生理中、経血がドバッと出る感覚が……。原因や対処法を医師が解説。
生理中、立ち上がった瞬間にドバッと経血が出る感覚でヒヤッとした経験をしたことはありませんか? 実際に「心配になって受診する女性は多い」と、産婦人科医の八田真理子先生は話します。日ごろから生理に関するさまざまな相談を受けている八田先生に、女性たちの疑問を相談。ドバッと出る原因やしくみ・対処法、気をつけたいことについて回答していただきました。
目次
- 生理のときに経血が一気に出るのはなぜ?
- 経血がドバッと出る原因。
- どういう人、どういうときに起こりやすい?
- 症状を緩和する方法はある?
- 経血が一気に出る、病気の可能性はある?
- 過多月経と判断する目安。
- 病気の可能性は?
- 婦人科を受診してみたほうがいい?
- 【まとめ】不快感は生理用品やピルで対処しながら経血の状態をチェック。
生理のときに経血が一気に出るのはなぜ?
1つめは経血がドバっと出る瞬間の不快感、不安についての質問です。
「デスクワーク中にトイレに行こうと立ち上がったら、ドバッと! ときどき経験するのですが、気持ち悪いし漏れないか不安。何かいい対処法はありますか?」
経血がドバッと出る原因。
生理中に経血が一気に出るのは、子宮や骨盤底筋群(膀胱・尿道・腟・子宮などを支える筋肉や靭帯)の動きに関係しているようです。
「経血は、すぐに排出されるわけではありません。いったん腟の中に溜められ、骨盤底筋群がゆるんだときに出ます。そのため、立ったり座ったり、排尿、排便時にドバッと出る経験をしたことがある方は多いと思いますが、自然なことです」(八田先生)
どういう人、どういうときに起こりやすい?
経血には血液だけでなく汗や子宮から剥がれ落ちた内膜、子宮頸管粘液が混ざっています。緊張した場面や、女性ホルモンが多くなるタイミングで、ドバッと出るのを経験する人が多いとのこと。八田先生によると「ほかの人よりも出血が多いのでは……」と不安で受診する人には、共通した特徴がいくつかあるようです。
「やせている人よりも、皮下脂肪の多い太った人に多い傾向があります。また、生活習慣などを詳しく聞くと、女性ホルモンを促進するサプリや漢方を飲んでいる人、スイーツやお酒好き、運動不足の方にも当てはまりやすいようです。“女性ホルモンを増加させる=女性力を高める”ような生活習慣は、経血量を増やしやすいといえるかもしれません。
転勤や転居など環境の変化も影響しますね。実際に、環境が変化し気温が上昇する春先は経血やおりものが増えたと相談にいらっしゃる患者さんが増える傾向にあります」(八田先生)
症状を緩和する方法はある?
基本的に経血量を自分でコントロールするのはむずかしいものです。骨盤底筋群のトレーニングで、ある程度は調整できることもありますが、コツをつかむには時間がかかるそう。生理用品や低用量ピルなどのアイテムを活用するのがおすすめとのこと。
「ドバッと出る感覚が苦手な方は、タンポンや月経カップを使うといいでしょう。月経量そのものを減らすのであれば低用量ピルや「子宮内黄体ホルモン放出システム」(IUS)も有効です。
低用量ピルはネット通販でも手に入ります。通院しなくても買えるので継続して使いやすくとても便利ですが、利用する場合は十分注意が必要です。まず、オンラインで買う前に必ず一度は婦人科を受診してください。また信頼できる販売元であるかも確認しましょう。海外から安く買える低用量ピルもありますが、なかには効果が不明瞭なものもあります」(八田先生)
一方で、生活習慣を工夫することで緩和できるともいいます。排卵周期が整っていない若いころは、ホルモンバランスの乱れが起きやすい時期。ストレスや疲労によって出血量が多くなることがあります。
「最近は脂肪も筋肉量も少ない女性が増えていますが、生理はエネルギーを使うもの。20代~30代は、栄養バランスのいい食事でしっかりエネルギーを補給してほしい」と八田先生は助言します。
骨盤底筋体操は、尿道・腟・お尻の穴をギューッとしめたりゆるめたりする運動で、尿漏れ防止の効果も期待できます。腟をキュッとしめるコツをつかむのはむずかしいのですが、先生が患者さんにアドバイスしていて、簡単に実践できる方法を紹介していただきました。
「意識するだけでも、骨盤底筋を使えています。肛門をキュッとしめると、骨盤が立ち、背筋が伸びるので、自然と良い姿勢を維持できます。座りっぱなしなど、同じ姿勢を長時間続けないことも大切です」(八田先生)
経血が一気に出る、病気の可能性はある?
2つめの質問は、量が多いのは病気かも? という不安です。
「生理は毎月順調で不正出血もありませんが、量は多いほうかもしれません。一気に出たり量が多かったりするのは、病気の可能性がありますか?」
過多月経と判断する目安。
一気にドバッと出るのは必ずしも異常ではありませんが、経血が「1回あたり150cc」を超えると過多月経の可能性があります。生理用品を替えるタイミングで見るべきポイントを教えてもらいました。
「ナプキンを使っている方は、昼用で1時間、夜用で2時間もたない日が2日以上続くようであれば過多月経の可能性があります。タンポンの場合も、1時間~2時間で漏れることが2日以上あれば同様です。
一般的な月経カップは最長12時間使えるとされています。商品にもよりますが、記載されている時間内で違和感や不快感があったり、抜けてしまったりするようであれば経血が多いかもしれません」(八田先生)
レバー状の血の塊も1つのサイン。「親指の第一関節くらいの大きさの血の塊」が出続けると、過多月経かもしれません。また、生理のたびに布団や洋服を汚してしまうのも指標となります。これらの症状に加え、貧血の検査をして過多月経かどうかを判断するそうです。
病気の可能性は?
うまく排卵できない卵巣機能不全によってドバッと出てしまうこともありますが、病気の可能性も否定できません。20代~30代では、過多月経と月経困難症、子宮内膜症、子宮腺筋症などがよく見られます。子宮筋腫と子宮頸管ポリープの可能性もあります。また、月経時以外の出血や性交時出血は子宮頸がんの可能性があります。近年若い世代で増えており、一方ホルモン依存性の子宮体がんのリスクもあります。
婦人科を受診してみたほうがいい?
3つめは、経血のことで病院に行ってもいいの? という疑問です。
「ドバッと出るのが何日も続くわけではないのですが、何かの病気だと思うと心配。でもこんなことでクリニックに行っていいのでしょうか?」
過多月経をほうっておくとどうなる?
最近の生理用品は機能性が高くて便利な半面、自分の経血量を把握しにくいこともあります。また普段の量や症状に慣れてしまい「生理中はこんなものだろう」と、軽く捉えてしまう人も。八田先生によると「症状はないのに貧血だった……」ということも少なくないようです。
「貧血かどうかは血液検査で確認できます。ヘモグロビンの値が11g/dlを下回るようであれば貧血です。爪が割れる、疲れやすい、息切れや動悸も貧血のサイン。1回の結果だけでなく定期的に数値の変化を見ることが大切です」(八田先生)
日ごろからセルフチェックを。
「しっかりと自分の体、生理に目を向けてほしい」と、セルフチェックの重要性を八田先生は強調します。期間や量、症状などを記録することによってささいな変化がわかり、病気の早期発見にもつながります。
まずは以下のチェックリストを確認。「経血」と「貧血」、それぞれ1つ以上当てはまるようなら、過多月経の可能性があります。不安があれば婦人科の受診をおすすめします。
取材をもとにミラシル編集部で作成
【まとめ】不快感は生理用品やピルで対処しながら経血の状態をチェック。
ドバッと経血が出ることは必ずしも異常ではありません。しかしドバっと出る感覚に悩む場合は、タンポンや月経カップなどの生理用品を使ったり、ピルを飲んだりすることで不快感の軽減も期待できます。
しかし、なかには病気の前兆であったり、すでに貧血状態であったりすることも。八田先生がアドバイスするように、「自分の体に目を向けること」を心がけてください。「何だかいつもと違うな」と感じたら受診を。病気や貧血など不安要素を取り除いた上で、自分なりに快適な生理期間の過ごし方を見つけましょう。
写真/PIXTA イラスト/オオカミタホ
【監修者】八田 真理子
聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田理事長・院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医・母体保護法指定医・日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザー。複数の産婦人科勤務を経て、千葉県松戸市で実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、1998年「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開院。地域密着型クリニックとして思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングに従事。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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