健康診断と生理が重なった!OKな検査・NGな検査を医師が解説。 健康診断と生理が重なった!OKな検査・NGな検査を医師が解説。

健康診断と生理が重なった!OKな検査・NGな検査を医師が解説。

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毎年の健康診断、会社からの指示で受けているものの、「あいにく生理と重なってしまったから今回は受けなくてもいいかな?」なんて思ったことはありませんか? 健康診断と生理が重なったときはどうしたらいいのか、また、20代~30代の若い女性にとって「自分のためになる」健康診断の受け方・活用方法を産婦人科医の星野寛美先生が解説します。

目次

生理中に健康診断って受けてもいいの?

生理中に健康診断って受けてもいいの?

キャンセルするくらいなら健康診断を受けよう。

20代~30代の女性が健康診断をおっくうに感じる背景には、家事や仕事が忙しいことや、何か不調を感じたらすぐにお医者さんに行くから大丈夫……といった意識があるのかもしれません。

そこに「生理」が重なってしまうと、体もしんどいし、「そもそも生理中に健康診断を受けてもいいの?」「キャンセルしたほうがいいよね?」と思ってしまうこともあるでしょう。

結論から言うと「日程変更の予約ができずにキャンセルするくらいなら、生理中でも受けたほうがよい」です。

ほとんどの検査は、生理の影響を受けません。

企業が従業員に向けて実施している年に一度の定期健康診断は、「健康であるか、将来の病気につながるような兆候はないかを確認する検査」です。

勤め先によって検査項目に多少の違いがありますが、労働安全衛生法にもとづく定期健康診断の検査項目は下記の通りです。別途オプションで各種がん検診、子宮頚部細胞診(子宮頚がん検査)などが追加される場合や人間ドックを受けることもあります。

1 既往歴及び業務歴の調査  
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査  
3 身長(★)、体重、腹囲(★)、視力及び聴力の検査  
4 胸部エックス線検査(★)及び喀痰検査(★)  
5 血圧の測定  
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)(★)  
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)(★)  
8 血中脂質検査( LDLコレステロール、 HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(★)  
9 血糖検査(★)  
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)  
11 心電図検査(★)  
(★)の項目は、医師の判断により省略が可能となります。

出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の診断項目の取扱いが一部変更になります」

生理(経血)が検査結果に影響する検査も一部ありますが、定期健康診断で行われる大半の検査項目については、生理の影響はありません。ですから、生理中でも健康診断を受けて大丈夫です。

健康診断は体に異常がないことを定期的に確認することが目的ですから、毎年受けたほうがよいです。日程が変更できるなら、仮に終わりかけていたとしても生理中以外に受診するのがベストですが、どうしても変更が難しい場合は、無理のない範囲で生理中でも健康診断を受けましょう。

生理の影響がある検査項目とは?

ちなみに、生理の影響を受ける検査は、「尿検査」の一部項目、「便潜血検査(検便)」、「子宮頚部細胞診(子宮頚がん検査)」です。これらの検査は採取した検体に経血が混ざることで、正しい検査結果が得られない場合があるからです。

医療機関によっては、生理の影響を受ける検査を別日に実施するなどの対応を行っている場合もあります。まずは、健康診断を受ける医療機関に相談してみてください。

生理の影響がある検査項目

尿検査尿検査では、微量でも経血が混じっていると、尿蛋白や尿潜血が陽性となります。もともと尿中に含まれていたものなのか、あとから経血が混じったのかの判断ができないため、生理中や生理の前後3日間を避けるように案内をする医療機関が多いようです。
便潜血検査(検便)便潜血の検査(検便)は、大腸がんの検査で、消化管からの出血の有無を確認しています。通常、事前に採った便を健康診断当日に持参します。便に付着した経血と消化管からの出血の区別がつかないため、正しい検査結果が得られない場合があります。
子宮頚部細胞診(子宮頚がん検査)医師が専用のブラシなどを使って子宮頚部から細胞をこすり取り、検査をします。このとき経血が多いと血液や粘液が混じってしまうために検査に必要な細胞が十分に採取できず、検査の精度が下がってしまう可能性があります。ただし、経血が多くなければ通常どおり行える場合もあるので、健康診断を受ける医療機関で相談することをおすすめします。

生理中に健康診断を受ける場合、注意することは?

早めに医療機関に問い合わせる。

健康診断の日が決まっていて生理と重なりそうなときは、なるべく早めに健康診断を受ける医療機関に問い合わせましょう。生理の影響がある検査項目をどうするかは、医療機関によって判断が異なりますので指示にしたがってください。

受診当日「生理中です」と必ず伝える。

事前に問い合わせをした場合も、直前に急に生理が来てしまった場合も、健康診断当日は、生理中であることを最初に伝えましょう。生理前後で少し出血がある場合や、茶色や黒いおりものがある場合でも必ず伝えるようにしてください。

また、生理中に健康診断を受けるのは気が引けるかもしれませんが、通常、健康診断担当の医療スタッフは生理中であることに配慮しながら応対するので、安心して、検査を受けてください。

健康診断、20代〜30代でも毎年受ける意味はある?

健康診断、20代〜30代でも毎年受ける意味はある?

今の生活が生活習慣病の芽を育てているかも。

多くの20代は自分の若さと健康を過信して、ついついハードワーク、暴飲暴食、夜更かしなど無理を重ねがちです。そうした生活の積み重ねは、中高年期に「メタボ体質」となる可能性があり、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病、各種がんにもつながっていくおそれが大いにあります。

「若いし、生活習慣病なんて先の話。健康診断は『異常なし』を確認するだけなのに毎年受ける意味ある?」と面倒に思っているかもしれませんが、健康診断では、肝機能や糖代謝、腎機能など、体の各機能が問題なく働いているかどうか、将来の病気につながる兆候はないかをチェックしています。

また、受診する前に問診表を記入することは、お酒を飲む頻度や量、喫煙、食生活、運動習慣など、自身の今の生活を客観的に見直してみる、よい機会になるでしょう。

健康診断結果で20代~30代女性が特に見ておくべき項目をケース別に解説。

健康診断結果報告書には、各検査項目について今回の結果・基準値・判定などが記入されています。20代~30代の女性によくある健康面での気がかりは、健康診断結果報告書のどこをチェックしておくといいのでしょうか。ありがちなケース別に解説します。

ケース1:生理が重い。普段から階段を上がると息が切れるし、なんとなく疲れやすい人。

「貧血」をチェック。

妊娠して血液検査をすると貧血が見つかることが、よくあります。その多くは体内の鉄分が不足する「鉄欠乏性貧血」で、女性は毎月の生理による出血で鉄分が失われていることが原因です。

血液検査の「ヘモグロビン値」が基準値を下回ると「鉄欠乏性貧血」が疑われます。鉄剤を服用するなどしてきちんと治療すれば、疲れやすさなども改善されます。貧血の傾向はないかをぜひチェックしておきましょう。

ケース2:ストレス解消についお酒。最近飲みすぎている自覚がある人。

「肝機能」をチェック。

血液検査の「AST」「ALT」「γ-GTP」などは肝臓の働きをたしかめる項目です。お酒の飲みすぎは、肝機能のほか「血圧」「血糖値」にも影響します。

また、遅い時間に夕食をとることが多い、脂っこいものが好き、甘いものを食べてストレス発散する、つい食べ過ぎてしまうという方は「中性脂肪」や「コレステロール値」をチェックしておきましょう。

ケース3:痩せたくて食事制限中。なんだか疲れやすくて、生理も不順な人。

血液検査の「アルブミン値」をチェック。

太らないようにと、日々の体重管理はしっかりされている方が多いと思います。肥満かどうかを判定するBMIや体脂肪率が基準値以内でも、さらに痩せようとして過度なダイエットをしている方も見受けられます。栄養摂取が偏ると筋肉量や骨密度の低下が起こりやすく、生理不順になることもあります。

健康診断で骨密度や筋肉量まで測ってくれることはなかなかないですが、血液検査(肝機能検査)の「アルブミン値」は栄養状態の指標になります。

健康診断は受けっぱなしにしないことが大切。

検査結果の数値が基準値以内に収まっていれば、とりあえずの心配はありません。ですが、健康診断は受けた後も大切です。「お酒を飲みすぎかな?と思っていたけれど、健康診断では異常なし。よかった、よかった、今日は祝杯♪」で終わらせないで。

ご自身で飲みすぎだと感じているなら、健康診断をきっかけに1回に飲む量を減らす、飲む機会を減らすなどできることからぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。

健康管理のために、必要な再検査や治療を受けよう。

基準値を外れた場合でも、まだ病気が確定したわけではありませんし、再検査を受けるか受けないかは、あくまでも自己判断に委ねられます。「異常なし」から「要経過観察」くらいまでなら、体調に気をつけて異変があったらすぐに医療機関を受診する、というスタンスでよいかと思います。

ですが、「要再検査」「要精密検査」「要治療」の場合は、自覚症状はなくても何らかの病気が隠れている可能性があります。コロナ禍で医療機関に行くのをなるべく避けたい、という気持ちもあるかもしれませんが、健康診断は受けっぱなしにせず、必要な検査や治療を受けて、きちんと健康管理をしていきましょう。

年ごとの変化に注目を。

毎年の健康診断結果報告書はファイリングしておきましょう。数年分のデータを見比べて、だんだん数値が増えて(減って)基準値を外れそうなときや、特にがんや高血圧、糖尿病などになった近親者がいる方は、注意して見ていくことが大切です。経年のデータを見比べやすい、という意味でも毎年の健康診断はなるべく同じ医療機関で受けるのがおすすめです。

健康診断を有効活用して、健康管理に活用しよう。

生理痛やPMS(月経前症候群)に悩んでいたら、診察時に相談を。

若い女性にとって、生理が順調かどうかは健康上、大切なポイントです。生理が止まるのは排卵がうまく起こっていないためで、体調の悪化やホルモンの異常が考えられます。過度のストレスや過酷なダイエットなども生理が止まる原因になります。

また、重い生理痛やPMS(月経前症候群)で悩んでいる女性も多いかと思います。体質だからしょうがない、とあきらめて我慢している女性も少なくないようですが、婦人科を受診して低用量ピルや抗うつ剤などを適切に使うことでつらい症状を改善することができます。

「会社の健康診断で生理痛の相談なんてできないでしょ?」とは思わないで。医師の診察時に「何か(健康面で)心配なことはありますか?」と必ず聞かれますから、どんなことでも相談してみましょう。

20代~30代でも女性向けのオプション検査を受けたほうがいい場合も。

企業の健康診断には含まれておらず、自己負担になってしまう場合が多いのですが、気になるものがあれば、女性向けのオプション検査を受けてもいいと思います。

子宮頚がんは、近年20代~40代の患者さんが急増しています。初期には自覚症状が乏しいため、20歳以上の女性は2年に一度の検診を受けることが推奨されています。

乳がん検診について、国では40歳から2年に一度のマンモグラフィ検査を推奨しています。ですが、血縁に乳がんの方がいる場合などリスクのある方は、20代~30代でも乳がん検診を受けたほうがよいでしょう。乳腺の発達している20代~30代の方にはマンモグラフィ検査よりも乳腺エコー検査が適していると言われています。

また、男性に比べて圧倒的に女性に多いのが甲状腺の病気です。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで起こるバセドウ病は20代~30代の若い女性に多い病気で、甲状腺の機能が亢進してしまうため、更年期障害のように汗がどっと出て、動悸や手指の震え、体重減少などが起こります。血液検査でわかりますので、オプションに甲状腺の検査があれば受けておくとよいでしょう。

なお、いずれも心配な症状がある場合は健康診断を待たずに医療機関を受診してください。

参考:国立研究開発法人国立がん研究センター「子宮頸がん検診について」

健康診断を「面倒だから」と受けないのは損。

定期健康診断は、働く人が健康かどうかを確認するために、企業側に実施が義務付けられています。定められた検査にかかる費用を会社が出してくれますから、面倒だからと受けないのは損。そして、せっかく忙しい時間を割いて健康診断を受けるのですから、今の健康状態を知って自分自身を大切にメンテナンスするきっかけとして、積極的に活用していきましょう。

健康診断結果の提出で、生命保険の保険料が割引になることも。

また、生命保険や医療保険には、契約時に健康診断結果を提出すると保険料が割引になり、所定の健康状態の場合であれば、さらに割引される商品もあります。(割引の対象とならない保険もあります。)

自身の健康管理に役立つ健康診断は、毎年欠かさずに受けてくださいね。

参考:第一生命「健康診断割引特約」

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まとめ

・健康診断のうち、生理が影響する検査項目は尿検査・便潜血検査・子宮頚部細胞診。  
・生理と重なりそうだとわかったら、早めに健康診断を受ける医療機関に相談。  
・将来の生活習慣病につながる兆候はないかを健康診断でチェック。  
・20代~30代の女性は、婦人科系の病気、鉄欠乏性貧血、甲状腺の病気に注意を。  
・健康診断結果の提出で生命保険料が割引になる場合もある。

写真/Getty Images


星野 寛美  
産婦人科の医師。関東労災病院で働く女性専門外来担当。1990年~1993年、国立病院医療センター(現、国立国際医療研究センター病院)を経て、1993年より関東労災病院産婦人科に勤務。専門外来では、産婦人科の病気に限ることなく、他科の症状についての相談にも応じ、女性のための総合診療を行っている。


※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。  
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(登)C24N0067(2024.6.24)
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