入院生活でのストレスを軽減!入院中の困りごとと対処法を看護師が解説。
日常とはかけ離れた環境に身をおくことになる入院。治療や手術のためとはいえ、家での生活とは勝手が異なり、戸惑ったり不自由を感じたりすることも多いでしょう。少しでもストレスなく入院生活を送るにはどうしたらいいのか? 看護情報誌『ナースマガジン』の副編集長・看護師の中澤真弥さんに、入院生活でありがちなお困りポイントとその改善方法を伺いました。
目次
- 入院生活お困りポイント1:なかなかお風呂に入れない!
- 入院生活お困りポイント2:活動量が減り、体力が落ちてしまった。
- 入院生活お困りポイント3:環境が変わって、夜眠れない。
- 入院生活お困りポイント4:病院食が合わず、食事が食べられない……。
- 【まとめ】不安や困ったことは、まず看護師に相談を。
入院生活お困りポイント1:なかなかお風呂に入れない!
入院中、お風呂に入れなくてつらかった、不快だったという人は、少なくありません。看護師が体を拭くケースが多いですが、すべての患者さんが満足のいくほど、1人ひとりに十分な時間をかけることは難しい場合があります。
対処法は?「体を拭いてみましょう」
病院では、入院中、お風呂やシャワーに入れない患者さんに対して、体を拭くことができるように蒸したタオルをお渡しできることもあります。手の届かない場所や安静を強いられている方には、看護師や看護補助者が行います。ご自分でしっかり拭きたい、汗ばんだので拭きたいなどのときには、病院のスタッフに「洗面器にお湯をくんできてください」とお願いしてみてください。入浴後の爽快感にはおよばないかもしれませんが、ご自身でゆっくりと体を拭くことで不快感を解消することができます。そのとき、お湯に重曹や保湿用のオイルを混ぜて使う方もいらっしゃいます。ただし、体調によってはにおいに敏感になっている患者さんもいらっしゃいます。香りの強いオイルは同室の方の迷惑になる場合がありますので、気をつけましょう。
持参したボディシートを使って体を拭くのもいいでしょう。また、髪が洗えない不快感を完全になくすことはできないかもしれませんが、水のいらないドライシャンプーを使用するのもいいと思います。
入院生活お困りポイント2:活動量が減り、体力が落ちてしまった。
活動が制限される入院生活で、体力が落ちてしまったという話もよく耳にします。しかしながら、体力が落ちたな……と感じられるようになったら、一番体調が悪かった時期を乗り越え、回復に向かっている証拠でもあります。
対処法は?「可能であれば、簡単な運動からはじめましょう」
まずは主治医にどの程度の運動まで可能なのかを確認し、できる範囲で体を動かしていきましょう。たとえば、病棟の廊下を歩いたり、スマホやタブレットで動画を見ながらラジオ体操やリハビリ運動をしたりするのもおすすめです。また、100円ショップなどで売っているハンドグリップのような手軽な筋トレグッズを病室に持参し、使う方もいます。ただし、以前に私が担当した患者さんで、鉄アレイを病室に持ち込んだ方がいましたが、あまりに重いものは落としてしまったときに危険なのでご遠慮ください。
体を動かさないと筋肉はどんどん落ちていきます。退院後、日常生活に速やかに戻るためにも、特に制限がなければ主治医と相談しながら、意識的に体力を戻していきましょう。
入院生活お困りポイント3:環境が変わって、夜眠れない。
病室での暮らしは、環境が大きく変化するためストレスがかかります。夜、眠れないというのは、入院中にありがちなお困りごとの筆頭かもしれません。
対処法は?「リラックスできる環境づくりを」
病状や治療経過にもよりますが、病室で日中することがなく、うとうとと昼寝をしているために、夜眠れなくなっているという人が少なくありません。そういう方は、日中の活動量をできるだけ増やすといいでしょう。たとえば、病棟内を歩いてみたり、病室以外に過ごせるスペースがある病院であれば、テレビを見たり読書をしたりして過ごすのがおすすめです。(現在は新型コロナウイルス感染症による制限があり、使用できない可能性があります)
環境の変化によって「落ち着かない」「眠れない」という方は、普段寝具で使用しているものや落ち着けるグッズなどがあれば持参し、自らリラックスできる環境づくりをしてみましょう。手浴や足浴も気分転換や睡眠を促す効果が高いのでリラックスできます。
睡眠不足は体によくありません。「仕方がない」とあきらめず、看護師に相談してみるといいでしょう。
入院生活お困りポイント4:病院食が合わず、食事が食べられない……。
昔に比べれば、病院食は大きく改善され、おいしくなっている病院が多いと思います。食事のメインを自由に選択できるなど、食べる楽しみを大切にしている病院も増えています。とはいえ、味覚にはどうしても個人差があります。また、朝8時に朝食を食べ、体を動かさないまま数時間後に昼食になるため、「食欲がない」という方もいらっしゃいます。
対処法は?「食事内容を変えられるかもしれません」
食事についても我慢をしないでいただきたいです。「こんなことを言うのはわがままじゃないかしら?」と遠慮する気持ちがあるかもしれませんが、聞いてみることで改善につながることはあるものです。たとえば、朝食のごはんをパンにしたり、ふりかけや佃煮、プリンやヨーグルトなどを食事に付けたりすることができる病院もあります。また、病状にもよりますが、量が足りないというのであれば、ごはんを大盛りにすることもできるでしょう。
もちろん、塩分など食事制限がある人は難しく、主治医の許可が必要です。病院によって、できることとできないことは異なります。しかし、食事も治療の一環。食べられないよりは食べられたほうが断然、体のためになります。医師や看護師は患者さんの体調が回復するのを第一に考えていますから、できる範囲で考慮してくれるはずです。
【まとめ】不安や困ったことは、まず看護師に相談を。
このほか、「大部屋の人間関係のトラブル」も入院中にありがちなことの1つです。同室の患者さんへのちょっとした声かけなど、看護師がサポートできることもあるので、小さなことでも我慢せず、まずは看護師に相談してください。それでも知らない人との共同生活がストレスで耐えがたいときは、金銭的な負担はかかりますが個室の病室に移ることも検討してもいいかもしれません。
不安や困ったこと、希望があったら病院スタッフに話をしてみてください。お話をするだけで、楽になることもあります。気を遣ったり、我慢したりされる方がいますが、われわれ医療従事者は、患者さんの安全・安楽を第一に考え、快適な入院生活をサポートします。ですので、何かあれば遠慮なく相談してください。困りごとのすべてを「解決」はできないかもしれませんが、「改善」できることはあると思います。
写真/Getty Images
中澤 真弥
メディバンクス株式会社 執行役員
ナースマガジン副編集長・看護師
専業主婦を経て、看護の道へ。看護師として働きながらフリーライターとして活動。看護大学教員・介護専門学校講師・メディカルマーケティング・アドバイザーなどを経て2022年より現職に就任。著書『看護の現場ですぐに役立つ循環器看護のキホン』(秀和システム)など。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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