

喃語(なんご)はいつから?言語聴覚士が教えるクーイングとの違いや引き出し方。
生まれてしばらくは泣くばかりだった赤ちゃんが、「まままま」「だだだだ」といろんな声を発するようになってくると、おしゃべりしているのかも! とうれしい気持ちになるものです。喃語(なんご)と呼ばれるこの声、いつごろ出てくるようになるのでしょう? また、喃語を引き出すにはどうすればいいのでしょうか。言葉の発達に詳しく、子どもの言葉に関する相談・支援を行っている言語聴覚士の寺田奈々先生に聞きました。

目次
- 喃語は生後5カ月~6カ月ごろからはじまり、1歳過ぎまで見られる。
- 喃語とは?クーイングとの違いは?
- 喃語の「ばぶ~」が聞けるのは意外と遅め!月齢ごとの喃語の特徴一覧。
- 喃語を引き出す、赤ちゃんとのコミュニケーション。
- 喃語が少ないかも!?と思ったら。
- 【まとめ】赤ちゃんの個性を見守り、楽しいコミュニケーションを。
喃語は生後5カ月~6カ月ごろからはじまり、1歳過ぎまで見られる。

子どもが言葉を発するようになるプロセスには、もちろん、個人差があります。が、大まかには、まず生後0カ月の「泣く」ことからはじまって、生後2カ月~3カ月ごろに「クーイング」と言われる発声が見られはじめます。生後5カ月~6カ月ごろになるとさらに「喃語(なんご)」と言われる連続した音が加わるようになります。
1歳ごろになると、「意味のある言葉」が出はじめて、1歳6カ月~1歳10カ月ごろからぐんぐんと語彙(ごい)が増えて、2歳を過ぎると「二語文」を話すようになる、というのが目安です。
1歳ごろになると出てくる「意味のある言葉」は、初語(しょご)、発語(はつご)、一語文などということもあります。
喃語とは?クーイングとの違いは?

では、クーイングと喃語の違いについてお話ししましょう。
クーイング
「クーイング」は、機嫌のよいときに「あ~」「う~」「く~」などの声を出すことです。最初は母語(生まれたときにまわりから話しかけられ、最初に習得する言語)にはない曖昧な発声や、鼻に抜ける声も発しますが、次第に母語の母音に近い声が増えていきます。
喃語
一方、「喃語」は、母音と子音のペアを反復する発声のことです。たとえば、「ま」は、子音の「m」と母音の「a」が組み合わさってできる音で、これを「ままままま」と反復しているのが喃語です。ほかにも「ばばばばば」とか「ててててて」といった喃語がみられるようになります。
もう1つ、クーイングとの違いとしては、クーイングが口から声を出しているだけなのに対し、喃語は、唇や舌も使っていること。喃語が出てくる背景には、聴こえの力や、唇、舌、のどなどを動かす力が発達してきたこと、耳の聴覚機能と体の運動機能の相互の発達が関係しています。
喃語の「ばぶ~」が聞けるのは意外と遅め!月齢ごとの喃語の特徴一覧。

喃語は、赤ちゃんの成長によって変化します。だんだんといろいろな音が増えていき、複雑さが増していきます。
5カ月ごろから。

5カ月ごろから、まだ音が不明瞭な喃語がだんだん増えていきます。
7カ月ごろから。

同じ音を連続して出す喃語が増えてきます。この喃語を基準喃語と呼ぶこともあります。
10カ月ごろから。

同じ音の連続だけでなく、「あだ」や「ばぶー」のように、2つ以上の音を組み合わせて発することが増えていきます。意味のない音の並びであり、喃語と区別して「宇宙語」と呼んでいるママ・パパもいるようです。
赤ちゃんと言えば「ばぶ~」と言っている姿を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実は赤ちゃんの「ばぶ~」が聞けるのは、喃語の時期の後半である10カ月ごろから。意外とあとの時期なんですね。
意味のない音の羅列であっても、母語のアクセントやイントネーションをまねていることが増えていきます。言葉を話すための準備段階として、赤ちゃんはまわりの音を聞いて、いろいろな音を出しているのです。
また、1歳を過ぎたころから喃語のなかにぽつぽつと意味のある言葉(初語)が混ざりはじめます。
喃語を引き出す、赤ちゃんとのコミュニケーション。

赤ちゃんは人の顔に興味があり、顔の近くをじっと見つめる習性があります。赤ちゃんに言葉をかけるときは、顔と口元を見せてあげるとよいですね。ゆっくりと自然な抑揚、リズムで話しかけましょう。意味をまだ理解していない段階でも、メロディーを聞くように話しかけを聞いています。ポイントを詳しく紹介します。
赤ちゃんの声に楽しく反応する。
いろんな声を出したらママ・パパが反応を返してくれるのは、赤ちゃんにとってはとてもうれしいことです。おすすめなのが、「あー」と言ったら「あー」、「ままま」と言ったら「ままま」と、そっくりそのまま聞こえたとおりにまねしてあげること。言葉の発達において、とても重要なのは“相互性”と言われています。反応が返ってくることが「おもしろい!」となり、やりとりに興味をもつことが、その先の言葉の発達に繋がります。
赤ちゃんと相互のやりとりを繰り返し、ときどき緩急をつける。
喃語の時期に限らず、コミュニケーションの力を育み、言葉を獲得するのに一番重要だと言われているのが相互性です。「ターンテイキング」と呼ばれることもあります。コミュニケーションでは、自分の番、相手の番、と代わりばんこに順番がやってきます。言葉を話しはじめる前の段階で、赤ちゃんはこの相互性を身に付けていくと言われています。声の出し合い、物の渡し合いっこ、スキンシップ、哺乳や食事の際の食べる・食べさせるなどの活動にはターンテイキングがあります。言葉をまだ話さない時期のお子さんと相互にやり取りを楽しむことが、言葉の獲得に繋がります。
それから、ときどき緩急をつけることもおすすめです。たとえば「いないいないばあ」が楽しいと、もう1回、もう1回と繰り返し赤ちゃんを笑わせることができるかもしれません。繰り返しのなかで、ときどき少しだけタイミングをずらします。「いないいない……ばあ~!」のように、さっきまでよりも少し遅れて顔が登場すると、キャッキャッと笑い声も大きくなります。なぜさっきよりもおもしろかったのでしょう?
赤ちゃんは、繰り返しのなかで次に来ることを予想してワクワクするようになっていきます。ちょっとだけ先のことを予測したり想像したりすることは、言葉の獲得に重要なイメージや概念の形成を助けます。繰り返しのパターンに気が付くことは理解力を育てることに繋がっています。
普段の何気ない遊びは、その時期の子どもの発達と深くかかわっています。赤ちゃんにとってなぜおもしろいのか? その背景がわかると発達を見守るのが楽しくなります。
喃語が少ないかも!?と思ったら。

喃語が出る時期や言葉の発達は個人差があり、さまざまです。月齢はあくまでも目安であり、焦らず子どものペースを尊重してあげましょう。
ただ、声や音に反応がない場合、くぐもったような曖昧な発声が多い場合は、難聴など耳の聞こえが影響している可能性があります。近年では新生児聴覚スクリーニング検査が実施されている自治体がほとんどですが、自治体によっては任意である場合があります。まだ受けていないお子さんは、必ず聴力検査を受けましょう。
発達について気がかりなことがあれば、乳幼児健診の際に相談に乗ってもらうことができます。ただ、不安を抱え続けているようなら、乳幼児健診のタイミングを待たずに、気になったタイミングで、地域の発達相談窓口、小児科の発達外来などに相談してみることをおすすめします。
【まとめ】赤ちゃんの個性を見守り、楽しいコミュニケーションを。
赤ちゃんは、まわりで話される言葉を聞いて、次第に喃語を発するようになります。赤ちゃんのペースを見守りながら、どんな喃語が出てくるか親子で楽しくコミュニケーションをとってみてください。
写真/PIXTA イラスト/こつじゆい
【監修者】寺田奈々
言語聴覚士。総合病院、プライベートのクリニック、専門学校、区立障害者福祉センターなどに勤務後、「ことばの相談室ことり」を開設。年間100症例以上のことばの相談・支援に携わる。専門は、子どものことばの発達全般、吃音、発音指導、学習面のサポート、大人の発音矯正。著書に、『0~4歳 ことばをひきだす親子あそび』(小学館)などがある。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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