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朝食にプロテインだけ、はNG?効果的な取り入れ方を医師が解説。
「健康診断の結果がよくなかったからやせたいけれど、運動はしたくない」「朝食をプロテインだけにしたいけれど、だいじょうぶかな」と、考えている人もいるのではないでしょうか。ほぼすべての成分がタンパク質で作られているプロテインは、粉末を溶かして飲むだけだからスピーディー。重要な栄養素であるタンパク質を摂れて、一見よい方法に思えます。
しかし「『プロテインだけ』には、いろいろデメリットがあります」と、腎臓医学の第一人者でタンパク質に詳しい上月正博先生は強調します。朝食にプロテインだけはダメなのかを教えていただくとともに、プロテインの効果的な摂り方を解説していただきました。
目次
- ダイエット効率が下がる?プロテインだけの朝食のデメリット。
- 効率的にタンパク質を摂る方法を知っておこう。
- 朝食にプロテインと組み合わせたい、おすすめの食品。
- 【まとめ】ほかの食品と組み合わせて、朝のプロテインを効果的に取り入れよう。
ダイエット効率が下がる?プロテインだけの朝食のデメリット。
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プロテインの種類には、主に以下のようなものがあります。
【飲むタイプ】
・粉末:水などに溶かして飲む
・ドリンク:そのまま飲むことができる
・ゼリー飲料:パウチなどに入っている、やわらかいゼリーを飲む
【食べるタイプ】
・バー:固形でお菓子のように食べる
粉末のプロテインは、基本的に糖質や脂質の含有量が少ないので、糖質抜きダイエットをしている人にとっては、「朝食にプロテインだけ」は好都合だと思うかもしれません。しかし、摂り方によっては逆効果になることも。プロテインだけの朝食にしたときに予想されるデメリットを考えてみましょう。
糖質が足りずエネルギーが不足する。
人間の体の中でエネルギーをつくるのは、炭水化物(糖質)・脂質・タンパク質の3つです。プロテインだけの朝食では、糖質や脂質が圧倒的に不足します。プロテイン(タンパク質)で産み出されるエネルギーでは足りないので、午前中のパフォーマンスに支障が出ることもあります。
筋肉量が減って、基礎代謝量が落ちる。
タンパク質は糖質と一緒に摂ることによって、効率よく筋肉に変わります。糖質を摂るとインスリンが分泌されますが、インスリンによって筋肉合成が促進されると考えられているからです。筋肉は常に分解と合成を繰り返していますが、糖質が足りず合成がうまくいかないと、分解のほうが上回って、筋肉量が減っていくしくみです。
筋肉量が減ると基礎代謝が落ちるので脂肪が減りにくくなり、ダイエットにも影響します。
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腸内環境が悪くなり、便秘になりやすくなる。
プロテインは食物繊維を含まないので、腸内環境が悪くなる可能性があります。さらに、飲むタイプのプロテインは、腸での吸収がよすぎるのも問題です。腸は固形物があることで蠕動(ぜんどう)運動が促され排便がスムーズになります。飲むタイプのプロテインは腸があまり蠕動運動をする必要がないので、便秘になりやすくなります。
咀嚼をしないので太りやすくなる。
朝食を飲むタイプのプロテインだけにすると、咀嚼(そしゃく)する必要がありません。よく噛むことで食欲抑制ホルモンが分泌され、満腹感が得られ食べすぎを防ぐことができます。つまり、咀嚼をしないことにより太りやすくなってしまうのです。
効率的にタンパク質を摂る方法を知っておこう。
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朝食にプロテインを飲むのはよくないかというと、そうではありません。朝、タンパク質を摂ることは、とても大事ですし、体内で合成できない必須アミノ酸を含んだプロテイン製品もあります。まずはタンパク質について、正しい知識を持っておきましょう。
1日の推奨量と上限値。
日本人のタンパク質の推奨量は1日あたり、成人男性で約65g、成人女性で約50gです。上限値は、国の指針として決められていませんが、特に激しい運動をしていない人は、標準体重×1.3gまで。標準体重60㎏の人ならば78gです。筋トレで筋肉を増やしたい人は標準体重×1.7gまで、アスリートは標準体重×2.0gを目安とするとよいでしょう。
この必要なタンパク質量を、少ない食事回数で摂るのは大変です。つまり、食事としてプロテインを飲むのは理にかなっているといえます。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」Ⅱ 各論 1 エネルギー・栄養素 1-2 たんぱく質
大切なのはタンパク質を3食に分けて摂ること。
タンパク質は体内でアミノ酸に分解されたあと、体の部位の役割に合わせて再合成されますが、その量は1度にせいぜい30gまでといわれています。たとえば朝食で50gのタンパク質を摂取したとしても、20gのタンパク質(アミノ酸)は尿として体外に排出されてしまいます。アミノ酸を尿にろ過するとき腎臓に余計な負担をかけるだけ、マイナスです。
また、筋肉は常に「壊れては再生」を繰り返しています。再生するときに、血液中に材料となるアミノ酸がないと筋肉が作られません。研究データでも、1日2食を続けると筋肉量が減っていくという結果が出ています。
以上の理由から、朝食を抜いて昼食と夕食の2食で1日分のタンパク質を摂ればよいと考えるのは間違いで、1日分の推奨量を3回に分けるのがよりよい摂り方なのです。
朝、プロテインを飲むのは正しい。
朝、タンパク質を摂ることは重要です。夜寝ている間も、タンパク質(アミノ酸)は体のあちこちで再合成され、筋肉・肌・髪・ホルモン・免疫抗体・神経伝達物質など体のあらゆる要素を作っています。
朝は、夕食から時間がたって血液中にアミノ酸が欠乏した状態なので、摂取効率がよいプロテインを朝食に取り入れるのは、理にかなっているといえます。ちなみに私は、朝食に必ず豆腐を食べてタンパク質を摂るようにしています。
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タンパク質摂取に理想的なのは、旅館の朝食。
プロテインに頼らず、1回の食事で1日の3分の1(約20g)のタンパク質を摂れる朝食の献立例を挙げました。タンパク質摂取という点では、豆腐・納豆・卵がある和食が優れています。私の経験から、旅館の朝食などは理想的といえますね。
洋食では卵を2個使わないとなかなか20g摂取は難しいのではないでしょうか。ウインナーソーセージやハムはタンパク質を含みますが、塩分が多いので毎食は避けたほうがよいでしょう。栄養バランスを考えてサラダなど野菜も食べてください。
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朝食にプロテインと組み合わせたい、おすすめの食品。
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朝食にプロテインを摂るなら、もう1品足して、糖質やビタミンを加えるとよいでしょう。プロテインにもいろいろな製品があり、なかには糖質を配合したものもあるので、そうした製品を選ぶのも1つの方法です。
バナナ
バナナ1本あたり(可食部100g)の糖質は21.1g。ご飯約2分の1杯分のカロリーですので、ダイエット中の人にはおすすめです。食物繊維が豊富なのもメリットといえます。
おにぎり
おにぎり100gの糖質は39.3g。ダイエット中の人は中の具材に注意したいもの。ツナマヨネーズは昆布や梅干しの1.5倍のカロリーがあります。コンビニのおにぎりは包装のラベルにカロリー値が書いてあるので確認して選びましょう。
シリアル
シリアルにドリンクタイプのプロテインをかけて食べれば、タンパク質と糖質を同時に摂ることができます。ただ、シリアルといっても種類はさまざまで、トウモロコシが原料のコーンフレークは糖質もカロリーも多めです。砂糖やドライフルーツが入っていたらカロリー過多に要注意です。
参考:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」第2章
バータイプの栄養補助スナック。
朝食を時短ですませたいなら、栄養成分を調整したバータイプのスナックもよいでしょう。ビタミンやミネラルなど、ほしい栄養を摂ることができます。毎日食べるとなるとコストがかかることが難点かもしれません。
【まとめ】ほかの食品と組み合わせて、朝のプロテインを効果的に取り入れよう。
上月先生に、朝、プロテインを摂るメリットと、プロテインだけにするデメリットを解説していただきました。朝食のプロテインは、就寝中に欠乏する血液中のタンパク質(アミノ酸)を補給する点では理にかなっています。ただし、飲むタイプのプロテインだけで朝食をすませようとするのはおすすめできません。
適度に糖質をプラスすることで、午前中のパフォーマンスが向上し、筋肉量を保つことができます。また、咀嚼をきちんとすることで食欲抑制ホルモンが分泌され、満腹感が得られるので、朝には飲むタイプだけでなく食べるタイプのプロテインバーなどを取り入れるのもよいかもしれません。
タンパク質の働きも意識して、上手にプロテインを食事に取り入れてみましょう。
写真/PIXTA イラスト/こつじゆい
【監修者】上月 正博
山形県立保健医療大学理事長・学長・教授。医学博士。日本腎臓学会功労会員。総合内科専門医。腎臓専門医。高血圧専門医。リハビリテーション科専門医。著書に『たんぱく質 プロテイン 医学部教授が教える 最高のとり方大全』『腎臓の名医が教える 腎機能強化ノート』(ともに文響社)など多数。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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