【川上未映子・子育てエッセイ】いろんな光で。
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#人と暮らし
小説家・川上未映子さんによる、子育てエッセイ「いろんな光で」。 2007年、『わたくし率 イン歯-、または世界』(講談社)で作家デビューした川上さん。翌年2008年には『乳と卵』(文藝春秋)で芥川賞を受賞し、その後も『夏物語』(文藝春秋)が世界40か国以上で刊行、『ヘヴン』(講談社)の英訳が22年ブッカー国際賞の最終候補に選出。『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)が全米批評家協会賞最終候補にノミネート、『黄色い家』(中央公論新社)で読売文学賞小説賞など、多くの作品で文学賞を受賞されています。 35歳で妊娠、36歳になる間際で出産された川上さんは、妊娠中から産後、育児を通して感じた2年間の胸の内を記したエッセイ『きみは赤ちゃん』(文藝春秋)を上梓。 本エッセイ「いろんな光で」では、その少し先、現在12歳となった息子さんに向けるまなざし、自身の母親の存在、子育ての正解のこと──少しずつ手が離れていく今、いろんな光に包まれた「ぎゅっという間」の12年をつづります。「子育ても、人生だって、気負わなくて大丈夫」そんな優しさに包まれるはず。 |
この初夏でわたしの息子は十二歳になり、ということは、わたしが出産したのはもう十二年も前になるのだなあ、という当たりまえのことを思ってしまう。けれど、この年齢になると十数年というのは──たしかに長い、長いけれど体感としてはこれ、若い頃の三年くらいに感じてしまうものなので、あっという間ならぬ「ぎゅっという間」とでも言いたくなってしまう、怒濤の子育て期間なのだった。
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