人間ドックは何歳から受けたほうがいい?検査項目や費用を医師が解説。
40歳をすぎて、そろそろ人間ドックを受けようと思っても、初めてだとなにを検査できるのか、オプション検査はなにをつければいいのか、また費用はどのくらいなのかなど、わからないことが多いはず。体の状態をチェックでき、健康管理に役立つ人間ドックについて、四谷メディカルキューブ健診センター長を務められ、検査項目などにも詳しい医師の安田聖栄先生にお聞きしました。
目次
人間ドックとはどういうもの?
人間ドックでは、さまざまな検査機器を使って全身を細かく調べることで、病気のリスクを見つけやすくなります。ここでは人間ドックの概要や主な検査項目などを見ていきます。
職場健診・特定健診・人間ドックの違い。
健康診断には、法令によって事業主などが実施するよう義務付けられている「法定健診(定期健診)」と、個人が任意で受ける「任意健診」があります。法定健診は、職場健診と特定健診が該当し、任意健診には人間ドックなどが当てはまります。
職場健診
職場健診は年1回行われ、生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)のリスクを発見するいい機会です。事業主は、従業員に職場健診を実施することが義務付けられています。従業員の健康維持を目的としており、基本的に事業主が費用を負担します。
特定健診
特定健診も年1回行われ、特にメタボリック症候群の発見に特化しています。メタボリック症候群とは、脂肪が内臓に蓄積し(内臓脂肪型肥満)、高血圧・高血糖・脂質異常を併存した状態です。心臓病と糖尿病のリスクが高いため、生活習慣を改善し予防することが必要です。
対象者は、40歳~74歳の健康保険組合などの医療保険加入者で、健康保険組合などが加入者に実施する義務があります。健康保険組合などから一定の費用補助があり、基本検査のみであれば、自己負担は発生しません。特定健診の検査項目は、ほぼすべて職場健診に含まれているため、職場健診を受ける機会のない人が受診することになります。
人間ドック
人間ドックでは、全身の病気のリスクを調べます。職場健診や特定健診よりも検査項目が多く、自身で選んで高度な検査を受けることもできます。たとえば内臓脂肪を検査する際は、職場健診や特定健診では腹囲や体重などを測定して判断しますが、人間ドックではCTを使って腹部の断面図を撮り調べます。
なお、受診自体は任意なため、費用は基本的に全額自己負担です。
人間ドックの推奨年齢と受診頻度。
人間ドックは20代から受診可能ですが、40代以降からの受診がおすすめ。特定健診が40歳から対象になっているのは、生活習慣病のリスクが40代以上から高まるためです。人間ドックも、職場健診または特定健診と並行して受診しましょう。
また人間ドックは経年変化を見るためにも、気になる症状がなくても2年に一度は受診することが大切です。
人間ドックの主な検査項目。
人間ドックの主な検査項目は以下の通りです。精密な検査を行い、また結果もレポートなどを通じて詳しく確認できます。
人間ドックの主な検査項目
主な検査項目 | 検査でわかること、関係する疾患 |
身長・体重・腹囲・BMI | 肥満・低体重 |
血圧 | 高血圧 |
心電図 | 不整脈 |
視力、眼圧・眼底検査 | 視力・緑内障・白内障など |
聴力 | 高音域と低音域の聴力 |
呼吸機能検査 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD)・呼吸筋力の低下など |
胸部X線検査 | 肺炎・肺結核・肺がんなど |
上部消化管X線検査 | 食道・胃・十二指腸の潰瘍、腫瘍 |
腹部超音波(エコー)検査 | 脂肪肝・胆石・腎結石、肝・胆・膵(すい)・腎の腫瘍 |
血液検査 | 貧血・肝機能・腎機能・脂質異常症・糖尿病・高尿酸血症・B型肝炎・C型肝炎など |
尿検査 | 血尿・蛋白尿・尿路感染症 |
便潜血検査 | 大腸がん・ポリープ |
内科診察 | 頭頸部の腫瘍・心音や呼吸音の異常・皮膚の異常・下肢静脈瘤など |
※ 取材をもとにミラシル編集部が作成
オプション検査で検査項目が増やせる。
医療機関によっては、人間ドックの基本検査に加えて、オプション検査として検査項目が増やせます。さらに詳しい検査をしたい場合などは予約時に項目を追加しましょう。オプション検査は、基本検査とは別に費用がかかるため注意しましょう。
40代・50代の病気のリスクと推奨検査項目。
男性・女性ともに40代・50代は、生活習慣病のほかにも病気のリスクが高まる年代でもあります。具体的にどんな疾患のリスクが高まるのか、人間ドックを受けるとしたら押さえておきたい検査項目を見ていきましょう。
がんのリスクと推奨検査項目。
40代・50代になると、さまざまながんのリスクが高まります。がんは自覚症状がないままに進行するケースもあるため、早期発見には定期的に検査することが重要です。人間ドックで調べられる検査項目(オプション検査含む)をまとめました。
がん別の人間ドックの検査項目と検査内容
がんの種類 | 検査項目(オプション検査含む) | 検査内容 |
胃がん | 胃部X線検査(バリウム検査)・内視鏡検査・ABC検診 | ABC検診は、血液検査(ペプシノーゲンとピロリ菌抗体)で胃がんリスクを調べる。 |
肺がん | 胸部X線検査・喀痰(かくたん)細胞診検査・胸部CT検査 | 喀痰細胞診検査は、痰の中のがん細胞の有無を顕微鏡で調べる。 |
大腸がん | 便潜血検査・大腸内視鏡検査 | 便潜血検査は、便に大腸ポリープやがんからの出血が混入してないか調べる。異常があれば大腸内視鏡検査がすすめられる。 |
乳がん | マンモグラフィー・乳腺超音波検査 | マンモグラフィーは乳房を挟みX線で、超音波検査は乳房に超音波をあて、乳腺内のしこりの有無を調べる。 |
子宮頸がん | 子宮頸部細胞診検査 | 子宮の入り口(子宮頸部)をブラシなどの器具でこすり、細胞を採取しがん細胞の有無を顕微鏡で調べる。 |
前立腺がん | 腫瘍マーカー(PSA) | 血液検査で、前立腺から分泌されるPSA(前立腺特異抗原)の値を調べる。 |
※ 取材をもとにミラシル編集部が作成
人間ドックのほかに、国が推奨する自治体のがん検診(胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮頸がん)もあります。自治体から補助金がでるメリットはあるものの、検査項目や検査方法が限定されているため、人間ドックも受診するといいでしょう。
健康状態や生活習慣に起因するリスクと推奨検査項目。
このほかにも、自分の健康状態や生活習慣などによって、注意する項目は変わってきます。自分にあるリスクや、調べられる検査項目を把握しておくといいでしょう。
健康状態や生活習慣に起因するリスクと検査項目
健康状態や生活習慣 | リスク | 検査項目(オプション検査含む) |
よく飲酒をする | 肝臓に中性脂肪がたまり、脂肪肝になりやすい。 | 腹部超音波(エコー)検査 |
家族に糖尿病がある | HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が高値だと糖尿病のリスクが高い。 | HbA1cの血液検査 |
肥満気味である | 内臓脂肪型肥満では生活習慣病のリスクが高い。 | 腹部CTによる内臓脂肪の検査 |
高血圧である | 脳動脈瘤があると破裂し、くも膜下出血を引き起こすことも。 | 脳MR(MRI/MRA)検査 |
閉経している | 骨が弱くなって骨折しやすくなる(骨粗しょう症)。 | 骨密度検査 |
※ 取材をもとにミラシル編集部が作成
人間ドックの費用はどのくらい?
人間ドックの基本検査は、日帰りのものと1泊~2泊など宿泊して行うものがあります。体全体を検査対象とするもののほか、脳や肺などの部位に特化した専門ドックもあります。費用は数万円~十数万円まで施設によって差がありますが、目安を見てみましょう。
人間ドックの基本検査。
日帰りの検査と宿泊して行う検査では、検査項目数やより精密な検査をするかどうかなどの違いがあります。1日ドック(日帰り)の費用の目安は3万円~7万円程度、2日ドック(宿泊)の費用の目安は4万円~10万円程度となっています。
※ 目安金額について、健康保険組合などの補助や諸事情等は考慮していません。
専門ドック
専門ドックでは、体の一部を重点的に調べます。基本検査には含まれていない項目を検査したい、または基本検査よりも詳しく検査したい場合はおすすめです。
主な専門ドックの目安金額と検査内容
種類 | 目安金額 | 検査内容 |
脳ドック | 4万円程度 | 脳MR(MRI/MRA)で脳梗塞や動脈瘤を、頸動脈超音波で脳への血流を調べる。 |
肺ドック | 3万円程度 | 肺CTで肺の内部を画像で映し出し、肺がんや肺気腫の有無やリスクを検査。 |
心臓ドック | 3万円程度 | 超音波や心電図を用い、心筋梗塞・狭心症・弁膜症・不整脈などの心疾患の有無やリスクを検査。 |
※ 取材をもとにミラシル編集部が作成
※ 目安金額について、健康保険組合などの補助や諸事情等は考慮していません。
主なオプション検査。
人間ドックのオプション検査で、40代・50代におすすめな検査項目と目安金額は次のようになっています。PET/CT検査は、全身を撮影して、がん細胞の有無や位置をチェックするので、数多くのがんを比較的早期の段階で発見できます。50歳になれば一度受けてみるのもいいでしょう。ただし高価な検査です。
主なオプション検査項目と目安金額
検査項目 | 目安金額 | |
PET/CT検査 | 10万円程度 | |
前立腺腫瘍マーカー(PSA)検査 | 2,000円~4,000円程度 | |
乳がん検査 | マンモグラフィー | 5,000円~8,000円程度 |
乳腺超音波検査 | 4,000円~5,000円程度 | |
子宮頸がん検査 | 3,000円~5,000円程度 | |
大腸内視鏡検査 | 2万円~3万円程度 | |
胃内視鏡検査 | 1万円程度 | |
脳MR(MRI/MRA)検査 | 2万円~4万円程度 | |
骨密度検査 | 3,000円~5,000円程度 | |
動脈硬化検査 | 5,000円程度 |
※ 取材をもとにミラシル編集部が作成
※ 目安金額について、健康保険組合などの補助や諸事情等は考慮していません。
病気は早期発見・早期治療でいつまでも健康に。
人間ドックは、医療機関によって内容や費用に幅がありますが、体全体を詳しく検査できるため、健康管理のための有効な手段といえます。病気の発見が遅れると、病気が進行してしまうだけでなく、医療費など経済的な負担が増える可能性も。
いつまでも健康でいるためにも、将来の自分への投資と考え、定期的に健診や人間ドックを受診することが大切です。
写真/PIXTA
安田 聖栄
四谷メディカルキューブ理事長/健診センター長、東海大学医学部客員教授。専門科目は、消化器外科、PET検査による腫瘍診断。大阪大学医学部卒。東海大学医学部消化器外科教授、同付属病院副院長を経て、2016年より現職。『がんのPET検査がわかる本』(法研)、『診療で必ず役立つビタミンの知識』(日本医事新報社)など著書多数。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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