知恵袋』(明日香出版社)など著書多数。
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