尿路結石の初期症状は激痛?予防法と治療法を泌尿器科専門医が解説。
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日本尿路結石症学会による2005年の調査によると、男性の7人に1人が一生に1度は尿路結石になるとされ、これは1965年の調査と比較して約3倍。ピークは40代ですが、20代~30代でも若干の増加傾向にあります。ちなみに、女性は15人に1人です(2005年)。世界三大激痛や痛みの王様と呼ばれるほどの痛みをともなう尿路結石について、新百合ヶ丘総合病院尿路結石破砕治療センター センター長の荒川孝先生にお聞きしました。
目次
尿路結石ってなに?
尿路結石とは、腎臓でつくられた尿が排出されるまでの通り道に、小さな石のような塊(結石)ができてしまった状態。結石のある部位によって、腎結石・尿管結石・膀胱結石・尿道結石に分類されます。そして、この尿路結石が原因となってさまざまな症状を起こす病気が尿路結石症です。
また、腎結石と尿管結石を「上部尿路結石」といい、尿路結石の約96%を占めています。そのため、尿路結石といえば上部尿路結石を指す場合がほとんどです。
20代~30代でも尿路結石になるの?
2005年の上部尿路結石罹患率(人口10万人に対し)は1965年の約3倍。食生活が欧米化して動物性の脂肪やタンパク質の摂取が増えたこと、人口比率の高齢化、診断技術の進歩などがその要因と考えられます。20代〜30代も多少の増加傾向にあります。罹患率全体をみると男性は女性の約2.4倍です。
尿路結石の初期症状と原因。
結石のほとんどは腎臓でつくられます。結石が腎臓にとどまっている間は、痛みがほとんどないか、あっても違和感や鈍く痛む程度です。ところが、結石が尿管(尿の通り道)に下りはじめた際には激しい痛みが起こります。
結石が尿の通り道にあると激しい痛みが。
その後、結石が尿管の粘膜を直接傷つけることで痛みが生じ、血尿が出る場合もあります。尿管の細くなっている部分に結石が詰まると痛みはより激しくなり、さらに、尿の流れが妨げられると腎臓が腫れて(水腎症)、周期的に痛みを繰り返す疝痛(せんつう)発作が起こります。また、腸の動きにも影響が出るため、ガスがたまって腹部膨満感や吐き気を催し、嘔吐することもあります。
結石が尿管を下っていくのにともなって、痛みは背中側からわき腹、下腹部へと移っていきます。結石が大きいほど痛みが強いと思われがちですが、実は2ミリ~3ミリ程度の小さな結石のほうがよく動くため、痛みをより強く感じやすくなります。最終的に、結石は尿と一緒に排出されるのが一般的です。
尿路結石の原因。
尿路結石は、食生活、年齢や遺伝、ストレス、持病など多くの要因が絡み合う多因子疾患です。また、糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病があると結石ができやすいことがわかっています。あるいは、結石が見つかってから詳しく血液検査をすると、生活習慣病につながる異常値を示すことも多く、尿路結石は生活習慣病の1つともいえるかもしれません。
結石をつくりだす成分。
尿中の成分で結石と関連があるのは、主にシュウ酸とカルシウムで、この2つが結合して固まるとシュウ酸カルシウム結石になります。
食事から摂ったシュウ酸は、腸内でカルシウムと結合すると便と一緒に体外に排出されます。ところが、カルシウムが不足すると、シュウ酸は腸で吸収され老廃物として尿の中へ。一方、動物性の脂肪やタンパク質、糖分、塩分を摂りすぎると、尿中のカルシウム濃度が高まります。その結果、尿の中でシュウ酸とカルシウムが結びついて結石ができるのです。
結石ができる原因は?
先述のとおり、カルシウム不足、動物性脂肪や動物性タンパク質、糖分、塩分の摂りすぎは結石の原因になります。シュウ酸を多く含むメジャーな食材にほうれん草がありますが、よほど食べすぎない限り問題なく、むしろ鉄分やビタミンCなど体に必要な栄養素を摂ることができます。つまり、バランスの悪い食生活が結石をつくってしまうのです。
20代~30代は結石ができやすい生活習慣に陥りがち。
20代~30代は仕事が忙しい人も多く、ストレスフルになりがち。さらに、朝・昼の食事がおろそかになる一方で、夜に肉料理をがっつり食べてお酒も飲む。そんな食生活も珍しくないでしょう。こうした生活が続けば、尿酸値は上がり中性脂肪をため込んで、その結果として結石もできやすくなります。
尿路結石の検査法・治療法。
尿路結石で病院を受診すると、どのような治療を受けるのでしょうか。
結石の大きさで治療方針が異なる。
下腹部やわき腹の激痛、血尿などの症状がある場合、超音波検査・X線撮影またはCT検査をします。CT検査では、2ミリ~3ミリ程度の小さな結石も見つけることができます。
結石の大きさが5ミリ以下であれば、尿と一緒に自然に出てくる可能性が高く、鎮痛剤で痛みを抑え、尿管を弛緩させる薬などを使って自然排石を待ちます。水分を多く摂り、飛び跳ねるような運動をして結石が下りてくるのを促します。
1センチ以上の場合は外科的な治療が必要になります。その中間の6ミリ~9ミリの場合は、状態によって早めに外科的治療をするか、薬を服用しながら自然排石を待つか、医師の判断によります。
尿路結石の外科的な治療。
尿路結石の外科的な治療には、体の外から衝撃波を当てて砕く方法と体の中に内視鏡を入れて砕く方法があり、大きく分けて次の3つです。
ESWL(体外衝撃波結石破砕術)
体外から衝撃波を当てて、結石をこまかく砕く方法。概ね1センチ未満の結石に対して行われ、治療時間は1時間程度。外来での治療や無麻酔治療も可能だが、治療方針は医療機関による。
TUL(経尿道的結石破砕術)
尿道から内視鏡を入れて、尿管や腎臓にある結石をレーザーなどで砕く方法。尿管や腎臓を傷つけずに、より確実に、大きい結石でも砕くことができる。入院が必要で麻酔治療になる。
PNL(経皮的結石破砕術)
背中から腎臓に穴を開けて内視鏡を通し、腎臓の中の結石を砕く治療法。入院が必要で麻酔治療になる。
結石は自然に消えない。
症状はなくても、健康診断などで結石が見つかったり、尿路結石疑いと診断されたりするケースも増えています。症状がないからといって、そのまま放置していると、腎臓の機能を低下させてしまう恐れがあります。必ず、泌尿器科で必要な検査を受け、今後の治療法などを相談しましょう。
一度できた結石は、体内で自然に消えることはありません。また、結石の成分によっては薬で溶かせるものもありますが、もっとも多いシュウ酸カルシウム結石は薬で溶かすことができません。
尿路結石の予防法。
水分をこまめに十分に摂る。
尿路結石を予防するためにもっとも大切なのは、こまめに水分を摂ることです。食事以外で1日2,000ミリリットルの水分を摂り、尿を常に薄めておきましょう。水ばかりでは飽きてしまうという人は、シュウ酸の含有量が比較的少ない麦茶やほうじ茶がおすすめです。
食事はバランスよく。
シュウ酸を多く含む食品を摂りすぎないよう気をつけましょう。ただ、何よりも大事なのはバランスよく食べること。なお、ほうれん草は茹でるとシュウ酸の含有量が半分程度になります。おひたしにしてかつお節やちりめんじゃこを添えるとカルシウムも一緒に摂れますね。
毎日欠かさずコーヒーを飲む人は要注意!
気をつけたいのは、毎日のように飲むコーヒーや紅茶です。コーヒーや紅茶にはシュウ酸が多く含まれています。1日に何杯も飲む人は、牛乳で薄めるなどしてカルシウムを補うようにしましょう。
尿路結石は再発しやすい病気。
尿路結石は再発が多く、シュウ酸カルシウム結石の5年再発率は45%となっています。尿路結石を繰り返した人の尿管はだんだんと緩くなっていくため、初めて結石ができたときと比べると痛みが軽くなっていく傾向にあります。
痛みがほとんど気にならなくなると、結石が出たかどうかの確認をしないまま長期間放置しがち。すると、尿管と結石が癒着を起こしたり、尿管が詰まって腎機能障害や感染症を引き起こしたりする恐れもあります。厄介なのは、腎臓は左右に2つあるため、片方の腎臓の機能が低下していても気づかずに普通の生活が送れてしまうこと。定期的な検査をぜひ受けるようにしてください。
また、尿路結石は痛みの激しさがクローズアップされがちですが、結石のできやすい生活を続けていると、心筋梗塞や脳血管障害といった致命的な病気にもつながっていく可能性があります。
尿路結石の予防には生活習慣の見直しを。
激しい痛みをともなうことが多い尿路結石ですが、痛みなどの自覚症状がなくても、結石ができている場合もあります。さらに、尿路結石の治療は、鎮痛剤などで痛みを抑え、結石を出してしまえばお終いではありません。尿路結石の再発を防ぐことが、その先にある糖尿病・心筋梗塞・脳血管障害といった致命的な病気の予防にも直結するからです。
突然の腹痛でわかることも少なくなく、急な出費につながりかねない尿路結石。その先の病気を予防するためにも、結石をつくってしまう食事などの生活習慣を見直してみましょう。
ここまでは、尿路結石について、新百合ヶ丘総合病院尿路結石破砕治療センターの荒川孝先生にお聞きしてきました。
尿路結石の治療、入院に備えるには?
ここからは、尿路結石で入院治療が必要になった場合を考えてみましょう。治療の内容と入院日数は、結石の大きさや状態にもよるので一概には言えませんが、入院費用は、公益財団法人 生命保険文化センターの調査が参考になります。調査によると、病気やケガの種類を問わない入院費用として、入院時の1日あたりの自己負担額は平均2万3,300円となっています。
出典:公益財団法人 生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(2019)
※ 公的医療保険には、医療費の自己負担額に限度額を定める高額療養費制度等があり、実際に負担する金額はケースにより異なります。
尿路結石は外来治療から数日の入院治療、腎臓の機能に悪化がみられた場合はさらなる治療も必要になります。そのぶん、医療費もかさむ可能性があります。預貯金にかかわらず安心して治療を受けるためには、医療保険で備えるのも1つの方法かもしれません。
医療保険にはさまざまなタイプの保険がありますが、一時金タイプの医療保険に加入しておけば、入院日数にかかわらずまとまった給付金のお支払い対象になります。尿路結石ができないよう、日々の生活で気をつけるとともに、もしものときの備えもしておきたいですね。
写真/PIXTA
荒川 孝
新百合ヶ丘総合病院 尿路結石破砕治療センター センター長。
医学博士。日本泌尿器科学会認定指導医・泌尿器科専門医。
相模台病院・北里大学東病院・国際医療福祉大学三田病院にて尿路結石破砕治療に長年取り組み、2019年4月より現職。体外衝撃波結石破砕術(ESWL)のほか、内視鏡を用いたさまざまな結石破砕術を行うとともに、再発を防ぐための診療にも力を入れている。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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