入院中の持ち物は?どんな準備をすればいい?【チェックリスト】
自分自身が入院することになったとき、体調のことはもちろん、何を持っていけばいいのか?職場に迷惑をかけるのではないか?自分が不在の間、家族は大丈夫なのか?1人暮らしの場合、何に気をつけたらいいのか?など、心配ごとはつきません。しっかり治療に専念するために、どんな持ちもの必要で、準備は何をしたらいいのでしょうか? 看護情報誌『ナースマガジン』の副編集長・看護師の中澤真弥さんに、入院前にしておくべき「備え」をアドバイスいただきました。
目次
まずは自分自身の準備から。
事前に予定が決まっている入院であれば、準備できることはたくさんあります。ちょっとしたアイテムが入院生活の不便を解消しますし、知っていたら便利なサービスもあります。
入院時に必要なものチェックリスト。
入院生活の準備といっても、疾患や病態、手術の有無によって異なります。一般的に入院時に必要とされるもの、あると便利なグッズをリストでご紹介します。
【入院時の持ちものリスト】
- 健康保険証と診察券
- (必要があれば)服薬中の薬とお薬手帳
- パジャマ
- タオル類:大小多めに。大判のバスタオルはシーツの上に敷くと汗を吸収してくれます。手術がある場合は病院側から持参するようお願いされることもあります。
- 下着・靴下:ゆったりしたものを選んで 、数は多めに。ブラジャーよりカップ付きのタンクトップやキャミソールがおすすめ。
- 飲みもの用のカップ:割れない素材のものを。
- 箸・スプーン・フォーク・ストロー:術後の安静期間はストロー があると、水分補給が楽です。もしくは、吸い飲みを準備しておくといいでしょう。
- ティッシュペーパー・ウエットティッシュ
- ビニール袋:洗濯ものを入れたり、ベッドサイドのゴミ袋にしたり、用途が多いので多めにあると重宝します。
- 洗面用具・シャンプー・リンス・ボディソープ:体を拭くボディシート、水のいらないドライシャンプーもあると便利です。
- (ご自身で洗濯をする場合)洗濯洗剤:粉末タイプはこぼれたときに片づけが大変なので、ジェルボール型がおすすめ。
- (夏場)ひんやりグッズ:冷感タイプの枕カバーやネッククーラー。ハンディ扇風機を持参される方もいます。
- (冬場)防寒グッズ:カーディガンなどの上着。治療に影響がなければ、レッグウォーマーやネックウォーマーなど。
- イヤホン:テレビやご自身で持ち込んだデジタル機器を使用する際に必須です。
- 筆記用具
- 現金:病院は不特定多数の人が出入りする場所です。盗難がないとは言い切れないので、数千円程度に。クレジットカードなどの貴重品を持参する場合は、病室のセーフティーボックスに入れましょう。
そのほか、女性ならスキンケアアイテムやハンドクリーム、生理用品、男性なら電気シェーバーなど。日常生活で使っているものは、必要に応じて持参しましょう。ただし、刃物類の持ち込みは禁止のケースが多いので、カミソリなどに注意をしてください。
パソコンやタブレットの持ち込みも多くの病院で許可をいただけますが、使用できる場所が限られている場合があるので事前に確認しましょう。その際、自己管理をしっかりして盗難には十分注意をしてください。必要な方はモバイルWi-Fiルーターなどを持参するといいでしょう。詳細は入院する医療機関に確認しましょう。
また、入院時、荷物が多いのもあってかキャリーケースで来院する方がいますが、ロッカーに入る程度の大きさのボストンバッグなどが好ましいです。大部屋にはキャリーケースの置き場がないことが多くあります。ロッカーの上に乗せるのは落ちてきたときに危険ですし、床に置いておくのは不潔です。何より、治療の妨げになります。
入院する病院の施設・サービスをチェック。
病院によって、どんな設備やサービスがあるのかは異なります。場合によっては、入院時の持ちものを減らすこともできます。入院する病院にどんな設備やサービスがあるのかを確認しておきましょう。
売店
最近では院内にコンビニやパン屋、カフェが入っているところもあります。小さな売店でも、患者さんが必要とするものはある程度、網羅されています。院内に売店があるのか?売店の品ぞろえはどうか? 入院前にざっと確認しておくといいでしょう。
冷蔵庫
特に食事制限がなければ好きなものを売店で購入し食べることが可能な場合があります。病院の設備にもよりますが、大きな冷蔵庫を共同で利用する場合と、ベッドサイドに備え付けられている個人用の冷蔵庫を利用する場合とがあります。ベッドサイドの冷蔵庫の利用は、有料の場合もあります。
コインランドリー・クリーニングサービス
最近では感染症対策のために、家族であっても面会ができない施設がほとんどです。洗濯ものの引き取りや受け渡しのためだけに家族に来てもらうのも申し訳なく思う人もいるでしょう。体が動けばコインランドリーが使えますし、有料のクリーニングサービスがあれば、下着1枚から洗濯してもらえます。
入院セット
最近では、病衣やタオル、洗面用品などの利用をレンタル契約する「入院セット」も一般的になってきました。料金は日額数百円程度。自分で用意するものがぐっと減りますし、洗濯の手間や手配もいりません。
備え付けロッカー
大部屋の場合、ベッド周辺以外は共同スペースになります。また、病室は治療の場ですのでスペースを確保しておく必要があります。持ち込む荷物はロッカーに収納できる程度まで。備え付けのロッカーにどれくらいの荷物が入るのか、大きさを事前に確認しておくといいでしょう。
入院当日、気をつけたいこと。
入院当日は、メイクをせず、両手両足のネイルは落としていきましょう 。顔色や唇は視診で健康状態を確認する大切なポイントとなります。また、サチュレーション(動脈血酸素飽和度:SpO2)は指で測りますので、ネイルをしていると正確に測定できません。
簡単に落とすことのできないジェルネイルは、特に気をつけましょう。
それ以外にも、担当の医師から事前に指示があれば、それに従いましょう。
職場との調整は丁寧に進めると◎。
入院や病状をどこまで職場に伝えるかも悩ましい問題です。病気によっては告白したくないという方もいるでしょう。また、雇用形態や立場、職場の雰囲気によっても事情は変わります。人それぞれに正解があるものです。
直属の上司には伝えておく。
治療する本人の意思が尊重されるのが大前提として、可能であれば、直属の上司には伝えておいたほうがいいと思います。それは、入院前の引継ぎだけでなく、退院後のためでもあります。
復帰後、どこまで調子が戻るのか予測できませんし、往々にして無理をしてしまいがちです。また、定期的な検診があって遅刻や早退、時短勤務が必要な場合もれば、薬の副作用で体調が優れず思うように働けないこともあります。事前に上司に伝えておくことで、退院後に働き方の調整がしやすくなるはずです。
医師からの説明をメモして相談を。
先を見すえてプランを立てておくことが大事です。よく聞くのは、あとになって入院治療をしていたことを会社の人に伝えると、「早く言ってくれれば、もっとできることがあったのに……」と言われるケースです。こうしたすれ違いはお互いに不幸です。
何をどう説明するのかですが、やはり、事実を正確に簡潔に伝えることが大切でしょう。医師からの説明をメモして、それを会社に伝えるといいでしょう。わからないことがあれば、小さなことでもいいので医師や看護師に相談してください。
忘れちゃいけない家族のケア。
入院中の家族の生活は、自分の体以上に気がかりだと思います。パートナーや身内など頼れる人には頼り、家事の代行など使えるサービスも可能な限り使って、治療に専念できる環境を整えておくといいでしょう。
連絡事項をリスト化する。
料理をつくり置きしてから入院される方もいますが、食事はコンビニやスーパーのお惣菜、ケータリングなどを活用すればなんとかなります。むしろ、困るのは、細かな家庭の事務的作業です。子ども関係の連絡先や各種の支払い、印鑑の場所など。入院が長期的になるのであれば、普段、何をどうしているのか、一目でわかるようリストにしてまとめておくと、家族の混乱が減ります。
保育園は遅めのお迎えのリハーサルを。
お子さんの保育園のお迎えを、パートナーなど別の誰かが担当するとして、どうしてもお迎えの時間が遅くなってしまうことがあります。「いつもの時間」にお迎えがこないことで、子どもの不安は大きくなります。
あらかじめ入院することがわかっていたら、大体、お迎えが何時ごろになるのかを想定して、入院までの期間、遅めのお迎えの練習をするといいでしょう。
子どもにはきちんと説明しておく。
病気や入院のことを子どもには伝えないでいる、という人は少なくありません。もちろん考え方はいろいろで、それぞれのご家庭で考えて決めた結論がベストだと思います。でも、「まだ小さいし、どうせわからないだろう」と大人が一方的に決めつけないほうがいいでしょう。子どもも幼いなりになんとなく理解するものです。「ママ(パパ)もがんばるから、ちょっと待っていてね」と伝えておけば、子どももがんばろうと思える。そんな子どもの姿もまた、治療の励みになります。
1人暮らしの場合は、何をしておくべき?
1人暮らしの場合はある程度の留守を想定して家の中を整えておくなど、また別の観点で注意が必要です。
冷蔵庫の中と電気製品に注意。
ごみ、特に生ごみは家の中に残さず捨てておくことも必要ですが、注意すべきは冷蔵庫の中。腐りやすいものは入院前に食べきるか、処分しておくようにしましょう。
電気製品のコンセントは可能な限り抜いておきたいもの。ほこりがかぶっていると火事 の原因にもなるので掃除もしておきましょう。ガスの元栓を締めることもお忘れなく。
このほかにも、雨の多い時期は、押し入れやタンスの中に除湿剤を入れておくなどカビ対策を。
入院を知らせておきたいところ。
離れて暮らす家族や職場に入院を知らせるほか、住居が賃貸の場合はできるだけ大家さん、または不動産会社に連絡を入れておきましょう。留守中に何かあったときのために入院先も伝えておきます。
また、郵便受けに新聞や手紙がたまっていると留守がわかって空き巣に狙われるリスクも。新聞をとっている場合は一時的に止め、郵便物は郵便局に届けを出しておけば病院に転送してくれるサービスもあります(病院への確認が必要 )。うまく利用しましょう。
急な入院と退院後の備えも。
急に倒れたり、ケガで入院したりすることもあります。1人暮らしの場合はそんなときに備え、できれば普段から入院グッズを準備しておくと安心です。いざというときに、サポートしてくれる人に「玄関に入院セットがある」と一言伝えるだけでスムーズな入院につなげることができます。
万が一のことも考えて、緊急の連絡先、親族・友人の連絡先なども、人が見てわかるようにリストにまとめておくことも大切です。
また、忘れがちなのが退院後のこと。退院してもすぐに動けるとは限りません。療養生活のことも考え、水・米・冷凍食品など保存食を準備しておきましょう。配達サービスを調べておくと役立ちそうです。
入院準備は治療に専念するための備え。
入院に必要なものの準備や、家庭や職場の調整など、何かと大変なこともあるかもしれませんが、これらの準備も自分の体のために必要な「治療に専念するための備え」と考えて進めるといいでしょう。
一番大切なのは、ご本人の体調です。たとえば、お子さんがいる方だと家族を心配して、 手術の翌日に「もう大丈夫だから退院させて!」と懇願される場合もあります。気持ちはよくわかるのですが、入院されるときは、ご自身の体を大切にしていただきたいと思います。
写真/Getty Images
中澤 真弥
メディバンクス株式会社 執行役員
『ナースマガジン』副編集長・看護師
専業主婦を経て、看護の道へ。看護師として働きながらフリーライターとして活動。看護大学教員・介護専門学校講師・メディカルマーケティング・アドバイザーなどを経て2022年より現職に就任。著書に『看護の現場ですぐに役立つ循環器看護のキホン』(秀和システム)など。
※ この記事は、ミラシル編集部が 監修者への取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。