婦人科って、症状が軽くても行くべき?産婦人科医に聞いてみた。
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「生理痛はあるけど、みんなもこんな痛みだよね」「忙しいし、婦人科検診はまた今度」「特に困ってないし……」といった理由で、婦人科を受診したことがない人は意外と多いのでは? そもそも、なんとなく婦人科に行きづらいと感じている人もいるでしょう。
そこで、婦人科を受診したことのない20代女性の木村さん(仮)が、産婦人科医の高橋怜奈先生に、婦人科に対する本音と疑問をぶつけてみました!
目次
- 気になる症状がなくても婦人科に行くべき?
- 婦人科に行っても相談することがない……。何を目的に行けばいいの?
- 受診するほどの生理痛かは、どうしたらわかる?
- 病気の予防目的で低用量ピルの相談をしてもOK。
- 「婦人科に行きづらいあるある」は誤解が多い!?
- 婦人科ってどうやって選べばいいの?
- 入院や手術が必要になれば大きな出費が必要になることも。
- 今からでも遅くない!問題がなくても婦人科に行ってみよう。
気になる症状がなくても婦人科に行くべき?
──私、もうすぐ30歳になるんですけど、今まで一度も婦人科に行ったことがないんです。特に生理に関する悩みもないんですが、それでも婦人科って行ったほうがいいんですか?
気になる症状がなくてもぜひ来てください! 日本だと症状があらわれてから婦人科を受診する人が多いんですけど、海外だと初潮を迎えたら親が婦人科に連れて行く国もあるんですよ。初潮を迎えてすぐじゃなくても、20歳になったら受診してほしいです。
子宮頸がんや子宮内膜症は20代でも罹患する可能性あり!
──20歳で婦人科を受診するってすごく早い気がしますが、どうしてそんなに若いうちから必要なんですか?
20代前半でも、性交経験があれば子宮頸がんに罹患する可能性が十分にあるからです。子宮内膜症も、20代でも発症する人が多い病気です。性交経験があれば、20歳以上で子宮頸がん検診が推奨されていますし、子宮内膜症は卵巣がんにつながることもあるので軽視しないでほしいですね。
症状がなくても、気づいたらがんが進行していることも!?
──20代でもがんになるって怖いですね……。兆候はあるんでしょうか?
女性特有の病気って自覚症状があらわれないものが多いんです。子宮頸がんは初期の段階では症状がまったく出ないことが多いですし、卵巣がんも無症状で進行するので、気づいたときにはステージがかなり進んでいたりします。この2つの病気は進行すると、子宮や卵巣を摘出しなければいけない場合もあるんです。
──それって、妊娠できなくなるってことですよね……?
まさしくそうなんです。初めて妊娠したとき、妊婦健診の一環で人生初の子宮頸がん検診を受け、進行した子宮頸がんが見つかるというケースもあります。母体を優先して治療するとなると、赤ちゃんがいる子宮のまま摘出する場合もあり、初めての妊娠で赤ちゃんと子宮を同時に失ってしまうこともあるんです。
それはとても悲しいことなので、生理が重い人はもちろん、何も症状がない人でも検査を受けておくことが大切です。
婦人科に行っても相談することがない……。何を目的に行けばいいの?
──婦人科を受診する大切さはよくわかったんですけど、やっぱり気になる症状がないと、なにかと言い訳して先延ばしにしてしまいそうです。
それならまずは婦人科検診を受けに行きましょう。「無症状の重大な病気がないか調べる」ことを目的にすれば、症状がなくても受診するきっかけになるのではないでしょうか。
子宮頸がん検診と超音波検査を定期的に受けよう!
──私は会社の健康診断で、子宮頸がん検診と乳がんの触診を毎年受けているんですがこれでは足りませんか?
毎年検診を受けているのはすばらしいですね! 私がみなさんに特に受けてほしいのは、子宮頸がん検診と超音波検査なので、超音波検査もプラスしてもらえればバッチリです。
超音波検査は、子宮筋腫や卵巣のう腫がないかなど、子宮や卵巣の状態を確認することができます。子宮頸がん検診は子宮頸がんの有無しか調べないので、超音波検査を受けておかないと、子宮や卵巣のほかの病気を見つけられないんですよ。
──この2つの検査を受ける頻度は年に一度でいいですか?
子宮頸がん検診は2年に一度の定期検診が推奨されています。超音波検査は、子宮頸がん検診と一緒に受けてもいいですし、「隔年だと忘れそう」「気になる症状がある」ということなら、毎年受けてもいいと思います。
対象者はHPVワクチンのキャッチアップ接種を。
──ほかに、がんのリスクを減らすために婦人科でできることってありますか?
HPVワクチンのキャッチアップ接種対象の人はぜひ受けに来てほしいです。子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐ予防接種なんですが、一時期、接種の積極的な推奨が中止されていたんですよね。1997年4月2日~2007年4月1日生まれの人は、2025年3月31日までは無料で受けられるので、チェックしてみてください。
参考:厚生労働省「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~」
受診するほどの生理痛かは、どうしたらわかる?
──生理痛って人と比べられないので、重いか軽いか判断しにくい面もある気がします。受診の目安ってあるんでしょうか?
あまり知られていませんが、本来、生理でも痛みが出ないのが正常な状態です。生理痛で1日でも痛み止めが必要だったり、痛み止めまでは飲んでいなくても普段できていることができなかったりすると、月経困難症と診断され、治療の対象になります。単純な痛みだけでなくても、気持ちの浮き沈みがあるとか、何か月経に伴って困った症状があれば、月経困難症と診断できます。
血の量が多い「過多月経」など、ほかにも目安はあるので、以下にまとめてみました。
月経困難症 | ・生理になると1日でも痛み止めが必要 ・普段できていることが、生理になるとできなくなる |
過多月経 | ・生理のときに血の塊が出る ・昼間でも夜用ナプキンが必要 ・1周期の月経量が140ml以上 |
生理に関するトラブルは、子宮内膜症をはじめ女性特有の病気によくある症状なので、やはり一度婦人科を受診しましょう。
病気の予防目的で低用量ピルの相談をしてもOK。
──もし、生理で気になる症状がある場合はどんな治療をするんですか?
検査をして、すぐに手術が必要ない場合や、近いうちに妊娠を希望していない場合は、低用量ピルなどのホルモン治療で生理をコントロールします。今、妊娠を希望していないなら、生理のトラブルがなくても、ホルモン治療はしていたほうがいいですよ。
──え! そうなんですか!?
実は生理って、周期や出血量に問題がなくても子宮や卵巣にかなり負担がかかっていて、生理になるごとに、子宮内膜症や卵巣がんなど女性特有の病気のリスクが上がってしまうんです。妊娠中は生理が止まるんですが、1人の女性が産む子どもの数が減ってきている現代は、昔よりも「女性が生理になる回数が増えている」といえます。つまり、女性特有の病気のリスクも上昇しているんです。
低用量ピルには、排卵を抑制し、子宮内膜を薄く保つ効果があるので、子宮内膜症や卵巣がんといった病気を予防することができますよ。日々診察するなかで、最近は病気の予防を目的にした服用相談も増えています。血栓症など低用量ピルのリスクが気になる人には、黄体ホルモン製剤や子宮内黄体ホルモン放出システムなど、ピルと似たような効果が得られる別の方法も提案できます。
「婦人科に行きづらいあるある」は誤解が多い!?
──不安なことがない私でも婦人科に行くべきだと理解はしたんですけど、婦人科って歯医者や耳鼻科と違って、診察とか治療のイメージがしづらくて、ちょっと怖いんですよね……。
SNSなどで相談にのっていると、実際、そういった理由で受診をためらう人はとっても多いですね。みなさんの話を聞いていると、ほかにも婦人科受診にハードルを感じている部分はあるようです。
「婦人科=内診」ではない!
──特に多い理由としてはどのようなものがありますか?
「婦人科に行くと内診を受けないといけないから行きたくない」と思っている人は多いですね。でも、実際は、性交経験がなければ内診って必須じゃないんですよ。性交経験のある人でも、内診は必要なときにしかしないことは知っておいてほしいです。
──SNSなどで「内診がすごく痛かった」というつぶやきを見かけたりしますが、そういう感想を見て不安になる人も多そうです。
もちろん、個人差があるので痛みを感じる人もいますが、経験上、スムーズに終わる人のほうが多いです。なので、内診に対して極度に身構える必要はないと思います。
もしそのとき痛かったとしても、日を変えたり、医師を変えたりするだけで解決することもありますよ。ただ、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気があると、どんなに医師が丁寧に内診をしても、痛みが出てしまうことも。その場合、手術をしなければ改善しないこともあります。
また、痛みが心配な人は、事前に「痛くないようにゆっくり診察してほしい」など要望を伝えるといいかもしれません。
費用も時間も、なんとかなるかも?
──普段は会社の健康診断で受けているので気にしたことがなかったんですけど、婦人科検診って自費で受けると高そうですよね。
自治体で定期的に実施している婦人科検診を利用すれば、安く済みますよ! 子宮頸がん検診なら無料~2,000円程度で受けられます。受診券は、自治体から対象者に送られるか、対象者自身が申請すると入手できます。自治体によっても金額や年齢、申請方法などが異なるので、ぜひ役所のホームページで確認してみてください。
それに、超音波検査など自費で受ける検診でも、異常が見つかれば健康保険が適用されて、自己負担分は少なくなります。
──なるほど! そういえば、婦人科に限らず、仕事が忙しくて診てもらう時間がなかなかとれないんです……。
そういう声もよく聞きますね。でも、婦人科って土曜・日曜・祝日も開いていたり、夜遅くまで診療していたりするところもありますよ。ご自宅や職場の周辺で探してみると、都合のいいところが見つかると思います。
婦人科ってどうやって選べばいいの?
──婦人科を選ぶときのポイントってありますか?
「婦人科」といっても、専門領域はいろいろです。出産に特化していたり不妊治療専門だったり……。なので、まずはホームページで何が得意そうな医師なのかを調べたり、電話で事前に問い合わせたりして、目的や症状に合う病院やクリニックを探してみてください。
──私のように婦人科検診が目的の場合は、どんなところがいいんでしょうか?
妊婦健診や出産専門、不妊治療専門のところでない限り、子宮頸がん検診や超音波検査などは、基本的にどの婦人科でも受けられます。また単体の「婦人科」以外に、「産婦人科」や「レディースクリニック」もありますが、どちらを受診しても大丈夫です。
相性は実際に受診してみないとわからないので、とりあえず検診の機会などを利用して、行きやすいところに行ってみるのがいいでしょう。その上で合わないと感じれば、別のところに行けばいいんです。一度合わなかったからといって、婦人科に行くこと自体をあきらめて、せっかくの受診の機会を失わないでほしいですね。
入院や手術が必要になれば大きな出費が必要になることも。
ここまで、高橋先生にお話を伺いました。子宮頸がんや子宮内膜症など女性特有の病気は、進行していると入院や手術が必要になることもあります。
生命保険文化センターの令和4年度の調査によると、入院1日あたりの自己負担費用の平均は20,700円です。
※ 公的医療保険には、医療費の自己負担額に限度額を定める高額療養費制度等があり、実際に負担する金額はケースにより異なります。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」
特に若い人にとっては、まとまったお金を用意するのは簡単なことではないでしょう。高橋先生によると、病気になったあとに「民間の医療保険に入っておけばよかった」と話す患者さんはすごく多いのだとか。
定期的に検診を受けるのはもちろん、病気になる前に医療保険に加入するなど、いざというときのお金についても備えておくと安心です。
今からでも遅くない!問題がなくても婦人科に行ってみよう。
女性特有の病気は20代から罹患のリスクが上がりはじめ、初期症状がない病気も少なくありません。不妊につながる可能性もあるため、特に気になる自覚症状がなくても、定期的に子宮頸がん検診や超音波検査を受けておくことが大切です。さらに、入院や手術が必要になったときに備えて、お金の準備もしておけるとバッチリですね。
イラスト/オオカミタホ
高橋 怜奈
医学博士。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。2016年6月にボクシングのプロテストに合格し2020年10月まで世界初の女性医師プロボクサーとして活動。ダイエットや無理のない減量、食事療法、運動療法のアドバイスにも定評がある。産婦人科医YouTuberとして医療情報の発信をYouTubeやTikTokで行うほか、テレビや雑誌などで女性のデリケートな悩みに答える。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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